表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだと思ったら異世界に召喚されたのでヒーローはじめました。  作者: 米川米太郎
第1章 異世界に召喚されたヒーロー
6/12

第5話 ヒーローと魔法

お待たせしました、第5話です。いよいよ主人公が魔法を会得します。


(ん・・・?)


小鳥のさえずる音で目を覚ました。


(・・・もう朝か・・・)


昨夜色々と思っているうちに、いつの間にか眠ってしまったようだ。


体を起こし辺りを見回すと、そこはいつもの自分の部屋ーではなく、あの女ーイリスに案内された部屋だった。


(やっぱりオレは異世界に・・・)


死んだら異世界に召喚されるなんて夢にも思わなかった。


まあ、この世界が死後の世界であるという可能性も否めないが。


そんな事を思っていたら部屋にコンコンとノックの音が響いた。


(やいば)様、目覚められましたか?」


イリスの声が聞こえてきた。


「ああ、今起きたところだ、すぐ着替えるから少し待っててくれ」


オレはそう返事をして、急いで服に着替えた。


着替えて部屋を出るとイリスが立っていた。


「どうぞこちらです、朝食の準備が出来ています」


そう言って歩き出したのをオレはついて行く。


案内されたのは昨日イリスと会話した応接間の少し先にあるダイニングだった。


テーブルの上にはベーコンエッグとパン、ジャムやバター、湯気をたてたスープが2人分あった。


「それではいただきましょうか、お口に合うと良いのですが」


イリスはイスに座って言った。


「ああ、ありがとな」


オレもイスに座る、そしてー


「「いただきます」」


2人で同時にそう言って食べ始めた。


「「ごちそうさま」」


オレとイリスは食べ終わり手を合わせて言った。


「もうよろしいですか? パンととスープはおかわりがございますよ?」


「ああ、ありがとう、もう十分だ、美味かったよ」


パンやベーコンエッグは、オレの世界にも普通にあったが、スープは見慣れないものだった。


赤い半透明のスープに角切りした黄色い大根のような具、キャベツとレタスの中間みたいな葉野菜、白いグリンピースみたいな豆が入っていた。


味は塩気の効いたトマトスープみたいで普通に美味かった。


「皿はオレが洗うよ、そっちのシンク使っていいか?」


「あら、私がまとめて洗いますよ?」


「いやいいよ、世話になっているんだ。これくらいさせてくれ」


何でもしてくれるばっかりではさすがに申し訳ない。


「律儀な方なのですね、貴方は」


「律儀も何もアンタはある意味命の恩人だ。これぐらいの事はして当然だ」


もしイリスが召喚しなかったらオレはあのまま死んでいただろう、その事に関しては深く感謝している。


石造りのシンクに置いてあった緑色のスポンジと紫色の洗剤を使い洗って隣に置いてあったカゴにふせる。


「終わったよ」


「ええ、それでは昨日約束した魔法について教えようと思いますがよろいしですか?」


いよいよ魔法を教えてもらえるのか、期待に胸が膨らんだ。


「ああ、昨日からずっと楽しみにしてたんだ」


「そうですか、それではこちらです」


イリスは微笑んでそう言った。


ついて行った先はダイニングを出て真正面にある部屋だった。


「ここは?」


「私の部屋です」


そう言って扉を開けた。


部屋には1人用のベッド、大きなテーブルとイス、衣類などをしまっているだろうタンス、彩飾が施されたキレイな鏡台、本がビッシリと詰められた5つの本棚(5段、しかもオレの背よりもたかい)があった。


「すごい数の本だな・・・全部魔法関連の物か?」


「全部ではありませんね、それらは大体半分くらいです。歴史や地理の本、図鑑、昔話やおとぎ話なども多数ございます」


ふと呟いた疑問にイリスが答える。


「それではこちらにお座りください」


そう言われオレはイリスの隣のイスに座る。


「それではまずこちらからー」


イリスが本を開いてオレに見せた。


魔法講座が始まったー


「ーという事により魔法の始まりと言われる都市アークルにより発祥した魔法はそれぞれの大陸、地方により様々な物に発展していきました。特にアエストゥス地方にあるエクセリオン王国は4大マナの研究が盛んで4大基礎属性の魔法が著しく発展していきました。一方でスグルフ地方では4属性とは全く異なる新たな魔法が創り出されそれらは後にスキル魔法と呼ばれるようになり、またリードルズ王国では4大マナとは異なる新たなマナが発見されそれらはー」


