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魔境生活  作者: 花黒子
~長いプロローグ~
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【魔境生活11日目】



 昨日は夕飯を食べたら、眠たくなったので寝た。夜中過ぎに起き出し、どんどん生活リズムがずれていく。ナイフはすっかり固まっていい感じだ。研いですぐに使おう。


 実験用のフォレストラットに魔境の植物を与えていたら、子供を産みやがった。一気に6匹増えたので、毒味用や、眠り薬用、麻痺薬用などに分けて実験することにしようと思う。

 まだ、日が上らないうちに昨日のデスコンドルやコドモドラゴンの肉を回収。ラーミアの死体は、地面に埋めた。かなり崩れていたし、人間っぽいところにどうしても忌避感がある。

 

 今日は少し遠出をしようと思う。夜明けとともに沼の反対側へ行ってみる。

 だいたい、どこまでが自分の土地か知っておく必要があるだろう。いつ何時、強面の冒険者がやってきて土地を奪われるかわからないのだから。


 地図を作るため、リュックには紙と木炭が入っている。

 不動産屋の話では、魔境に入ったあの川から、全て俺の土地ということになっているはずだった。もしかしたら、この先にまだ知られていない民族がいたり、いなくなったとされる種族が隠れ住んでいるかもしれない。


 土地の所有者として家賃とらなきゃ。不労所得、最高と聞いたことあるけど、初めはやんわり貰わないと、居着いてくれない。


「遠くに山脈が見えるんだけど、あそこも俺の土地ってことでいいのかな?」


 そういった疑問を解消するためにも、地図作りは重要だ。


 沼の反対側にある丘を登ると、辺りの森が見渡せた。沼には隣接した沼がもう一つあるが鬱蒼とした木々に覆われて薄暗い。


 とりあえず、山脈に向けて歩いて行ってみることに。

 昼になったら、戻ろう。日が落ちる前までに帰ってくればいい。そんなアバウトな予定である。

 

 周囲に注意しながら、歩いていると、見たこともないような果実をつけた木がいくつもあった。近づくと果実が割れて、中の鋭い牙で噛み付いてくる。


 果実を切り落とし、フォレストラット用に収穫。切り落としてもしばらく、噛み付こうとするので、その辺の蔓で縛った。

 カム実と名付けた。他にも、色違いや形違いで噛み付いてくる果実があったが、全てカム実の仲間とした。


 大きな花の噛み付いてくる奴は、ラフレシアとした。カム花でも良かったが、一応前世の夢の記憶からなるべく近いものから名付けた。

 また、木の妖精のような小さい魔物はインプと名付けた。身体は人間っぽいのだが、羽が生えてて、顔がおじさんだ。


「奇妙すぎる……組み合わせとして最悪だ」


 特に邪魔をしてきたり、襲ってくることもないので、スルー。


 二足歩行のトカゲもいた。前世の夢では確か、恐竜と呼ばれていたタイプの魔物だ。大きさはグリーンタイガーと同じくらい。P・Jの手帳にはマエアシツカワズと命名されている。「前足を使わないで歩行するお調子者」と説明書きがされてあった。P・Jのセンスはどうかと思う。


 噛み付いてきたので、サーベルで首を一突き。


 昨日作ったナイフで解体していく。刃をギザギザにしてノコギリ状にしたナイフを使って、マエアシツカワズの鱗を切り裂いた。


「切れ味がいいなぁ」


 内臓は、ラフレシアに食べさせて処理。食い方が汚いので、粘液を周辺に撒き散らしていた。匂いが酷い。帰ったら沼で身体を洗おう。

 新しい植物や、魔物がいたら、その都度止まって、写生し命名したりしていたので、すぐに昼。昼飯はマエアシツカワズの肉でバーベキュー。


 マエアシツカワズの肉は最高に美味しかった。

 爪や魔石はちゃんと回収し、肉も持っていけるだけ持っていく。


 インプが近くによってきて、余った肉を見つけると、叫び声を上げて仲間を呼んだ。


「ギョェエエエエ!」


 という鳴き声はインプのものだった。怪鳥だったと思っていたが、こんな奇妙な小さいおっさん妖精から発せられた声だったとは。まったく怖くなくなってしまった。


「インプを使役して仲間にするか?」


 インプに聞くと「ギョエ?」と酒焼けしたおっさんのような声を返してきた。


「よほど寂しくならないと無理だなぁ」


 なにが悲しくてこんな奇妙な魔物と仲間にならないといけないのか。

 マエアシツカワズの肉を森のなかに放り投げて、インプたちを追い払った。


 お昼を食べて、家に帰る。全然、山脈までたどり着けなかった。


「近づいている気すらしなかったな。どれだけ準備すれば行けるんだろう?」


 たぶん、山脈まで行くのに何泊かすると思うので、テントや保存食なども用意しないといけない。魔物も植物も、ちょっと沼を越えただけで違うので未知のものが多いだろう。


「時間かかるなぁ」


 家で、フォレストラットにカム実を食べさせてみると、むさぼるように食べていた。好物なのかもしれない。俺も食べたが、甘くて酸っぱい普通の果実と変わらなかった。噛み付いてくる以外は、普通の果実。


 夕食はキングアナコンダのステーキと野菜炒め。


「相変わらず、さっぱりしてるな。うまい!」


 夕食後、沼で身体を洗っていると、小さい虫の魔物の群れに襲われた。虫よけの薬を作らないと。篝火を焚くと寄ってこなくなった。

 P・Jの手帳を読んでいたら、自然と睡魔がやってくる。日が落ちきる前に、その日は眠った。



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― 新着の感想 ―
[一言] おっさん顔の妖精で酒焼けした声。。。 夢がないにも程がある(笑)
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