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死神は嗤う、仮面を付けてⅧ

二週間ぶりの投稿。いや、もう三週間ぶりかも・・・。

二次創作と内容にいまいち納得がいかず遅れてしまいました。



「・・・・・」


 響夜の拳はマオの頬を掠りその背後の地面に突き刺さっていた。響夜はすぐさまその場から飛び退きマオとの距離を取る。


「・・・・外したか」


 呟くと同時に響夜の背後が歪む。


「神殺しのグレイプニル


 迫り来る鎖にマオはすぐさまの場から転移し回避する。


 外した?


 響夜の言葉にマオは眉を顰める。だがその思考は響夜が動くと同時に現実へと戻される。

 マオが放った閃光を破壊の脈動ヨルムンガンドで裂き響夜はマオへと迫る。周囲は鎖によって包囲され転移しようにも響夜が繰り出す連撃がその隙を与えはしない。

 放たれた一閃を交わし切れずマオの肩が割かれる。その痛みに苦悶の表情を浮かべるがマオはその足を止めず反撃へと移る。

 魔力によって創られた剣を突き出しマオは響夜の鎌が振り払えない程の距離へと接近する。


「甘いんだよ」


 だが、響夜の胸から槍を握った骸骨が出現する。


「詠唱しなくてもこの程度の事は容易にできるんだよ。何時までもテメェが俺より強いと思うなよ」


 人骨はマオの手の甲を裂く。予想外の一撃にマオの脚が止まった。その隙を逃さずマオの身体を神殺しの鎖が締め付ける。

 響夜から感じられる魔力が高まると同時にマオは彼が何をおこなうのかを理解した。この世界の断りを出されれば物量差では勝ち目など無い。これに対抗するならば一つだろう。


『沼に落ちし者たちよ 目を覚ませ 光を失い盲目になりし者たちよ 我が声を聞け』


『汝理を外れし異なる者よ 汝が器は破壊され 満たされた水は零れ落ちる』


『汝等、かつて神より恥辱を受けし者たち也 汝等が身は煉獄の炎に焼かれ燃え盛る』


『我は総てを断罪せし者 我が意を持って汝を壊そう 我は世界が中心大樹に座し者也』


『汝等が慟哭を神は聞き入れはしない 汝等、それを良しとするか』


『汝が業を滅却しよう 汝が力を剥奪しよう』


『騎士たちよ剣を取れ 己が縛鎖を断ち切るのだ 今こそ我等が征服する時なり この黄昏に汝等が剣を突き立てろ』


『我は総てを創生する世界の理也 我は九つの円盤の中心を担う者也』


『怒りのディエス・イレ――慟哭の英雄譚ヴィーンゴールヴ・エインヘリャル


『Access (アクセス)・Yggdrasill(創世の世界樹)』


 展開される二つの世界は既存していた世界を塗りつぶし、やがてぶつかりあう。


「魅せろよ英雄!お前達のほこりを奴に突き立てろ!!」


「――――――滅す」


 響夜が呼び出した骸骨達はやがて肉体を得て生前の姿へと姿を変える。それぞれが一騎当千の英雄達。彼らは自らの王に牙を剥く魔王へとその狙いを定める。

 荒々しい魔力が吹き荒れるのに対しマオの世界は何処までも広がる水面に静寂が立ちこめ黄昏を塗りつぶす様に闇夜の夜空と満月が輝いている。

 だが、何より異質なのはマオの背後。そこに聳え立つ一本の大樹だ。根元は水面の遥か下にありその頂きも天へと伸び続けている。


「オオオオオォォォォォ!!!」


 響夜が駆けだすと同時にその後に続く様に次々にマオへと駆けだす英雄達。それを迎え撃つ大樹とマオ。

 まるで底が見えない程の魔力によって放たれたマオの一撃。それを防ぐために十数人の英雄が犠牲になる。ある者は弓を射、ある者は両手に携える直剣を振り下ろす。だが如何なる攻撃にも大樹は動じない。


「疾走する魔狼のフェンリル!!」


 業火を纏い響夜はマオへと高速で迫る。高密度の魔力によって出来た障壁へと突撃する。

 互いの魔力を削り合う攻防。両者一歩も譲らず目の前にいる敵を倒そうとぶつかりあう。


だが、マオが纏っていた魔力が突然薄れて行く。その隙間を縫い響夜は魔力を込め続ける。

やがて轟音を奏で疾走する魔狼フェンリルはマオの障壁を消し飛ばした。


「貰ったあァァァァ!!!」


 苦悶の表情を浮かべるマオへ響夜は破壊の脈動ヨルムンガンドを振り落とした。


―――――パキイィィィィィィィィン!


