第六話
家
01シロ「ハナ兄さんが泣いて帰ってきたのには驚いたね」
02マキ「そうだな。俺らと会ってから1度もそういうの見せたことなかったし」
03ハナ「やめてよもう…恥ずかしいんだからさ…。そんなこと言ったらマキちゃんだってそうでしょ!ちゃっかり煙草も控えめになっちゃって!」
04マキ「だからそれは金がねーからだって」
05ハナ「ケーサツのお方が在宅勤務とほぼニートよりお金持ってない訳ないもんねー!」
06シロ「ハナ兄さん、それ自分で言って悲しくないの」
07ハナ「もーシロちゃんはお黙り!」
08タケ「(少し笑う→独り言)……仲良くなったもんだな…。俺が連絡取るまでは顔も知らなかった母親の違う兄弟が…。……母親…」
09父「尊、お前の母さんはな、とても強い人だったんだぞ」
10タケ「(独り言)なんだ、今の…誰の声だっけ…」
11シロ「そういやマキ兄さんがピースを吸ってる理由、あの人よりも強い煙草を吸うことで優越感に浸ってたって」
12マキ「ああ?!おま…それ恭にしか言ってねぇのになんで…」
13シロ「ツキから聞いた」
14ハナ「さっすがシロ!ツキちゃんの連絡聞いてちゃっかりマキちゃんの弱み握ってるう!」
15マキ「ふざけんなよ!つかなんで恭もツキにその話してんだよ!ぜってーぶっ飛ばす…!」
16シロ「そういうマキ兄さんもミコトさんの本名、いつの間に聞いて名前で呼ぶような仲になってるの?」
17マキ「ぐっ…別に親しみを込めて呼んでんじゃねえよ。呼び方がわかんねーから仕方なくそう呼んでるだけだ!なんつーか、…母親の名前をアカリっつって呼び捨てで呼ぶようなもんだろ!」
18タケ「え?」
19シロ「え?」
20ハナ「え?」
21マキ「……は?」
22タケ「なぁ、マキの母親の名前、アカリっていうのか?濱木アカリ…?」
23マキ「え?ああ…そうだけど…。なんだよ急に」
24タケ「……あ、いや…俺の母親もそうだったから」
25マキ「へえ、アカリってそんなに多くない名前なのに変な偶然もあるもんだな」
26シロ「いや…多分だけど偶然じゃないと思うよ…」
27ハナ「そうだね…正直考えたくもないけど…」
28マキ「…まさかとは思うが…お前らの母親もアカリっつー名前とか言わねえよな」
29シロ「そのまさかだよ。こっちは土岐アカリだし」
30ハナ「こっちは花田アカリだった」
31タケ「………(息を呑む)」
32マキ「はあ?なんだそれ」
33ハナ「わざわざアカリって名前の人探して再婚してたってこと?……気持ちわる…」
34シロ「なにか理由でもあるのかな…」
35マキ「そんなもんねえだろ。あいつの考える事だぞ?」
36ハナ「そーだよ、元から狂ってんだから不思議なことでもないんじゃない?」
37タケ「………同じ…アカリ…」
38父「お前のタケルっていう字はな、尊いって書く。お前は俺たちにとって価値のある存在なんだ。だからその命を大切にしないといけない。大丈夫だ、お前にはいつも導いてくれる母さんっていう光があるんだから。」
39タケ「とう…さん…?」
40父「え?俺か?…そうだなあ。まあそのままかもしれないが、お前とお前の母さんを守る勇者、ってのはどうだ?…はは、流石にそれはないか。ははは…」
41父「アカリ…!!!アカリ、アカリなんで…!!どうしてですか先生…!!あんなに…あんなに元気だっただろ…!!なんで急に…!!!先生!!!なんとか言えよおい…!!アカリ…!!目を覚ましてくれアカリ…!!!アカリ…!!!」
42タケ「そ…うだ…、父さんは……あの日から………」
43シロ「タケ兄さん……?」
44タケ「わからなかったんだ………ずっと……。俺は……あの人を恨んでいるのに………それとは別に、何かを探してた……。その何かをその時は分からなかったが……でも諦められずに、……ずっと…」
45ハナ「タケ兄さん何言って…?」
46タケ「………大上勇…、俺たちの父親は…最初から狂ってたわけじゃない……、俺の母親…大上アカリが死んでから…おかしくなったんだよ……」
47シロ「……え?」
48ハナ「なにそれどういうこと…?」
