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死神は嗤う、仮面を付けてⅠ

悪滅の断罪刃グラム…能力は大きく分け三つ。一つ目竜殺し、二つ目不死殺し、三つめ切り裂いた者の罪が深い程威力が増す。

 罪、と言っても曖昧であり通常は一般的に法を破った者たちなどに対するモノ。しかし生物を殺したことが罪等といったものもカウントされ英雄であればある程受ける傷は深い。



 荒野の中を進んで行く響夜。その顔はフードで隠され窺うことが出来ない。そしてその後ろには三百を超える兵士が続いていた。


「・・・・・・ちっ、何で俺がテメェ何かと」


 その言葉は横に並ぶ浴衣姿の女、レナに向けられたもの。その言葉をレナは全く気にしない様に朗らかに笑う。


「そう言いなさんな。アタシも戦いたくてしょうがないんだよ」


 そう言う彼女の顔にはまだかまだかとまるで玩具を買ってもらう子供の様な顔をしている。


「此処だな」


 響夜はそう言うと立ち止まる。


「向こうはどうなってる?」


 その言葉に兵士の一人が前に出る。7


「ハッ!現在エクレール及び周辺諸国とはアストラル卿、ベルゼ卿率いる部隊が交戦中とのことです!」


 それを聞いた響夜は面倒臭そうに頭を掻く。


「んじゃ、こっちもやるか」


 響夜はそう言うとそこから数歩先へ進む。


「どうやって侵入するんだい?」


「いや、空間をいじって無理矢理入ろうとするだけだ」


 そうすれば向こうも俺達が着ていることに気付く。

 響夜はそう言うと何も無い空間に手を向ける。そこにはまるで壁があるかのように響夜の手は何かに添えられていた。


「――――――――――――!!!!」


 瞬間暴風が吹き荒れる。何かが激突したかのように響夜の体を風が打つ。


「・・・・どうだ?」


「気付いた。此処からすぐ近くに現れるだろう」


「侵入して奇襲した方が良かったんじゃないか?」


「止めとけ、あそこは魔王の世界だ。あいつの意思一つで幾らでも形を変える」


 その言葉にレナは納得する。確かに、地形が相手の思いのままになるのだったら奇襲など意味をなさないだろう。


「来るぞ」


 その言葉に緊張した面達で構える兵士達。すると正面の空間が裂ける。そこにいるのは急ごしらえの為か此方とそう変わらない人数で現れた魔王軍。そしてその先頭にいるのは―――


「お前達か、我らが城に侵入しようとした者は」


「・・・・・」


「何で私も・・・・」


 聞えるのは懐かしい声。そこにいるのは三年間決して会う事の無かった者達。ゼクス、ハク、小夜の三人。


「宣戦布告・・と受け取ってもらえればいい」


 そう言って好戦的な顔を浮かべるレナ。


「今がどんな状況か分かっているのか?」


「分かっているとも、その上でこうやっているんだ」


 これ以上の会話は無駄。ゼクスはそう考えたのだろう。それ以上何も言わず腕を振る。


「やれ!」


 それが合図。魔王軍から無数の矢と魔法が降り注ぐ。


「消えろ」


 それを空間を固定し防ぐ響夜。その光景に先頭に立つ三人が僅かに瞠目するがそれを掻き消す様に帝国の兵士達が反撃する。


「一番乗りは貰った!!」


 その言葉と共に雨の様に矢と魔法降り注ぐ戦場を走り出すレナ。困ったものだと思いながら響夜はそれを援護する様に指示を出す。これで敵の隊列が乱れればチャンス、死んだら骸となって働いてもらう。どちらにしても此方が不利になる訳ではない。

 何よりあの女が死ぬわけがない。

 信頼ではなくこれは事実。この程度で死ぬような技量ではない。事実彼女は敵の隊列を乱していた。


「集中砲火だ。やれ」


 その言葉に兵士たちは一斉にその隙を突く。


「凍てつけ」


 だがそれは極寒の冷気にたちまち凍りついていく。響夜が知っている中ではここまで素早く凍てつかせられるのはハクのみ。だがその密度は記憶の中にあるものより数段上がっている。


「・・・・・・」


 次々に立ち塞がる氷柱を見ながら響夜はハクの頭上に巨大な火球を落とした。消し飛ばせるゼクスは女の相手に忙しい。ハクでは相性が悪い。とすれば残る選択は一つ。


「―――――――――!!!!!」


 耳を劈く声。その声と共に大地が盛り上がり出てくるのは巨大な骨の手。それは落ちて来る火球を受け止めた。だがそれを嘲笑うかのように次々に落とされる火球。直撃でもすれば只では済まないだろう。当然それを防ぐために対抗し小夜も次々に手を呼び出す。それでも幾つかは防ぎきれず軌道を変え落下する。直撃した者は恐らくいないだろうがその衝撃で戦場を土煙が覆う。


