大蛇と悪竜
今回、久々の5000文字突破です。
「消え失せろ!!」
広大な森の中、その一ヶ所で今大破壊が行われていた。
「疾走する魔狼!!!」
まるで開戦の狼煙を上げるかのように獄炎の柱が天へと昇った。
「・・・ふふふ、素敵、素敵ですわ」
城の窓からその光をまるで愛おしそうに眺める少女。その頬はほんのりと赤く染まり瞳は何かに浸っているように閉じられている。
「本当に、御会い出来てよかった・・・」
その後に続く少女の言葉は無音の静寂へと消えて行った。
◆
「邪魔臭ぇんだよお前ら!」
疾走する魔狼が纏う炎で周囲を囲う魔物を焼き尽くす。敵の本拠地だろう城は既に目の前にまで迫っていた。
此処に来るまでに敵は全てスケルトンやゾンビ食屍鬼といったアンデットばかりだった。
「これだけのアンデットを支配下における言えば・・・・」
響夜が思い付く限りではたったの二種しかいない。
「リッチか吸血鬼・・・」
どちらも厄介としか言えない。リッチならば籠城を決め込み城の中に大量の罠を配置するだろう。しかし、此方は接近さえできればそう苦労する敵ではない。しかしもう一方、もし敵が吸血鬼ならばリッチより数段厄介だ。此方は吸血鬼の眷力から人間など羽虫の如く吹き飛ばせるだろう。そして遠距離ならば眷族と魔法による蹂躙だ。幸いなのは噛み付かれても悪魔の心臓で眷族にならずに済む所だろう。
「どっちでも構いやしねえ」
響夜は右腕の太初の塩水に魔力を流し込む。それと同時に疾走する魔狼は城壁を破壊し場内へ侵入した。
「・・・・ホールか」
辺りを見回しこれ以上の使用は城が崩れると判断した響夜は疾走する魔狼から降りる。そして歩を進めようとした瞬間、
「――――――あ?」
脚を何かに掴まれた。
「うォォォォォッ!?」
咄嗟の判断で神殺しの鎖を展開し掴んできた何かを引き剥がす。神殺しの鎖に掴まりながらその何かを見る。
「・・・・・・・」
一言で言えば奇妙、という言葉が似合うだろう。最初は蛇の姿をしていたと思えば瞬き一つした瞬間には虎に変わっている。次は鬼、そして次は亡霊の様な姿、そしてその次は
「・・・・・気持ち悪いんだよ」
「―――――それは申し訳ない、とでも言えば良いのかね?」
そこには全身に黒いボロ布を纏ったアレイスター・クロウリーの姿。
「何、久方振りの会話なのだ。そう邪見に扱わないでくれよ」
「・・・・・・鵺か」
人の恐怖を写し取り姿を変える妖。本物を見るのは初めてだが違ってはいないだろうと響夜は当たりを付ける。
「然り。そうだとも私は鵺、他者の恐怖で姿を変える依存しなくては生きていられない弱者だ。尤もこの姿で見えるのは君限定だが・・・」
響夜が恐怖し不快だと感じる笑みを浮かべ鵺が語りかける。それが我慢できず
「―――――――消えろ」
次の瞬間、響夜は懐に潜り込みその首を刎ね飛ばしていた。
「酷いなぁ・・・」
しかし、姿は消えてもその声は消えない。
「もう少し下だったら胴体真っ二つだったじゃないか」
首は刎ね飛ばされても大丈夫なのかと問いたくなるがそれを押し込み響夜は背後を見る。そこにいたのは山羊の頭骨の被り物をした少年だった。体に色落ち黒ずんだボロ布を纏い、そこから覗く手は鉤爪の様になっている。身長は響夜の胸辺りだろうか。先程の一撃もこの身長の御蔭で助かったのだろう。
「ちッちぇえな・・・」
「弱者なんてのは大抵、醜悪か幼いかのどちらかだと思うヨ?」
期待されても此方が困る、と鵺は肩を竦める。
「で、テメェは洗脳されてねえのか?」
「まあね、僕は強者に付くだけだから・・」
「そうかよ、来いやぶっ殺してやる」
右手を構え響夜はにやりと笑う。鵺は溜息を吐きながら腕を振るった。
「それじゃ、いくよー」
ボロ布が捲れその中が露わになる。
「――――――は?」
