初陣許可申請
すみません、投稿するの忘れてた話です!
読んでください!じゃないと、うつの……
1553年、俺は10歳になった。今年になる迄は、俺が評定衆に口裏を合わせるようにお願いし、何とか西園寺氏との戦争を回避し続けた。統治者としては、しっかり国力を付けるのが一番必要な事だからね。民の者達も戦争はしたく無い筈。両者痛み分けの血みどろ合戦なんて真っ平御免だ。それが去年までの方針だった。でも、今は、
「一条式爆薬法(硝石丘法)と、四万十川での砂鉄採取、石炭の利用による製鉄が成功し、毛呂智舟(ケッチ船)と、数千挺の種子島と三十七台の石火矢の製造も完了致しました。領内の開発も成功し米の生産高も上がっております。昨年、南蛮から仕入れました玉蜀黍も兵糧の役割を果たすでしょう。今こそ、好機!何卒、私の元服と初陣の許可を!」
一条式爆薬法とか、毛呂智舟とか、兎に角ネーミングセンスが無さ過ぎる親父に対して、俺は全身全霊の五体投地をする。西園寺攻めは親父もしたいだろうから認めるとは思うんだが、俺の初陣は認めないだろうな。土井さんを初めとする家臣団の皆さんも難色を示していたし。
「うーむ……、土井!どう思う」
取り敢えず土井さんに振るのが、最近の親父の癖だな。まぁ、忠臣だから安心出来るんだけど。
「はっ!若様の初陣は御止めになられた方が良いかと愚考致します。ですが、西園寺攻めは殿の悲願。我等、家臣一同賛成致します。伊予国南部の宇和郡攻めとなれば、宇都宮豊綱との連携が必須でしょう。同盟関係に成るべきかと」
「うむ、そうじゃな」
と、納得している親父。西園寺攻めが出来ると嬉しそうだ。でも、俺の初陣は認めてくれなさそう。
親父、お前もか!
「お待ち下さい!父上!喩え、私が元服したとしても、家督を継ぐ訳でも御座いませんし、口煩い京の一条房道殿は何も言ってや来ませんよ。それに、房道様も三年後の冬に亡くなるかと。別段、もっと早くに天竺に逝って頂く事も可能ですが」
「だが、断るッッ!!!」
な、なんだってー。
「確かにお前は優秀だ。だがな、戦場に出れば死ぬかも知れない。それは我が一条家の優秀な跡継ぎを失い、折角、ここまで栄えた一条家を潰す事となる。故に、十五になるまで元服も初陣もみとめぬ!分かったか!」
「……はっ」
土井さんには、前に馬防柵置いたり、野伏したりして、更に、鉄砲隊を密集して最大限の戦闘力を発揮出来る様に使えと言っておいたから大丈夫かな。取り敢えず、親父が西園寺氏を滅ぼせば歴史が変わる。瀬戸内海を得られれば、2年後の厳島の戦いに水兵を派遣できるか。毛呂智舟の実際の戦闘力はどんなものだったか、戦後、親父か土井さんに詳しく聞くか。
城内の人々が眠りに落ちた頃、儂は自室で腕を組んで考えていた。そして、不意に呟いた。
「あれで良かったのか?」
和紙は考えた。彼奴が産まれてからのこの十年で領内の発展が著しい。彼奴が開発した器械は大抵、役に立つ物ばかりである。いつの間にか陰陽道も習得しており、儂の命も救ってくれた。
「影丸、そこに居るのじゃろう。降りて来い」
影丸は、儂の部屋の天井に潜んでおる、儂の素破。彼奴が使っている素破とも仲が良く、彼奴の事も偶に見守ってくれておるようじゃ。彼奴は、素破のことをニンジャと呼んでおるらしいがのぅ。
「はっ」
音も立てず天井から降りてきた影丸は儂の前に平伏する。もう、影丸も四十になるのか。父の代から従ってくれておる儂の忠臣の一人じゃ。
「彼奴は何をしておる?」
「幸せそうに爆睡されております」
「そうか……」
幾ら優秀とは云え、まだ子供か。儂は考え過ぎて居るのかのぅ。
「して、影丸」
「はっ」
「一条房道殿の周りに彼奴の素破が本当に居るのか?」
影丸は微苦笑しつつ、首を横に振った。
「評定での発言はハッタリでしょう。ですが、若様の占術は良く当たります。本当に三年後の冬には亡くなるのでは無いでしょうか」
「左様か……」
儂にハッタリを使うとは彼奴も儂に似てきたのかのう。儂はフッと笑い、彼奴を見習って爆睡した。