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「我々ハ宇宙人ニナロウトシテイル人間ダ」
スーパー銭湯通いをしている。引っ越してガスがまだ通っていないからだ。
その銭湯は、100円返却式が至る所に採用されている。まず傘立てに100円を入れ、続いて靴箱に100円を入れ、そして脱衣所ロッカー。
その都度両替機が設置されていて、男女合わせて10機はあるんじゃないだろうか。スタッフも10人ほどだったのに。
脱衣所の扇風機の前に、少女が立っている。
少女は、「我々ハ宇宙人ダ」と唱えている。
何度か繰り返したのち、飽きたのか、気づきを得たのか、「我々ハ宇宙人ニナロウトシテイル人間ダ」に変わった。
以降、その文句が20度ほど復唱された。
機械だらけの銭湯で、真理に気づいた一人の少女。我々は機械に乗っ取られ、宇宙人になろうとしているのかもしれない。それでも、まだ、人間なのだ。人間らしく生きよう。
返ってきた300円を握りしめ、コンビニでアイスを買おうと、意気揚々と銭湯を出る。銭湯というものは、外の天気を忘れさせる。まだ雨が降っていた。
結局、傘を閉じるのが億劫でまっすぐ帰る。こんなことならコーヒー牛乳飲んどけばよかった。後悔しながら、これもまた人間らしいか、などと思う。
ーー我々ハ宇宙人ニナロウトシテイル人間ダ。




