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超短編

はんかちおとし。

作者: しおん

最近私のグループで流行っている遊びがある。


内容は単純明快で、すれ違いざまにハンカチを落としてターゲットの人物が拾ってくれるかくれないかを賭けるだけ。

そして、今日は私がそのハンカチを落とす役だ。


ターゲットは細身の大学生。



3




私は上着のポケットに手を入れ、準備にかかる。





2





ターゲットが近づいて来ているのを確認しつつ、ポケットの中のハンカチを直ぐに出せる位置にセット。






1






もう少し、もう少し。


詰まっていく距離に、私の心臓が騒ぎ出す。







0……作戦スタートだ。



上着のポケットから携帯を取り出すついでに、さりげなくハンカチを落とす。


わたしの隣で宙を舞うハンカチに不安と期待を寄せる。


拾うか、拾わないか……さぁどっち?


わたしの横を通り過ぎていくターゲットを横目で確認し、これはダメだと諦めた。


すれ違いざまに声をかけられなかったら、このゲームは負けたも同然。

それになんかぼーっとしてるし、無関心そうな奴だもん。ハンカチなんて気にしてるそぶりすらなかったし……今回はわたしの負けかなぁ。


「あの」


グッと腕を引かれ、私はそのまま180度回転した。


「ハンカチ、落としましたよ?」


「え?」


まさかこんな無理やり声をかけてくるとは思わなかった私は、恥ずかしいぐらいまぬけだったと思う。


どうしたらいいのかもわからずその場でカチンと凍って動けなくなってしまった私の代わりに、彼はかがんでハンカチを手にした。


「これ」


差し出してくる手のひらに乗っているのは私が故意に落としたハンカチでしかなくて、ありがとうと言って受け取るはずが、


「はい」


と返事をする事しかできなかった。


不思議そうにこちらの様子を伺う彼に、申し訳なさと不甲斐なさで私は感謝の言葉も口にしないままハンカチ片手に走っていた。








賭けには買ったけど、人として負けた気がした。







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