男もけいおん!!
声劇用の台本です。
男女比は、3:0となります。
遠慮なく使ってもらえたら嬉しいです。
増井……ボーカル担当
古賀……ベース担当
中崎……ドラム担当
放課後の部室に増井、古賀、中崎。
増井 「ライブどうする?」
古賀 「(ため息)どうすっかー」
中崎 「3人じゃブルーハーツできないもんね」
古賀 「できねえこともねえだろうけど、まあ難しいわな、現実問題」
増井 「ギターレスのバンドの曲やるとか」
中崎 「今から曲かえるの? 普通に間に合わないでしょ」
古賀 「ギターレスのバンドってたとえば?」
増井 「うーん、あんま浮かばないけど、ベンフォールズとかキーンとか」
古賀 「どっちも3日で覚えれそうにないな。しかもギターないかわりキーボード必要になってくるし」
中崎 「じゃあ、椎名林檎は?」
古賀 「いや、椎名林檎も3日で覚えらんないし、仮に覚えれたとしても椎名林檎はやんねえ」
中崎 「なんで? 嫌いなの?」
古賀 「嫌いっつーより増井の声で椎名林檎を聴きたいとは思わねえ」
増井 「つーか、そもそも椎名林檎の曲も3人向けじゃないだろ」
中崎 「そっか……ごめんね、なんかよく知りもしないで出しゃばっちゃったみたいで」
増井 「いいよ、別に謝ることでもないし」
古賀 「ああ、でもやっぱブルーハーツやりてえよなあ、ずっと練習してきたんだし(ため息)……ったく、吉田のやつもよりによってこんなタイミングに何も……っつって今さらどうしようもねえけど」
中崎 「うん……一番つらいのは吉田だろうしね」
増井 「じゃあ、代わりのボーカル探すか」
古賀 「ボーカル?」
中崎 「ギターじゃなくて?」
増井 「ギターは俺がやるわ」
中崎 「え?」
古賀 「つーかお前、弾けんのかよ」
増井 「ブルーハーツなら、まあ、だいたいは」
古賀 「なんだよ、そういうことなら最初から言えよ。お前がギターできんだったら歌いながら」
増井 「(遮り)ただ、自信はない」
古賀 「え?」
増井 「一応、ブルーハーツの曲ならひと通り弾けるとは思うけど、高校入ってお前らと組むようになってからはギター弾く機会もほとんどなかったし、だからギター弾きながら歌うってのは……さすがにそれをあと3日で人前でやれるレベルに仕上げるのは、実際問題厳しいと思う」
古賀 「そっか……まあ、俺もベース弾きながら歌うとか無理だしな」
中崎 「でもいいの?」
増井 「ん?」
中崎 「増井の憧れの存在は、ヒロトなんでしょ。ここに入部するときも、自己紹介でヒロトになりたいって言ってたじゃん」
増井 「(笑)よくそんな昔のこと覚えてんね。すげえな、お前……」
中崎 「なんか印象深かったから」
まあ、「まあ、ヒロトになりたいかどうかはともかく、最近になってようやく歌うことの楽しさみたいなものがわかってきたとこだったから、正直未練あるけど……でもそれ以上にライブ成功させたいし、そのためなら仕方ないかなって」
古賀 「たしかに今から文化祭当日までに、ブルーハーツ弾けるやつを探すのは無理があるもんな」
中崎 「でもボーカル探すのもそんな簡単じゃないよ」
増井 「そのことなんだけど……じつはもう目星はついてんだ」
中崎 「そうなの?」
古賀 「なんだよ、随分話が早ぇじゃねえかよ」
増井 「この子なんだけど……(ある女子生徒の写真を見せる)」
古賀 「(立ち上がってキレ気味に)ってこれ清水さんじゃねえかよっ!」
増井 「(釣られて立ち上がりキレ気味)ああ、清水さんだよっ!」
古賀 「なんでお前が清水さんの写真持ってんだよっ!」
増井 「盗撮したんだよっ!」
古賀 「盗撮してんじゃねえよっ!」
増井 「お前には関係ねえだろうがっ!」
古賀 「いつ撮ったんだよっ!」
増井 「今朝撮ったばっかだよっ!」
古賀 「撮りたてのホヤホヤじゃねえかよっ!」
増井 「ホヤホヤで悪いかよっ!」
古賀 「悪くねえよっ!」
増井 「ああんっ!?」
古賀 「おおんっ!?」
中崎 「ちょっとちょっと、待って。二人とも、なんでキレてんの?」
古賀 「別にキレてねえよ」
増井 「同じくキレてねえし」
中崎 「まあまあ、とりあえず座ろ。立ち上がって睨み合っても無駄にカロリー消費するだけでまったく意味ないから……ね? ひとまず落ち着いて、二人とも」
少しの間。
古賀 「で……なんで清水さんなわけ?」
増井 「清水さんじゃだめなのかよ」
古賀 「だめとかそういう話じゃなくて……単純に顔がいいからか?」
増井 「まあ、そこもなくはないけど、清水さん好きらしいんだよ、ブルーハーツ」
中崎 「そうなの?」
増井 「つーか、パンク全般? クラッシュとかジャムとかバズコックスとかストラングラーズとか、あとスターリンとか。ちなみにグリーンデイまでいくと、ちょっと違うって感じになるらしいね」