 まるで硝子が割れるかのような音と共にマオの身体が砕け散った。その現象に響夜は只瞠目する。

 それと同時に響夜の脇腹に激痛が走る。それを感じると響夜は考えるより早くその場から離れる。瞬間、響夜の左腕が閃光に飲まれ消失した。


「――――――くそ!」


 悪魔の心臓グリモア・ハートで左腕を再生すると同時に響夜はそこにいる者を睨み付ける。


「・・・・・」


 そこには先程砕けた筈のマオがいた。響夜の率いる英雄の一人が射た矢がマオを貫く。再び硝子の砕ける音と共にマオは砕け散る。


「邪魔だぞ」


 その言葉と共にその英雄は一瞬で消し飛ばされる。


「・・・虚像・・創造・・・まあいい」


 その姿のマオを睨みながら響夜は構える。今こうしている間にもマオは英雄達に攻撃をされようとも砕け再び現れているのだ。

 殺す事の出来ない敵。そもそも同位階にいるのかも怪しい。いや、恐らくは・・・。

 響夜は歯を食いしばる。出来るのならこうなっては欲しくなかった。こんな世界を創りあげて等欲しくは無かったと。


「・・・・・行くぞ」


 響夜は英雄達をサポートへと回らせ自らマオへと迫る。

 上段から放った一撃をマオは難なく躱し響夜へ刺突を放つ。それを呼び出した英雄の一人が受け流しマオの足元から何人もの英雄がマオを刺し貫く。けれどそれも意味をなさない。どれ程刺し貫かれ、射ぬかれようと彼女は復活する。


「オオオオオオオォォォォォ!!!」


 響夜は神殺しの鎖でマオの両腕を拘束する。そして首を刎ねようとした瞬間マオは転移し響夜の背後へと現れ閃光を放つ。

 完全に回避することは不可能。響夜はそれを一瞬で判断するとマオへと振り向く。


「―――――っが!・・・ッオオオオオオオオォォォォォ!!!!」


 左半身が焼け焦げ激痛が響夜を襲う。それを歯を食い縛りながら耐え響夜は右腕に握る破壊の脈動を振り下ろす。

 魔力が尽き始めて来たのか響夜の世界は徐々にマオの大樹の世界へと飲み込まれていく。


「―――――――――――Accessアクセス・Jotunheimr(忌むべき巨人の王)!!!!」


 いや、違う。飲み込まれていくのではなく飲み込もうとしているのだ。響夜の背後にボロ布を纏った巨大な死神の幻影が現れる。それはまるで響夜の動きに同化するように大樹へとその手に持った鎌を振り落とした。


「―――――――!?」


 そこで初めてマオの顔が歪む。それはまるでマオと大樹が痛みを共有しているかのようであった。

 そして響夜が降り放った鎌はマオの身体へと寸分の狂い無く振り下ろされ――――その身体に吸い込まれる様に突き刺さった。


「・・・はっ、かあ・・・・ぁ!!」


 その一撃をマオは回避することが出来なかった。痛みに苦しみながらもその眼は只只疑問の物であった。


「不思議か?俺がこの世界を吐き出す事が」


「・・・・・・っ・・」


「・・・・・まあ、お前が知る必要はねえけどよ」


 響夜はそう言って腕に力を込めた―――――筈だった。


「―――――あ?」


 疑問と共に響夜の身体が背後へと倒れる。


「な!・・・・あ・・の影法師・・・・!!」


 握り潰す拳からは血が滴りながら響夜は憎悪の炎を燃やす。

 それと共に死神の身体は崩れ落ちて行く。死神は崩れ落ちながらも響夜の憎悪を表す様にその眼からは血涙を流し怨嗟の叫びを上げ続ける。

 やがて、死神が消え去りマオの展開していた世界も消えて行く。

 二人は元の城へと戻って行く。


「・・・・・・・く・・・そ・・」


 ズタボロの状態で倒れている響夜へとマオは深手を負った身体を引き摺り近付いて行く。


「――――――響夜」


 マオは響夜の傍へと座るとその体を抱きしめる。


「お願い・・・・戻って来て・・・」


 涙を流しながら響夜を抱き締めるマオ。響夜はその姿に茫然としマオに見えないよう苦笑する。


「・・・・結局、俺もお前も甘ちゃんだよ」


「・・・・・え?」


 響夜はポケットの中から何かの装置を取り出すとそのボタンを押した。

 突如低い唸り声を上げて振動する城。マオは驚き周囲を見渡す。

 大きな亀裂が床や壁、天井へと走っていく。天井から次々と落ちて来る瓦礫にマオは響夜を抱き締めながらその場から移動しようとする。

 

