第8話 ヒーローとショッピング
お待たせしました。第8話です。
辺境の町パリト。
モンスターの襲撃を防ぐ為か高い塀に囲まれている。
イリスの話によるとアンブルシア大陸と呼ばれる大陸の東にあるガルリエド王国の領地に存在する辺境の町。
ある程度の食料品とオレの服を買うのと、オレの個人的な用事でやって来た。
ちなみにイリスの家もあの祭壇もアンブルシア大陸の森のどこかにあるらしい。
「こちらですよ」
「ああ」
イリスに案内されるまま警備兵らしき2人が立っている門をくぐるとそこにはいかにもなファンタジー世界の街並みが広がっていた。
「スゴイな・・・これが・・・」
辺境の町とは聞いたが思った以上に大きい、中世のヨーロッパらしき建物が並んでいた。
「まずは服屋に行きましょう、こちらです」
イリスの後をついて行く、しばらく歩くと路地裏で喧騒が聞こえた。
「何だ?」
オレは思わず立ち止まる。
どうやらストリートファイトをしているみたいだ。
体の大きい男とオレと若干年下くらいの茶髪の少年が素手同士で殴り合ってた。
「こう言う町ではお金を賭けて喧嘩をするというのはよくある事です。目に余るならば止められますか?今の貴方でも十分止められるでしょう」
イリスが聞いてくる、どうするか・・・少し考える。
ドゴッ!
考えている内に決着が着いたみたいだ。
歓声が上がる。
どうやら少年の方が勝ったらしい。
少年は樽の上に置かれてあった金の詰めてあるらしい袋を取ると去っていった。
また、ストリートファイトが行われる。
「やめとく、こう言うケンカに首を突っこむほどおせっかいじゃない」
ケンカでもある程度のルールはあるみたいだしな、まあ、あんまり一方的過ぎるものだったら話は別だが。
「そうですか、それでは参りましょう」
また2人で町を歩く。
「こちらです」
イリスが立ち止まった前には服屋があった。
屋根にある看板には異世界の文字で『服屋スレッド』と書いてあった。
店に入ると見慣れない服がズラリと並んでいた。
「おお・・・さすがファンタジー世界・・・」
「お好きなのをどうぞ、気に入ったものがあったら何着でも買って差し上げます」
と言われてもなあ・・・
本人はいいと言ってもこういうのはどうも遠慮してしまう。
それにオレはあまりファッションに関心がない。
あまり派手な服は好まず赤いシャツの上に黒一色のジャケット、黒いズボンと言う単純なものを毎日着ていた。
他に着ていたのは学生服くらいか・・・。
せっかくのファンタジー世界なのでそう言ったのを着てみたいとは思うのが、どれを着たらいいかイマイチわからない。
結局同じ様な、黒いジャケットとズボンをを1着づつ、赤いシャツを3着を選んだ(パンツはイリスが用意してくれた白いトランクスっぽいのが3着ある)。
「それだけでよろしいのですか? もっと派手で高いのでも全然かまいませんよ?」
「いやいいよ、派手なのは好きじゃないんだ。これでもう十分だ」
もう特に必要な物はーん?
ある物が目に入った。
「あれは・・・」
「何か気になるものでもありましたか?」
「ああ、ちょっといいか?」
「ええ、どうぞ」
オレが駆け寄った先にはー
マントが陳列されていた。
「マントだ・・・」
オレのいた世界では見かけることのないマントが普通に売られている。
「マントがお好きなのですか?」
イリスが聞いてくる。
「ああ、ヒーローが身につける物はマントかマフラーって相場が決まっている」
これはオレの持論だが、よくヒーローがマントやマフラーをなびかせるのを見てかっこいいなと思うのが理由である。
オレの世界ではマフラーはともかくマントは珍しい。
小さい頃はタオルなどをマント代わりにしてたが、さすがに大きくなっていくにつれてしなくなっていった。
「なあイーアリス、これ欲しいんだけどいいか?」
町の外で約束した事を気をつけながら聞く。
「ええいいですよ、お好きなのをお選び下さい」
イリスはフードで顔が隠れているが笑顔で答えたのがわかる。
「じゃあこれで」
オレは即行で選んだ。
「早いですね・・・それでよろしいのですか?」
オレが選んだのは黒一色の単純なマントだった。
派手な刺繍や彩色の施されてるマントもあるがシンプルなのが一番だ。
「ああ、これがいい、もう十分だ」
「かしこまりました、それでは参りましょう」
レジでお金を払い(当然見たことのない通貨)会計を済ませる。
試着室で早速着替える。
「お似合いですよ、刃様」
着替えたオレを見てイリスは言う。
まあほとんど、いつも着ている服にマントをプラスしただけなんだが。
「じゃあ次行くか」
次に向かった先はー
「ここか・・・」
「ええ、こちらです」
冒険者ギルドだった。
『冒険者ギルド』ーゲームとかに存在する魔物討伐などの依頼を斡旋する、ハローワークの様なもの。
魔物のはびこるこの世界には当然の様に存在する。
その依頼は多岐にわたり、魔物討伐はもちろん、採取や指名手配犯捕獲など様々な物がある。
今日はギルドに登録、時間があったらクエストをしてみたいと思ってる。
建物に入る、そこには冒険者達が宴をしたりする騒がしい場所ーでは無かった。
中は思った以上に人が居なかった。
「静かだな・・・大体いつもこうなのか?」
辺境の町だからはこんな感じなのか?
