死神は嗤う、仮面を付けてⅣ
「どうやら民は既に何処かに避難しているようですね」
下水道を出たゼクス達は人の気配を感じない街を見て呟く。その最後尾、マオは俯きその顔色は良好とはとても思えない。
「・・・・・マオ」
それを気に掛ける様にハクは声を掛ける。
「ほっとけ譲ちゃん。んな奴相手にしても仕方ねえだろ」
「ちょ、ちょっとノーレンさん!」
「浩太テメェも一言言ってやれ。戦場で冷静さを失う奴なんて生き残れやしねえ。それどころか仲間の迷惑になるだけだ」
その言葉にハクはノーレンを睨み付ける。
「幾ら何でもそれは――――」
「こいつは俺達にハッキリと言っただろう。鳴神響夜は殺す、ってよぉ。その結果がこれだ」
「――――――っ」
「今回ばかりはノーレンに同意かと」
「ゼクス!?」
「魔王様、貴方は王です。貴方は我等臣下や民の命も背負っていることをお忘れなきよういただきたい。貴方が鳴神響夜を助けると言うのであれば――――我等のことは切り捨てていただこう」
「・・・・・・・・暫く一人にさせてくれ」
その言葉にハクは目を見開く。
「何言ってるの!?こ、こんな所で一人になんて――――」
「ハクさん」
アリアはハクの肩を掴み首を横に振る。
「っち、後から追い付いて来やがれ」
それだけ言うとノーレンは歩を進める。浩太もマオを気に掛けているがアリア達に促され先へと進んで行った。
「・・・・・・・・」
マオは一人。何かを思い詰める様に俯いていた。
◆
「あら、魔王様一旦離脱かしら」
「どうせ生温いことでも考えてんだろ」
「・・・・そうですわね。それが妥当かと」
「ふむ、ならば此処で魔王に一個大隊でも当てるか?」
「止めとけ、その程度じゃ止められねえよ」
呟くアストラルに響夜は無駄だと断言する。
「それは信頼、かしら?」
「事実を言っているだけだ」
面白いものを見る瞳のアメルダに響夜はつまらなそうな表情で答える。
「それより死神さん?あれはどういうことかしら?」
アメルダが指差す画面に映る姿。それに響夜は嗤う。
「どうもこうも、俺が呼んだ援軍だが?お嬢様には不満だったか?」
アメルダの横に控えるバトラーが動こうとする気配を感じながらも響夜は警戒の色さえ見せない。
「そうじゃないわ。なら、こっちはどうかしら?これも貴方が?」
次いで出された映像に響夜は怪訝そうな表情をした。そこには此方へ向かうエルザの姿があった。
◆
『良かったのかい?彼女を向かわせて』
自分以外誰もいない筈の部屋に木霊する声。アンネローゼは書類を整理しながらその人物の名を呼ぶ。
「何の用だルイス・キャロル。私は貴様と違い忙しい。失せろ」
『酷いなあ。そう邪見に扱わなくてもいいじゃないか』
甘えるような声を出しながらアンネローゼの前のソファにルイス・キャロルが現れる。
『あ、そうそう。用件だったね。何でエルザを向かわせたのかなあ、ってね』
その言葉に下らん、とアンネローゼは鼻を鳴らす。
「黄昏の破壊者の小僧の実力を測る為、来たるべき神々の黄昏への布石だ。あの馬鹿娘が何を考えているかは知らんが、これであいつがどちらに付くのかはハッキリする」
『そんなことしなくて、どうせすぐ分かるじゃないか』
ルイス・キャロルはそう言いながら一枚の書類を取る。
『死神の抹殺ねえ。彼も随分大成したね。今の彼なら僕等に傷を付けること位は出来るんじゃない?』
「下らんな。あいつが私達に傷を付けるなど有り得んよ」
『ふふふ、そうかなあ。もしかしたら彼、英雄になるかもしれないよ?』
「それこそ更に有り得んよ。十三位が鎖に縛られること等ありはしない。奴はアレイスターと同類だ。化け物は何処まで行っても化け物にしかなれんよ」
『真の英雄は黄金只一人。君らしい考え方だ。けど随分主観的だね?英雄も化け物も見方によってはどっちにでもなる』
