【それぞれの修行生活3(覚醒篇)】
同じ場所にいて同じ飯を食べていると、変わる時期も同じなのかもしれない。チェルがメイジュ王国に行って帰ってくるまでの期間、海岸にいた魔境の住人たちは明らかに以前とは何かが変わった。しかも、各々が自分で予想していなかった方向に。
初めは俺だったのかもしれない。魔物の肉に限らず、土や岩も魔力のキューブを使って抜き取ってしまえるようになった。そのお陰で『奇人』の称号を得てしまったわけだが、この技がとにかく使える。
家に帰れない時など、岩に穴を掘って簡易的な家を作れるようになった。いや地面を隆起させる能力と組み合わせれば、どこにでも拠点を作れるということだ。
「砂漠や海にはできないだろ?」
ヘリーからのツッコミが入ったのだが、魔力のブロックを組み合わせてしまえばいいので、砂浜から砂のブロックを海から水のブロックを抜き出して積み上げていった。
「俺の魔力が続く限り、このブロックを覆う膜は維持できるから、本当にどこにでも拠点が作れるんだよ。いかだの上でもね」
「ど、ど、どのくらい維持できる?」
「2、3日なら問題はないよ」
「「「……」」」
さらに、落とし穴も一瞬でできる。植物や魔物への対処や部位採取も、より簡単になってしまった。
次は、ジェニファーだ。
海岸での生活も3日目あたりだったと思う。わざわざ早朝に俺を起こし、聞いてもいないのに説明を始めた。
「つまりですね。防御とは固ければ固い方がいいと思っていたわけですよ。でも、皆さんがおっしゃるように、柔軟に対応した方が衝撃は抑えられるのではないか、と夜通し研究をしたところできました!」
ジェニファーが、防御魔法を展開し魔力の壁を作り出した。俺のとは違い、本当に一枚の壁だ。
「殴ってみてもらえますか?」
「朝から起こしやがって、本気で殴るからな」
俺は拳に魔力を込めて、思いっきり殴った。
ぶっにゅう~!
平たいスライムを殴っているような感触があり、拳が壁にめり込む。さらに、衝撃が跳ね返され、俺は砂浜の上に吹っ飛ばされていた。
「どうです? これぞ鉄壁ならぬスライム壁。構造はハチの巣状で隙間はないのですが、性質をものすごく柔らかくしてみたんですよ」
「なるほど、魔石のないスライムか。相手にするのはめんどくさいな。斬撃への対処もできるのか?」
「当たった瞬間に柔らかいので挟んでしまえるんじゃないかとおもうんですよね。弱点を言えば、一点に集中した突きくらいでしょうか。魔境の魔物でそんなことをやってくるものはいなそうですけど」
「素直にすごい」
汗と砂まみれのジェニファーは、それまでの殻が破れたように笑っていた。睡眠不足と魔力切れで、そのまま倒れていたが。
ヘリーの覚醒は特殊だった。
そもそもの発端は俺とシルビアが海岸の瓦礫を撤去していたところから始まる。
砂地とは違う石や岩を掘っていくと、桟橋が出てきた。継ぎ目はなくコンクリート製で、海に突き出ている。チェルが言っていたセメントにいろいろ混ぜる建材だ。
「ユグドラシールではコンクリートをよく使ってたんだな」
「こ、こ、これ、ただの桟橋じゃないかもしれない」
「じゃあ、なんだ?」
「ま、周りの海に大きな岩が配置されてるから、波を防いでたんじゃないか? しかも先が丸いから……」
シルビアが指をさした桟橋の先は、確かに円形になっている。まるで塔か何かが建っていたかのようだ。
「灯台か」
「そ、そ、そう思う!」
「ということは、やっぱりここは大きな港だったのかもしれない。だとしたら、メイジュ王国だけでなく、もっと遠くの大陸や国とも貿易していたのかもしれないな」
「そ、そ、倉庫跡は?」
