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鄒氏(フラグ)


俺が盾にし過ぎたせいか、本願寺勢力が勝手に単独で三好氏と停戦協定を結んだ事を切っ掛けに、続々と他家が戦線離脱し、足利将軍家もやむを得ない形で停戦に応じた。


この事により、我等一条家の四国統一は公式のものとなり、三好勢力は摂津を拠点に活動する小大名と化した。


今は上洛すべき時では無いと、親父に説いた俺は、内政に重点を置き、常備軍を設置。四国内の全ての関所を撤廃し、御遍路以外の道も整備に掛かった。


同時に、河という川に製糸場を建設し、空き地にはトウモロコシやジャガイモ、サツマイモや桑の木を植えていく。

別子銅山の発掘も進み、そこから出た銅で莫大な建設費を賄っている。都市部では学校を設立し、識字率上昇に貢献している。



そして、時は来た。1560年5月。雨の日の桶狭間で今川義元討死。この報は、別の形で一条家に影響を与えた。


若様は未来が見える。


そんな根も葉もない噂が飛び交ったのだ。勿論、歴史を知っており、織田氏の情勢がさほど変わって居ないから断言出来たのだが。


それでも、嬉しいものだ。嫁さんからの尊敬の眼差しを浴びるのは。

だって、いつも奇異の目線ばかり浴びるもん。無論、三好とは停戦中なので俺も親父も中村屋敷に居ます。


17歳になった俺は、漸く、嫁さんと夜もイチャ付いている。平成的思想では、俺と嫁さんの年齢的にまだまだ早すぎるが、周りの圧力が凄まじく、俺も嫁さんも耐え切れそうに無いので、吹っ切れたのだ。


YES,Lolita.YES,Touch.ヒャッハー!因みに、この時代は男女ともに平均身長が滅茶苦茶低く、どうしても嫁さんがLolitaキョヌーに成りかねない。俺?転生前と一緒で175cm位ですよ。




御父様は本家から圧力を掛けられたからと、私を土佐へ送り出しました。


土佐一条家と云えば、応仁の乱後に土着した摂関家の庶流の御家。当然、摂関家の分家の又分家の三条西家とは家格が釣り合わないので、一時はどうなるかと思いました。


何故なら、家格はあちらが上で、旦那様はこの婚姻の元凶である関白左大臣様と面識があり、実家も余り強くは言えませんから。


ですが、その予想は大きく裏切られました。色んな意味でです。

例えば、初夜。旦那様は私に、ケッコンユヴィアと云う金銀珠玉が散りばめられた輪っかを下さいました。旦那様も同じものを嵌め、俺が戦場やあの世に行っていても俺は此処に宿ってずっと姫ちゃんを見守っているから安心してくれと、仰いました。

そして、ギュッと私を抱き締めた後に、二年位純潔を守ってくれないか?と、言ってさっさと寝てしまわれました。大切にして下さっているのか、歳上の私の事がお嫌いなのかよく分かりません。


その後も、ギタアと、云う楽器で、ヴォオカロイドとやらや、ゲンソキゴオの歌を歌っていらっしゃったり、ダンスと云われる舞踊をされたり、変な方でした。立花と似たような、でも少し異なるイケバナはとても綺麗で、魅せられました。茶室で練習したのは秘密です。


旦那様の傅役で在られます土井宗珊様は、私をとてもよく気遣って下さり、旦那様が居るのにも関わらず、若は変な方ですからと、仰って私を安心させようとして下さいました。


旦那様も怒る事無く、私に、天才と変人は紙一重なのだと、偉そうに仰いました。


私は堪えきれずに笑って仕舞いましたが、旦那様は、良い笑顔だとはにかんでおられました。本当に変な方です。


旦那様は変な方ですが、凄い方だと私は知っております。

笙や和歌の腕前は達人並なのは、たまに此方にいらっしゃった時に知りました。それ以外の事は、旦那様に聞いても笑って、はぐらかし、何も仰いませんので、土井宗珊様にお聞きしますと、熱弁を奮って下さいました。少し怖かったぐらいです。


何でも、京で流れた噂話は全て正しく、旦那様は、四つの頃から兵法書を読み、素晴らしく画期的な米や農具、機織り機や塩田を次々と開発し、鉱山を位置や人の死期も得意の陰陽道で当ててしまうのだと、云うのです。