小悪魔染みた笑みを浮かべルイス・キャロルは回る。
『けど、黄金は誰にも倒せない。それには同意するよ』
それだけ言い残しルイス・キャロルは消える。アンネローゼは今迄ルイス・キャロルが持っていた書類を取ると――――灰へと変えた。
「黙れよ、暴竜」
◆
「ああ、もう。何で私が―――――!!」
群がるスケルトン達の頭を踏み台に雷速を持ってして掛ける戦乙女。その口調の裏腹に彼女の顔には焦燥感が漂っている。
「どうしてこうなっちゃうのかなあ!!」
立ち塞がるスケルトンを切り裂き突破していくエルザ。不意に彼女の瞳があるものを捉えた。
「――――――――マオちゃん?」
その視線の先にマオは立っていた。
「マオちゃん!」
マオに群がろうとするスケルトンを消し飛ばしエルザは駆け寄る。
「・・・・・エルザか」
それをマオは空虚な瞳で見つめる。
「どうしたんですか!?――――取り敢えずこっちに!」
エルザはマオの手を引くとスケルトンの群れから脱出する。
「マオちゃん、大丈夫ですか?」
「ああ・・・済まない」
「・・・・どうしたんですか?マオちゃんらしくもない」
「――――――響夜君のことですか?」
その言葉にマオの肩が揺れる。
「やはりそうですか」
「・・・・エルザは・・エルザは響夜が今どうしているのか――――」
「知っていますよ。私もそのことで此処に来ましたから」
「・・・・エルザは、私はどうするべきだろう?」
マオは瞳に涙を溜めながらエルザに問い尋ねる。
「私は、王として響夜を殺そうと決めたのに・・・!」
「・・・優しいんですね」
エルザはそう言ってマオの頭を撫でる。
「私はそういう優しさはいいことだと思いますよ」
「・・・・・・けど!」
「マオちゃんは、自分の立場に責任を感じ過ぎだと思いますよ?」
「――――な!?」
思わずふざけるなと言いそうになるマオの言葉を止める様にエルザは口を開く。
「確かに無責任でしょう。けど貴方の国の人たちは皆貴方の考えを、気持ちを、一番尊重してくれていますよ」
「三年前に、マオちゃんが城に連れ戻された時、響夜君と私とハクちゃんの三人で乗り込んだでしょう?」
「・・・・・うん」
「その時も、あの騎士さんを含めて皆がマオちゃんのことをとても大切に思っていましたよ?
確かに王には民を想う気持ちがないといけません。けど民はそれ以上に、貴方の幸せを願っていますよ?」
「・・・・・・・・」
「貴方は今何をしたいのか。それが一番大切だと思いますよ?」
「・・・・・そう、かな?」
「はい!」
「・・・私が・・今何をしたいのか・・。うん・・私、頑張ってみる!」
「その意気です!」
「うむ!エルザも、一緒に行くぞ!」
「ええ!」
二人は立ち上がると先に進んだ五人の下へと走って行った。
◆
『よう、来てやったぜ?』
「ああ、よく来たな」
『んで、俺は誰の相手すりゃあいいんだあ?全員殺っちまっても?』
その言葉に響夜は呆れ果てる。
「んなわけねえだろ。本来なら一人にぶつけたかったんだが・・事情が変わった。お前はエルザの相手をしてくれ」
『はあ?エルザもいんのかよ。何であいつがこんな所に・・』
「むしろ俺が聞きてえよ。何にしても今邪魔される訳にはいかねえんだよ。場所教えるから行って来い」
『っち、高くつくぞ』
「頼んだぞ、シグルズ」
◆
「ねえ、マオ置いてきて良かったの?」
「仕方ありません。覚悟を決めたと言っても本人を目の前にして揺れてしまったのでしょう。気持ちの整理も必要です」
「・・・そう言うテメェは何も感じねえんだな」
「何故私が・・」
「いんや何でもねえよ」
「浩太。何か察知できるか?」
「いえ、今の所は。というかノーレンさんやハクの方がいいんじゃ・・・」
「気にするな」
浩太の言葉にゼクスそう言った瞬間、目の前にあった建物が吹き飛ばされる。