「・・・・さて、どこにいるか」


 その中を悠々と歩く響夜。例え敵が彼に気付こうとも次の瞬間にはその意識を刈り取られているのだ。そのまま彼は目星を付けた場所へと歩いて行く。


「見つけた」


 その場所。丁度自身が狙いを付けた場所に小夜はいた。全体を見渡せる場所。そこからならば戦場全体が見えフォローをすることが出来る。


「・・・・・・」


 響夜は懐から一本のナイフを取り出し投げつける。


「――――!?」


 流石に音を聞き取ることは出来なかったのだろう。小夜はナイフに気付くと咄嗟にその場から飛び退く。その瞬間、小夜の背後から響夜は襲い掛かった。


「――――――っく!」


 放たれたナイフの一閃を小夜は左手で叩き落とす。だが、それが響夜の狙い。腕に注意の向いていた小夜は足を払われ地面に倒れる。そして響夜はその首にナイフを突き付けた。


「動くな」


 フードから覗いた顔に小夜は息を吞む。


「な、何故・・・?」


「色々とな・・・・これから俺の指示通りに従ってくれ」


 ◆


「小夜!」


 煙の中ハクはその名を呼び現れる。彼女の瞳に映ったのは意識を失った小夜とそれを担ぐ男の姿。それを見た瞬間、ハクの身体は動いていた。


「ハアァ―――――――!!」


 突撃と共に放たれる氷柱。それは響夜に迫ろうとするがまるで壁の様に大地から炎が噴き出す。炎の壁の先、まるで陽炎の様に映る男の姿。男が此方を見た瞬間、ハクは愕然とする。嘘だと思いたい、会いたいと思った、その声を聞きたいと思った。けれど、この様な再会など望んではいなかった。

 茫然とした様子のハクを後目に響夜は全部隊に告げる。


「任務完了、総員撤退。繰り返す――――」


 ◆


「あっちゃ~・・残念。ここまでか」


「逃がすと思うか?」


 武器を納めようとするレナに対しゼクスは武器を構え今にも殺そうとする。


「捕まえられるとでも?」


 その言葉と同時にゼクスは女が何かを落とすのを見る。


「これは―――――!!」


 魔力を凝縮した瓶。地球で言う所の爆弾だ。満たされていた魔力は落下した瞬間の衝撃で膨れ上がり――――爆発した。

 ゼクスは咄嗟の判断で直撃を避けたがレナの姿は既になく。自身の傷からみてもそれ以上の追撃は無理だと悟った。


「・・・・・・くそっ!」


 ゼクスの握った拳からは鮮血が流れていた。


 ◆


「それは本当か!?」


 マオの言葉に正面にいるハクは頷いた。


「・・・確かにあれは響夜だった」


 魔王軍、エクレールら連合軍は共に襲撃を受けその会合を開こうとしていた。


「・・・・そっちも色々凄いことになっているのですね」


 次いでそう言うのはエクレールの代表として来たアリア。エクレールも帝国が持ってきた魔導兵器により戦況は硬直していたのだ。現在エクレールも部隊の編成や住民の被害等猫の手も借りたい状況だろう。


「・・・分かった。今回の作戦、我が出よう」


「本気で言っているのですか?」


 一国の王が自ら敵本陣へ向かう等聞いたことがない。幾ら一人で無双できる力を持っていようと万が一ということもあるのだ。


「無論、此方の者が関わっているのだ。王がその落し前を付けるのは当たり前だろう」


「・・・・・此方からも数名出しましょう。それではそちらの戦力の低下を被る」


「・・・済まぬな」


「いえ、それより敵の情報ですが」


「ああ、確認できたのは二人、一人は浴衣姿の女。もう一人はフードを被った男だ。男は鳴神響夜である可能性が高い。その場合小夜はほぼ間違いなく向こうに着くだろう」


「成程、此方でも確認できたのは二人ですね。そちらの方は特に問題ありません。厄介なのは魔導兵器だけかと・・・」


「・・・・・・会合は何時だ?」


「此方はほぼ問題ありません。そちらさえよければ直ぐにでも・・」


「分かった。ならば直ぐにでも始めよう」


 そう言うとマオは立ち上がる。


「ハク、お前は私と同行する者達の選抜を、ほんの二、三人でいい」


「―――――――マオ」


 部屋から出て行こうとするマオにハクは声を掛ける。


「マオは、響夜を殺すの?」


「―――――――――」


 その言葉にマオの頭にまるで何かに殴りつけられたかのような衝撃が走る。果たして自分は響夜を前にした時殺すことが出来るのか。ほんの小さな波紋は徐々に大きくなっていく。


「・・・・・・ああ」


 だが、その迷いを消す様にマオは気丈に振舞う。何よりこの様な状況で王が弱音を吐く訳にはいかない。マオはそれだけ言うとアリアと共に部屋を出た。


 ◆


「それで、他国はどうだったかしら?」


 その言葉にバトラーが口を開く。


「目下の所様子見と言う所でしょう。あわよくば疲弊した所を突く魂胆かと」


「そう。ふふふ、予想通りね」


「ただ・・・・」


「?どうしたのかしら?」


「赤のミュートスに少々不穏な動きが・・・」


 その言葉に少女は思案する。


「(確か死神が興味を持っていた場所・・・だったかしら?)」


「・・・・・どうなさいましょうか」


「その情報は死神さんに渡しておいて頂戴。それよりバトラー?」


「何でございましょうか」


「今のうちに錆は取っておきなさい。もうすぐ貴方の力も必要になるわ」


「畏まりました」


 その言葉にバトラーは深く一礼しその場を去った。


「今、私達が戦争の中心よ。ふふふ、もうすぐ、もうすぐで貴方の望みを叶えてあげられるわ」


 その言葉は誰に対し放った物なのか。

 それは玉座を満たす静寂に飲み込まれていった。




感想、批判、意見、評価などがありましたらお願いします。




今回キャラ紹介なしです。

レナ、と名前をだしましたが正直これが出た瞬間、まあ鉈持ったお方を思い出し抵抗感バリバリでした。


まあ、次話は今日の深夜にでも投稿しようと思ったんですが問題発生。

このままだと味方陣営のほとんどが瞬殺される!?みたいなことになりまして・・・・

ヤバいなあ、とは思っているのですが如何せん敵が強すぎる。ゲームならラストの方で出るような強さなのに強キャラはその上をいくとか理不尽だなとか思っちゃったわけで・・・。

十行程度の戦いとかねえわ・・・


という訳で少しでも改善してるので0時での予約投稿は無理かも、ということです。

ではでは

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