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大義なき初陣

 

 1555年、初夏。


 西園寺攻めで大きな成果を上げた鉄砲隊の話は、吉良氏や本山氏にも伝わって居た様だが、対策を練るには余りにも猶予が無かったらしく、吉良氏は僅か三週間で降伏してきた。


 現当主の隠居と人質の差し出し、領土の変更を条件にそれを認めた親父は、現地に警備兵という名の七百人もの戦乱に巻き込んでしまった農民達を、新天地としてそこに置いて、本山氏攻めを続行した。


 無論、西園寺氏と吉良氏の将兵は最前線に配備して、損傷度外視で迅速な攻めを行っている。


 どうしても欲しいといった土佐郡は、名目上俺の土地になり、西園寺十五将や一条殿衆の若い跡継ぎ達を率いて領地経営に励んでいる。


 雇った山師達は、大川村っぽい所で白滝鉱山を探し回っている。


 中々当てられない様で、まだ若い俺の直臣達は憤りを感じている様だ。


 気長に待とうぜ?



 


 厳島の戦いについてだが、


毛利方が4000人、陶側が30000人だろ。


俺が今回率いて行く兵の数は僅か600人だし……。


 俺、生きて帰れるのかな。


それに、一条家側の総大将は本当に俺で良いのか?


しかも、まだ、こんな若造だぜ?


 自信が……否、しかし、初陣だからな。


少しナイーブになってしまっていな。


 緊張し過ぎているのだろう。



なんといっても、史実通りに進めば、


俺が味方する毛利側は、


約八倍の差を地形嵌めして倒しているし、大丈夫だろう。


 毛呂智舟、滅茶堅いし。


 この時代、滅多な事では大破しませんよね。


 村上通康とも書状を交換しているし、何か有れば彼を頼ろう。


うん。それでいい。大丈夫だ。




 秋になった。


 未来を知っている俺ならば分かるが、毛利の、"ミスって厳島にへっぽこ城を築城しちまったぜ"発言は、凄まじい煽りっぷりだ。


 こりゃ、簡単に乗っちまうだろ。


 流石、毛利元就。


 三本の矢を束ね合わせた所で乗り越えっこ無い、高く大きく聳え立つ壁だな。


 今、何となく思ってしまったのだが、北は毛利元就が率いる毛利家の最盛期、東も三好長慶率いる三好家の最盛期時代。


 え?何この状況。後、5年遅く生まれて来たらよかったのだろうか?


 親父の代で何とか三好家に対抗しうる領土と国力を付けたいな。


 毛利?逆らう気有りませんよ。


 秀吉攻めてくるまで待機ですね。


 本山氏の当主死亡とその後の内部対立に漬け込んだ我等一条家は、尋常ではないスピードで城を尽く落として行った。


 とは言え、本山氏は土佐で一番の勢力を誇る大名。


 完全に征服させるのにまだ時間が掛かりそうだ。


 戦地にいる親父にも、毛利元就の厳島煽り策戦は聞き及んで居るらしく、お前の陰陽道、精度高過ぎィィィとのお褒めの御言葉と同時に、俺を毛利の援軍として送る事を正式に許可したと云う書状が届いて来たのだ。


「良しっ!皆の者!」


 喜多郡の辺りにある肱川。


 この川は非常に長くて大きい。


 瀬戸内海にも繋がっている。


 地球規模で考えると、たった400年で地形はそう簡単には変わらないとは思ったが、念の為、調べておいたから問題無い。


「戦支度じゃッッ!!!」


「「「ハッッッ!!!!」」」



 と、云う訳で戦支度をした訳ですが、いきなり攻め込む為に必要な"義"が無いので無理矢理作る。


「公高」


「はっ」


 彼の名は、西園寺公高。


 西園寺充実の嗣子である。


 俺の策した西園寺・宇都宮攻めが成功した為、史実とは異なって生き延びた武士だ。


 史実では、西園寺氏と宇都宮氏が、領土をめぐって、1556年9月に争い、城代から報を受けた公高は、急遽狩猟の場から駆けつけ、飛鳥城に来襲した豊綱の軍と得意の槍を持って奮戦するも、敵の矢を受け19歳で討死している。


 血筋の良い名門西園寺の優秀な子で、槍働きも出来ると云うクオリティ。


 俺は、そんな人材が欲しかったのだ。


「朝廷に御挨拶に伺う用意をせよ。柚子の香りがする高級石鹸等を毛呂智舟の積荷に追加せよ」


「はっ!」


「丁重に扱えよ。完璧な贈り物に仕上げよ。さすれば、そなたに50の兵を預けてやる」


「有難くッッ!!!」


 彼は丁度18歳。


 槍働きとかしたい血気盛んな時期だから、見事に釣れたな。


 彼を良い様に扱ったとは言え、これで完璧に大義を得られた。


 積荷と弾丸・火薬の再確認をしたら出陣するか。


 初陣だ、張り切って行こう。


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