未練がましい
いろんな未練が夢になって出てくる。
排水口に絡まった髪の毛のような記憶の糸をぶちぶちとちぎりながら処理する朝。
学生時代の頃のことが多い。
部活動のこと、勉強のこと、恋人とのこと、アルバイトのこと。同じ場面を何度も見ることもあれば、未だに新たなシーンが追加されることもある。夢製作委員会の仕事ぶりに感服する。
おそらく運営は、毎日夢を放映しつつ(ときに再放送、ときに放映なし)、一方で新たな素材を求めて、記憶発掘の業務を専門家に委託しているのだろう。
専門家のおじさんは、ピッケルを持って私の頭の中を掘り進んでは、まだ未発見の古い記憶を発掘する。発掘した新しい素材を運営に送り、編集セクションへと回す。古い古い記憶なのに掘り起こすと新しい(素材)という、言葉のアンビバレントなところがある。
私は未練がましい人間だから、いやな記憶を捨てもせず、消化もせず、上書きもせず、タイムカプセルにしてそのまま埋めてきた。
おじさんは、そういう記憶を掘り起こしては、何度も私に突きつけてくる。そのまま密封して埋めたから、まだ生々しさが残っている。
おじさんも仕事だからしょうがないけど、多分おじさんとは仲良くなれない。