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上洛!早っ!

申し訳御座いませぬ。たった今、誤字発見っ!

 

 1555年10月。


 俺は大切な望遠鏡を仕舞うと、


「陶晴賢の軍勢が見えたぞ!警戒を怠るなッッ!!!」


 と叫んだ。


 西園寺公高をはじめ、従軍して来た武士達はまだ若く、士気が凄まじく高い。


 即座に、


「オオォッッ!!!」


 と、轟く様な合唱が聞こえる。



「にしても、若様の発明されたヴォーウェンキョーは凄いですね」


 いつの間にか俺の隣に立っていたのは影丸だ。


【危険感知】スキルでは、俺の身に及ぶ"危険"しか感知出来ないからか、武力ステータスが100なのに全く気配を感じられなかった。


 忍者って、絶対、【隠密】とか、【暗視】、【暗殺術】のスキル持ってるよな。


【気配察知】スキル取るか、同業者の忍者を雇わない限り、暗殺を跳ね返せる気がしない。


「正しい発音は、望遠鏡だ」


 ケイ酸塩ガラスの歴史は四千数百年と長いが、望遠鏡の誕生は、1608年。


 オランダのリッペルスハイ氏が特許申請したという記録が最古で、ガラスに比べるとかなり新しい。


 約50年間、望遠鏡技術を独占出来る俺は、その期間、敵から物理的に見つかる心配をせずとも、敵情を調べられる。


 まさに諜報にうってつけなのだ……


 あっ、実際に諜報するのは忍者の影丸達じゃん。


 もしかして、今、影丸が話し掛けたのって、これ欲しいアピールなのか?


「これはまだ一つしか作成出来ていないし、この合戦で扱うのは実験も兼ねているのだ。幸い、たった今、その成果を認める事が出来たから、忍者衆が功を立てれば……否、既に充分働いてくれているな。影丸、コレをやろう。これからも俺の目と成り、耳と成り、俺を支えてくれ」


 俺はそう言って、さり気なく影丸の手を取り、望遠鏡を握らせる。


 忍者ってこんなに優秀なのになんで不遇な扱いを受けているのだろうか。


「っ!……いえ、若様。我等はまだ武功を立てておりませぬ。それに……」


「十二分にも立てているぞ。そなたらが城の見取り図や周囲の地形、兵や武器の種類をしっかりと調べてくれているから、俺も父上に今は攻め時だと進言出来るのだ。受け取ってくれるな?」


 俺は転生者で、能力主義の人間なんだ。


 この時代の常識に囚われずに使える者には厚遇する。


 当たり前だろ?……えっ?


「……ぅぅ……はっ!有難く!この影丸、命に変えましても若様に目と耳に成りましょうぞ!」


 ちょ、たかが望遠鏡あげるだけで、そんな咽び泣かれても。


 やっぱこの時代、主君から物品を賜るってのは、そんなに重きを置く様な事なのだろうか。


 今回は影丸で、しかも、忍者の能力向上アイテムだったから良かったけど、今度からは自重しよう。


「おいおい、涙なんか流してちゃしっかり見れねぇだろ」


「はっ、申し訳御座いません……ぅぅ」


 影丸を見ていると、【和歌知識】スキルさんが自動発動した。


 光源氏が泣いた時、なんかそれが雅な事だと称えられたっつうか、女の子がキャーキャーなったんだって。


 100%顔だろ。


 あと、身分。


 平安時代に転生する事があったら、教養系スキルガチガチに固めて、ステータスは智力と魅力に極振りだな。


 そんなどうでもいい事を考えていたら、棒火矢の射程範囲内に陶晴賢側の水軍を収めたと報告を受けた。


 よし、切り替えや。


 気を引き締めて、戦いの火蓋を斬ったるぜ。




 俺は叫んだ。


「皆の者ッッ!!!陛下への贈り物を守るのだ!逆賊、陶晴賢を討つべしッッ!!!」


「「「おおぉぉッッ!!!」」」


「棒火矢隊、撃てぇ!」


 この時代の日本では有り得ない巨大さを誇る毛呂智舟は、小早船を圧倒的な高低差から狙い撃ちし次々と海の藻屑にしていく。


船上弩弓隊せんじょうどきゅう、放てッッ!!!心に刻んだ夢を未来さえもおーきーざーりにしぃて!」


 バリスタ弾を撃ち終えた兵士の顔がポカンとなっている。


 すまん、調子乗った。



 船上弩弓は、棒火矢だけでは火薬の消費量が半端無くコスパが悪いので、船の左右に二つずつ取り付けた機械仕掛け超大型の弓だ。


 バネに適した、高炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼を使っているので飛距離もまぁまぁある。


 因みに、フランス語で弾性不変、日本語で恒弾性合金、弾性不変鋼という別称で呼ばれるエリンバーの作成にも成功している為、我等一条家の領内では、寸法等の単位を正確に定められている。


