死して尚不滅の英雄達
雷鳴轟かす勝利の咆哮…所有者の雷化。それ自体は初期段階であり、その気になれば剣自体も雷化が可能となる。ただ相対した神器の能力が高ければ高い程雷化での透過は難しい。
「黄金を壊す・・・・?」
その言葉にバアルの笑みが消える。顔は不気味に思える程の静寂を保ち呆気にとられたかのようだ。
「貴様如きが・・・黄金を?」
「ああ、俺が黄金を壊す」
そのバアルの問いに響夜は断言する。まるでそれが確定事項かのように響夜は嗤っていた。その態度にバアルの肩が震える。
「く、くくく、はははは・・・」
哂い、そう思えた態度はしかし次の瞬間には憤怒に変わっていた。
「弁えろよ人間!貴様如きが黄金を壊す!?笑い話にすらならんわ!!!」
激昂。かつて黄金と対峙したからこそあれの強大さが分かる。あれは人間、神でさえ手に負えない。あれの前にいた者は皆等しく消え去る。まるで蟻が竜に挑むかのようだ。天と地ほどの差など浅すぎる。星屑と宇宙を比較しているようなものだ。
「その言葉を口にしたこと死んで詫びろ!!」
バアルが腕を振るう。すると響夜が立っていた場所が突如爆発した。
「――――ハッ、負け犬が。テメェはそうやって逃げたんだろ?あの黄昏の日から、ずっと・・・・」
「喚くな人間!!!」
その言葉を掻き消す様にバアルは無数の魔弾を飛ばす。どれも只の人間なら掠っただけで体が吹き飛ぶ程の威力。かつての響夜ならば迎撃することも不可能だっただろう。そう、かつての響夜なら・・・・。
「神殺しの鎖」
その無数の魔弾に対抗しうるために呼ばれた無数の鎖。それは迫りくる魔弾の群れを易く蹂躙していく。
「どうした至高神、お前の力ってのはその程度なのか?」
安い挑発。しかし今目の前にいる男は人間でありながら自らの魔弾を全て破壊しているのだ。人間如きが神たる己の攻撃を物ともしない。彼のプライドを破壊する為には大きすぎる衝撃だろう。
「調子に乗るなよ、劣等種族がアアアアアアアアアアアアァァァァ!!!!」
次いで放たれるのは先程の魔弾が霞んで見える程の魔力を凝縮させた塊。
「温いな・・・それが全力と言う訳ではないだろう?」
放たれた魔力の塊。それは神殺しの鎖を次々に破壊していき響夜へ迫る。だがそれを前にしても響夜の態度は変わらない。
「・・・・・来い」
小さな呟き、だが彼らを呼び出すにはそれだけで十分だった。魔力の塊が直撃する瞬間、響夜を護る様に巨大な人骨が出現する。
―――――――ドガガガガガアアアアアアアアアアアアァァァァン!!!!!
大音量の爆発音を上げながら周囲を飲み込んだ衝撃。巻き起こった煙の中からは無傷の響夜が現れる。
「・・・・体も少しは解れたんじゃねえの?今度はこっちから行くぞ」
「導きの灯火」
響夜の周囲に現れるのは長大な炎の槍。その数は十。響夜がバアルに手を振るとそれが合図で合ったかのように炎の槍はバアルへ殺到する。
「ふん、そんなもの・・・」
だが、バアルもまた放たれた炎の槍を右手から凝縮された魔弾を撃ち相殺する。この程度二人にとっては準備運動の様なものなのだろう。それが相殺されたと同時に響夜は駆けだす。
「形成・破壊の脈動」
右手に現れたのは彼が誇る最強の神器。その鎌から放たれる威圧感もまた三年前の比ではない。それを見たバアルは瞠目する。何だこれは、有り得ない。こんなものを操る人間など見たことがない。奇しくもそれはかつて黄金と対峙した際に感じた物と酷似していた。
その感情にバアルは唇を噛む。ふざけるな、認めはしない。化け物はあれだけだと。
「消えろ塵芥!!!」
疾走する響夜に霰の様に魔力で編んだ剣を放つバアル。だがどれ程放とうとも神殺しの鎖と骸の兵士に遮られ掠りもしない。響夜は勢いよく跳び上がりバアルにその鎌を振り下ろす。
「――――――――――!!!」
放たれた斬撃はバアルの胴を引き裂く。だが―――
「どうした人間。その程度で我は殺せんぞ?」
すぐ目の前から聞える声。響夜がそれに反応するより早く、衝撃が襲いかかった。
「・・・・・・・っち」
錐揉み状になりながらも何とか体勢を整え着地する。見ればバアルの肉体の傷は徐々に再生していた。
「それが不滅の神の所以か」
「ああ、我はどれ程死のうとも甦る。諦めろ人間」
「だが、直ぐ再生って訳じゃねえらしいな。ああ、良いぜ至高神。殺してやるよ」
