麦茶の味
音楽に追いつけない時がある
イヤホンから流れる、いつもは簡単に捉えられる音が、スルリといってしまう。心なしかいつもよりテンポが速い。
そんな日は時間の流れが速いかといえばそうでもなくて、むしろ自分がもたもたしている分、体感時間も長い。
昼食に、どの店に入ろうか、件の駅ビルでうろうろする。蕎麦屋には今週2度行った。麺類という気分でもない。お肉が食べたかったけど、ちょっとだけ贅沢な気がして入れず、建物を出る。
牛丼屋かなあと思いながら歩くと、いややっぱり牛丼の口ではないと思い、踵を返す。じゃあなに?トンカツ?パスタ?ハンバーガー?どれも違ったから、結局駅ビルに戻って炭火焼肉丼に決める。
食券を渡すと、「いらっしゃいませ」とともにお冷を置かれた。茶色のプラカップに注がれた水は、麦茶の味がする。
音を捉えられない日というのは、もしかすると正常な状態なのかもしれない。捉えられた気になってる日こそ、無色透明の水を麦茶と勘違いするように、脳を錯覚させている。わたしはもっとのんびり屋なのだ。
ああ、男の人って、いくつも愛を持っているのね。イヤホンから流れてきて、少し凹む。




