表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

秀麗眉目

1987年3月26日。

福岡県の糟屋郡にある平成の世に出て一世を風靡し、日本のシンガーソングライターとして名をはせる少女が生まれた。


その少女の名前は吉岡唯。

後の、YUIである。


そのYUIを生んだ母親が吉岡華子と呼ばれる女性であり、作者としてもこの母がシングルマザーとしてYUIを生んでくれたことは、YUIファンとして感謝の意を称えるべきであると感じる。

吉岡華子は生まれたばかりの唯をベッドの横で見ながら、笑っているがどこか寂しげに唯を見ていた。

病室の扉が開いた。


扉を開けて入ってきたのは、華子の母親で唯の祖母である良子であった。

吉岡良子(華子・・やはり、あんたはこの子を産んでしまったんだね・・父親もおらず女手一つで育てるのは辛いことだって分かっているんだろうね。)


吉岡華子(お母ちゃん。私は決めたの・・この子には父親の名前は明かさないってね。女手一つで育てていくって決めたのよ。)


吉岡良子(あんたの・・父親は世間的には立派な人になると感じるよ・・けど、あの人が認知してやる。俺は昔に離婚をしているからちゃんと籍を入れて出来た子供もまとめて支えてやるって言っていたのに、何であんたはあの人の言う事を聞かなかったんだい。)


良子は溜息を吐き、華子のお見舞いに来た友人が置いて行ったリンゴを果物ナイフで切り独りで自分で食べた。

短気な性分なのだろう、良子は貧乏ゆすりをしながら出産して間もない娘の前でマルボロを取り出しライターに火をつけて吸い始めた。


部屋の窓は開けていなかったから、すぐに部屋に煙が充満して空気が悪くなった。

華子は少し怒り舌打ちをして、体を起こしてイライラしながら部屋の窓を無言で開けた。

吉岡華子(お母ちゃん・・怒。自分の娘が孫を産んだんだから娘の体をいたわるだけでなく、孫の体のことを考えたら普通は病室で煙草何て吸うなんて常識が無いんじゃないの・・怒。)

華子は怖い口調で良子に言った。


吉岡良子(母親になってうるさくなったねえ。15で餓鬼を産んだ不良娘に注意されたくないね。)良子は上に向いて煙を吐いた。


吉岡華子(この子の父親は離婚しているけど、前妻との間には2人も男の子がいるしあの人はこの国の大物に何れはなるから、私はそれを踏まえて断ったのよ。)


吉岡良子(はああ~・・けどね、あんたは15歳だから後のことを考えていないんだよ。あの父親に対して養育費も生活費も入りませんとか・・あんな金持ちだったらねえ、生活費や養育費なんてバンバン出せるよ!なのに・・断って・・どうせなら、お金をもっとくすねて私も孫の金からプラダやビトンのバッグを買いたいよ。どうするのよ・・餓鬼1匹、我が家に入ったら私や父ちゃんの経営する昆布、乾物屋は潰れるわよ。

バブル経済何ていつ破裂するかわからないのにさ・・。)


吉岡華子(私も違う仕事をして働くわよ。パートでも何でも…高校も辞めたからね。)華子は娘にやさしく微笑んだ。


その後退院し時は流れ1994年4月、吉岡唯は小学生になった。

学校には早くに慣れたが、小学校から帰っても母は仕事でおらず友達の家に行くか祖父母の乾物屋に自転車を走らせ10分で遊びに行ったりした。


吉岡華子(は~あ・・私は小学1年生だけど、既に社会や学校が面白くないは・・。

今日何て授業参観日だったけどお母さんやお祖母ちゃん、お爺ちゃんは共働きだし、同級生の子がお母さんまだかなってそわそわしている姿とか見ていたら、は?何をそんなにそわそわしてるのアホじゃないって冷めた気持ちになるは・・馬鹿みたい。

あ~あ・・今、祖母ちゃんと爺ちゃんの家に向かっているけど、おやつは美味い棒の賞味期限が切れて3日過ぎてる奴か近所のおばちゃんがよくくれるどら焼きだろうな・・。

うちはお金がないから、それで我慢よね~お金なんてちょっと~あれば~良いの~よ!