「よう、中々面白そうな奴が揃ってるじゃねえか」
その中から出てくるのは獰猛な顔をしたシグルズ。その姿を確認すると共に全員が警戒する。
「悪滅の断罪刃!!」
シグルズの剣から暴力的な魔力が溢れだす。
「本当はテメェらに用はねえんだが・・・・。準備運動位に放ってくれよォ!!!」
瞬間、周囲一帯が衝撃で吹き飛ばされた。
◆
「―――――!あれは!?」
「ハク達の魔力も感じる!エルザ!!」
「飛ばします!手を!!」
その言葉にマオは頷くとエルザの手を取った。
◆
「よぉ、どうしたァ!こんなもんなのかぁ?テメェらの力はよぉ!!?」
剣戟の嵐。シグルズはゼクスの腹を蹴り飛ばしそれを利用し背後のアリアに斬り掛かる。
「―――――ぐぅ!」
水がチェーンソーの様に唸りを上げる。
「無駄だっつってんだろうがあ!!」
だがその攻撃も竜鱗を纏ったシグルズに通ることは無い。ギャリギャリギャリとまるで金属音の様な音を立てながらシグルズはアリアに迫る。
「はっ、ハア!!」
振り下ろされる悪滅の断罪刃。だがその攻撃は突如聳え立った氷柱に腕を撥ね退けられ逸らされる。
「やるじゃねえか、小娘。面しれエ、テメェが俺の腹に収まってくれんのかぁ!?」
背後から迫りくるゼクスの影。シグルズはそれさえも見抜き影の速度を超えハクに迫る。
「浩太!」
それを横合いからノーレンの風に飛ばされた浩太が突き飛ばす。
「いいネいいねェ!知恵振り絞って生き延びなぁ!!」
その顔に邪魔をされたことへの怒りなど無い。彼にとってはこれは言った通り準備運動。それ以上でもそれ以下でもない。この状況も彼にとっては遊びだ。
「だが、ちいと飽きちまった」
突き刺して来る浩太を睨み呟く。その頭上には掲げられた悪滅の断罪刃。
「浩太!」
アリアの悲鳴が聞こえる。シグルズは一切の容赦なく、剣を振り下ろした。
「―――――――!!」
「・・・・・・・・?」
浩太は目を瞑るが斬られた痛みも衝撃もこない。不思議に思った浩太はその目を開く。
「何とか、間に合いましたね」
そこには軍服に身を包み、雷を纏いその輝きを増す金髪の女性。
「皆無事か!」
「マオ!」
その声に逸早く反応するハク。
「皆さん、先へ!」
シグルズの剣を受け止めながら叫ぶエルザ。彼女もこの均衡を長く保ってはいられない。
「済まないエルザ。皆早く先へ行くぞ!」
その言葉に全員が動く。先へ進んで行く五人を見ながらエルザはシグルズに問い掛けた。
「何で見逃してくれたのですか?」
「生憎、ご指名されたのはお前でな」
「―――――響夜君ですか」
「ああ、三年前とは大違いだ。俺も初めて見た時はビビったぜ―――――――ありゃあ本物の化け物だ。鳥肌が立つなんてのは久しぶりだったぜ」
「そう、ですか!!」
悪滅の断罪刃を押し返し騎士剣を構えるエルザ。
「こうやって全力で戦うのは、スカウトされた時以来か?」
「そうですね。随分月日が経ったものです」
二人は好戦的な笑みを浮かべ互いの得物を構える。
「こっから先はルール無用」
「死んだ奴が総て悪い」
「オオオオオォォォォォ!!!」
「ハアアアアアアァァァ!!!」
その言葉と共に二人は駆けだした。
◆
「マオ」
「魔王様、もう大丈夫なのですか?」
「・・ああ、済まないな皆」
「ならいいけどよ。俺達はテメェが何してようが見てねえし」
ノーレンは頭を掻く。そして背後から聞えてきた爆音と膨大な魔力に六人は肩を竦ませる。
「・・・・凄いですね」
「まあ、二人とも規格外だからな」
「あの女性は?」
「戦乙女の二つ名を持つ騎士だ」
「戦乙女って・・あのですか?」
「ああ」
その言葉に他の面々が冷や汗を掻く。
「まあ、二人ともクラウンじゃほぼ同格だがな」
その言葉に更に冷や汗を掻きながら六人は先へと進んで行く。
