時間
────わ...わた...し...だ...しに...
掠れた声で、見ていられないほどの痛々しい体で、全力をふるしぼるように彼女は言う。
────あ...あり...が...
その言葉と同時に周囲ピカっと周囲が光に包まれた。
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ピピッ...ピピッ...と秒刻みに部屋中に音が鳴り響いている。瞼を開けると...
「涙だ...」
瞼から筋を引いてこぼれ落ちていく。
右手でグイッと拭いアラームを止める。
「なんの夢見てたっけな...思い出せないな...」
少しは考えてみたものの思い出せそうもないし、顔でも洗ってくるかと洗面所へ行きついでに学校に行く準備をする。
「やばい...遅刻しそう...」
急いで着替えてカバンを持ち外に出る。
外に出たと同時に思いっきり走って何とか学校に遅刻せずに着いた。
「はあ...」
ため息を1つついていると隣から話し声が聞こえてきた。今日転校生が来るらしいぞ、まじかどんな子だろう、かわいいこだったらいいな、などと期待をすればするだけ転校生にとってはいい迷惑だろうな。なんてことを考えていたら教室のドアがガラッと開き先生が前に出てきた。
「みんなは噂で聞いてるだろうが、1人転校生がきた。君入っていいよ」
その言葉で1人教室にはいってきた。興味があんまりなかったって言うのもあり、外を眺めていると、おおー!!、かわいい!などと、声が上がってきた。女子か...と少し気になりチラッと見る。しかし、チラッと見るどころか見とれてしまう程の美貌だった。
「あ...」
口をポカーンと開けて見ていると、彼女は雪音未来です。よろしくお願いしますっと言った。先生が空いてる席に座ってくれと、言うと彼女はすんなりと座った。
授業が終わると、みんなその子の周りに集まり、
どこから来たの?、好きなタイプは?などと周りが聞くことに対して苦笑いしながらも答えていた。
「人気だな...この差はなんだ」
ぼっちとまでは行かないがあんまり人に囲まれたことがなかったからか、少し嫉妬してしまう気持ちがあった。
そうこうしているうちに、授業も全て終わり、学校から出る。ちなみに俺は帰宅部だ。
これと言ってやりたいことも無くダラダラと過ごしていた。帰るか...と歩き出すと校門前に雪音未来が立っていた。
「転校初日から校門前で待ち合わせするような友達ができるだなんて羨ましいな...」
と思いつつ、通り過ぎようと彼女の横を通り過ぎると
「あの!時坂くんですよね!」
一瞬ピタッと止まった。俺?いつこのこと話した?てか、名前よく覚えてるな...
「はい?僕になんか用でも?」
「わ、わた...私と!付き合ってください!」
一瞬思考が止まった。な、なにを...会って1日目だぞ!何考えてんだ...
「な、なな...なにをっ!」
彼女はニコッと笑い近づいてきた。そっと耳元に口を近ずけ
「よろしくね、時くん」
そう言うと、今日は少し行かなきゃダメなところがあるから先に帰るね?じゃぁね!
「ば、バイバイ」
って何普通に手を振ってるだ!それにしても時くんってなんだかすごく懐かしい感じだな...
「俺って前時くんって呼ばれたことあったのかな...」
なんとなしにそんなことを考えながらも帰った。
家では、一人暮らしで親とは離れて暮らしている。
「それにしても...一人暮らしとはいえ物が無さすぎて逆に困るな...」
高校に入学してから後から後からと何も買わずに過ごしていたらいつの間にか、どうでも良くなっていた。それでも、不便でいつも、一瞬だけ買いに行こうなどと考えることはあるが最終的には買わないことになっている。と言うよりしている。
「それにしても、会って1日目で告られるとか...あいつもあいつでどんな趣味してるのやら」
まあ、いいか!と思い寝ることにした。
そして、朝目覚めがすごく悪かった...毎日似たような夢を見るのだが思い出せずにいた。
「ふあーさっさと準備して学校に行くか...」
準備して玄関で靴を履いているとピンポーンっとインターホンがなった。だれだ?こんな朝からと思いながらガチャっと開けると
「おはよう時くん!迎えに来たよ?」
あの1文字しか出てこなかった。数秒止まってからなぜこいつは俺家を知ってるんだ...