主に呼応するように破壊の脈動の脈動は大きくなり昂ぶりを見せる。
バアルもまた本気なのだろう全身から発せられる魔力は先程とは別格の物だ。
高まる陶器の中先に動いたのは響夜だった。
「沼に落ちし者たちよ 目を覚ませ 光を失い盲目になりし者たちよ 我が声を聞け」
「汝等、かつて神より恥辱を受けし者たちなり 汝等が身は煉獄の炎に焼かれ燃え盛る」
「汝等が慟哭を神は聞き入れはしない 汝等、それを良しとするか」
「騎士たちよ剣を取れ 己が縛鎖を断ち切るのだ 今こそ我等が征服する時なり この黄昏に汝等が剣を突き立てろ!」
「怒りの日――慟哭の英雄譚」
創造されるのはかつて栄華を誇った者達の世界。それはさながら終末に集結する死した英雄が如き世界。響夜の背後に死神が現れるその両腕に包まれるようにして展開される扉。そこから現れるのは主が呼び掛けに応じた騎士たちの姿。
それはバアルの予想を遥かに超えた世界だった。
「――――――なっ!?」
その光景に圧倒されるバアル。彼が知る限り人間とはこんなにも強大なものではなかった。その認識が今完全に破壊された。
「死は平等だ。零れ落ちた物は杯には戻らない。至高神、それはお前であっても例外ではない」
この言葉の意味。つまる所それは――――
「この世界で死ねば復活することなど無い。お前も俺の軍勢が一部となる」
それがこの世界の最たる法則であり、この世界は術者以外には容赦はしない。見ればバアルから感じられる魔力が小さくなっている。この世界は術者以外の物を徐々に喰っていくのだ。
「お前は何時まで耐えられる・・・」
「舐めるなよ人間!!」
両者が駆けだすの同時。繰り出された右腕での拳を躱し響夜はその首を刎ね落とそうとする。対しバアルは左腕に魔力の剣を作り防ぐ。しかし急ごしらえの物ではそう長くは持たない。鎌の一撃を防いだことで罅が入りこの世界の影響で完全に破壊される。
「――――――シッ!!」
しゃがみ足払いを掛けようとするバアル。響夜はそれが来る前に後ろに跳ぶ。だがそれがバアルの狙い。
「滅びろ」
放たれたのは闇の属性を持つ深淵の炎。それは触れた物焼き尽くすまで消えることは無い。だがその射線上に現れた骸の兵団にそれは防がれる。それと同時だろう。バアルの足元に数十という骸の兵団が槍を突き上げ現れる。
「やれ、お前達」
次いで響夜の背後からは銃火器や弓を持った兵団、それらはバアルに向けられ、
「発射」
それを合図に放たれた。三百六十度からの軍勢による攻撃。それはバアルを翻弄し、その命を食い破らんと迫る。その波の中から現れる響夜の攻撃。
「―――――っく、・・・は・・・!?」
今や流れは完全に響夜に向いていた。瀕死に陥る傷こそないがこの世界の影響下ではバアルの肉体はやがて滅びるだろう。
「オオオオオオオォォォォォ!!!!」
ほんの一瞬、その隙を突き懐に潜り込む響夜。振り上げられた鎌はバアルに一切の抵抗を許さず、その腕を切り落とした。
「ぐ、おおおおオオォォォォォ!!!!?」
絶叫、だがそれも一瞬。バアルは残った右腕で響夜を殴りつける。
「無駄だ」
だがその反撃すらも粉砕される。バアルの胴が何かに切り裂かれたのだ。
――――――――――キイイイイイィィィィィィィ
まるで悲鳴のように聞こえるか細い音。それが発せられているのは響夜が持つ鎌。
「生憎、こいつの能力でな。俺の近くに来たら切り刻まれるぜ?」
鎌から発せられる魔力が振動し響夜の周囲の空間にあるものを引き裂いているのだ。バアルは距離を取ろうとするが響夜はそれをさせない。
「オオオオオオオォォォォォ!!!!!」
バアルの全身から放たれた影の様な物の攻撃。それは切り裂かんとし迫っていた骸の兵団を真っ二つにし響夜自身も堪らず後ろに下がる。
「ああ、ここまで追い込まれることも久しい。褒めて遣わそう黄昏の破壊者」
初めて口にする名。それはバアルが響夜を認めたともいえる。バアルの周囲には無数の蠢く影が展開されている。
「この世界では我もそう長くは持たんだろう。故、全力で行くぞ」
激昂していた先程とは真逆、冷水でも掛けられたように落ち着いた様子のバアル。そこから繰り出される攻撃は先程より鋭く強大な物となっている。バアルを援護する様に迫る影を破壊の脈動と骸の兵団で防ぎながら響夜も反撃する。