「イリス先生、ちょっといいですか?」


思わず敬語で話しを遮る。


「何故、魔法を学ぶのに歴史を学ばなければならないかーですか?」


「いや、それは分かるよ、大きな力には責任が伴う、歴史から何も学ばずに闇雲に力を使う事は危険な事だっていいたいんだろ?」


それを聞いたイリスは目を丸くした。


「そのとおりです、驚きましたね・・・大抵魔法を学ぶ方はこんな事を知るのに意味はないとおっしゃるのですが・・・」


「まあな、強大な力を持つからこそ過去の過ちを繰り返さない為にこう言う事を教えるんだろ? 歴史から何も学ばずに力を振りかざすなんて、刃物を振り回すガキと何も変わらない」


「そこまで分かっていて何か問題がー?」


もっと根本的な問題だ。


「字が読めねえ」


イリスは盛大にずっこけた。


なんで異世界で言葉は通じるのに文字は読めないんだ?


「そ・・・そうでしたか・・・確かにそうですね・・・それでは最初にこの世界の字の読み書きからー」


「いや、今はいいよ覚えるのにどれだけかかるかわからないしな、ノートとペンはないか? 自分で書いた方が早そうだ」


全部覚えるのにどれだけかかるかわかったものじゃない、今は魔法を学ぶことに専念したい。


「確かにそれがいいですね、こちらをお使いください」


そう言ってA4サイズぐらいのノートと羽ペンを渡された。


イリスの言う事を要点だけ書き記していく、初めて扱う羽ペンもすぐに慣れた。


そうこうしている内オレの腹の虫が鳴り響いた。


昼になった様だ。


「おっと、すまねえ」


「良いのですよ、私もお腹が空きましたし、お昼ご飯にしましょうか、直ぐにご用意しますね」


「オレも手伝うよ、野菜の皮を剥いたり、切ったりぐらいならできる」


よく家で家事を手伝ったものだ、それくらいなら手伝える。


「大丈夫です、あらかじめ作っておいたのですぐに出来ますよ」


イリスは微笑みながらそう言った、いつの間に出来てたんだ? 仕事が早いな。


「午後からはいよいよ本格的な魔法の実践をしましょうか」


午後から? もう?


「いいのか? まだ歴史の授業は途中じゃないのか?」


「ええ、飲み込みが早いので、教えても問題ないかと」


いよいよ魔法を使えるのか楽しみだな。


「それではお昼ご飯にしましょう」


2人で昼食を終えて(パンとキッシュと昨日のスープだった)外で待ってて欲しいとのことで、オレは家の前で待っていた。


イリスは一旦必要な物を取りに行くと言っていた、何だろうか?


「お待たせしました」


イリスが家から出て来た、左脇に袋を抱えている、形からすると楕円形で平べったい物のようだ。


「なんだそれ?」


「後でのお楽しみです、それではこちらです」


と言われたのでついて行った。


イリスの家から少し離れた所で立ち止まる。


「それでは始めましょう、まずはおさらいです。刃様、魔法とは一体何でしょうか?」


イリスが質問する。


「自然の力ーマナを用いた、太古の神々が使っていた力の事だ、太古の神々は全ての魔法を使っていたが今は使う人間の素質により使える力は限られている」


午前中イリスから教えられた事をオレは答える。


「正解です、よく出来ました」


イリスに褒められる。


「マナの種類は炎、水、風、土の4大基礎属性と、太古の神々に近い力を持つ光と闇の始祖属性、スキル魔法を使うのに必要な無属性マナ、そしてそれ以外の特殊なマナ、固有マナの8つが存在する、人によって複数のマナがあったり、マナを一切持たない人間も存在するだろ?」


オレは更に続けた。


「完璧です。素晴らしい、教えた事をしっかりと覚えていらっしゃいますね」


「ああ、でもよ、自分がどんなマナを宿しているかはどうやってわかるんだ?」


オレはイリスに聞いてみる。


「それを調べるための道具がこちらです。私は人に触れたら内在するマナの属性と量がわかりますが、せっかくなので一般的に使われるこれを使いましょう」


そう言って抱えてた袋から何かを取り出した。


それは中央に大きな水晶のような物がはめ込まれた、両脇に握るためのグリップのついた楕円形の機械の様な物だった。


「それは・・・魔力測定器的な物か?」


「ええ、『マナ・ボード』と呼ばれる物で、両脇に付いてあるグリップを握ると体内にあるマナに反応して中央の水晶の色が変わるという物です。赤が炎、青が水、緑が風、黄色が土、黒が闇、白が光、それ以外の色に輝いたら固有マナになり、水晶が2つ以上の色になったら複数のマナを宿している事になります。また、水晶の色が一部変わらなかったら無属性のマナを宿している事になります」