「港があるんだから、きっとあるはずだよな」
俺とシルビアは急いで周辺の森を探した。
「マ、マ、マキョー。魔力で地中を探って!」
苔や草だらけの中を無暗に探していても埒が明かないのでシルビアが指示を出してきた。
俺は地中に魔力を放ち、地中を見た。砂漠ではゴーレムが出てきてしまったため警戒したが、地中の中には硬い建物の基礎が埋まっていた。
「あった! 建物の基礎だな」
桟橋と同じように基礎はコンクリートのようだ。一枚岩にしては大きすぎる。
「ほ、掘ろう!」
魔力のキューブで掘れば、根こそぎくり抜けるので掘るのも楽だ。土も木も根こそぎ取れてしまう。
「あ、やべっ」
慎重に掘っていたが、元来の不器用さで基礎にまで魔力のキューブの範囲を広げてしまった。
「あれ?」
「ど、ど、どうかしたか? まさか基礎まで掘ったんじゃないだろうな」
シルビアが厳しい目を向けてきたが、基礎には傷一つついていない。
「いや、逆だ。基礎が掘れない。このコンクリートはなにで出来てるんだ?」
「んん?」
とりあえず、邪魔な土を退けて建物の基礎を露出させることに。
柱が立っていたと思われる四角い穴がいくつもあったが、柱はとっくの昔に潮風で倒壊しており、破片しか出てこなかった。
ただ、やはり基礎はしっかり形を保ったままの状態で残っている。
「た、試してみてもいいか?」
シルビアが骨で作ったハンマーを握りしめて聞いてきた。
「いいと思うぞ。まだ、向こうにも基礎は埋まってるから、ひとつくらい壊れても問題はないだろう」
ガキンッ。
古代のコンクリートは壊れず、ハンマーの方が折れた。ある程度、衝撃にも耐えられる。魔法も効かない。
「すごい固い建材だな」
「い、いや、なんかおかしい。マキョーの新しい技は岩でもくり抜けるんじゃないのか?」
「確かに、普通の岩ならくり抜けると思うけど……。もしかして、基礎に魔法陣かなにかが施されているか?」
「うん。い、い、いたずら書きかと思ったけど、ほらこれ」
シルビアは基礎の真ん中に、手のひら程度の魔法陣を見つけていた。単なる汚れかと思ったが、触ってみると彫られている。しかも、魔法陣の隣には鹿をモチーフにしたような紋章も彫られていた。
「建築業者の証みたいなものかな?」
「か、かもしれない」
「魔法陣は、あの一瞬で葉っぱを枯らしちゃうのに似てるな」
「と、と、時魔法か!?」
「時魔法でこの建材の時間を止めていたなら、形を保てているのも衝撃が通らないのも納得だけど……」
その後、何度も魔法陣を削り取ろうとしたが、俺たち2人にはできなかった。
「す、す、少しの魔力でも起動するからか。へ、へ、ヘリーを呼んでこよう!」
俺たちは森で鞭の練習をしているヘリーを呼んできた。
「手伝えというが、私だって作業があるのだぞ。この蛇皮の先にミツアリの魔石を嵌めて粘着力をだな……」
「そ、そ、そんなこと、あとで、いくらでもやってあげるから、ちょっとこの魔法陣を、魔力を使わずに削ってみて」
「こっちは魔力を使えないから、困ってるんだけどね」
文句を言いながらもヘリーは、コンクリートの魔法陣をナイフとハンマーで削りとってくれた。
「で、できた!」
「あっさりやってのけたな」
試しに魔法陣がなくなったコンクリートで魔力のキューブを使うと、簡単にコンクリートブロックが抜き取れてしまった。
「や、や、やっぱりこの魔法陣が原因なんだ。すごい! ヘリー、すごい!」
「なんだい、そんなに難しいことじゃないだろ? 誰だってできるはずだ」
「いや、たぶんヘリーにしかできない」
「どういうことだ?」
俺とシルビアで、コンクリートと魔法陣について説明したところ、ヘリーは空を見上げて深く頷いていた。うっすら目に涙を溜めている。
