殺人鬼だって傷つく時はある・・・・たぶん
「・・・人間は止めたくなかったな」
by響夜
「我から見れば主はまだ人間じゃ!!」
byマオ
「ええい!ちょこまかと動きおって!!」
我は空にいる赤竜へ土槍を放つ。それを赤竜はいとも簡単に躱す。まあ当たる方が凄いのじゃが―――――主に相手の頭がいろんな意味で――――――当然これは躱させるために放った魔法。
「爆ぜろ」
我の言葉と同時に土槍は突然爆発する。それによって飛び散った土の塊は赤竜を襲う。赤竜は襲い掛かる土から逃れようと翼を翔かせるがもう遅い。
「貫け」
その言葉と共に赤竜へ止めを刺そうとした瞬間、我と赤竜の間に黒い閃光が走る。
「む!?」
その閃光を見た我はそれが放たれた方向を見る。そこから僅かに覗いているのはドラゴンの頭。
響夜が危ない!我がそう思い赤竜を見れば奴の口内から赤い炎がチロチロと漏れている。
「GAAAAAAAAAAA!!!」
竜の叫びと共に放たれた炎は我を燃やさんと迫ってくる。・・・・この程度の炎で!
「ハアッ!」
我は向かってくる炎へ黒い閃光を放つ。それは向かってくる炎を飲み込み赤竜へと迫っていく。赤竜もそれを見て無理だと悟ったのだろう、回避行動にでるがすぐそこまで迫っていた閃光を完全に躱せるわけもなく赤竜は脇腹を抉られた。その痛みからか赤竜はこれまでよりも一際大きな咆哮を上げると我へ次々に火炎弾を放つ。
「ふん!貴様程度で我を殺せると思うな!!」
我はそれを黒い閃光によって消し去る。竜もそれには警戒していたのだろう余裕をもって躱す。
「・・・・無駄じゃ」
だが竜は一つ勘違いをしていた。それは―――
「我が連続で放てないとでも思ったか」
我は竜の回避した場所へ次々に閃光を放つ。それは竜の体を次々に消し去っていき、やがて竜は塵すら残さずに消えていった。
ドガァン!!
その音を聞いた我が神殿を見れば外壁の一部が破壊されていた。そしてやがて聞こえてくる咆哮。気づけば我はその場所へと走っていた。
「・・・・!?」
だが我の行手を阻むように何体ものゴーレムが土から現れる。
「くっ!何故ゴーレムが!!」
こやつらは魔法使いが造るもので自然発生するようなものではない。まさかあの神殿に魔法使いが!?
一瞬その考えが頭を過ぎったがその考えを放棄する。竜を従える魔法使いなど聞いたことがない。
「人形の分際で!」
我は目の前にいるゴーレム達を次々に泥へ還していくが数が多い。奴等は再び泥から現れると此方へ殺到する。
「くっ、響夜が心配だというのに!」
我は目の前のゴーレム達に最大級の魔法を放った。
◆
「・・・・・」
外が五月蝿い。マオはまだゴブリン共と遊んでるのか?
