第四話
外
01マキ「(煙を吸う→吐く)」
02ミコト「………」
03マキ「なんでこいつとこんなとこで…」
04ミコト「なんでこいつとこんなとこで…」
家の中
05ハナ「あれ、マキちゃん出かけるの?」
06マキ「ああ、煙草なくなりそうだから買いに出る」
07ハナ「げっ、あのカンカンに入ってたやつ全部吸ったの?!ほんと身体に悪そー…」
08マキ「ほっとけ。シロとタケが買い物から帰ってきたら伝えといて」
09ハナ「ほいほーい!俺も出かけるかも知んないけど、そん時はメモ残しとくよ!」
扉閉まる
マキ歩き出す
10マキ「(煙草に火をつける→吸う→吐く)……そういや休みに外出んの久しぶりかもな…ちょっと遠出でもしてみるか…」
大通り
11マキ「…っち、クソ…全然煙草屋見つかんねえじゃねえか…。大通りまでこればどっか空いてると思ってたのに人混みしかいやぁしねえ…こりゃさっさと家の方に戻るしか…」
12ツキ「あれ、マキさん?」
13マキ「あ?…げぇ。」
14ツキ「わあこんにちはー!珍しいですね、マキさんとこんなところで会うなんて…!」
15マキ「ああ俺もまさか出会うとは思わなかったよ…お前と…しかもこいつ付きで」
16ミコト「ツキお嬢様の付き人なんですから私がいるのは当たり前でしょう?」
17マキ「あーそうかよ、そりゃ失礼致しました。俺はもう帰るから話しかけてくれるなよ」
18ツキ「マキさん待ってください!」
19マキ「なんだよ嬢ちゃん、俺はちょこっとイライラしてんだけどなぁ?」
20ツキ「ここのお店のお菓子がすっごく美味しいんです!皆さんに食べていただきたいのでお渡ししてもいいですか?!ちょっと待っててくださいー!!あ、ミコトもね!!」
店の中にはいる
21マキ「ちょ、待っててって………」
22ミコト「え、ツキお嬢様っ…?!」
23マキ「(煙を吸う→吐く)」
24ミコト「………」
25マキ「なんでこいつとこんなとこで…」
26ミコト「……悪かったな」
27マキ「あ?付き添いだろ、別に…」
28ミコト「違う、…あの日のことだ」
29マキ「…ああ、俺も突っかかったからな」
30ミコト「………」
31マキ「…………、お前名前は」
32ミコト「畠恭」
33マキ「やっぱミコトじゃねえんだ。」
34ミコト「そりゃな。」
35マキ「なんであいつの付き添いを女でやってんだよ、お前男だろ」
36ミコト「………それ、あるか1本」
37マキ「あ?…ああ……(ライターを出す)…ん。」
煙草を1本渡す
38ミコト「悪い、(煙草に火をつける→吸って吐く)……あー、ピースか懐かしいな」
39マキ「お前吸ってんのか」
40ミコト「昔な、ツキの側に付いてからは辞めた。…俺がこうしてるのはツキの父上との約束だ。」
41マキ「あいつの?つかあいつの親って何してんだっけ?海外で仕事とか言ってたか。」
42ミコト「…………」
43マキ「あ?」
44ミコト「…ツキにはそう言ってるけどな、もう、この世にはいない。」
45マキ「は…?なんでだよ、あんときの紅茶は」
46ミコト「あれは俺が買った。この約束は遺言だ、女としてツキの側にいてやってくれっていう父親のな。」
47マキ「嘘つき続けるのかよ」
48ミコト「どうだろうな、ただ両親を交通事故で同時に無くして孤独になった俺をツキの両親は拾って育ててくれた。恩人の頼みであるなら人生をかけても突き通せる。(吸って吐く)やっぱり強いなこれ、よくこんなものずっと吸ってられるな?」
煙草を消す
49マキ「…俺も好きでこれを吸ってる訳じゃねえよ。あいつが吸ってたものより強いやつを吸えば、あいつに勝ってた気がしてたんだ」
50ミコト「子供みたいだな」
51マキ「…はっ、そうかもな」
52ミコト「……死は影響を与える。善悪どちらにでもな。俺は2度親を失くして残された者としてツキを同じように悲しませる訳にはいかない。」
53マキ「……悲しみ、ね。死を喜んだ者としてはどうすればいいとお前は思う。」
54ミコト「さあね、それはそれでいいんじゃねえの。けどお前の死を喜ぶヤツがお前の周りにいるかって話だ。………例えば兄弟とかな。」
ドアが開く
55ツキ「わー凄い時間かかっちゃった…すみませんマキさん…!どれも美味しそうで皆さんならどんなお菓子がいいか悩んじゃって…おまけに試食もらったら全部美味しくて食べ過ぎちゃいました…!」
56マキ「いや、別にいいけど…」
57ツキ「はい!これどうぞ!生菓子なので早めに召し上がってくださいね!ミコト、私たちの分も買ったから帰ったら紅茶入れてね!」
58ミコト「畏まりました。ではマキさん、失礼致します。」
59ツキ「またー!」
60マキ「………兄弟、ね」
回想
61医者「濱木くん、君いつになったら煙草辞めるんだい」
62マキ「やめる気はないんですよ先生。諦めてください。」
63医者「医者として私は言い続けなければならないんだよ。君がこの定期健康診断に来る度に口を酸っぱくしてね。何度も伝えてるがこのまま吸い続けると」
64マキ「死ぬってんでしょ。分かっててやってんだよ。この毒を辞める気は無い」
65医者「…在りきたりなことを言うようだが、残される家族の気持ちを考えたことがあるかい」
66マキ「本当にありきたりでつまんねぇな。俺に家族は元からいねぇよ」
家
67タケ「だから何度も言ってるだろ、醤油が足りないんだよ!」
68ハナ「絶対ソースだからー!!味見してみなってコクが足んないでしょコクがー!」
69シロ「もーやめなよふたりとも。充分今のままでも美味しいんだからさ」
70マキ「………(ため息)」
71タケ「ソースじゃない、味がただ濃くなるだけだろ!」
72ハナ「わかってないなー!まず土台がしっかりしないとダメだって話…あれマキちゃん…?」
73マキ「(スプーンで味見)………普通に塩コショウで整えれば充分じゃね」
74タケ「あ、ああ…なるほど塩コショウか…そうだな。」
75マキ「腹減ったから、早く食おうぜ。先シャワー浴びてくる」
マキ離席
76ハナ「驚いた…マキちゃんこういうのに口出さないタイプなのに」
77タケ「今日なにかあったのか…?」
78ハナ「さあ…?」
79シロ「マキ兄さん……」