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俺は謹慎処分を受けている

 

「どれだけ人生を美的に享楽しても其れは即ち絶望に過ぎないって、キルケゴールさんも言ってるし、俺だって何がなんでも生きろとは言わないけど、せめて元服する迄は待って欲しいなぁ」


 1549年の正月は、先日、盛大に祝い終えてしまった。


 何時なのかは分からないので出来るだけ親父にあの事を言わねばならない。


 今年は、親父、アンタが自害した年なんだと、云う事を。


 取り敢えず、鎌を掛けてみたが何の事か全く分かってなさそうだ。


「無礼をお許し下さい」


 親父は、嗚呼と首を捻りながら言った。


 刹那、俺は吼える。


「親父ッッ!!!心して聞いて欲しい。実は、正月に今年の運勢を占ったら……親父、アンタが自害するって出たんだよ………」


 いきなり、親父と怒鳴った時にビクっとなり、自害する事も伝えると、更にビクっとなった。


 だが、親父の顔にバレた、とか、そういった表情は見受けられない。


 これはもしかして?


「だから、俺は親父にお願い事が有るんだ。京に居る一条の本家と仲良くして欲しいんだ。暗殺されない様に気を付けて欲しい」


 唖然とする親父を部屋に残し、俺は、


「新年早々、不吉な話をして申し訳ございません!」


 と、一礼して出て行った。


 その後、依岡さんが連れてきた忍者には、親父の警護と、暗殺者の排除を頼み、土井さんには、


「暫くの間、謹慎しますと、御父上にお伝え下さい」


 とだけ言い、自室でゴロゴロする日々を過ごした。俺の部屋の畳は凄いんだぜ。


 昔、ってか、転生前だけど、どっかのお城に行った時に、凄まじい密度で編まれた畳を自室の畳として採用している城主が居たんだ。


 その畳を使う理由として、凄まじい密度の畳はイザという時にパカッて外して盾に出来るからだそうだ。


 無論、俺の部屋だけで無く、親父の部屋の畳と、評定をする所の畳も全部それに変えた。


 襲われた時の生存率を上げる為には、多少金が掛かろうが安いもんだろ。




さてさて。それでだな、俺は謹慎中に紡績機作る!なんて、息巻いて言い出したが、今は石鹸作りに励んでいる。


 紡績機?後からやるよ。なんせ、一年もあるんだからな。


 俺TUEEEE系や、中世ヨーロッパっぽい冒険者ギルド直行系、スライムとか骸骨とかなっちゃった系のラノベだけで無く、歴史物のIF小説も息を吸うが如く読み漁ったので、石鹸と黒色火薬、千歯こき等の農具の作り方は暗記してある。


 無論、智力補正が働いており、、w〇k〇pedia様で調べた配合率や、炭鉱の場所まで事細かに覚えているがな。


 転生ボーナス神ですわ。


 まぁ、そのお陰で、紡績機なんていう大口叩いていられる訳でして。


 無論、紡績機についての記憶も有るゾぃ。


 ええと、先ずは、ジョン・ケイさんが飛び杼を開発して綿糸が不足するんだよな。


 で、綿糸を早く紡ぐ為に、ハーグリーヴスが多軸紡績機を開発した。


 その後、アークライトさんが水力紡績機を開発したから、綿糸余っちゃって織物機械の改良が望まれたから、カートライトさんが力織機を作ったんだよな。


 世界史の資料集に大体バクっと理解出来る絵が載っていたので、何となくそれを思い出しながら設計図を書いた。


 沢山の鍛冶師の為に同じ絵を何回も描くのは怠いな。


 あっ、そうだ。印刷機作ろう。



 まずは、活版印刷。


 次に、平版印刷。


 これの技術を応用し、輪転印刷機の詳細まで理解した。


 輪転印刷機とは、円筒型の版胴と圧胴の間に、巻取紙を挟んで連続的に印刷する機械である。

 

 でも、これを作った所で、この時代、紙は高いし、しかも和紙だからな。


 土佐は檀紙が有名だけど。


 あれ、現存する和紙の中で最古なんだよね。確か。


 しかも、インクじゃなくて墨だし。

 

 取り敢えず、俺が付けている日記にだけは物凄く詳細に書いておこう。


 後世の人に期待だな。





【一条房基視点】



「で、奴は今、自主的に謹慎して居るのか」


 あの後、儂は土井からの報告を受けおった。


「はっ!紡績機と力織機とやらの開発に取り組むそうです。それと、此方を渡せと」


 儂は、土井が懐から出した手紙を受け取り、読み上げる。


「えぇ……御父上様、恐らく水車の歯の消耗度合いについて御悩みになられるかも知れませぬので、職人に歯の数は素数の方が良いとお伝え下さい。素数は、一とその数以外には約数を持たないもので、恋人の数で御座います。具体的には十一や三十七、千二十三等ですね……じゃとよ。彼奴の謹慎はただ開発について考える時間が欲しいだけでは無いのか?」


「恐らくそうでありましょう……若様の為に、房基様も少しはお怒りになっておられる様に装って頂き……」


「分かっておる。彼奴が一年も考え抜いた農具は余程凄いものに違いない。儂が協力するのは当たり前じゃろう」


「はっ」


 土井も安堵した顔じゃ。


 彼奴に振り回されて大変じゃのう。


 まぁ、良い。


 ボーセキッキィ等と云う農具の開発の邪魔をせぬ様、家臣共に言い聞かせておくとするか。


「ん?…これは、確か、ピィエスと読むんじゃったな。ピィエス、紡績機と力織機は農具じゃないですよ。結構大型の機械なので木材の用意をお願いしますね……じゃとぉ?」


 フンっ。


 良く分からん物を作りおって。


 儂はもう知らんぞ。


「土井!木材を何とかせい」


「……はぁ」


 この日から土井さんは忙殺された様だ。



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