「GUROOOOOOOOOO!!!」
「おっと、悪いな。お前が先だった」
俺は目の前にいる竜を見て笑う。
「出来る限り長持ちしてくれよ。・・・実験が出来なくなる」
俺はその言葉と共に竜へと駆ける。竜はその右手を振り上げ俺を迎撃しようとするが――――
「グレイプニル!」
その振り上げた右手に絡みつく何十本もの鎖。それは竜の動きを阻害し隙をつくる。
「オラァ!!」
さっきの戦闘。此奴は異常なまでの防御力を誇っている。恐らくそれが此奴の強みなんだろうが。
「至近距離の爆撃はどうだ?」
俺は想像形成で創り出したパンツァーファウストを竜の胴体へ放つ。それは奴の骨を砕き俺をも巻き込んで爆発した。
「――――ッ」
俺を襲う火炎と激痛。俺の右腕は爆発に巻き込まれ吹き飛ぶが瞬時に再生した。それだけじゃない俺にあった火傷の痛みも直ぐ様癒えていく。
「・・・やっぱり死なないか」
恐らく俺の体は一瞬で全身を消し飛ばされない限り復活するのだろう。俺は自分の体を冷めた目で見る。
「・・・人間は止めたくなかったな」
ポツリと呟く言葉。それは復活した竜の咆哮でかき消された。
「今遊んでやるよ」
俺はそれを見て再び笑みを浮かべる。竜は俺へと勢いよく迫るがそう簡単に通すかよ。
「これでもちっと冷静になれや」
俺は竜の頭上に何十個という巨大な石を創り奴の頭へ落下させる。その衝撃によって奴は思わず頭を床へ打ち付け転がりながら止まった。
「続いてはこれだ」
俺は再びグロックとデザートイーグルを取り出す。奴は起き上がろうとするがそれを俺は神殺しの鎖で封じた。
「俺は足が遅くてよ。皆に置いてかれちまうんだ。――――――テメェもその苦しみを味わえ」
俺はその言葉と共に銃弾を放つ。放たれた銃弾は竜の骨へ突き刺さっていく。すると竜は苦悶の声を上げた。見れば竜の周囲には紫色の何か文字が書かれた帯状のものが幾重にも纏わり付いていた。
「・・・どうよ置いてかれる気持ちは」
俺はそれを見て嗤う。今の銃弾には呪の属性が追加されている。それは重石、受けたものは何かを背負っている様に体が重くなり、時間が経つにつれてその重圧は増していく。実際に重圧が掛かっているわけではないが動きは遅くなっていくから蜂の巣にされかねないな。
「G・・・GAAAAAAAAAAAAA!!!」
竜としての誇りだろうか。その体を引き摺りながらも竜は俺へと向かってくる。
「ああ、良いじゃねえか。そうだ・・そうだよなぁ!もっと輝かせろよ!その命を燃やして、俺の首にその牙突き立ててみせろやぁ!!!」
俺向かってくる竜に目を輝かせながら言う。竜はどれほどの重圧が増してこようとその速度を緩めることはなく俺へ突進してくる。
「神殺しの鎖」
俺は背後の空間から無数の鎖を呼び出す。神殺しの鎖は向かってくる竜を迎え撃つように放たれた。それはまるで嵐のようだった。鎖は床を、壁を破壊し目標を蹂躙すべく向かっていく。竜はその鎖を破壊するように口から黒い閃光を放ったが神器を破壊するには神器かそれを超えるだけの一撃が必要になる。俺の神殺しの鎖は複数で一つの神器の為その硬度は他と比べ低いがそれでも神器。
「その程度で破壊できると思うなよ」
神殺しの鎖はその閃光を受け幾つかが損傷するが竜の四肢を拘束していく。
「GAAAAAAAAAAAA!!!」
竜は神器の破壊が無理だと悟ったのか俺へとその狙いを変えて俺に閃光を放つ。だがその攻撃も俺の前方に展開された神殺しの鎖による壁で俺へ届くこともない。
「・・・・ゲームは終了だ」
俺は想像形成を発動する。
「恨みたけりゃ恨め。呪いたけりゃ呪え。毎晩毎晩俺の耳に呪詛でも届けろ」
俺の手に形成される黒い球体。それを俺は奴へ向ける。
「その言葉が糧となり、お前の命が力となる」
言霊。魔法を使う上で必要な詠唱、それに込められた想い。今の俺ではこれを創るのに只の想像だけでは届きはしないだろう。だから・・・殺人鬼の想いを言霊にする。
「黒聖槍の骸」
球体は徐々にその形を変え。やがて漆黒の槍となる。俺はそれを投擲の構えをとり
「消え失せろ」
放った。放たれた槍は黒い輝きを放ちながら竜へと刺さり
カシャァァン
砕けた。それと同時に竜に異常が起きた。竜を構成していた骨に亀裂が入り塵に変わっていく。
「GUGAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
竜の咆哮も次第に小さくなっていき、やがてそこには何も残らなかった。
「盛者必衰の理ってな」
今のにはその生物の持つ魔力の分だけその体を塵にする。という呪いが掛かっていた。効くかどうかも怪しかったが、何とか効いて良かった。実際あれはあそこで砕けるようには創っていなかったんだが・・・
「魔導具の生成ってのは難しいな」
正確には神器に近い魔導具だが。俺が竜のいた場所を眺めていると
ドガァン!