「あ、あのぉーなぜ僕の家を知っているのですか?」
苦笑いし、やばいやばい、怖い怖いと心の中で絶叫していると
「内田優吾さん?に昨日聞きました」
あいつ!俺家を勝手にばらしやがって学校いったらしばいてやろうか...
「あ、そ、そっか、な、何しに来たの?」
「迎えに来ました。朝迎えに来るのも彼女の役目ですから」
「えっとそのーまだ...」
と言いかけた途端にさあ!行きましょう?とグイグイ引っ張っていくので仕方がなく一緒に登校することにした。それにしても昨日までの静かさはどこに行ったのやらと言うとなにかいいましたか?と来たので慌ててな、なんでもないです!と答えた。学校につきまず初めに気になったのは周りからの睨まれるような視線だった。
「なんか、みんなに睨まれてるよ...」
今日の放課後は一緒に帰りましょ!と一言そう言うとさっさといってしまった。周りからはあんな可愛い子あんな奴にあわねぇよ!などと言う声が聞こえるがしったことじゃねぇよ!っと知らな振りをする。なんだかんだと授業も全て終わり、放課後...
「これ待ってた方がいいのかな...てか、あいつどこだよ!」
そう言ってあっちこっち探したが、見当たらずによし帰ろうと玄関を出ると彼女がいた。いつの間に...
「お前さ...ほんとに何企んでるのよ」
「なにも企んでなんていませんよ?」
そんなわけが無い...俺がこんな美人と会話どころか付き合ってなんて言われるなんて...俺にとってはありえない話だろと少し考え込む。その顔を見たのか彼女は
「やっぱり覚えてないんですね...」
覚えてない?その言葉に引っかかるなにかがあった。覚えてないってどういう事だよ
「覚えてないって何が?」
「私のこと」
いやいや、会ったのつい最近だろ...前にはあったことなんてないはずだろ。
「まあ、とにかく!少しずつ思い出していってください」
帰りますかと言い一緒に歩きながらずっと考え込んでいた。なあ、前にもあったことがあるのか?っと聞くとはい、ありますよ?っと答えが返ってくる。少しずつ考えていくか...
「止まってください、信号赤ですよ。」
おっとと思い踏みとどまるが、目の前の光景に焦った。子供が信号無視し、普通に走ってるからだ。
「おい!危ないぞー!」
と聞こえる声で言ったはずが全く聞けてない。
やばいと思い車が来てない時に全力で走った。
「バカかお前轢かれたいのか!」
と、その子供を抱きかかえ立とうとした時、あぶない!っと言う声と共に体に衝撃が来て前に吹き飛ぶ瞬間ドカッっと言う大きい音と共になにかが、車に吹き飛ばされた。一瞬のことで何が起きたのか理解が全くできなかった。
「え...」
周りからはきゃーー、とか救急車よべ!などと慌ただしい声がする。俺も子供も怪我してないしなぜ?女の子が...と聞こえ女の子?と皆が見ている方向に向くと何かがよこたわっていた。少しずつ歩き確かめようと近寄ると
「え...ぁ...」
声が出なかったのだ。なぜかと言うと目の前に横たわっていたのは、雪音 未来 彼女だったからだ。
すぐに駆け寄り、お、おい、じょ、冗談だよな...
「わ...わた...私...ま...だ...しに...た...くない!」
彼女は悲惨な体つきで、掠れた声、聞いてる方がトラウマになりそうな声でそう言った。
「あ...あり...が...と」
と彼女は言うと静かに静かに息を絶った。