「ようやく、理解した」
「なにが?」
「私の役割さ。魔法陣ならこれまでの魔法の知識を活かせるし、魔力を使えない私が彫れば事故も起きない」
魔法を学んでいるのに、魔力が扱えない者というのはかなり特殊だという。腕のいい魔道具の製作者でも、魔道具を作っている最中に思ってもみない魔法が起動してしまうため事故が起こりやすいとか。
「魔法を体系的に学んでいて、魔力が使えないなんて、魔道具師になれと言っているようなものじゃないか。どうして今まで気が付かなかったのか不思議なくらいだ。魔力を使えなくなって全てを無駄にしたと思ってきたが、無駄じゃなかったのだな。これも鹿神の導きか」
ヘリーは鹿の紋章を指でなぞりながら言った。
「エルフの人生は長い。生きてきた全ての時間が無駄ではないと思える時間は少ないし、これほど知識と呪いがぴったりとかみ合うことも珍しいから、今後は魔道具屋になる。マキョーよ、それでも魔境に置いといてもらえるか?」
「ああ、頼むよ。P・Jに負けないくらいにはなってくれ」
ヘリーは人生の目的を見つけた。
それからシルビアに魔法陣を彫る彫刻刀や木槌などを作ってもらい、噴水やとんでもない光を放つ魔石灯などの製作を始めていた。
人生は急激に今までとは違う方向へと舵を切ることがあるらしい。
ただリパの場合は、努力と成り行きで、そうなるしかなかったようだ。
リパは弱い。クリフガルーダでも魔境でもそれは同じだ。弱さが顔や体にも表れ、弱そうに見えるから魔物に襲われる。魔物に限らず、人にもいいように使われてしまっていた。
「ほら、そんなんじゃ私に攻撃当たりませんよ!」
スライムの壁を習得したジェニファーは自分の力を誇示するため、リパの修行に付き合っていた。
リパは断れもせず、朝からひたすら木刀で壁を殴り続けている。
「どうだ? 手ごたえはあるか?」
さすがに見かねて俺が声をかけた。
「いや、まったく。どうすればいいんですかね?」
「突きだ。足から脚へ、さらに腰から体を捻り腕へと全身の力を一点に集中させていくと、壁を破れるかもしれない。ほら、魔境の魔物だって独自の武器を必ず持っているだろう? きっと武器を使った攻撃の瞬間は力を集中させているんだよ」
「武器と集中ですか。なるほど……」
「マキョーさん、余計なことを教えないでくださいよ」
「いや、ジェニファーの弱点を克服するのにも役立つはずだから」
そう言って、しばらく放っておいてみた。
翌日は森に入って、ジェニファーとともに魔物の対処を日が暮れるまでやっていたらしい。
「どうだ?」
全身に回復薬を塗りこんで寝ているリパに聞いてみた。
「それぞれの魔物の武器がなんとなくわかるようになってきました。それから得意な武器を使っているときは集中するから、他に隙が生まれることもジェニファーさんを見てわかりました」
「そうかもしれない。得意なことほど得意気になっちゃいけないな」
「はい。魔物も同じです。弱い僕を見て、魔物は必ず得意な独自の武器で攻撃してきますから、隙も多いです」
「人よりも魔物に襲われる体質だと、これからどんどん経験も増えるだろう?」
「はい。あとは自分の身体がそれについていけば……」
リパは限界に達したらしく、眠ってしまった。
よく動き、よく食べ、よく眠るを、最も海岸で実践したのはリパだろう。
「マキョーさん、リパくんになにを教えたんですか!?」
次の日の昼頃、ジェニファーに問い詰められた。
「どうした? スライムの壁が破られたか?」
