第4話 ヒーローと1日の終わり
お待たせしました。第4話です、構成がまとまってきたのでバンバン投稿します。
「今日はホントに色々ありすぎて疲れた・・・」
湯を張られたバスタブに浸かりながら呟いた。
イリスが出してくれた料理やケーキを食べながらこの世界の事を聞いた。
この世界は剣と魔法のファンタジー世界である事、人の命を脅かすモンスターが存在する事、エルフ、獣人、魔人などの様々な種族が存在する事、大陸が12もある事、しかもまだ確認されていない大陸が存在するらしい、海に至ってはいくつあるかわからない事(確認されているものでも12)こうして話をしている内にすっかり夜が更けていった。
明日は魔法を教えてもらえる約束をした。
オレの寝る部屋を準備するとの事なので、先に風呂に入ってほしいと言われた。
イリスに言われる通りの部屋に行くと脱衣所があった。その先にはタイル張りの部屋にホテルによくあるようなシャワー付きのバスタブがあった。
そこには既に湯が張られていた、一体いつの間に?こんな森の中の家にどうやって水道を引いて湯を沸かす事が出来るんだ?これも魔法か?
あんまり深く考えないようにした。
(でも1つ気になる事があるんだよな・・・)
イリスはオレとの会話中手袋をずっとしていた事だ。
あの祭壇、『異界の扉』で出会った時からずっとしていたが、会話中に茶を飲むときすらもずっと着けていた。
最初見た時はローブの袖で見えなかったが、お茶を飲む時に肘ぐらいまで隠れていたのが見えた。
見た感じ革製っぽく、飲む時に邪魔なんじゃないかと聞いたが、『大丈夫です、気にしないでください』と微笑んで言った。
(怪我でもしてるのか?)
何か訳ありみたいなので深く詮索しないようにした。
バスタブから上がり、イリスが用意してくれた寝巻きを着て脱衣所を出るとそこにはイリスがいた。
わざわざオレが上がるのを待っていたのか?それともー
「あがられましたね、どうぞこちらです」
言われるままにイリスについて行った。
「ああ・・・すまない、というよりいいのか?」
「何がですか?」
「なんて言うかその、女1人しかいないってのにその日に出会った男を泊めたりなんかして大丈夫か?」
いくらなんでも軽すぎやしないか?自分で召喚したとは言え、その日に出会った男を易々と信じるなんて。
「大丈夫ですよ、あの祭壇は召喚した者が望む人間を召喚すると言われているのです。だから貴方は悪人ではないのでしょう」
そうなのか?それでもー
「そして何よりー」
ん?
「今の貴方より私の方がずっと強いので問題ありませんから」
そう優しく微笑んで言った。
まあ魔法があるからな、それでも寝込みを襲ったりしたらいくらなんでもー
「仮に寝込みを襲われたりしても簡単に返り討ちに出来ますよ」
この女は心でも読めるのか?
階段を上がり、左に行って突き当たりの部屋に案内された。
「こちらの部屋になります、貴方が着ていた服や所持品も全てこちらに運んでおきました、トイレは階段を降りてすぐ右にある扉です、私もお風呂に入り眠りますがくれぐれもー」
「風呂を覗かないで下さいだろ、分かってるよ」
こうまでしてくれた恩人に無礼を働いたりしない、そんな低俗なマネ死んでもしたくない。
「ええ、それではお休みなさい、明日の朝は起こしに来るのでごゆっくりお休みください」
そう言ってイリスは階段を降りて行った。
部屋に入るとそこには白い綺麗なシーツで整えられたベッドと、綺麗に折りたたまれていたオレの着ていた服やサイフ、スマートフォンが置いてある木造りの小さな机があった。
そういえば、何で服やサイフ、スマートフォンがあるのだろう?確かに死んだ時に身につけていたり持っていたものだが、一緒に召喚されたのだろうか?まあ、素っ裸で召喚されても困るが。
所持品を確認する、スマートフォンは当然圏外、充電は96%、充電器は無いのでバッテリーが切れたら終わりだろう、財布の中にあったのは確かに入れていた、カードやクーポン券、所持金18766円、イリスが盗んだのではと一瞬疑ったが世界が違うのでそんな事をしても無意味だろう。
(もう寝るかー)
そう思いベッドに横になり目を閉じた。
(そういやあの後どうなったんだ?)
最後にあの事を考える、子供を助けた後の事だ、まあ、あの子供は無事だろうがオレの家族や友人達の事だ。
母さんには苦労をかけてばっかりだった。
昔、小学生の頃イジメグループがいてそいつらのイジメをボコボコにして止めたら、そのボスの親が母さんの職場の上司で、子供を意味もなく傷つけたと言う理不尽な理由でクビにされそうになった。
大人しく謝れば許してやるとその上司に言われて、父親は最後まで謝り倒していたが、母さんはその上司の胸ぐらを掴み「ウチの息子は何も間違った事はしてない、自分たちより弱いものを取り囲んで傷つけるような奴は痛い目に遭って当然だ、そんな奴に謝るぐらいならこっちから辞めてやるよ」といいその場を去った。
その後、当時住んでいた家を引っ越して新しい学校に転校したが似たようなことがまたあったが、母さんはいつもオレの事を理解してくれた。
同じような事が何度もあり父親はもうお前達の考えにはついていけないといい両親は離婚した。
オレは母さんの方について行った。
「自分なりの正義を貫きなさい、弱い者を助けて、悪い奴をこらしめるのは決して間違いじゃないから」
強者故の余裕だろうか?詳しくは覚えていないが、母さんは高学歴でどこかの一流大学の卒業生らしい、だからオレが問題を起こしてクビになっても母さんは就職には困らなかった。
オレが問題を起こしても母さんはいつもオレの味方だった。
誰かを救うためには誰よりも力を持たなければならないという事を母さんから学んだ。
オレは誰よりも勉強やケンカの努力をした。
誰よりも人に優しくする事を覚えた。
誰よりも弱者に寄り添う事にした。
その甲斐あってか、高校に入ってからは不思議と友達や慕ってくれる人間が増えた。
毎日が楽しかった。
それなのに、母さんより先に死んでしまって本当に申し訳なく思う、だけどオレは人の命を救えたんだ、後悔はしていない、ただ1つ心残りがあるとするなら出来るならこう伝えたかった。
母さん、オレは死んだけど死んでないよ、2つの意味で、1つはオレのした事がまた誰かに伝わる事、オレに助けられた奴が、オレがやったみたいにまた誰かを救って行く事、オレの意思は受け継がれていくんだ。
そしてー
オレは異世界に召喚されたらしくそこで第二の人生を歩んでいく事。
どうなるかわからないけど、まあ、何とかなるさ、助けてくれる奴もいるしな。
前の世界で叶える事を出来なかったオレの夢を実現させてみせるさ、絶対に、最期にー
母さん、オレを産んでくれてありがとう