「ああ、これほど生を実感したこと等生まれて初めてだ!!礼を言おう黄昏の破壊者!!!」
「だったらその代わりに死んじまえ!!」
繰り出された大振りの一撃をバアルは跳ね返す。そこに生まれた隙、意図的に作られた隙だと言う事にはバアル自身分かっていた。だが、最早一刻もない。ありったけの魔力を込め、バアルはその隙を突いた。
「想像形成」
その言葉の瞬間生まれた物は盾。バアルがそれを破壊する為に掛けた一瞬、その一瞬が、この戦いを分けた。
◆
「・・・・・・く、ははは。ああ、やるではないか」
「そりゃどうも」
倒れ伏すバアルを前に響夜は煙草を咥える。バアルの体には無数の穴が空き、その首には鎌が据えられている。まるで魂を刈り取る死神の様に。
「・・・黄金を、壊す。と言ったな」
「ああ、あいつは俺が斃す。誰にも譲らねえ」
その言葉にバアルは笑う。
「・・・く、ははは・・・精々足掻くがいいさ。私はその瞬間を貴様の中で観ているとしよう」
「・・・・・・・ああ、そうしてやがれ」
それが最後だと、響夜はバアルの首を刎ねた。バアルの体は徐々に透けやがて粒子となって消えて行った。
「・・・・・・・」
それと同時に黄昏の世界は元の世界に戻る。崩壊した遺跡内部を見ながら響夜は深く溜息を吐く。此処を突き止めるまでも長かったが今の戦闘で久々に全力を出したことにより疲労が溜まっていたのだろう。だが――――
「まだ、やることがあるんだ」
響夜はそう呟くとその場を後にした。
◆
三年。あの日から世界中を回っていた。経った三年の間でこの世界も大分変ってしまった。
「あら、漸く来たのね」
城の最奥、玉座が据えられた広間で少女が笑う。少女、といっても邪法で何十、何百と生きてきた魔女だ。昔の姿などこいつ自身覚えているのかどうかも分からない。
「・・・・それで、貴方が探してたって言う者は?」
「終わった。さっさと此処に呼んだ用件を話せ」
俺は玉座に座る少女を睨む。僅かな殺意に反応し横に控えていた老年の執事が前に出ようとする。
「下がりなさい、バトラー」
しかし、主の言葉に執事服の男は渋々後ろに下がる。だがその鋭い眼光は未だ俺を射抜いている。
「鳴神もそうピリピリしなさんな」
次いで同じく横に控えていた浴衣姿の女が俺に話しかけて来る。
「・・・・・・・」
「はあ、まあいいわ。貴方を呼んだ用件だけど・・そろそろ始めるわよ」
その言葉に俺は僅かに眉を上げる。聞いていた話ではもう少し後の筈だ。
「状況が変わったの、他国の影響や魔物の進行からみて、今が一番いい」
思い当たるのはバンデモニウム。あそこの魔導兵器は俺が大分壊した筈だ。魔物の進行も目に着いた物は片っ端から殲滅している。
「さあ、今こそ魔王城に攻め込むわよ!」
少女は玉座に座りながらそう高らかに宣言した。
感想、批判、意見、評価などがありましたらお願いします。
何気に困った怒りの日。ルビはどうしようと学校、パソコンの前とうんうん唸ってました。
ヴィーンゴールヴは戦士が運ばれる女神の宮殿とか・・・。
名前 シグルズ=ジークフリート
所属 クラウン序列第六位
二つ名 龍殺しの英雄、悪竜
属性 闇
固有スキル
・悪竜の血涙…かつて悪竜を殺した際に浴びた血によって生まれたスキル。術者の表皮に竜鱗が生え並大抵の攻撃ではダメージを与えることすらできない。
特殊スキル
・心眼…敵の一手先の行動を本能的に感じ取る。
・酒豪…どれほど酔っていようとも普段と変わらない思考と戦闘能力を発揮することが出来る。
所有神器
・悪滅の断罪刃
キャラ設定
まあそのまま北欧神話から、悪竜ファフニールを打ち倒すが悪竜が守っていた黄金に呪われてしまう。その後記憶を失いかつて妻であったブリュンヒルデに殺されるという末路のお方。・・・そうとう内容端折ったけど。
この作品では妻はいません。その方が楽(げふんげふん
年齢は・・・ご想像で。
結構大雑把な方ですがノリもいいとい言った感じ。この小説でそれが出せているかは疑問ですが・・・。
本当ならクラウンを十三位から遡ろうかと思いましたが良く考えたら十二位が出て来てない上アレイスターは能力を出してないのでだめだった。
マオでも良かったけど・・・。クラウンを最初にしようかなと思ったんで。
大体こんな感じです。
ではまた次回