幼い頃から読み解いた兵法書を糧に編み出された自分の戦法・戦術が有るらしく、戦は大変御上手で、兵の士気は何時も高く、又、鉄砲や大砲を日ノ本で逸早く使い出した方だそうです。


何でも、自分に飛んで来る鉄砲の弾まで斬り捨てる程、剣術にも優れているだとか。その噂が立つ位、前線で指揮を執る事も珍しいものでは無く、奥様からも下がる様に言って下さいと、言われてしまいました。


私からは余り強く言えませんので、義妹様方に告げ口しておきます。流石、傅役。よく見ておられます。


未だに、よく分からない詞や突拍子も無い発言をするけれども、良い主だと締めくくっておられました。屋根の上や庭の木から咽び泣く声が聞こえるのは気の所為でしょうか?何だか気味が悪いです。





ジャーン……ビーン……


夕方、仕事が終わったから嫁さんの様子を見に、嫁さんの部屋に入ろうとしたが、嫁さんが、興味津々で、ギターの弦を摘んだり、弾いたりしてる姿が襖の隙間から見えて、余りにも可愛過ぎたのでずっと眺める事にした。


何時もは素っ気なく、何それ?みたいな感じでギターを見てたのに、俺が居ない間はこんな事してるのか。


ビーン……ビーン……


ギターからちょっと距離を置いた所に座り、前屈みな姿勢で上体だけギターに近づいている。


着物ってヤバいな。ギリギリのラインで胸を隠している。


因みに、この時代の公卿様方は貧乏なので、五摂家の全ての本家様と、嫁さんの家とそこの本家にむっちゃ寄付した。


独断で土佐一条家の金庫を殆どスッカラカンにしたから、親父や重臣から死ぬ程怒られたが、その日中に別子銅山が見つかったので何とかなった。


次の日には、有り得ない位、銅が取れます!これで一条家も天下一の金持ちに成れます!との、報告がきた時は、親父や重臣達にざまぁと、言ってやったぜ。直後、庭に吊るされました。


ビヨヨヨョョォン……バチン……バチン……


ヤバい、嫁さん、ギターを壊しにかかってる。


筝を弾く為の爪で、ギターに触らないで!それ、ピックとなんか違うと思うよ。


ガガガガガガ……ガガガ……ガガガ……


嫁さん、俺が弾いてる時のを真似して、ギターを抱え込みました。コードとかそういうの知らないもんね。

左手がめっちゃ適当に動いてるんだけど。ってか、音!いつも、俺はそんなヤバい音立ててないがな。


「はい、ストップ。それ以上やっちゃ壊れるからね」


襖を大きく開けてズカズカと部屋に入ると、嫁さんの後ろに回り込んで思いっ切り抱き締める。


相変わらず、良い御香焚いてるな。御香って高いんだよ?まぁ、良い匂いだし、可愛いから許す。是非とも使ってくれ。ん?嫁さん、なんか呟いた。


「ん?なんて?」


「……見てたんですか」


「摘んで弾いてる所らへんから。ギターのコードとか教えようか?」


無言で首を横に振る嫁さん。顔を赤らめて可愛い。


そんな恥じる事じゃねぇと思うんだけどな。

まぁまぁ堂に成ってたと、思うよ?(嫁さん補正)


その後、ギターを放り出して、嫁さんを庭先まで運んで一緒に夕陽を眺めた。嫁さん軽いな。(嫁さん&武力補正)



「今晩はね、牛丼」


「?」


ヤバい。キョトンとした顔を夕陽が照らして芸術的過ぎる。写真記憶、頑張って!


「牛の肉。美味いんだぜ?」


牛の肉と聞いた途端、慌てふためく嫁さん。


この時代、仏教がどうのこうのと、鳥と魚以外の肉に対して五月蝿いからな。因みに、兎は食いたいから羽と数える様にしたらしい。


「俺が本願寺焼いた知ってるだろ?天罰が下るとか散々騒がれたけど、全く影響を受けて無いじゃん?あんなの坊主が喚いてるだけで、心広い仏様は、寺焼いたり、牛の肉食った位で命なんか取らねぇよ」


「で、ですが……」


半泣きの嫁さん、可愛い。美人は笑顔と泣き顔の両方が等しく綺麗と云うが全くその通りだなと頷ける。


「美味いぜ。兵士達もしょっちゅう食ってるが大丈夫だ」


「流石に仏様でも御寺を焼いたら怒りますよ!」


嫁さんが、身体をプルプルさせながら小さく叫んだ。いやぁ、本当に貴族様って躾がされてるな。怒鳴り方まで品があるぜ。


「そっち?」


無言で頷く嫁さん。


「んじゃあ、牛丼は食えるな」


と、俺が呟くと、ハッとした顔で狼狽える嫁さん。可愛い!