 後、ギターも作れた。


 偶に、ボカロ曲を熱唱しながら弾いている。


「俺の前に立つな!我が道を開けろ!さぁ、ドンドン撃ち込め!」


 俺TUEEEEが科学文明のお陰で体験出来ている。


 毛呂智舟、マジ無双。


 多分、この時代の日本の船で毛呂智舟を沈められる物は無いでしょう。


 俺は、総大将らしくどっしりと構える事だけに専念しよう。







「殿っ!一大事で御座います!」


 伝令の兵が毛利元就の前で跪く。


「どうした?」


「とてつもなく大きな化け物が次々と陶側の小早船を沈めてゆきます。水兵達は、海の荒神様が我等に味方してくれていると騒いでおります」


 海の荒神?化け物だと?


 何を血迷った事をこの兵は言っておるのだ。


 今はそれより狭く大軍を一度に叩きつけれない様な場所に陶晴賢を引き込む事が大切なのだ。


「殿っ!一条氏の使者がお見えです」


 何?一条だと。


 河野氏とは手を結んでいるとは云え、本山氏や三好が居る筈。


 何故、この時期に此処に居るのだ。


「忙しい、追い出せ」


「それが、一条鎌房殿御本人であられます」


「何故、跡継ぎが居るのだ!……仕方無い、会おう」


「はっ!」


 毛利元就は部下に案内され、一条鎌房に会った。


 報告によれば僅か12歳。


 元服したてで今回が謎の初陣の筈だ。


 どうせ小童、そう舐め掛かって席に着いた。


 途端に、一条鎌房が声を荒らげてこう言い放った。


「お初にお目にかかる、一条鎌房じゃ。我々は、陛下と本家に献上する品を持って上洛せんとした時、陶晴賢と名乗る逆賊に船を襲われてしまった。これは余りにも無礼極まりない。一条家の、否、陛下を筆頭とする朝廷の名誉の為、そなたらにも出兵を命じる。我等に義有りだ。既に、河野の村上通康は手勢を連れて我等と共に攻める意思を表示している。毛利も朝敵と成りたくなければ今すぐ我等と共に戦場で肩を並べたまえ。小早川隆景にも一刻も馳せ参じる様に伝えるが良い。これは喩え病に伏せていたとしても戦うのが日ノ本の民としての義務であるぞ!以上じゃ」


 毛利元就は呆気に取られ、何も言えぬまま、いそいそと陣から出て行く一条鎌房の背中を眺める事しか出来なかった。



 よしっ!毛利元就のオッサンから何も言われずに帰って来れたぜ。


 これでサラッと戦いの大義を変えてやった為、総大将のポジションを俺に摩り替える事に成功した。


 後は、天皇の伝統的権威が何処まで威力を示すかだな。


 このまま毛利や小早川に三好への牽制をして貰って、京都に行く事も可能じゃないかな?


 転生前は京都人だったから、上洛については、滅茶苦茶願ったり叶ったりの夢物語だったんだが、いきなり見通しが立った。


 なんか京都の本家に対して圧力を掛けれるかもしれないから、房道さんが死ぬ前に一応会っておきたいし、まだ若い従兄弟の内基君とも遊びたい。


 親父にはまだ何も言っていないから、俺が上洛する事を親父に伝える様にと、影丸に頼んでおこう。



 元々、あの毛利元就が考えた地形ハメ出来る決戦の場所だったのもあり、戦は凄まじいスピードで進んで行った。


 毛利水軍や村上水軍に毛呂智舟の脅威をタップリと見せつけて、陶晴賢勢をフルボッコにしてやったぜ。


 戦後、毛利元就や小早川隆景を呼び出して、その武勇を皮肉ったらしく盛大に褒め称えた後、天皇の権威を傘に瀬戸内海の案内役を命じた。


 その際、滅茶苦茶な言い掛かりを付けて毛利元就本人も上洛について来させた。


 小早川隆景には、引き続き陶晴賢を討伐する様に命じ、影丸には宇喜多や尼子を煽る様な文を出させた。


 当たり前でしょ。


 毛利の中国統一はそう簡単にはさせないよ?


