蕎麦屋
昼食は、最寄りの駅ビルで摂ることが多い。建物の中は少し暗くて、落ち着いた音楽が流れている。
駅ビルに入っていることに違和感を覚えるほど、ひときわ薄暗く佇んでいる蕎麦屋がある。わたしはその蕎麦屋を好んで行く。
蕎麦屋は、シルバー世代の従業員5人ほどで営まれている。駅ビルという字面からは程遠い布陣で、U-50メンバーを招集したほうがいいのではと思う。
14時半ラストオーダーにもかかわらず、14時には閉店作業を始め、薄暗い店内はさらに暗くなる。丼と蕎麦のセットを注文する。
「お蕎麦大盛りサービスできますが、どうしますか」
と訊かれる。
丼物もあるし、食べきれなかったら悪いなあと思って、
「いえ、普通盛りで大丈夫です」と返す。
おばあちゃんくらいの歳に見える店員は、残念そうに「そうですか」と言い、そそくさと厨房の方へ帰っていった。
心が痛んだ。
注文を待っている間、やっぱりざるにしたらよかったかもなあ、とか、雨の日の京王線は休み休み進んでいくなあ、とか、昨日の夜はちょっと変な気持ちになったなあ、とか。
配膳され、「ラストオーダーですが大丈夫ですか」と訊かれる。ラストオーダーという横文字が似合わない店だなあと思う。
あったかい蕎麦をすすりながら、やっぱりあったかいのでよかった、と思う。




