エピローグ
「ほら、早く早く!」
太陽が光り輝き青空が広がる晴天の中、コンクリートの地面を走る音と共に少女の高い声が響く。
「速すぎ」
「貴方はもう少し落ち着きを持くべきよ」
そんな少女から僅かに遅れて二人の少女が呆れたように追いついてくる。一人は銀髪の長い髪の小柄な少女、もう一人は黒髪の大和撫子という言葉が似合う少女だ。
「二人が遅いんだよ」
そんな二人に抗議するのは長い黒髪の少女だった。快活そうな笑を浮かべながら制服を着た少女たちはコンクリートの道を歩いていく。
「マオ、そうやってまた転んでゼクスに怒られても知らないから」
「こ、転んだりしないよ!ハクは私の運動神経を知らないんだから…」
「この前の成績表では体育は2だったかしら?」
「違うよ!4だったもん!小夜までそんな意地悪するんだから!!」
マオと呼ばれた二人の言葉に頬を大きく膨らまし抗議する。その表情を見て二人はクスリと笑った。
平凡でどこにでもある日常の中を少女たちは歩いていた。
そう、これでいい。何も知らず、何も思い出せず、ただ憧れた日常の中を生きてくれればいい。そこに俺が鳴神響夜として入ることは出来ないけれど、皆が笑顔を浮かべてくれているだけで満足だ。
俺はその景色をただ見守っていくだけなのだから。
「………?」
「どうしたの、マオ」
「何か今綺麗な光が見えたような…」
「夏の暑さでもう頭がやられてしまったなんて……可哀想なマオ」
「ち、違うよ!ホントに見たんだよ!」
「何かが光を反射しただけだと思う」
「う~ん…」
二人は首を捻るマオを気にせず歩いていく。マオがもう一度空を見上げると、そこにはただ青い空が広がっているだけだった。
「やっぱり気のせいだったのかなぁ」
そう呟き、二人の下へと駆けていく。少女たちは、ただありふれた日常の中を、当たり前のように歩いてく。