◆
「中々面白い配役じゃない」
「・・・・・」
「多少の誤算はあったけど、当初と同じね」
「我が騎士たちよ、楽しませない。立ち塞がる障害を破壊しその首を私に差し出すのよ!!」
その言葉に全員が立ち上がる。
「死神さん?これも貴方の脚本かしら」
ただ一人、アメルダの傍に控える響夜に彼女はそう問い尋ねる。
「さあな・・・」
その言葉に彼女は楽し気に笑う。
「ああ、もうすぐ最高の世界が見えるわ」
その呟きを響夜は哀れむように見つめていた。
◆
「此処から先は五人までや」
進む六人の前にレナが立ち塞がる。
「此処で貴様を全員で斃せば、問題なかろう?」
その言葉にレナは笑みを深める。
「別に良いけど・・」
響くのは轟音。その音に彼女は嗤った。
「外の戦いの方が早く終わっちゃうかもねえ」
総勢五百機を超える魔導兵器の蹂躙。機械は人と違い疲れることなどありはしない。その言葉に全員の顔に緊張が走った。
「さあ、どうする?」
「――――――――っ、貴様ぁ!」
飛び出そうとするゼクスの肩をアリアが抑える。
「此処は素直に従うべきだろう。嘘とは思えん」
一歩前へ出るアリア。
「貴方の相手は私が務めましょう」
「ふむ~・・・女の子が相手か~。ま、いいや」
そう言うとレナは何処からか巨大な錨を取り出す。その外見に見合った重量に城の床が陥没した。それと同時に出現する尻尾と耳。
「成程、獣人ですか」
「ああ、手加減なんてしないからね!!」
「それは、此方の台詞です!」
◆
「大丈夫ですかね?アリア王女」
「あ?平気だろ。あいつなら何だかんだで生きてそうだし・・」
「そんな適当に・・」
ノーレンの言葉に呆れる浩太。アリア達から大分離れ彼等はマオ達とは別の道で進んでいた。
「しかし、敵さんもこんな時にお遊びたぁ。呆れてものも言えねえよ」
ある意味周到、と言ってもいいのかもしれない。他の道は瓦礫で塞ぎ通路を限定する。態々魔力を使って瓦礫を破壊する者はいないだろう。奥にはまだ敵がいるのだ。
「――――!浩太、先に行け」
ノーレンはその場で立ち止まると剣を抜く。その先にいるのは一人の男。浩太は無言で頷くとノーレンを置いて先へと進む。
「これはこれは、久方振りでしょうか。アストラル卿?」
「ああ、久しぶりだな。鷲獅子の小僧よ」
「相も変わらず。その年齢でもこれ程の殺気を放ちますか」
「まだまだ現役だ。最近の若い奴等はたるんどる」
その言葉にノーレンは苦笑する。
「ここから先は、口で語る必要もあるまい」
「そうですね。おっさん、若さを舐めちゃいけねえぜ?」
その言葉と同時に互いの剣がぶつかりあおう音が響き渡った。
◆
「・・・・・響夜は何処にいるのかな?」
「ふん、あいつに出会ったら八つ裂きにしてくれる」
「・・・・・・」
三人が進んで行くとやがて大きなホールに出る。
「お待ちしておりました。そちらは魔王様、とお見受けいたしますが?」
そこにいたのは一人の優男。顔は青白くとてもではないが健康とは思えない。
「ああ、そうだ。死にたくなければ退くことだな」
その言葉に男は深く一礼する。
「申し訳ありません。我が主が命である以上それは絶対ですので」
「魔王様、此処は私がやりましょう。あの男、少々嫌な気配を感じます」
「・・・・分かった。任せるぞゼクス」
「ハッ」
前に出るゼクスにそう告げるとマオとハクは先へと進んで行く。
「貴方が私のお相手でございますか。私帝国軍第一部隊副隊長ベルゼ・フォーンと申します」
「魔王軍第一部隊隊長ゼクスだ」
「良き名で・・・では私の魔法、ぜひご覧入れてください!!」
◆
浩太が走っていると突然横から衝撃が襲いかかってきた。
「――――――!?」
その突然の事態に反応することが出来ず浩太は吹き飛ばされる。
「良く来たな侵入者」