数分後。


「美味いだろ?」


俺の質問に、嫁さんは素っ気ない顔で無言で頷くが、めっさ手と口が動いてます。反動形成か! 良し良し。明日は、サーロインステーキだな。


「卵入りってのが最高だよな。スプーン使った方が食いやすいぞ」


本家様にお願いして、俺は左近衛中将に成れました。お陰で、こうやって嫁さんにタメ語で話せてます。


最近、嫁さんはヤバいとマジを覚えました。でも、ギャルの様に連発しません。お淑やかで恥じらいのある、もう日本では絶滅危惧種と化した素晴らしい大和撫子です。


神です。完璧な嫁さんを抱きながら、今夜も楽しく過ごします。松永久秀よりも早くエロ本を書きそうです。もう筆が止まりません。この日記も暫くの間は惚気で埋まるでしょう…………




と、思ったんですが、早速無理でしたね。


翌朝。


「これこれは鎌房殿。戦場では味方に向かう鉄砲の弾を皆、一度に斬り捨てて仕舞われたとか。是非とも御手合わせお願いしたいものですなぁ」


と、上泉信綱殿。


史実であれば、1558年に義輝の前で兵法を披露する筈でしたが、俺が土佐に呼んだので、俺の剣術指南をしてくれている。たまにふらっとどっかに行ってる事もあるけど。


「あはは……それは土井が流した噂話に過ぎません」


「いやいや、御謙遜を。火の無い所に煙は立たぬと言いますからな。北の方様から色々お聞きしましたぞ」


えっ……何でも聞いてくれる姫ちゃんは誰にでも何でも話すのか……


姫ちゃんに裏切られた悲しみより、恐怖が先行した俺は、背を向け全力疾走したが、いつの間にか肩を掴まれていた。


……ニヤリッ…………ニタァァァ……


そんな音無き嗤いをする上泉信綱殿。


あっ、これ死んだわ。


朝からハードモードなので日記が血と涙に染まるでしょう。全然、見切れないからね。


鉄砲の弾より速くて何も感じさせず軌道も変わる。それが剣聖の抜刀術。全く歯が立たずフルボッコにされますよ。陰陽とか占術使わなくても分かる。






「姫ちゃん……」


旦那様の身体、傷だらけです。一体どうなさったのでしょうか。


「はい」


「痛いです」


分かりますが、何も出来ません。こういう時、妻として何をすれば良いのでしょう。


「上泉殿に、俺が鉄砲の弾斬ったとか言っちゃったの?」


「はい!旦那様の御活躍振りを……」


私が言い切る前に、旦那様は物凄く怖い顔をされて、天井を刀で突かれました。

すると、全身黒ずくめの男が転がり落ちたと思いきや、直ぐに旦那様に平伏しました。


「お前さぁ?何で止めへんかったん?何の為に此処に居るんか分かっとる?」


「申し訳御座いません!」


「後で俺の部屋来いよ。ええな?」


「はっ!」


そして、鬼の形相の旦那様は、黒ずくめの男に目で部屋の外に出て行かすと、次は庭に行き、桜の大木を蹴破り、何故かそこから出てきた男と似た様なやり取りをされました。


その後、あからさまな作り笑いで、私の隣に座った後、少し強引に私を引き寄せて抱き締めながら、



「今度から俺の武功について、剣豪達に言っちゃいかんよ」


と、耳元で囁かれました。う〜ん、何故でしょうか。

やはり、旦那様は、女の私が戦について口出しする事を疎んでおられるのでしょう。


直後、鄒氏かよと、云う謎の呟きは無視しておきます。


だって……鄒氏は曹操の妾でしたよね…………。


え?鄒氏ですよ?(フラグ)

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