 だって、初めて会った時、俺の事、完全に舐め切った態度だったもん。超ムカついたし。




 大阪湾に毛呂智舟を停めて、積荷を次々と降ろしていく。


 船員を二つに分けた。


 贈り物や大量の上納金を京に向けて運ぶ者と、毛呂智舟で土佐の中村屋敷まで安全に帰る者だ。


 俺は前者に付いて行った。


 護衛の為の影丸や、俺と同じく京に親戚の居る血筋の良い西園寺公広も同行者に選ぶ。


 二人とも泣いて喜んでた。



「ポア出来る?」


「はっ!」


 京までの道中、毛利元就に悟られない様、僅かな会話で影丸に指示を出し俺は、何も無かったの様に京に行く事がどれだけ楽しみかと毛利元就に話し掛ける。


 若造だなと、侮って貰いたいものだ。



 そして数日後、影丸から準備が出来たと言われた。


 京に入る前に三好家に扮した一条家の軍勢に襲撃を受けるらしい。


 真夜中の宿で。完璧だな。


 俺はそう思いながら、又、毛利元就にたわいも無い話をした。




 毛利元就、討ち取ったぞ!と、云う声が上がった。刹那、俺は吼えた。


「放てッッ!!!一人も逃がすな!」


 そういって、一条家の火縄銃の銃口は毛利氏の軍勢に向けられる。


「撃てッッ!!!次!撃てッッ!!!」


 三段撃ちを改良して、各作業を只管行い続けるベルコトンベアー式で火縄銃のリロードを行っている。


 これがまた早いこと。


 次々と轟音を上げ、毛利軍を討ち取っていく。


 俺の鉄砲隊はトリガーハッピーなのだ。


「火矢の準備、放て!」


 この時代の建物は殆ど木製。


 燃やしてなんぼなのだ。


 文字通り、兵を炙り出す。


 炎のお陰で、新月の真夜中だと云うのに、敵のランドセルをハッキリと捉えられる。


 鉄砲の弾や、三好氏が良く使う矢が、毛利の兵の背中に吸い込まれてゆく。


 奇襲作戦は、早々と敵の大将を討ち取った為、一方的な勝利に終わった。


「勝鬨を上げろッッ!!!」


「えいえいおおぉぉッッ!!!」


 後日、影丸を呼び、大戦果だなと褒めた後に、毛利元就の首を尼子氏に送る様にと伝えた。






 後奈良天皇に謁見して来た。


 御所の中は凄いね。


 これこそThe京都だわ。


 平安時代から時止まってる。


 最高級石鹸や羽根布団、ビー玉やおはじきの説明をした後、官位貰えそうになったけど辞退しておいた。


 源義経と云う破滅の道を進んだ素晴らしい例が有るからな。


 史実の義経はKYで驕り高ぶる脳筋だったみたいで、美化されたのは、日本人の反官贔屓の気質のせいらしいな。


 でも、親父と従兄弟の内基君の官位については一言添えておいた。


 だって、親父の官位、従三位と阿波権守だぜ?阿波じゃなくて土佐が欲しいよな。


 しかも、阿波って三好氏の所でしょ。


 一体、朝廷は一条家に何をさせたいんだ。


 え?俺?俺は土佐介とか、兵衛佐でいいよ。



 毛利元就が持ってきた貢物は、毛利家の家紋が入っていた為、ちゃっかり一条家名義で渡す訳にもいかず、影丸に頼んで、折角だからと持ってきた唯の・良質・高級石鹸三種類と、幾つかのガラス細工、椎茸等の商品と共に、堺で売り捌く様に指示を出した。


 京都観光する為の軍資金にはなるのでは無いだろうか。


 祇園で遊びたいっ!



 一条本家の屋敷にも何とか入れたが、房道さんは御立腹の御様子で、内基君と遊べる時間が殆ど無かった。


 それでも、転生前は、一人っ子だった俺は、弟の様に可愛い内基の為に、積み木やけん玉、絵本やウクレレ等をプレゼントし、N〇Kのみんな〇歌やおか〇さんといっしょ等で流れる歌をギターで弾き語りしたり、ポンポン船を一緒に作ったりした。


 え?そりゃあ勿論、阿喜多ちゃんや峰子ちゃんにも同じ事してあげてますよ。


 この前のおままごとでは、ワンしか言ってはいけないペット役でしたが何か?


 戦国乱世、内紛とかしてらんねぇしね。


 しかも、めっちゃ可愛いから。


 安芸国虎や伊東義益には渡しませんよ。


 史実の二人は可哀想な運命だったからな。


 阿喜多ちゃんが側室殺し?


 いやいや、こんな可愛い子に浮気する伊東が悪い。


 伊東崩れ、ざまぁ。




 で、内基くんに話戻ると、6歳と云う年頃と貴族だと云う事の影響か、ちょっと小生意気な所が超絶可愛い。


 全力で厨二病ごっこをした時は俺も一緒になってはしゃいでしまったぜ。


 大人気無いなぁ。


 内基の乳母や付き人、お母様には好印象を与えられたと思う。


 定期的に京都に行こう。彼女達からよりもっと多くの好意を得て、内基君と遊ぶのだ。


 その思いを胸に秘めながら泣く泣く土佐に帰る俺だった。



 因みに、幕府には一度と挨拶に行かなかった。


 何故なら、権威が無く血筋も高貴さの欠片も無い足利如きに下げてやる頭なんて無いからだ。


 あんな奴等なんて、三好家と共に破滅の道を進むがいい。


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