「今朝がた、弱点を衝かれて破られました。しかも、一緒に森に入ったら、襲ってくる魔物を一撃で倒していくんですよ。防御に徹している私がいる意味がありません」
「ああ、魔境の生存競争に勝ったんだろうな」
「でも、急激じゃないですか? 今まで私の後ろにいただけで、魔物の対処は全然できてなかったのに……」
「人の成長って傍から見れば、だいたい急だろ? 本人からすれば、ゆっくり地道にやってきたのに。あいつはずっと努力を続けてきたから、それがようやく実り始めているように俺には見えてるよ」
「そうですかね……」
ジェニファーは納得しかねるといった表情で、スライムの壁二重計画に着手していた。
「マキョーさん、今日は何肉にしますか?」
森から汗だくで出てきたリパが聞いてきた。
「リパも魔境に適応したな」
「マキョーさんのアドバイスと、この環境のせいです。僕は弱いし能力もない。できることが少ないから突くことだけに集中できました。素振りはあまり意味がなかったかもしれません」
環境によって人が変わるというのは、よくあることだ。
変わっていく周りに流されるということもある。そう考えると、シルビアは相当焦っていたのだと思う。
俺たち4人が、魔法の技術を習得し生き方を変えていくなか、一人だけ西の洞窟にいた時と変わらず水中や海岸付近の遺跡を発掘していた。さらに俺やヘリーから、道具製作を頼まれて、起きている間中ずっと忙しそうにしている。
「て、て、手が足りない……」
飯時には、いつも口にしていた。
「魔物の能力を手に入れても、それ以上にはなれないし……」
シルビアは疲れてくると、全くどもらなくなった。それを合図に、俺とヘリーは、無理やりにでもシルビアを休ませることにした。
「そんなに頑張らなくていい」
「俺たちはシルビアに求めすぎていたのかもしれないな」
痺れ薬を嗅がせ、温かい砂浜に寝かせる。
俺とヘリーは両脇に座って遠い海を眺めた。
「自分のやりたいことでもあるし、期待に応えたいんだ。イーストケニアではできなかったから……」
痺れながらシルビアは口だけ動かした。
「やることは決まっているのに、時間と身体が追い付いていかない。どうすればいいのか……」
「今はゆっくり休むことだ。とりあえず寝ろ」
シルビアを眠り薬で寝かせた。
「シルビアは古き良き貴族だな。誰かのために、動いている」
「金にがめついわけでもないし、性格だって容姿だって悪くないだろう。だけど、なぜか自分の領地を追い出されてしまった……」
「吸血鬼の一族だから、隙を衝かれてしまったのだろう。善き領主と善き民に恵まれた領地が長く続くと、外からの悪意に倒されてしまうこともあるということだ」
「シルビアがどうにかできる流れではなかったんだろう?」
「うむ。それは本人もわかっているさ。わかっているけど、なにかしたかったのだろう。たとえ故郷に戻るとしてもただの貴族ではなく、何かができる者になりたいのではないか?」
「魔境の武具屋として、十分仕事をしていると思うけどな」
「マキョーはあまり武器を持たないだろ。拳ばかりだ」
「それは戦闘スタイルが、そうなったってだけで……。気を使ってわざとシルビアの武器を使った方がいいか?」
「それは本人が納得しない。シルビアだって魔境の住人なんだから、すぐバレる」
「そうだろ。本人が意識を変えるしかない」
「私のように、きっかけがあるといいのだけど」
「まぁ、ゆっくりでいい。ここにいる時じゃなくてもさ」
「それはそうだ」
俺とヘリーは、気長に見守るつもりでいたが、きっかけは翌日に本人が見つけた。ゆっくり休んでから、俺のためにナイフの柄を魔物の骨で作っていた際、人差し指の付け根を切ってしまった。
