春の生温い風と妹
妹と会う。歳の離れた、出来の良い妹である。
私とは容姿を含めてまるで違うので、昔はよく橋の下で拾ってきたのだと両親は言ったものだった。
妹も地元を離れて東京へ出てきた。だが、後から来たにもかかわらず、私が東京へのコンプレックスにうじうじしている間に、彼女はすっかり馴染んだ。こっちの方が余程水が合っているらしい。
私は彼女に頼られたことがない。記憶を辿ってみても、私が頼ることはあっても、彼女が頼ってきたことはなかった。
私は誰彼構わず、自分にできる範囲で人を甘やかす質である。要するに誰にでも良い顔をする、臆病なやつなのだ。ただ自分のキャパを超えると、ぷつりと他人が視界から消え、自分のことでいっぱいいっぱいになる。
対して妹はドライだ。さっぱりとしていて、人との距離をとるのが上手い。自分に背負えないものは背負わないし、やれることはちゃんとやる。気持ちのいいやつだ。
私は背負えそうな顔をしながら、いざ背負うと潰れる。優しそうなふりをして、無責任で、弱くて、かっこ悪くて。
夜の桜は、もうすっかり葉桜になっていて、ところどころに残る往生際の悪い花びらが、風に吹かれて散っていく。
春の生温い風が頬にあたると、なんでか、目が潤む。