49タケ「もとは…自分の奥さんのことが大好きで…その人の血が半分入った俺のことも当然大切に育ててくれた…優しい人だった……。それが…最愛の人が突然この世を去ったことで…あの人は…ああなってしまったんだよ。」
50マキ「死が…影響を……」
51タケ「俺はずっと…これを忘れてたんだ…。憎い…憎くてたまらないあの人の姿だけを見ていたから…俺は眠れなくなってしまったんだと思ってたけど……でも、本当は、俺の記憶の奥底にちゃんとした親父の姿があって……それがずっと…俺を不安にさせてたんだ…。憎みきれない不安に…駆られていたんだよ…」
52シロ「それが…タケ兄さんの不眠症の原因…?」
53タケ「すまない…お前達の前であの人の話をするつもりはなかったんだ……けど、」
54マキ「いーんじゃねーの?」
55タケ「マキ…」
56マキ「俺たちの記憶では確かにアイツは最悪の人間だけどよ、兄さんにはそうじゃないアイツも残ってんだろ。それならそれでいいんじゃね。」
57ハナ「まあ、そうだね。」
58タケ「ハナ…」
59ハナ「むしろアイツも人間だったんだなーって感じ?よかったじゃん、アイツも兄さんが思い出してくれて嬉しがってんじゃないの?知らないけどー」
60シロ「………」
61タケ「シロ……」
62シロ「(微笑む)…羨ましいよ。僕は恐ろしい顔しか見たことがないんだから。でも、僕の目はもしかしたら、あの人に似てたりするのかも。……今は、悪い気はしないよ。」
63タケ「そうか……そうか………、(涙声)ありがとう…っ……!!」
64ハナ「感謝とかいらないよ、だって、ね?」
65マキ「…そうだな。」
66シロ「うん……僕たちの父親でも…あるんだから。」
67タケ「(涙声)…ありがとう……っ!!」
68ハナ「なんかこうやってちゃんと4人で話したの初めてじゃない?」
69タケ「…ああ、お前達3人が話してるのをみて仲良くなったなと思ったよ」
70マキ「別に仲良くなんかねーだろ」
71ハナ「そうそう、仲良しじゃなくて、超仲良しになったんだよねーマキちゃん???」
72マキ「お前なぁ……」
73シロ「マキ兄さんもあんまり怒ったりしなくなったしね。それにハナ兄さんも仕事、探してるんでしょ?」
74ハナ「っなんでシロちゃんそれ知って…!」
75タケ「そうなのかハナ。…そっか、そうか…」
76ハナ「あーもうやめてよ!そんな嬉しそうな顔すんなっての!!まだ見つかってないし…!暫くはあんたらのスネガリガリ齧ってやるんだから!」
77マキ「はっ、好きにしろ。」
78ハナ「んもうううう、シロも言うようになったよね!ちょっとずつ笑ったりもしてるし、……やっぱりあの子の影響?」
79シロ「ん…そうだね。兄さん達もそうなんでしょ?」
80マキ「……変なガキだよな、ほんと」
81ハナ「……ね。調子狂っちゃう」
82タケ「でも…俺は今のお前達の方が好きだよ。…だから俺もこうやって不安を取り除けた。あの子のおかげだな。」
83シロ「あんな純粋な子、初めて見たかも。悩み事とかなさそう」
84マキ「……あー、それでいくとあいつ自身に悩みはないけどな、」
85タケ「何か知ってるのかマキ」
86マキ「畠恭、…ミコトに聞いた話だ。アイツの親はもう両方とも他界してんだと。」
87ハナ「え、そうなの?海外で仕事とか言ってなかった?」
88マキ「恭が父親との約束を守って嘘を付き続けているらしい。自分が男だってこともな」
89シロ「今はまだ知らないんだね…。いつ伝えるんだろう…」
90タケ「それは俺たちが関与していいところじゃない。……ただあの歳で大切な人を失くす悲しみは俺にもわかるからな…正直避けたいという恭くんの気持ちにも頷ける。」
インターホン
91タケ「はーい」
92ハナ「でもずっと黙っておくのも酷じゃない…どうすんだろうね…?」
93マキ「さあな」
ドアが開く
94タケ「えー…、当人がお越しになったぞ」
95ミコト「失礼致します…」
96ハナ「噂をすればだね…毎度凄いタイミング」
97シロ「どうしたんですか…?なんだか疲れてますね…?」
98ミコト「……皆さんに頼みがあって来た。……ツキを、ツキを助けてやってくれ…」