家臣団
1548年、6歳なう。
この前、正月があり、家臣の皆さんの多くが集まった。
俺もコミュニケーションを取る為、オジサン達の輪の中に溶け込んでいた。
【魅了】と【礼儀作法】スキルに感謝だな。
皆からの高い評価も得られ、仲良くなれたと思う。
家臣団の中で、特に仲良くなれたのは以下の三人だ。
筆頭家老、土井宗珊。
智勇兼備の忠臣。
史実では、俺のせいで滅びゆく一条家を必死に支え続けた忠臣中の忠臣。
俺は心に誓っているのだ。
無罪の罪で、絶対に処刑させんからな、と。
因みに、土井さんは俺の兵法の先生だ。
依岡左京進。
1582年に長宗我部元親の命令を受け、隠密として京都情勢を探り、本能寺の変をいち早く伝えた男。
でも、彼、元は土佐一条家の家臣なんだよね。
しかも、俺を追い出した家老達に刃向かってくれている忠臣なんですわ。
因みに、今、依岡さんは館には居ない。
俺がお願いして、猿田洞窟に忍者や隠密剣士とか居ないか調べて貰っている。
彼には、登用と同時にそこでの独特な技術を学ぶ様に言い付けている。
江戸時代には、猿田洞窟に忍者が居るのは確定しているんだけどなぁ……居ないんだろうなぁ。
微かな希望に縋り、手柄を上げれば武士に取り立てると云う当時では破格の条件を付けている。
忍者欲しいし。
俺の個人的な浪漫も含まれてるけどね。
無論、四国なのでお遍路さんも使いますよ。
源康政。
醍醐源氏の血筋を引く高貴な家臣。
史実では、俺が追放されても一緒に付いて来て、行動を共にする位の忠臣。
今は、椎茸栽培と、硝石丘法の実践をして貰っている。
俺からのお願いと云う形で一緒に親父の元に向かって献策し、力説して許可を貰った政策を彼等にやって貰う。
椎茸栽培なんかは、高額な費用の掛かるが見返りがデカい、ある種の博打なので親父も躊躇っていたが、俺が「責任を取る」と言って何とか説得出来た……と思ってたんだが、やはり、5歳のガキに責任なんて取れる訳が無い。それに嫡男がそれで切腹なんて有り得ない。
千歯こきや水車等の道具開発の実績が早くも評価されているのだろうと、思ったけれど、所詮は5歳のガキの発想。多額の金額を賭けた博打に進める事なんて出来ない。結局は、源康政が俺の為に命賭けて親父に断行する様に言ってくれたみたいだ。くそぉ……無力だ。
ただ、塩に関しては親父自身が興味津々であった為、親父は良く分からんがやってみる!と、意気込み、実際、成功し過ぎてあんぐりしていた。
まぁ、そりゃそうだろう。流下式塩田と枝条架式濃縮装置の組合せなんかは、江戸の入浜式塩田は潮の満ち干きの問題上、瀬戸内海でしか利用が難しく、一条家が太平洋しか持っていない事を理由に、時代を大きく通り越して1950年代の技術だ。しかも、揚浜式の完全上位互換である入浜式塩田の三倍の効率と歴史が証明してくれている方法だからな。親父の想像を遥かに通り越した生産力だったに違いない。
勿論、この時代で再現出来るものしか選んでは居ないのだが、イオン交換膜法製塩も知っている事だけは、俺の日記に書いておいた。後世の奴も驚くだろうな。
智力がぶっ飛んでるお陰で、最近はどんどん記憶が蘇ってくる。四万十川の柚子ポン酢を湯豆腐につけて食ってたなとか、クイズ番組でピーマン生産量第3位が高知県だったなとかどうでも良い記憶ばっかだがな。
無論、柚子植えようぜって親父には言ったし、ピーマン以外に獅子唐と茄子も日本一の生産量を誇る事も思い出したので、茄子植えようぜとも言った。
そういや余談だが、女の子が茄子に乗って空飛ぶゲーム最後までクリアせずに途中で辞めちまったな。スマホで簡単にマクロ組むのってどうするんだろう。戦国時代にスマホ無いから知らなくても全く困らないけど。
後、幡多郡に鉱山があると云う大切な事も思い出したんだ。それで、俺が散々駄々を捏ねて調べて貰った結果、田野口鉱山を見つけた。勿論、言い出しっぺの俺も尽力した。【陰陽術】スキルを使ったのだ。方違え的な要領で場所を何となく指定したお陰で短期間で見つかった。最後は人海戦術。正確無比な結果が分からない占いなんて当てにならねぇな。
ただ、親父は、俺が独学で陰陽道を納めていると勝手に良い感じで勘違いしてくれているので、褒めてくれた。陰陽道で場所を当てれたのは名門一条家の血筋のお陰ですと、笑って誤魔化しておこう。
ついでとばかりに、四万十川付近の伊屋・平野・出口の3ヶ所で、四国有数の埋蔵量を誇る海砂鉄を採掘する様にと言った。
また、本川鉱山が土佐郡に、安居鉱山と名野川鉱山が吾川郡に、庵谷鉱山が長岡郡にあるので、本山氏を攻め滅ぼしましょうとも言っておいた。
俺の初陣は多分1555年二月対本山氏戦だろうな。
因みに、今まで挙げた全ての鉱山は、幕藩体制の頃から採掘が行われた筈だから、またもや時代を先駆していくstyleだぜ。
土佐平定して西園寺家を滅ぼしたら金も採れる名野川鉱山を、四国平定したら別子銅山も掘るか。
ってか、この別子銅山が本当に凄いんだ。史実では1690年に発見され近代化を推し進めた住友財閥の礎となった位、凄まじい量の銅が眠っている。
なんと、70万トンもあるらしい。
でも、場所が場所なんだよな。
丁度、四国の全ての国の境目付近にあるんだわ。
絶対にこれを巡って戦争なる。
尼子家の例も有るだろ。
鉱山は両刃の剣だぜ。
まぁ兎も角、これで鉄、硝石に関する問題は消えた。
木炭は、新田開発を推し進め、切り開いた山から運ばせればいいや。
恐らくこれが最初で最後の機会だっただろう大友家の祖父との交渉を終え、鉄砲鍛冶師を二人も領内に招き入れれたので、彼等に作って貰いつつ、人材の育成もお願いしている。
こうして、一条家の四国統一の為に、鉄砲の大量生産を軌道に乗せたのだ。
その為、製鉄業にも改革を齎さなければならない。
鉄鉱石から鉄を取り出す高炉法とスクラップから鉄を再生する電炉法があるが、今は取り敢えず高炉法を変える。
と、言っても、木炭では無く、石炭を利用する事を奨めるだけだが。
無論、これは明治以降の人間から見れば頭おかしいと言われるだろう。
何故なら、コークスを製造できる石炭は石炭の中の極一部である粘結炭(原料炭)だけであり、資源メジャーによる原料炭鉱山の買占めの為、単年度で原料炭価格が2倍に上昇するなどの大きなコスト上昇が要因となっているからだ。
現代でやれば金が馬鹿みたいに掛かる。
但し、今は戦国時代。
皆、コークスは知らないし、製鉄に石炭では無く木炭を利用しているのだ。
そんな価格上昇なんてする訳が無い。
実際、ある程度の価格だろうと勝手に先入観が働き、覚悟していたのだが、拍子抜けする位、安かった。
無論、日本刀の礎である、永代たたら法は失くすつもりは無い。
近代化の波と古の文化の融和政策は行うよ?
俺は、効率化が完璧でそれが全てなんて思わないから。