「そんなはずはありません、田舎町とは言え昼間でもそれなりに騒がしい場所なのですが・・・ー何かあったのでしょうか?」
イリスが歩いていたウェイトレスに声を掛ける。
するとウェイトレス曰く、王都の森の方で強い魔物が多数現れたらしく、強い冒険者達は皆そっちの方に行ってしまったらしい。
今いるのは駆け出しの冒険者と食事をしに来たわずかな人しかいないとの事。
そしてギルド登録の申請は可能だとの事。
オレは受付に向かう。
「冒険者ギルドへようこそ。ギルドへの登録ですね?こちらの規約書をよくご覧になった後、下の欄へサインをお願いします」
受付の女性が書類を出してきた。
そこには冒険者ギルドのルールが書かれてあった。
要約すると、ギルドカードの発行手数料、紛失した場合の再発行手数料はその3倍になること、犯罪を犯し賞金首になった場合ギルドから名前が抹消されるの事、冒険者ランクの説明、クエストの難易度の説明・・・などなど一通り目を通す。
目を通した後下にある名前を書く欄にイリスに教えてもらった文字で自分の名前を書く。
「それでは発行手数料1000リール頂きます」
リールと言うのはこの世界の通貨だ。
前もってイリスに貰った硬貨を1枚渡す。
この世界には紙幣という物が存在しないらしい。
「それではこちらに手を当てて下さい」
カードの差し込まれた直方体の機械らしき物を差し出された。
表面はコピー機の読み取る部分みたいになっている。
これに手を置くんだな?
手を置くと読み取る部分が青く輝きだした。
「おおっ」
オレは思わず声を上げる。
「これで登録は完了です。お疲れ様でした。クエストを受ける場合はあちらの壁に貼り付けてある依頼書を持ってカウンターまでお越し下さい」
そう言ってギルドカードを差し出してきた。
これがギルドカードか・・・大切にしないとな。
運転免許証くらいのサイズの白いカードでオレの名前の横に鷹の絵が描かれてある。
カードの色と名前の横にある絵は冒険者ランクを示している。
色は白、赤、青、黒、銅、銀、金の順で高くなっていき、絵は鷹、狼、獅子、竜、の順で高くなっていく。
例えばクエストをこなしていくと、絵は鷹から狼へとかわり、竜を超えるとギルドカードは白の竜から赤の鷹になると言ったものだ。
当然今のオレは白の鷹だ。
「せっかくなので何かクエストをされて行かれますか?」
イリスが聞いてきた。
「いいのか? 買い物とかあるだろ」
「ええ、まだ時間はたくさんありますし、クエストを1つするぐらいなら問題ありません、お買い物は最後で結構ですので」
「そうか、それならお言葉に甘えて」
依頼書が貼り付けてある掲示板に向かい、依頼書に目を通す。
「さて、何かあるか・・・」
クエストの難易度は星で分けられる、星は最大で10まであるが・・・
「1つから3つぐらいまでしかないな・・・」
あったのは、森での薬草の採取や、弱い魔物の狩り、普通の仕事の案内などといった簡単なものしか無かった。
「田舎町ですからね、この辺りのモンスターはさほど凶暴でもないので、そういったのが現れるのは稀ですね、それでも精々星4つぐらいのものですが」
どうしたものか・・・しばらく考える。
せっかくだから何かクエストをしようと決めたので、星3つの『風シカの狩り』を受けようと思い依頼書に手を伸ばす。
その時だったー
バタァン!!
「大変だ!!!」
静かなギルド内に扉が勢いよく壁に叩きつけられる音と、男の叫び声が響いた。
次回強力なモンスターとの戦いです。お楽しみ下さい。