そこには札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札札、札だらけだった。そしてそのどれもが殺傷力の高い爆符と呪符だ。
「ばぁーい」
その言葉と共に爆撃による蹂躙が始まった。
「神殺しの鎖!軍勢!」
響夜は自身を神殺しの鎖で覆い軍勢を展開し迎撃する。爆風の中無差別にその火を吹かせる響夜と違い鵺は正確に狙い打って来る。
「っち!恐怖か何かよ!」
迫りくる呪符を無効化し爆符を撃ち落とす。このままでは埒が明かない。響夜は腰を低くし右腕を構える。
「疾走する魔狼の牙!!」
放たれる極大の魔力の一撃。その一撃は足元の地面へと放たれる。床は砕け散りその瓦礫と暴風でほんの一瞬、札による攻撃が止んだ。
「ふっ―――――!」
その隙を逃さず響夜は駆けだす。遅れて再び迫る爆符と呪符の嵐。それらを紙一重、あるいは四肢の一部を犠牲に走り抜ける。
「ちょ、そんなの反則だヨ~」
あわあわとうろたえながら屈み込む鵺。ちょうどその上を響夜の右腕が一閃する。
「っちい!黙って死にやがれ!!」
「やだよ、そんなの!」
鵺は自身の鉤爪を振るい距離を取ろうとする。
「おいおい、連れねえじゃねえの」
ジャラン、という音を立て神殺しの鎖が間を取り持つように互いの四肢に絡み付く。
「ほら、こっち来いやあ!!」
鎖を力任せに引き響夜は鵺を引き寄せる。鵺も抗おうと全力を出すが、体格差かはたまた魔力による強化の差か徐々に響夜へと引き寄せられる。
「ばぁ―い」
既に己の範囲内に入った鵺に響夜はその右腕を振り下ろした。
「連れねえなあ、俺も混ぜてくれよ」
何処からか聞こえてきた声。瞬間、振り下ろされた響夜の右腕は第三者からの一撃によって弾かれた。
「―――――なッ!?」
「横合いから殴り付けるのは好きじゃねえんだけどよ」
直ぐ背後から聞えて来る男の声。響夜はその声に聞き覚えがあった。
「ぐう―――――!!」
それは本能的なもの。響夜は弾かれた右腕の勢いのまま背後を向き防御態勢に入った。それと同時に、
―――――ドッゴォォォォォン!!!!
轟音と衝撃が場内に響き渡った。
◆
響夜と鵺の決着がつくほんの少し前に遡る。
「――――――っつ、・・・此処は?」
眠りから覚めた桃子は周囲を見渡す。室内はこの大陸では異様ともいうべき石造りであった。
「あ、ウサギさん!」
周囲を見渡していると鎖によって壁に繋がれたウサ公の姿が目に入った。桃子はウサ公へと近寄ると怪我がないか調べる。診た所ウサ公の体に傷は無い。それどころか柔らかい布を下に敷かれ好待遇と言っても良い程であった。
「大丈夫、ですね。ウサギさん、鳴神様には連絡できないでしょうか?」
「みゅ!」
ウサ公は一声鳴くと目を瞑る。しばし静寂が続きウサ公は何かを伝える様に再び鳴いた。
「伝わった、んでしょうか?鳴神様は此方に向かっているのですか?」
桃子の言葉にウサ公は何と伝えるか考え込むように黙るが、やがて首を縦に振りながら大きな声で答えた。
「そうですか、大丈夫でしょうか・・・」
桃子はウサ公の頭を撫でながら心配そうな顔をする。それを見たウサ公はまるで心配するなというように頬を摺り寄せる。
「・・・そうですね、大丈夫ですよね。鳴神様はお強い方ですから」
「ええ、あの人は強いもの」
割り込んで来る第三者の声。桃子はその声が聞こえた方へと勢いよく振り向く。
「こんにちは、と言っても直ぐこんばんはになるけど・・・」
そこにいたのは少女とも美女とも表現できない中間的な女性。青いショートの髪はまるで光を反射する水の様に薄く輝いている様な錯覚を覚える。服装は地味、とも言える様なものだが彼女が着ていることによってあたかも最上級の織物の様な美しさを感じられる。
そして何より特徴的なのはその背中。夜を代表する様な黒い翼はどこか蝙蝠を連想させる物で、僅かに口元から覗く犬歯がそれが何なのかを桃子に決定づけた。
「・・・・吸血鬼、ですか」
