"I met a bear".'s fact
ある日、俺は森に出かけた。
子供の頃からこの森に入りたいと思っていたのだが、危ないから入ってはいけないと言われて今まで入ったことはない。毒蛇に噛まれるかもしれないし、蜂に刺されるかもしれないことはわかっている。それでも、どんなに危険だと分かっていてもしてみたいことというものはあるのだ。
だいぶなだらかな道に入った。花が咲いていて、まるで人が手を加えたかのようだった。というのは、別にここに人間が住んでいるとか、定期的に人間が来ているとか、そういうことではない。人間にとってここは危険な場所とされているからだ。つまり、人間以外の何かがここに道を作ったことになる。
花畑に獣道ができているのだ。ここは大きな獣が通る道だった。それを確信したのはそれからまもなくのことだ。
クマが道の向こうからこちらへ来る。俺はあまりにも突然のことに腰を抜かしてしまい、動けずにいた。クマが俺の目の前まで来ると立ち止まった。そしてあまりの混乱でクマが俺にこう言い放ったように聞こえた。
「なんで逃げないんだい?」
そうだ、俺は逃げなければいけない。俺はクマに背を向けると一目散に走った。もちろんクマは俺を見逃すつもりはなく、後ろから追って来る。
何フィート走っただろう。とっさのことで俺は近くの木に登った。クマが木登りなんてできるはずもなく、数分もすると諦めて戻っていった。あのクマは人の言葉を話せるのか、あれが俺の幻聴だったのか、それだけの知能があったのかは俺にもわからない。
それからそのクマとあったことはない。ただ、あの時俺が銃を持って来ていれば今頃あいつは部屋のカーペットになっていただろう。