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会議は踊る

男性作家の女の子キャラって、理想像に成りやすいっスね


1565年、山城国。三条西家の屋敷内の某所にて。


「宗珊殿、控えられよ」


西園寺公高の最後通牒を無視した土井宗珊は、真っ直ぐに俺を見て、静かに、だが、ハッキリとした口調で、


若様・・、此は如何な事でありましょうか?」


と、聞いてきた。


無論、奥の上座にドッシリと座って、宗珊を見下ろしている俺は何も答えない。チラっと西園寺公高を見遣るだけだ。


「無礼者がっ!殿の御前で有るぞ!控えよッッ!!!」


西園寺公高の怒鳴り声が響く中、俺はこうやって出来るだけ時間を稼ぐべしと、心に誓っていた。


さすれば、小少将から良い返事が聞こえるに違いない。と、云うか、それを信じるしかないのだ。


実際、俺に敵対する……俺の徴兵制によって己の地位が危うい武士達は、親父を神輿に反乱を起こしている。


未だ、親父の部下達も抑えている為、小規模だが、何れ戦争が起こるだろう。


だが、それは安心して良い。西南戦争は新政府軍が勝利している。歴史が証明してくれているからな。いざとなったら加藤清正の城に逃げ込もう(白目)


大体、海外とこの時期に総力戦をして、万国共通語を英語から日本語にしようと画策している俺には圧倒的に時間が足らないのだ。


本当は2歳の頃に天下統一して、今頃はヨーロッパ諸国からタコ殴りにされながらも各個撃破してナポレオンの登場を阻止するつもりだったのに。


世の中そんなに上手くいかないものだと良くわかる。案外、日本は広かった。この時代は北海道も沖縄も日本じゃ無いのにな。アレキサンダー王とか、チンギス・ハーンは天才だよな。


一代で、たった一代の僅かばかりの年数で、世界帝国を築き上げた彼等を知っているが故に、俺はよく自己嫌悪に陥る。


所詮、転生者は未来を知っていると云うズルと、転生ボーナスで貰える何らしかの特技で成り上がる異端児イレギュラーであって、麒麟児でも世界覇者の器でも無いのよ。


今の俺に天下人の器が有るかと、聞かれれば、絶対に否だろう。


四国がギリギリ収まる器の分際で、調子に乗って近畿に出たから骨肉の争いに成るんだよ。


親父を失って、一番泣いて、悲しんで、苦しんで、困って、嘆いて、損をするのは俺なのにな。


何時の間にか泣いていた様だ。


俺の嗚咽が静寂の中に響く。


西園寺公高も土井宗珊も分かって居たのだろう。両者、俯き加減だ。


「宗珊、お主からも言ってくれぬか。麿とて実の父を殺しとう無いのじゃ。其れに、大友や織田がこの機を見逃す訳が無い。もう、帝の兵となってしまった麿には後に退けないのじゃ」


やべぇ。最近、京都の御公卿様ばかりと話していたからマロマロノジャノジャ言ってまう。


まぁ、実は、戦国乱世に対応しつつある俺のメンタルは、幸か不幸か、一瞬で回復してしまい、この様などうでも良い事を考えられる位、余裕があるんですけどね。


問題の大友宗麟は間違え無く敵対するでしょう。元々期待してませんし。


だから、播磨国を無理矢理寝返らせる為に画策したんですよ。暫くの間は安泰。小寺官兵衛が盾になってくれるでしょう。



もう一つの問題である"血税"政策に関して我が軍勢には、全く影響が無い。


理由として、民間……士農工商問わずの徴兵は俺が軍団を持ってから直ぐに始めているからだ。丁度、逆賊陶晴賢討伐時代の直後だな。


俺の身分制度否定・能力主義推奨の思考は軍勢内に浸透している。


群を尊ぶ為、一番槍システムは無いし、固定給による常備兵でボーナスは余り無い。


因みに、西園寺公高君や源康政等は元帥閣下だな。


俺は……しょ、書記長?!まぁ、それでも良いや。同志、西園寺よ!的な?


赤色を真似て、少し可笑しくなって、涙を吹き飛ばす様に少し笑った後、俺は宗珊に頼んだ。


「一刻も早く、父上に隠居を。我等が、親父と一緒に築き上げた土佐一条家最大支配領域を大友宗麟にかすみ取られぬ様に!

もう、我には帝以外に上の存在があっては成らぬのだ。お主とて分かっておろう。我だけでない。これは、帝の権威の為じゃ。我は父上を朝敵にしとうない」


「………………」


俺は、沈黙を貫く宗珊に叫んだ。


「宗珊ッッ!!!腹を決めよ!」


ずっと黙りを決め込む宗珊。


俺はもう疲れた。後は西園寺公高に任せるわ。


俺は奥の部屋に居る嫁さんの元へ向かった。なんか最近、病んデレ化してるけど、そこもまた可愛いんだよなと、思いつつ、膝枕して貰うのだ。オンとオフの切り替えは大事です。うん。


親父が小少将に堕とされるか、俺が嫁さんに堕ちるか、どちらが早いか勝負だぜ!


「……って、いやいや、あかんがな。宗珊、もっかい話そうや」


危うく史実以上に酷い、謀反没落コースに足を踏み入れかけた俺は、何とか思い留まって現実に目を向けた。


まず、俺は対大友戦について物凄く甘く考えている。


次に、我等山城一条家?に、土佐一条家・大友・織田・浅井・朝倉と、三正面作戦を行う戦力がある筈が無い。


最後に、最近、北畠具教殿の周りが怪しい動きをしているらしい。


これ、詰むんちゃいます?