古賀 「まじかよ!『21Guns』超名曲なのに。つーか、パンクっつーよりもスピッツとかバックナンバーあたりのイメージだったんだけどな、清水さんて」
中崎 「あ、それ何となくわかるかも」
増井 「うん。俺も最初その話聞いたとき、すげえ意外だと思った」
古賀 「つーか、誰に聞いたんだよ。清水さんがパンク好きだって情報」
増井 「森田だけど」
中崎 「森田って俺らのクラスの?」
増井 「うん」
古賀 「お前、森田と仲良かったっけ?」
増井 「仲良いっつーか、去年同じクラスだったからフツーに話すけど」
古賀 「そっか、なるほどね……ってことは、何も顔だけ見て清水さんの名前をだしたわけでもないんだな」
増井 「ああ」
中崎 「たしかに美人だよね、清水さんって。彼氏とかいんだろうなあ」
増井 「そこなんだよな」
中崎 「え?」
古賀 「そこって、何がだよ」
増井 「いや、清水さんに彼氏がいるとしたら誘いづらいなと思ってさ」
中崎 「そこ関係ある? 誘いやすいとか誘いづらいとか」
増井 「でも、このタイミングに部員でもない女子を男3人のバンドに引き込むのってなんかあやしくねえ?」
古賀 「あやしいな」
中崎 「いや、別にあやしくはないでしょ。やましいことしてるわけでもないんだし」
増井 「……調べるか。俺らで」
古賀 「調べるって何を?」
増井 「清水さんに彼氏がいるかどうか」
中崎 「は?」
古賀 「どうやって調べるつもりだよ」
増井 「まあ、盗撮するしかないだろうな」
古賀 「ああ、なるほど」
中崎 「なるほどじゃないよ! なんでここで盗撮がでてくるのさ」
増井 「まあ聞けよ、中崎。次は今朝みたいに写真とか画像じゃなくて、ガチでいく……つまり下校中の清水さんを追っかけて、追っかけて、地の果てまで追っかけて、彼女の私生活をまるごと動画に収める。収めまくる。それなら文句ないだろ」
中崎 「あるよ! 動画とか余計だめじゃん!」
増井 「いや、でもそうでもしないと清水さんに彼氏がいるかどうか、半永久的にわかんないだろ」
中崎 「そんなことするくらいなら直接聞いたほうが早いし、ていうか別に彼氏いてもいいじゃん。関係ないじゃん、バンド誘うのと、彼氏いるとかいないとか」
増井 「中崎、やっぱお前、何もわかってないわ。直接聞く勇気があったら、俺も最初から盗撮なんてしねえよ。直接聞く勇気がないからこそ、俺は盗撮したいって思う」
古賀 「そっか、よく言った」
中崎 「よく言ったじゃないよ! 今の発言のどこがどうよかったのさ。ていうか、さっきから二人とも無理やり盗撮するって方向に話持っていってない?」
古賀 「(増井に)そうなのか?」
増井 「いや、俺に聞かれてもわかんないけど」
中崎 「(ため息)自覚はないんだね……」
古賀 「まあ、彼氏いるいないはともかくとして、清水さんって歌えるの? ブルーハーツ好きだからってうまく歌えるとかかぎんねえだろ」
増井 「たしかにそこもあるんだよな」
古賀 「つーか、超重要だろ」
増井 「じゃあ、覗くか」
古賀 「覗く?」
増井 「清水さんがカラオケで歌ってるところを潜入リポートするみたいなノリで」
古賀 「おお、それいいね」
中崎 「え、ちょっと待って。なに、潜入リポートって。意味わかんないし。そんな回りくどいことするくらいなら、一緒にカラオケ行こうって誘ったほうが早いじゃん」
増井 「誘えないから盗撮するんじゃねえかよっ!」
中崎 「だからなんでさっきから盗撮にこだわるんのさ!」
増井 「キレイな女を盗撮したいって思ったらだめなのかよっ!」
中崎 「だめだよ!」
古賀 「盗撮が悪みたいな言い方はやめようぜ中崎」
中崎 「悪でしょ! どう考えても、犯罪だよ。バレたらライブどころじゃないんだよ。そこ、ちゃんとわかってる?」
増井 「わかってるよ。わかってるけど、それでも俺は清水さんを盗撮した。し続けていきたい。もっとキレイに、もっときわどく、撮ってあげたいって思う」
古賀 「きわどい清水さんか……それある意味最強だな……うん、どんどんやっていけばいいんじゃねえの、そういうこと。つーか、やるべきだろ、増井。お前ならできるよ」
増井 「ああ、それもわかってる」
中崎 「(ため息)……二人とも本気なの?」
無言のまま頷く増井と古賀。
中崎 「わかった。そこまで言うのなら僕も協力する」
増井 「いいのか? 中崎」
中崎 「じゃあ、今からアキバ行こっか」
古賀 「アキバに?」
中崎 「ガッツリ盗撮していくってことならスマホじゃなくて、ちゃんとした盗撮機器を一式揃えないとでしょ。本気でやるってそういうことじゃない?」
増井 「いや、でも金が……」
中崎 「そんなの、ここにある楽器や機材売ればどうにでもなるでしょ」
増井 「ああ、なるほど。その手があったな」
古賀 「よっしゃ、売って売って売りまくってやるか」