「うおっ!」
突然壁が壊れへんてこな・・・ロボット?の様な物が飛び込んでくる。俺はその光景に呆然とし・・・
「・・・ご・・ぶおっ!!」
よく分からない声を上げて潰された。そして誰かが飛び降りる音。
「響夜ーーー!!何処におるのじゃーーーー!!!!」
・・・・・マオ、これはテメェがやったのか。俺は何とかロボットの様な物の下から抜け出すとマオを見る。
「響夜!無事じゃったのじゃな!!」
「テメェのせいで死ぬかと思ったわ」
俺は笑顔のマオの頭を掴むと思い切り力を込める。
「痛い、痛い!痛いのじゃ響夜!」
マオは俺の手から抜け出すと頭を抑える。っち、これからだったのによ。
「で、テメェは今までずっとゴブリンと遊んでたのか?」
「いや、突然赤竜に襲われての。消し飛ばして響夜の下に行こうと思ったらゴーレム共が・・・」
ゴーレムってのは多分あのロボットもどきだよな。・・・赤竜ってのはそのまま赤い竜か?
「響夜!ドラゴンはどうしたのじゃ!?」
「ああ、その骨か。」
「・・・・骨?」
マオは首を傾げる。というか何故それを知っている。
「ああ、骨で出来た竜だ」
「・・・・多分それは骸竜じゃな」
「骸竜?」
その言葉に俺は首を傾げる。
「うむ。死んで骨になった竜が空気中に漂うマナを大量に吸収してなるものじゃ」
マナ・・・・魔力の回復等の魔力の元になるものだっけか。
「奴等は魔法の耐久が低い代わりに物理攻撃の耐久が他のドラゴンよりも高いのじゃ」
「ふ~ん」
「で、そのドラゴンは?」
「殺した」
「・・・・・は?」
「いや、だから殺した」
俺がそう言うとマオは俺に詰め寄ってくる。・・・顔が近い。
「ほ、ほんとに倒したのか!?」
「あ、ああ」
その迫力に押され思わず俺は頷いた。
「だ、大丈夫じゃったのか!!?」
「・・・死にかけて人間やめた」
「?」
隠していてもいつかはバレる。だったら今のうちに言っといたほうが良いだろう。俺はそう思ってマオに神器も含めて今回のことを話した。
◆
「・・・・大丈夫か?」
「ああ」
マオに説明をしてどうにかして悪魔の心臓を外せないか聞いてみた。・・・・そしてその結果が
「すまぬ」
「お前が謝ることじゃねえよ」
これだ。俺から神器を取り出すことは出来ず、やるには俺を殺すしかない。死にたくはないから当然の如くそれは却下。俺はこのまま半不死的な能力を得た。しかも下手をするとこれ、不老にもなるのではないかとの悪い知らせ付きで。
「まあ、死ななかっただけ良しとするか」
あそこでこれがなかったら俺は今此処にいないことになる。助かったのだから多少の不満は我慢するとしよう。
「・・・・それじゃギルドに帰るぞ」
「うむ」
俺達は頷き合うとその場を離れようとする。鞄が消されたのは痛かった。あの中には色々入ってたんだが・・・。
俺は立ち上がり辺りを見回し・・・気付いた。
「・・・・・依頼達成の証拠どうしよう」
「・・・・あ」
その言葉に立ち止まるマオ。ドラゴンたちは二匹とも消えちまった。ゴーレムは持って行っても性がない。
「「・・・・・・・・」」
俺達はその後何とか依頼達成の証拠であるゴブリン13匹の片耳を探し出した。戦うよりも探すほうが疲れるってどういうことだよ。
こうして俺達の初めての依頼はまさかの結果で終わった。
感想、批判、意見がありましたらどうぞ送ってください。