ふん・・アホか世の中お金がないと生きていけないわ。

私は何か、お金をどんどん稼ぐ方法を見つけないと・・勉強もありだけどもっと一攫千金みたいなやり方で莫大な利益がどかんとね!私ってこの年齢で冷めてるは・・。)


小学校1年生の唯はこの頃から既に冷めていた目をしていた。

そのクールなドライな目つきと尖った大人じみた顔つきは、年齢より老けて見えたが大人の要素を醸し出していた。

所謂、美少女であり周囲の大人たちは既に彼女が通ると一目見る感じで通り過ぎ、唯の祖父の辰五郎は俺の孫は将来はAV!・・あっ!じゃなかった・・女優になるぜと高笑いに笑い自慢しているありさまだった。

唯は深くため息を吐き、ドライな目で正面を向きお気に入りのお母さんが自分の誕生日に買ってくれた自転車にまたがり口笛を吹きながら坂道を下って行った。


唯(今日は金曜日だし、明日は第二土曜日だから学校は休みで2連休で楽しい週末になるは~でも、木曜日の塾の勉強も昨日で一先ず終わったから、ゆっくりできるぞ~君がすきだ~と!さけび~たい!)


アニメのスラムダンクの主題歌を口ずさみながら、坂を下り走りやがて博多湾に出た。

博多湾には元寇のときの遺跡の石塁があり、その石塁を右に曲がり奥に行けば祖父母の経営する乾物屋の昆布 吉岡屋の看板が見えてくる。

ふと、唯が下の海岸沿いを見ると元寇の石塁に向かい何か本を持ち石塁に向かい話している髪の短い華奢で背が高い女の子がいた。


唯(変な子・・石塁に向かって話しているなんて天然な夢見る夢子ちゃんかしら?歳は・・私とあんまり変わらない。

むしろ、少し年上かな?)


唯は祖父母の家に行く前に必ず自転車を止め福岡の海を見るのが好きだった。

自転車を止め砂浜に行き、日が沈みかけている海を見ながら唯は溜息を吐いた。


唯(はあ~今はゴールデンウイークの前の季節だから、海の色が赤潮で真っ赤よね~この赤いのがプランクトンの死骸か・・まるでこの世に恨みを残すみたいに海を赤く染めている・・。)


唯はポケットに手を突っ込み、お菓子のシュガーポットを取り出し煙草を吸うように銀紙を丸めて口にくわえた。


少女(まるで・・血の色ね・・。)


突然自分の耳元で囁いた声を聴き、唯は誰だかわからず少し驚いたが振り向いたら石塁に向かい話していた少女がいたのである。


少女(血の色のようだと言ったの・・貴方だって思っているんでしょ。)


この少女も唯の様に目つきがドライでどこか冷めた魅力を持っていた。


唯(あの・・前から気になっていたんですけど・・金曜日の今頃に何時も石塁に向かい話してますよね?何か理由でもあるのですか?

まさか!小児うつ病を患っている・・又は・・頭に何か障害を患っているんですか・・。

健常者でしたらすいません・・けど、気になりましてね。)


少女(私は健常者よ。障碍児だったら頭に変なゴム製の用具をはめて・・うう・・とかうなってるじゃない、私はね将来は女優やモデルになりたいの!だから、牛乳を飲んであの場所でセリフを覚える練習をしているのよ。)


唯(ふ~ん・・貴方は有名になりたいんですね・・私は将来は・・たこ焼き屋のおじちゃんになりたいんだけど・・お金を儲けるには芸能界も憧れますね・・私とあんまり年齢は変わらなそうですが、小学校何年生ですか?同じ校区・・では無いですよね?)


少女(私は博多第3小学校で小学2年生よ。貴方は?)


唯(私より1つだけ学年が上だったのね。ほとんど変わりませんね・・私は糟屋第1小学校です。名前は吉岡唯です。

小学校の係りは図書係りです。教室の電気をつけて消すだけの係りだから楽で楽しいです。貴方のお名前は?)


唯はシュガースポットをその少女にも差し出した。

少女は笑いながら、シュガースポットを受け取りニコニコ笑いながら口にくわえこう言った。


少女(私の名前は・・篠田麻里子。小学校では同級生より大人っぽくて背が高くサバサバしてるから麻里子様って呼ばれているは笑。

宜しくね唯。)


この少女も後に遅咲きだが日本の芸能界で有名になる少女時代の篠田麻里子である。

2人の少女は普段はドライだが、気の合う友達ができて笑いながら夕日に沈む綺麗な博多の海を赤潮交じりの生臭さが強い海を眺めていた。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