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裸の王様
わたしの靴の裏に蛍光塗料を塗ったら、細い線の上を何度も往き来しているだろう。といったような一節があった。
わたしは、というと、同じ道を濃くしているというのは同じ。蛇行癖があるから線は太い。なんとなく空を見つめていると、ふらふらと歩いてしまうのだ。
考え事をするときも、空を見つめることがある。でも、腰骨のあたり、仙骨とか坐骨が寝ているときは大抵集中していない。わたしは身体が硬いので仙骨を立てるのは苦手だが、集中しているときはなんとなくできている気がする。
独り言も多い。ぶつぶつ言いながら歩いている。マスクは便利。無意識の口の動きを隠してくれるからだ。イヤホンは自分や周りの声をかき消してくれる。
思春期の頃は、そういう人を見ると警戒していたものだが、おおよそ自分もそのようになっている、おそれがある。
ほーっと空を見つめ、ぶつぶつ言いながら、蛇行。イヤホンで耳を塞ぎ、マスクで口を塞ぎ、安心している。裸の王様になっていてもおかしくない。




