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白い三角
帰り道、夜。駅からひとり路地を歩いていると、遠くの道の傍に「白い三角」が落ちているのを見つけた。
おや、と思った。
私が思うに、
この世に白くて三角なものは二つしかない。
はんぺんかパンティである。
そして、より道端に落ちていてもおかしくないものを選ぶと、それは間違いなくパンティなのであった。
暗がりに浮かぶ白い三角に目を奪われながら、私は歩みを早めた。どきどきした。途中落ちていた煙草の吸い殻や潰れたコーヒー缶には目もくれず、私の足はパンティへ一直線だった。
しかし、近づいてみると、それは三角に折られた白いハンカチだった。がっかりしたような、ホッとしたような、輪郭を持たない感情が心に立ち込める。
丁寧に折られた白い三角を前に、私はただただ立ち尽くした。しばらくその白い三角を見ていた。
大通りに出ると、街灯がいやに眩しい。いつもより光が濃い黄色に見えた。夏の夜風が腕にはりついて不快だった。




