099 武術
ここでは21章6話までに登場した武術を紹介します。
21章6話までお読みになってからご覧になることをお奨めします。
◎ 紹介する項目
1. ベルレアン流槍術
2. フライユ流大剣術
3. カンビーニ流槍術
4. カンビーニ流拳術
5. ガルゴン流槍術
6. 素無男
7. ヤマト王国の格闘術
8. ウピンデムガの槍術
9. アスレア地方の刀術
10. アマノ王国で生まれた武術
11. 南方水術
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1. ベルレアン流槍術
メリエンヌ王国のベルレアン伯爵家が受け継ぐ槍術。伯爵家だけではなく、ベルレアン伯爵領軍や近隣の貴族や軍人も使う。
また、第二代国王アルフォンス一世も初代ベルレアン伯爵から槍術を学んでいる。そのため王家や王領の軍人もベルレアン流槍術や派生した槍術を使う。
徒歩と馬上での双方の技が存在する。
徒歩での槍は3m少々のものが標準。その場合、盾を使わず両手で槍を保持する。
馬上の場合は左手に盾、右手に槍。馬上槍は多少長めの槍を使うが、西洋の円錐形の槍とは違い、形状自体は徒歩のときと変わらない。
カンビーニ王国のカンビーニ流槍術とは類似点も多く、技の併用や連携も可能。
・『稲妻』
ベルレアン流槍術の基本にして究極とも言われる突き技。
構えは左を前の半身、足は後ろとなる右足に若干重心を置きつつも、前後左右どのようにも動ける余裕もある体勢。手は基本の通り、右は脇を締めて引き付け石突(穂先と逆の端)を包むように握り、左は三尺ほど前を保持する。その状態から一瞬にして爆発的に槍を突き出す。
防御を捨て、ひたすら槍の速度を高めた無駄のない技。達人ともなれば技と同時に大地が割れ、大気が衝撃波で震えるという。
・『二連返し』
相手に自身の槍を斜め上に弾かせ、その動きを利用して反転し石突側で迎撃、そして石突で相手の武器を流し返すと、更に槍を反転させて穂先で突きを放つ。
わざと隙を作るため、難しい技とされている。
・『大跳槍』
武器あるいは相手の体を下から跳ね上げ足場のない宙に飛ばし、更に追撃の突きを放つ。
・『稲妻落とし』
相手の槍を巻き落とす返し技。突きの『稲妻』への対抗技。
戦の神ポヴォールがシノブに授けた大剣術の『稲妻落とし』も同じ原理の技。
・『無槍水月映し』
体の僅かな動きや足捌きに魔力などで敵の出方を知る、先読みの技術。
極めれば槍すら不要と言われる。
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2. フライユ流大剣術
メリエンヌ王国のフライユ伯爵家が受け継ぐ大剣術。伯爵家だけではなく、フライユ伯爵領軍や近隣の貴族や軍人も使う。
また、第二代国王アルフォンス一世も初代フライユ伯爵から大剣術を学んでいる。そのため王家や王領の軍人もフライユ流大剣術や派生した大剣術を使う。
・『天地開闢』
横一文字の斬撃。極めれば太い鉄棒でも両断できる。
大技であり、シノブも難敵への決め技として用いることが多い。
・『神雷』
大上段からの一撃。雷のように降る剛剣は、達人であれば大地を衝撃波で震えさせる。
大技であり、シノブも難敵への決め技として用いることが多い。
・『金剛破』
フライユ流大剣術を代表する技。
強烈な踏み込みと共に放つ片手一本突き。通常は左片手での一本突きだが、稀に右片手でも使う。右の場合、厳密には『裏金剛破』と呼ぶべきかもしれない。
シノブは異神アナトを左、異神ヤムを右の『金剛破』で倒した。
・『千手』
手が千本に見えるくらいの猛烈な突き。
初代フライユ伯爵ユーレリアンは、これで秒間二百回の突きを放ったという。誰がどのようにして数えたかは定かでない。
・『燕切り』
袈裟懸けと逆袈裟の連続技。どちらか片方のみ、他の技との連携など様々に使う。
・『稲妻落とし』
大剣術の巻き落としと返し技。
ベルレアン流槍術と原理は同じ。殆どの武術は戦の神ポヴォールが授けた技を元にしており、原理が共通するものは多い。
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3. カンビーニ流槍術
カンビーニ王国の初代国王レオン一世が確立した槍術。カンビーニ王家および同国の貴族や軍人が使う。
王家のみに伝わる特別な技も存在する。
基本の構えはベルレアン流槍術に似ているが、カンビーニ流が攻撃的に僅かだが前傾気味、ベルレアン流が攻防自在の立身中正。
・『猛虎逆撃槍』
相手の槍を巻き上げて返し技を出す。
ベルレアン流槍術の巻き落とし技『稲妻落とし』と似た点が多い。
・『流星光翔槍』
カンビーニ流槍術最高奥義。
槍の石突で地面を突き、己の跳ぶ軌道を変えつつ相手を翻弄する。自身の脚と石突の双方で通常の跳躍ではありえない軌道で飛翔する。
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4. カンビーニ流拳術
カンビーニ王国の初代国王レオン一世が確立した拳術。カンビーニ王家および同国の貴族や軍人が使う。
・『猛虎光覇弾』