そこにいたのは一人の執事服を着た男。その瞳は冷たい色を宿し浩太を見下ろしていた。
「女王が近衛、バトラーだ。貴様の相手になろう」
浩太は立ち上がりながら聖剣を構える。
「どいて・・・と言ってもどきませんよね?」
「・・・・・」
その言葉にバトラーは只構える。
「なら、無理やり行かせてもらいます!!」
浩太はそう言い放ち駆けだした
◆
「ようこそ、二人とも」
ハクとマオの先にいるのは小夜。彼女の背には光り輝く赤い月が見えている。
「小夜・・・。響夜の目的、貴方なら知っているでしょう!?」
ハクの言葉に小夜は微笑を浮かべたまま口を開く。
「さあ、どうかしら。言っても貴方達には理解できないかもしれないわよ?」
「どういう意味・・・?」
「そのままの意味よ!」
瞬間、ハクとマオを包むように全方位からアンデット達が襲い掛かる。
「凍てつけ」
だがその群れを一瞬にして凍らせるハク。砕け散る死者の氷像の中から二人は現れる。
「マオは先に、小夜の相手は、私がする・・」
「・・・・分かった」
先へ進むマオを横目に小夜は歯を食いしばる。
「本当なら、兄様の下へ行かせたくなんてないんのだけれど・・・・。兄様はマオとの決着を望んでいる」
「ねえ、小夜、響夜は・・・何の為にこんなことをするの?」
その言葉に小夜は目を伏せ無言でいるがやがて一言呟いた。
「―――――――ユグドラシル」
「え?」
その言葉にハクは首を傾げる。彼女には何のことなのか分からない。それを見ながら小夜は再び口を開いた。
「兄様は、貴方達・・いえ、誰よりも先の未来を見ているのよ」
◆
「ふふふ・・・いいわ、いいわよ・・もうすぐで望みが――――」
「残念ながらだ」
背後から聞える響夜の声と同時に彼女の腹に違和感がはしる。
「今この場所にはバトラーもアストラルもベルゼもいない。ずっと待ってたぞ。この瞬間が来るのを」
「――――え?」
まるで呆けた声をだしながら腹へと目をやるアメルダ。鮮血で真っ赤に染まった腹から何か鈍い輝きを放つ物が突き出ていた。
「・・・な・・ん・・で・・ェ・・・?」
「言っただろう?頑丈な鎖でも用意しとけってよ・・・。
悪いが俺はアンタの男じゃねえ。アンタが見てるのは死んだ夫の虚像だ。んなことしても夫は甦らねえよ」
「・・・あっ・・・か・・は、ぁ・・・」
「安らかに眠れ」
響夜はアメルダの耳元でそう呟くとその息の根を止めた。玉座に座りながら徐々にその体が冷たくなっていくアメルダを横目に響夜は煙草を取り出す。
「テメェも前を向けたら、もうちょいマシな人生送れただろうな・・・」
骸となったアメルダにそう呟きながら響夜は破壊の脈動を形成した。
「・・・・・・・来たか」
「・・・・っは・・・・っは・・」
響夜の視線の先、そこにいるのは自らが愛した女。
ああ、何時見てもお前は美しいよ。此処が戦場だということも忘れちまいそうだ。
「ようこそ、マオ・オメテオトル・へーラー。今この時が来ることを俺は待ち望んでいたよ」
「・・・響夜」
「俺と戦え。その命尽きるまで俺と踊ろうじゃねえか!」
その言葉はかつての焼き増し。
なあ、初めて会った時も俺は言ったよな?あの時のお前は本来の姿じゃなかったが、それでも俺はお前にボコボコにされちまってよ。その時の悔しさも覚えてる。だから、もう一度言ってやるよ。
「見せてくれよ、魔王様の実力って奴をよぉ!」
その言葉と同時に二つの影は交差した。
感想、批判、意見、評価などがありましたらお願いします。
今回解説はありません。
只今続きを執筆しながら二次創作ネタを考え中。いや、投稿するかどうかは全く考えてませんが・・・。けど小夜のキャラも二次創作で考えたキャラのネタが元だったり・・。
にじファンからお知らせが来たばかりだからこそやろうと考えた変人が此処にいました。