「大丈夫か? まだ寝ててもいいんだぞ。急いでないんだから」
急いで薬草を渡そうとしたら、シルビアに止められた。
「い、いや……。ちょっと待って」
シルビアは流れている血を手のひらの窪みに集め始めた。いよいよどうかしちまったのかと思ったが、そう言うわけではないらしい。
「きゅ、きゅ、吸血鬼の家系は、この血によって随分運命を狂わされた。だ、だから歴代当主も含めて、いろんな研究が行われてきたんだ」
「そうなのか……」
「で、伝説に挑戦してみてもいいか?」
「ああ、もちろん、それはした方がいい。失敗なんか恐れなくていいぞ。そもそも俺なんか土地の購入で失敗してるんだから」
「わ、わ、わかった。回復薬だけ用意しておいてくれ」
そう言って、シルビアは森の中に入っていった。
危険そうだから付いていこうかと思ったが、邪魔はしたくない。シルビアもそれなりに魔境で過ごしてきたのだから、よほど危険だったら戻ってくるだろう。
小一時間待っていると、シルビアが真っ黒い大きなトカゲの魔物を連れて戻ってきた。
「その魔物どうしたんだ?」
トカゲの魔物はシルビアによくなついているように見える。
「し、し、従えた。血に魔力を込めて舐めさせると、魔物を操れる。で、伝説は本当だったみたい」
「すごいな。吸血鬼の一族って、そんなこともできるのかよ」
「わ、わ、私も全然、信じてなかったけど、魔力量が上がったからか?」
「いや、俺に聞かれても……。それって、ずっと使役できるのか?」
「た、た、たぶん、血が消化されたら効果はなくなると思う。と、と、とにかくこれで荷運びとかは、この黒蜥蜴にやらせればいい」
「ああ、そういう使い方かぁ」
「え? だ、だって、倉庫を復元したくないか?」
「そりゃ、できればいいけど……」
「じゃ、じゃ、じゃあ、しよう。マキョーは木を切って、黒蜥蜴に運ばせてくれ」
「やれと言われれば、やるけどね」
倉庫の基礎に空いた柱の穴に合わせて、木材を採取していく。内陸に行けば、トレントの亜種もいるので材料には困らない。
木を適当な大きさに魔力のキューブで抜き取れば、加工も済ませてしまえる。あとは家ほどもある黒蜥蜴に蔓で縛り付け、倉庫跡へと送り出すだけ。
倉庫側では、ジェニファーやリパたちも加わっているらしい。黒蜥蜴に『柱終わり、次は板』などとメッセージもついてきた。
日が落ちても、ヘリーが作った魔石灯が明るく作業場を明るくしてくれるので、問題はない。
夜通し板を加工し、明け方に倉庫跡に戻ってみると、屋根のない二階建ての倉庫が出来上がっていた。冒険者ギルドの訓練場よりも大きい。
「デカいな」
「雰囲気はこんな感じだったんだと思う」
シルビアがどもらずに説明した。夜通し作業をして、疲れているのだろう。
「寝ていいぞ。ジェニファーもリパも寝てるし。ヘリーは?」
ジェニファーとリパは、木の壁にもたれかかって寝ていた。
「桟橋の先に、簡単な灯台を作りに行くって……」
「おう」
俺は桟橋の先へと向かった。
ヘリーは余った端材で、木を組み、先端に魔石灯をぶら下げていた。
「あ、マキョー、ちょうどいいところに来た。もうすぐチェルが帰ってくるから、灯台を作っていたのだ。魔石灯に魔力を込めてくれるか?」
「ああ、そう言えば、そんな奴いたなぁ。すっかり忘れていたよ」
俺はぶら下がっている魔石灯に魔力を込めた。一気に周囲は明るくなり、霧深い海の先まで光を照らす。
「変わった私たちを見てチェルはなんて言うかな」
「驚いてから怒るんじゃないか?」
「魔境を出て一週間しか経っていないというのに、この変わりようだ。面食らった顔が楽しみだ」
チェルを乗せた船が見えたのは、その日の夕方だった。