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お酒を飲む
毎日お酒を飲んでいる。
溺れたいわけでも、かっこをつけたいわけでもない。ただ、飲んでいる。
まず頼むのは瓶ビールと決めている。理由は、長く飲めるからだ。生はすぐに乾いてしまうから、瓶ビールを注文する。
わたしが酒を飲むのは、なにか、心のぽっかり空いたなにかの濃度を下げるためだ。その心のなにかは、ひとりでいると特に、濃く胸に充満する。
だから朝はコーヒー、昼は紅茶を流し込んで抑え込み、それでも揺蕩ってくるから、お酒を飲むのだ。
お酒を飲むと、ぼんやりする。漠然とした不安は氷解し、切迫する恐怖はほどける。こうしたことで忙しくしていても、誰も見ないでいてくれるのが東京なのである。




