帰港と作戦
今回凄く短いです。
「楽毅!それは俺のだぞ!!」
「ケチケチするんじゃないヨ!」
「ざけんじゃねえ!テメェが全部食ってんじゃねえか!!」
夜に染まった街の中、一軒だけ明かりを灯したギルドの酒場の中は何時も以上に騒がしかった。
注文した料理を次々に胃の中に納めていく楽毅を響夜が(物理的に)止めようとするが楽毅はそれを振り払い構える。
「この肉は私の物ヨ!!」
「ふざけんのも大概にしろやボケが!」
同じく響夜も構える。
「「ラァぁアアアアァァァぁ!!!!」」
「・・・・全く、静かに飯も食えんのか」
その場から少し離れたテーブル。そこに伏羲、小夜、桃子の三人はいた。
「いいんですか?鳴神様の下に行かなくて?」
「良いのよ、邪魔したら不機嫌になっちゃうもの・・・」
問い尋ねてくる桃子に小夜は落ち着いた様子で食事に手を付ける。
「しかし、面倒臭い。此処からではまだ随分掛かるな・・・」
伏羲は手元にある地図を眺めながら呟く。その様子からは面倒臭いという雰囲気がありありと出ている。
「・・・・・腹減った」
「食後のうんどうをしたら腹減ったネ」
「あら、思ったより早く終わったわね」
「そもそも楽毅、お前に食後など無いだろう」
「ははは・・・」
二人の姿とその背後の惨状に桃子は思わず苦笑する。
「久しぶりに帰って来たと思ったら・・・頼むからこれ以上暴れんでくれ」
「あ?・・よう爺、久しぶりだな」
ギルドの奥から顔を出したギルドマスターに響夜は返事をする。
「おまけにロシェルもか」
「ええ、久しぶりですね」
笑顔で此方へ歩いて来る二人に響夜は席を空ける。
「爺、調査の方だが―――――」
「あ~・・・漸く仕事が終わったんじゃ。少し休ませてくれ、それに特に何か分かった訳じゃないじゃろう?」
「・・・よく分ってらっしゃることで」
「まったく・・・済みませんのう、この馬鹿そちらにも迷惑を掛けているでしょう」
「ああ」
「掛けまくってるネ」
「六割方テメェらのせいだろうが!!!」
「やっぱり迷惑掛けてるんですか?」
「何だその聞き方は、俺が迷惑掛けるのが分かってたみてえによ!」
「そりゃあ、響夜さんですから」
「テメェ何で俺がそうだと判断してやがんだ!!」
「五月蠅いぞ馬鹿弟子」
「くっそがあ!!」
◆
「・・・・・それで、何時出て行くんじゃ?」
「・・・・・朝方にはもう出る」
人影のない酒場の中、響夜とギルドマスターは顔を突き合わせる。
「全く、随分連絡がなかったと思えば帰って来て、そしたら今度は直ぐ出ていくか・・・・」
ギルドマスターは口調とは反対にまるで孫でも見ているかのように目を細める。
「なあ爺。あんたの家族ってのは・・・」
「死んでしまったわい。おかげで今じゃ、老いぼれた老人が一人いるだけじゃ」
「・・・そうか」
「しかし、何でそんなことを聞くんじゃ?」
「ま、色々あってな・・・年寄りから人生について教えてもらおうとでも」
「んなもん自分で学びやがれ。若い者は儂みたいな老いぼれと違って歩いて行けるんじゃ、その途中で見つけるんじゃよ」
「・・・さいですか」
ギルドマスターの言葉に響夜は溜息を吐く。
「ま、困った時は何時でも来い。相談相手にはならんが、聞く位のことは出来る」
「・・・・・さんきゅー」
「だが金は貸さんぞ」
「――――――――っち」
◆
未だ朝靄が大地を包む中、街道にはひとつの馬車があった。
「馬鹿弟子、もう準備は出来ているな」
「あいよ、他の奴等は?」
「とっくに馬車の中だ」
「そうか、つかこの時間によく使えたな」
「何を言っている。金だけ払って奪ったに決まっているだろう」
「・・・・・」
説得(物理)された被害者達に合掌しながらも響夜は馬車に乗る。
「手筈は分かっているな」
「・・・・・・・・ああ」
「此処でこの情報が手に入ったのは僥倖だ。式神を世界中にばら撒いた甲斐がある」
「・・・・三人か」
「ああ、言っておくが様子見などするなよ?全力で当たって抜けろ」
頷く響夜。だがその顔色は良くない。
「最終確認だ。敵は三人、ルイス・キャロル、アンネローゼ・フォン・グリューネワルト、ゲッツ・フォン・ベルリヒッゲン。ルイス・キャロルは楽毅が止める。残り二人は私が止めよう。その間にお前は――――――」
「ロジオンを、殺す」
「ああ、正直、成功率は一割以下。だがこの瞬間を逃したらもう黄金には手を出せん。やるには、今しかない」
最大の関門はゲッツだが・・・・。
「・・・・・・・・・・」
伏羲が思考の波に浸っている間、響夜は何かを確認するように右腕を見つめていた。
感想、批判、意見、評価などがありましたらお願いします。
今回短いです。
いや、仕方がないんです。決してAC動画にうつつを抜かしてたわけじゃないんですよ?
はい、まあ読んで下さったとおりロジオンと戦います。アンネローゼは大佐殿の名前です。一番名前に困ったキャラと言っても過言ではありません。
結末は後ほど・・・。