『銀獅子レオン』、カンビーニ王国の建国王レオン一世が光翔虎と出会ったときに習得したもの。試練を課した戦いの神ポヴォールが授けた技と思われる。
構えは左半身。そこから前に出した足を力強く踏み降ろし、瞬時に右半身に転じつつ低く身を沈めて飛び込み、右掌底を放つ。
・『獅子王双破』
両手を揃えての掌底。相撲でいうところの諸手突きだが、『猛虎光覇弾』と同様に空手や中国拳法に近い攻撃。
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5. ガルゴン流槍術
ガルゴン王国の王家および同国の貴族や軍人が使う槍術。技を授けたのは、他と同じく戦いの神ポヴォールだと思われる。
ベルレアン流槍術やカンビーニ流槍術と違い、大槍と大盾の双方を使うのが特徴。一般には右手で大槍を持ち左手で大盾を構える。
大槍は石突近くを右手のみで保持する。大盾は受け流し、吹き飛ばし、殴りつけなど、攻防の双方に活用する。
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6. 素無男
ドワーフ達の伝統の闘技。
大地の神テッラと戦いの神ポヴォールが授けた由緒ある武技で、相撲に極めて似ている。
荒素無男とは和素無男の二種類が存在する。前者は戦場での技で何でもあり、後者は祭りなどでの力比べで禁じ手がある。
この和素無男が現代日本の大相撲とほぼ同一の闘技。
ヴォーリ連合国とヤマト王国のドワーフ、双方で技は共通している。
基本の技として、上手投げ、下手投げ、首投げなどが確認されている。
・『千手覇利手』
猛烈な勢いで繰り出す無数の張り手。
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7. ヤマト王国の格闘術
カンビーニ流拳術に似た技。少なくとも『猛虎光覇弾』や『獅子王双破』は存在する。
以下、カンビーニ流拳術としては出ていない技。
・『熊山靠』
クマソ王家の秘技。肩から背を用いた体当たり。
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8. ウピンデムガの槍術
長さ6m以上もの金属製の槍を、片手で端だけを掴んで正確に繰り出す。ゾウに騎乗して使う武術だが、徒歩でも用いる。
極めて長い槍とウピンデムガに住む人々の長身を活かした跳躍が合わさり、非常に遠方からの攻撃を可能としている。
・『別貫甲』
相手に盾を投げつけ、投げた盾に隠れつつ流星のような勢いで続き、盾越しに槍を突き出す。
槍とは別に投げた甲を貫く動作を表した命名らしい。
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9. アスレア地方の刀術
エレビア王国のエレビア一刀流と、キルーシ王国のキルーシ一刀流の存在が確認されている。
上記は元が同じであり、技も共通している。片手持ちの日本刀のような刃の刀を使う。
・『真空斬り』
構えは居合い斬りでもするかのような体勢。左手を刀の背に添えるようにし、刃を斜め下に向ける。斬撃は斜め下からの斬り上げ。
・『飛燕剣』
両手を大きく斜め上に広げた独特の構えで、右手の刀を頭の上に掛かるように斜めにする。斬撃はそこからの斬り下ろし。
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10. アマノ王国で生まれた武術
アルノー流剣法、アルバーノ流小剣術、アルバーノ流格闘術などがある。どちらも、それぞれの技の集大成であり、更に発展中でもある。
アルノー流は真正面からの剣、アルバーノ流は臨機応変の戦闘術とされている。
なおアルバーノ流は正式にはアマノ王国軍特殊戦闘術と呼ばれるもので、アルバーノの小剣術や格闘術を体系化したもの。
情報局員のミリテオがアルバーノ流小剣術として編み出した技に『双鷹剣』もしくは『飛燕』というものがある。ただし、アルバーノが自流として認定したかは不明。
ちなみにアマノ王国軍では、以下を正式採用している。
・ベルレアン流槍術
・フライユ流大剣術
・アルノー流剣法(小剣術として)
・アマノ王国軍特殊戦闘術(アルバーノ流)
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11. 南方水術
南方水術には泳ぎ自体も含まれているが、本来の目的は海上や海中での護身。海生魔獣や巨大魚に対抗するため、落水時に船に戻る技などが編み出された。
多少の違いはあるものの、カンビーニ王国とガルゴン王国で共通している。
・『猛虎落水翔』
滑るように海に入った勢いをそのまま活かし、海中で速度を保ちつつ弧のように反転し、海面から飛び上がる術。
伝説によれば、ガルゴン王国の初代ビトリティス公爵サラベリスが彼の国の聖人ブルハーノ・ゾロから教わったらしい。猛虎の名は、虎の獣人のサラベリスに由来する。
・『波翅離洲駆』
トカゲのバシリスクのように水上走行する技。
技名は「波の上でも翅があるように洲から離れ駆けていく」かららしい。ガルゴン王国の聖人ブルハーノ・ゾロが命名した。