「西園寺公高!」


「はっ!」


「留守を頼む」



俺は、久々に土佐に帰った。






昨年の阿喜多様の出奔騒動を切っ掛けに、私と旦那様の仲は少し険悪になりました。


旦那様は、御自身が、じぇんだあふりいと、呼ばれる環境を、創り出そうとされている女・子供に優しい方でしたが、戦場や、その延長線である陣に女が居る事を良く思わない方だと、あの時は思いました。


常日頃から愛されている妹、阿喜多様を、怒鳴り散らし、自害に追い込みかけたり、有無を言わさず出て行かせたりしましたから。


勿論、私にもその矛先は向きましたとも。実家に帰れと、暗に縁を切ると言っているものですよね。


あの時、私は怒りや憎しみと云うより、呆気に取られました。旦那様の口からそんな言葉が出るなんて、と。



何時も旦那様の頭上に居る影丸さんが、阿喜多様が御義父様である房基様の所へ行こうとされるや否や、突如として現れ、害したく無い故、立ち去る様にと仰られました。


この時に、旦那様は阿喜多様や私を殺そうとしているのだと本気で恐怖を感じました。


ですが、現実は違いました。

少なくとも、私だけは。


阿喜多様は兎も角、私は巻き込まれただけで、私に罪は無いと旦那様は思っておられたのです。


それに、何時、敵が攻めて来るか分からない戦地、特に狙われやすい本陣に、ひ弱な私達女子が居れば危ういと心配されていた様です。


ただ、旦那様は立場上、出奔した妹にその様な優しい言葉を掛ける事が許されない為に、影丸さんを、北畠家や京の実家に戻るまでの道中の安全確保の為に遣わしたとの事です。


これは影丸さんが言っていた事ですので、果たして旦那様が考えておられる事とは異なるかも知れませぬが、何時も私を気遣って下さる旦那様ならば十分有り得る事です。


それから、私が京の実家に帰るや否や、女房役から、旦那様からの書状と贈り物を預かっていると、好々爺の様にちょっかいを掛けてきました。もう、恥ずかしいです。


贈り物は、せえらあふくぅと、呼ばれる異国の衣で、月に代わって旦那をお仕置きする際に使うそうです。


要は、夜這いの際に着ておけとの事ですね。相変わらず、旦那様も純粋であられます。甘えん坊ですね、フフッ。



書状の内容は、謝罪でした。哀しみに明け暮れた和歌も添えられて有りました。何だか、此方が悪い事をした気分です。ごめんなさい…………



その後、旦那様の言い付け通り、旦那様が上洛された時の準備を私ながらに進めました。


屋敷の畳は旦那様が愛用されている硬くて重い物に替えたり、牛車の装飾を整えたり、甘い菓子を仕入れたり頑張りました。


後、旦那様が好んで居られる、いけばなを、極める為、茶室に篭っていたら、土佐から千利休様が来て下さいました。


私の必死の背中を見兼ねた父上が伝えたみたいです。少しは息抜き……では無く、旦那様の為に茶を学べとの事ですね。


最近は、利休様に師事している私の事を、何故か、聞き付けた堺の商人達がよく屋敷に訪れます。礼儀作法は物凄く良く、話も面白いのですが、何分、身分の差が有り過ぎる故、交流して良いのかと、私は悩みました。


父上に相談したら、旦那様に聞くべしと、仰られたので書状を書きますと、旦那様は、


津田宗及殿と今井宗久殿は絶対に抑えろと、


好意的と云うよりか熱烈歓迎だったので、父上と共に私も驚きました。


利休様に、旦那様からの指示を伝えると、此方も熱心に旦那様を褒め称えました。


何でも、その二人は、屋敷に来る商人の中でも格別素晴らしい茶人だと云うのです。


旦那様は何故、会ってもいないのにも関わらず、分かるのでしょうか。本当に不思議です。



先日、旦那様が帰って来ると、千利休様・津田宗及様・今井宗久様の三名を主賓とし、実家で交歓茶事を開きました。


旦那様の本家であります一条家の方々や、旦那様と仲良くされて居られる二条家・鷹司家やその分家筋の方々を初めとする高貴なる方々が集まり、屋敷に務めている女房や侍女達は物凄く緊張していました。


父上も少し緊張されて居る様で、少し可笑しかったです。


私ですか?私は旦那様の隣で、拙い笑顔を張り付けた人形でしたとも。


あの中で自然体で居られるのは、各々の家の宗家の方々か旦那様位ですよ。


臣下と云う立場を取りながら、対等な者だと思わせてしまう、そんな魅力なんて旦那様しか持ってないです。えへへ、私の自慢の旦那様ですから。


「奥方様、殿からの伝言です」


いつの間にか、私の前に跪く影丸さん。

懐から書状を取り出すと、私に差し出しました。

どうしたのでしょうか?


「あら、旦那様からですね」


成程、実家に帰られるのですね。留守を頼むと


…………私はッッ?!


「うぅ……酷いです」


この日、三条西実枝様が娘を泣かせた書状を焼き捨てやると息巻いた時、"愛してるよ"の文字が浮かび上がったとか。



土佐にて。


「あっ……今孔明や信長と同じ風に炙り形式にしてもうた」


「何じゃ?」


「すみません、父上。何も無いです。いや、別に何も無い事は無いんですけどね」


とりま、隠居しろ。反乱を起こさん限り、命は取らんから!そう伝えられればどれだけ楽か。会議は踊る。そんな言葉が蘇る様な会談であった。


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