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魔境生活  作者: 花黒子
~追放されてきた輩~
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【魔境生活23日目】



 今日から、本格的に魔境にあるという遺跡を探すことに。

 考えてもみてほしい。自分の土地に遺跡があったら、冒険者として宝を探さない訳にはいかないだろう。地主としても自分の買った土地に遺跡なんかあれば、呪われるんじゃないかと思うはずだ。どちらにせよ、探さないとなんだか気持ち悪い。

 まぁ、今のところ探すと行っても、森のなかを虱潰しに歩き回るだけだ。P・Jの手帳には遺跡の入り口や、中の様子、注意書きなどは書いてあるものの、どこにあるかなどは書いていない。


 畑で雑草を抜き、水やりをしてから、白い紙と木炭を持って森に入る。

 鉄の剣は、非常に使い勝手がよく、魔法剣を使えば何でも切れるような気がした。


 剣を振りながら、魔物を倒し、地図に何があるのか、描き込んでいく。

 はっきり言って、全然、進まない。だいたいが密林で、小川が流れていたり、丘があったりするものの、ほとんど変わらないように思える。

 それでも、こういう地味な作業が重要なんだと信じて、地図作り。


「待てよ、そもそも魔境全体すら把握していないんじゃないか」


 地図を描いているものの、どのくらいの大きさの地図になるのかわからない。


 北に山脈があり、東に海があることはわかったが、南はどこまでが自分の土地なのか。魔境には西から入ってきたため、西の境界はわかる。東は海があるので、そこが境界だろう。北は…山脈の向こう側に何があるのか、確認するとして、南は…? 確か、崖になっているのではなかったか、と不動産屋で見た地図を思い出した。

 つまりは崖が出てくるまでは、俺の土地。もしかしたら、ものすごくいい買い物だったかもしれない。


「ワルイカオ」

「チェルも稼いで家賃を払ってくれよな?」

「カオ、ワルイ」

「それは、ちょっとひどいぞ」

 昼過ぎには、森での地図作りを一旦止め、家に帰った。飯を摂ったら南へ向かうことに。


「ウマイカ?」

「うまい!」

「フッフフフフ」


 チェルは自分で作ったパンの感想を聞いてくる。

 焦げたりすると、納得いかない様子で、フォレストラットの家族に食べさせていた。

 フォレストラットは、再び子供を産んで、合計14匹の大所帯になってきた。実験用魔物が増えていく。

 あんまり増えると掃除も面倒なので、木製のケージを作り、オスとメスに分けておいた。メス側では母ラットが悲しそうな鳴き声を発していたが、オス側の父ラットはぐったりとして、眠っていた。メスのほうが性欲は強いのか。

 父ラットにカム実を与えて、外に出る。


 軽く準備運動をしてから足に魔力を纏わせて南へ走る。チェルもちゃんとついてきた。

 ただ、二人とも移動速度が遅くなってしまう。道なき道を行くのだから当たり前だ。行く手を阻むのは、こちらを捕食しようとしてくる魔境の植物群。さすがに、オジギ草にやられるということはなくなったが、巨大なイチョウの葉が水とともに落ちてきたり、腐臭が大量に地面に埋まっていたり、植生が変わって立ち止まることが多くなった。


 植生も変われば魔物も変わり、どう見ても沼周辺より個体のサイズが大きくなっていった。ポイズンスコーピオンという、本来、手のひらサイズであるはずの魔物が、4メートルほどのサイズで現れたりして、かなり戸惑った。しかも、一匹倒すと、仲間が大量に現れたりするものだから、対応するのに時間がかかる。


 それも崖が見えるまで、と考えていたが、未だ崖の影すらもない。


「あれ?」


 どこまで森が続くんだと思っていたら、森を抜けてしまい、唐突に砂漠が始まっていた。

 山脈の方にあった岩石地帯ではなく、完全に砂の砂漠だ。

 この砂漠も俺の土地なのか、などと考えていたら、とんでもなく長いミミズが、宙を舞い、砂漠に潜っていくのが見えた。


 あれが3ヶ月に一度現れる巨大魔物だろうか。

 P・Jの手帳をみると、サンドワームという普通の魔物だそうだ。体長はとんでもなく大きいが、弱い部類にランクされていた。手帳に書いてあるということはやはりこの砂漠も魔境の一部らしい。


「魔境には砂漠もあるのか……」


 すべて俺の土地と考えると、気が重くなってきた。

 一応、サンドワームがこちらにやってきたので、攻撃してみたが、魔法剣でもちょっと表面が傷ついたくらいだった。


「これで、普通って! 勝てる気がしないんですけど」


 正直、P・Jって頭おかしいんじゃないだろうか、と思い始めたのはこの頃だった。

 チェルも水魔法を当てていたが、そもそも砂漠では水魔法の威力が弱まるのに加え、サンドワームが水を飲み込んでしまった。

 弱点などないのか、と魔力を打ち込んで診断してみたが、サンドワームは皮膚が固いくらいしか、わからなかった。好戦的でなかったため、逃げても追ってこなかったのが幸いだ。


「ひとまず、今日のところはこの辺で帰ろう」

「カエロウ、キケン」


 俺たちは逃げるように帰った。汗に砂が混じって、体中が焼けたパンの色になっているし、髪はゴワゴワしている。

 帰ったら風呂があるのだけが救いだ。



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