「ったく・・・お前は自分のことだけ考えてやがれ」


 その言葉と共にマオは誰かに突き飛ばされる。油断していたマオはその衝撃に抗う事が出来ず前へと押し出された。


「・・・・必ず迎えに行く」


「―――――響夜!?」


 崩壊していく天井の瓦礫に飲まれながらも不思議と響夜の声はマオへと届いていた。


「またお前達と笑える日々に戻すよ」


 ほんの一瞬。刹那の瞬間に見えた響夜の穏やかな笑顔に圧倒されマオは何も言えなくなる。

 瓦礫はやがて二人が戦っていた玉座の間を埋め尽くし響夜の姿も崩落した瓦礫に飲み込まれた。


「・・・・・・響夜・・・」


 マオは只茫然とそう呟くしかなかった。


 ◆


 崩れ落ちた城を一瞥し響夜は炎の海に飲み込まれていく街を歩いて行く。その両腕にはアメルダの遺体が抱かれていた。


「よう、随分良い面してるじゃねえか」


 背後にいるであろう人物に響夜は声を掛ける。


「若僧に随分と良い薬を貰った」


 そう言いながら出て来たのはバトラー。響夜は振り向くと何の警戒もせずバトラーへと声を掛ける。


「アメルダは俺が殺した」


「・・・・・・そうか」


 響夜の言い放った言葉にバトラーは只静かな声でそう言った。


「最後までテメェの夫に取り憑かれてたよ」


「・・・・そうか」


 バトラーは響夜からアメルダの遺体を受け取ると抱き締めた。


「どうする?俺は仇ってことになるが・・・・今此処でやりあうか?」


 その言葉にバトラーは首を横に振った。


「それは只私の自己満足だ。お嬢様への気持ちには私自身の力でけじめを着けよう。こうなってしまったのは私が逃げてしまったのが原因だ」


「・・・そうかよ。これからどうすんだ?」


「・・・帝国は消え去り後には怯える民達だけが取り残された。私は御二方の意思を継ごう」


 そう告げてバトラーは燃え盛る街の中を歩いて行った。その姿に響夜は溜息を吐きやがて呆れた表情で口を開いた。


「――――――で、お前ら何してんの?」


「おいおい、出るに出れなかったんだから仕方ねえだろ」


「あそこで出たら私達完全に空気読めてない人ですよ」


 呆れる響夜にそう言いながら出て来たのはシグルズとエルザ。二人とも煤や傷でボロボロだ。


「んで、結局どうだった?」


「影法師に最後に邪魔された。・・・・・もう神々の黄昏ラグナロクは回避出来ないだろうな」


「それってマオちゃんが・・・」


「覚醒してた」


「姫君登場かよ・・・・所でテメェの妹の吸血鬼は?」


 その言葉に響夜は今呼ぶ、と言って口を開く。


「小夜・・・今「此処にいますわ、兄様」・・・・そうか」


 そう言って現れたのはハクに串刺しにされた筈の小夜。衣服にも身体にもまるで外傷が見受けられない。


「ハクはどうだった?」


「元気でしたよ。思ったより手強かったです」


「そうか」


 呟き響夜はエルザへと顔を向ける。


「結局、お前は何にしに来たんだ?」


「・・・・貴方が暴れすぎたから、軍から抹殺命令が出されたんです。まあ殺す気はありませんでしたけど・・・」


「じゃあ何しに来やがった」


「大佐に試されたんですよ。どっちに付くか」


「で、お前はこっちを選んだのか」


「ええ、私には黄金の魅力というのは分かりません。何より私はあの娘を犠牲にしてまで願いを叶えたくはない」


 そう答えるエルザに三人は呆れた様に言う。


「まあ・・・貴方らしいけど・・」


「流石クラウン一の人間」


「ありがたいがお人好しだな」


「五月蠅いですよ。どうせ私はお人好しです!」


 それぞれの言葉にエルザは怒った様に言い放つ。


「お前らは何処に行くんだ?」


「まあ、ウサ公の件もあるからな。赤のミュートスに行こうと思ってたんだが・・・」


「私達はエクレールに向かいます」


「は?何であんな所に?」


「クソ神父に用がな」


 その言葉にエルザとシグルズの二人は露骨に嫌そうな表情をする。


「あ、俺パス。俺あいつ嫌いだから」


「私もです。生理的に無理です」


 エルザにまでキッパリと言われるが響夜は分かっていた様に溜息を吐いた。


「知ってる。だから俺と小夜の二人で行く。お前らには後で連絡する」


「ええ、それじゃあお願いします」


「酒よろしく」


「野垂れ死になさいジークフリート。兄様こんなのは置いといて早く行きましょう」


 親指を立てサムズアップするシグルズに小夜はそう言い放ち響夜へ笑顔を向ける。


「ああ、じゃあなお前ら。精々くたばるなよ」


「それは私達の台詞ですよ」


「次会う時は全力で殺しに行ってやるよ」


「死ぬのは貴方ですけどね」


 四人は互いに言葉を交わしそれぞれの目指す場所へと向かって行った。


 ◆


「ああ、素晴らしい。君は実に忠実に動いてくれる」


 何も無い何処までも闇が広がる空間でアレイスター・クロウリーは呟く。彼に何が見えているのかは窺う事が出来ない。


「これで漸く舞台も出来あがる」


 Doomsday clock(世界終末時計)零時まで残り


――――三四三時間――――



感想、批判、意見、評価等がありましたらお願いします。




ある日、ふと他の方のお気に入り作品に自分の作品が入ってるのを見てああ、頑張ろうと強く思いました。マジで。


もうすぐこの章も終り。そして最後の時間、一日二十四時間で残りどれほどでしょう。終わりももうすぐです。

最後は決まってます。そしてその次の作品と次々の作品も決まってます。

さて・・・・頑張ろう。

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