「じゃあもし握ったやつに、マナが無かったらー」


「ええ、その人は魔法が使えないという事になります」


マジか、せっかくここまでやったのに魔法が使えない何てのはさすがに悲しすぎる。


「後天的にマナを得る方法が無い訳ではないのですがあまりお勧めはしませんね・・・」


だろうな、その場合失敗したら最悪命を落とすとかだろう。


「まあ、調べてみないと始まらないからそれ貸してくれ」


「ええ、どうぞ」


イリスからボードを貸してもらい、覚悟を決めて両脇についてあるグリップを握る。


するとー


「これはー?」


「なんとー」


水晶が透明のまま輝きだした。


「水晶が輝くのは何属性だ?」


「わかりません・・・固有マナの様ですが、詳しく調べて見ましょう、手を出して下さい」


そう言われオレは右手を差し出すとイリスは両手でオレの右手を握った。


「・・・ーー」


イリスは両目を閉じて意識を集中する。


握られている右手に温かいものを感じた。


「なんと・・・これは・・・!?」


イリスは閉じていた目を見開き驚愕する。


「なんだ、一体どうした?」


もしや太古の神々に等しい力を持っているのかと期待した。


「刃様には無属性のマナしかないのです!」


なんだそりゃ?


「えっと・・・どういう事だそれは?」


「午前の授業でも言いましたが、無属性のマナはスキル魔法を使うために必要なものですが、本来無属性マナはあまり多く宿る事はなくオマケのようなもので、スキル魔法を覚えれるのは1つか2つ、しかしそれだけしかないというのもこれまた珍しいものです。それもかなり強力な魔力・・・刃様なら多数のスキル魔法を覚えれるかと思われます」


「スキル魔法って言えばスグルフ地方で創り出された魔法の事だよな? 具体的にはどんな魔法なんだ?」


「そうですね・・・有名なのは身体強化の『ブースト』、体の一部を硬化させる『ハードニング』、武器や道具の性能をあげる『ライジング』などですね」


なるほど、補助や強化の類か。


「じゃあ早速魔法を使ってみたい、まずどうしたらいい?」


無属性とは言え魔力は有るんだ、早いとこ魔法を試したい。


「もう準備は出来てますよ」


何?


「私が貴方の魔力を調べた時に魔力を流しました。その時に貴方に内在するマナは既に目覚めています。本来、マナを目覚めさせるには瞑想をして時間のかかるものですが熟練の魔法使いは他者のマナを引き出す事ができるのです」


そうなのか、イリスはオレが思う以上にスゴイ魔法使いなのか?


「それでは試してみましょう、目を閉じて意識を集中して下さい、自分の体の中にあるマナを感じ取って下さい」


イリスに言われるままに目を閉じ意識を集中する、意識の中に何か光るものを感じた。


「意識の中に何かを感じましたか? それをイメージできるもの、例えば湧き上がる水、急速な成長をする植物などにしてそこから引き上げて下さい」


オレは地の底から湧き上がる水をイメージした。


意識の中にある何かが大きくなっていく。


「『ブースト』と言いそれを魔法と共に解き放って下さい」


「ブースト!!」


言われるままにオレは叫んだ。


ブォォォォ!!!


体から凄まじい力が湧き上がってくる。


「成功したようですね」


「なんだこれは・・・とてつもない力がある湧き上がってくる・・・!ちょっと動いてみていいか?」


「どうぞ試して下さい」


興奮気味にイリスに言うと、快く了承してくれた。


ダンッ!!


辺りの森を駆け巡る、オレは元から身体能力が高かったがそれでも比にならないぐらいに動ける。


体が軽い、軽すぎる。


木から木へと飛び移ったり、ジャンプしながら高速回転したり、高速で連続キックをしたりいろいろ試した。


ザザァッ!!


しばらく激しく動き回った後イリスの元に戻る。


「戻ったぜ、スゴイな、これが魔法か・・・!」


「ええ、貴方も初めてにしては中々のものです。努力しだいで規格外の強化魔法を扱えるようになるでしょう」


そうか、それなら特訓しないとな。


「その他にも、本でしか見た事がありませんがスキル魔法は多数あります。無意味なものから幅広く応用の利く物まで、スキル魔法の図鑑がございますのでご覧になりますか?」


「ああ、是非とも見せてくれ・・・!」


こうして、オレとイリスの1日は過ぎていった。


読んでいただきありがとうございます。できるだけ早く自分のペースでコツコツとやっていけたらいいなと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