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いつかのこんな日
いつかもこんな日があった。
8年前だった気がする。
なんでもない日で、身体の状態だって酷いというほどでもなかった。仕事のスケジュール的にも厳しいものでもなかった。けれど、どうしても足取りが重くて、というよりも、もっと他にやるべきことがあるような気がして。
現実逃避と好奇心の狭間で会社を休んだのである。
あの日は、ノートとボールペンを買って、近くの喫茶店へと入った。ふと小学生時代に書いていたお話の続きを書いてみたりした。すると、するすると手が動いて、あっという間に短編が書き上がった。
そうか、この足が重かったのはこのためか。
今日は、当時の喫茶店にまで足を運んだ。引っ越してしまったので随分遠かったけれど、街の景色も建物も変わってしまっていたけれど、店は残っていた。
今日は何をするのだろうか。
落語を聴いたり、友人のパン屋に行ったり、懐かしい場所を歩いたり。
とにかくこの数年間やらなかったようなことをやろうと思う。そして自分の断片を取り戻しながら、新しい形を作りたいと思う。