その言葉ににこりと微笑み女性は会釈する。そしてその口から出た言葉は彼女に衝撃を与えるものであった。
「ええ、こんにちは水神の巫女。私は吸血鬼、名前は――――」
「鳴神、小夜よ、人間」
◆
「よお、随分強くなったじゃねえか。もっかい手合わせといこうぜ」
見間違う筈のない好戦的な顔。黒い髪に精悍な顔をしていようともそこから発せられる殺気は常人の比ではない。
「ジークフリート・・・・」
響夜は顔を忌々しそうに歪めその名を呟く。確かに何時か決着を付けたいとは思っていたがこんな状況でなど望んでいない。もし運命の神とやらがいるなら有難迷惑だと声を大にして言っただろう。
「ったく、久しぶりに知り合い尋ねたら殺されかけてるんだ。吃驚しちまったぜ」
白々しさを隠す気もなくジークフリートは言う。もとよりこの男は戦えればいいと言う思考の持ち主だ。今回助けたのも自身が戦いたかっただけだろう。
「来いや、黄昏の破壊者」
ジークフリートが自身の剣を抜く。それは今の響夜がそれを振るうに値すると言う事。響夜は全身に魔力を張り巡らせ疾走した。
「ハハハ、良いじゃねえか。この前とは違って良い眼してるよお前!!」
ジークフリートは無造作に剣を振るう。たったその一撃で床が砕け壁が悲鳴を上げる。音速の域と思える程の速さを持って剣を振るうジークフリート。その攻撃を躱し防いで響夜は右腕を叩きつける。
「おっと!」
その一撃をまるでバトンの様に剣を回し防ぐジークフリート。だが響夜もこれで終わりではない。
「焼き尽くす劫火の剣!!」
至近距離からによる核とも思える炎の攻撃。その余波は当然響夜にも襲い掛かり両者は吹き飛ばされる。
「こ、怖いな二人とも~」
それを眺めていた鵺もたまらず被害の及ばない遠くへと退避していく。
「疾走する魔狼の牙!!」
青い燐光を放ち振るわれる右腕、それを捌きジークフリートは響夜の頭上から剣による一撃を放つ。
「―――――ッラァ!!」
右腕にありったけの魔力を込めその剣を撥ね退ける。ジークフリートがバランスを崩した一瞬、響夜は右腕を一閃。
――――ガっ、ギャリ!ギャリギャリギャリ!!
まるで金属同士をぶつけた様な音。本来ならば人体からこんな音は発せられない。それもそうだろうジークフリートは只の人間ではない。
かつて黄金を護っていた悪竜を討伐し、その血を浴びた不死者。彼の肉体は竜の鱗の如き表皮を得て、それはクラウンへの加入によって魔人となることで更なる物へとなった。そしてその性質がスキルとして現れているのだ。
先程からこの繰り返しだ。攻撃を当てようともジークフリートの表皮と剣を抜くことが出来ずジークフリートは響夜の再生能力を抜くことが出来ない。
「・・・・このままじゃ終わらねえか」
ジークフリートは距離を取ると溜息を吐く。そして次の瞬間
「泣き喚け、悪滅の断罪刃!!」
魔竜による蹂躙が始まった。
◆
「・・・ふう、少し暴れすぎじゃないかしら」
城内が揺れるのを感じながら小夜は溜息を吐く。
「(もし、あの人が傷付いたらどうしてやろうかしら。やっぱり四肢をもぎ取ってから食屍鬼共に徐々に食わせてやろうかしら・・・)」
そんな物騒なことを考えながらも彼女は目の前で立っている桃子に眼をやる。
「そんな所に立っていないで座ればどうかしら人間。紅茶はどう?別に毒なんて入ってないわよ?」
「・・・貴方は、貴方は鳴神様の御家族何ですか?」
「・・・・・・」
その言葉に小夜は瞳を閉じしばし何かを考え、やがて口を開いた。
「・・・・・・ねえ、人間。もし貴方から信じられるものが、愛する者がいなくなったら貴方はどうするかしら?」
「・・・・・・・・」
「昔、私が小さい頃、私の瞳は壊れていたわ」
「人がボロ布の継ぎ接ぎだらけの人形に見えて、木も石も水も何もかもがガラクタに見えたわ。それは家族も例外じゃない。特に家族は醜悪な生き物に見えたわ」
「皆そんな私を気味悪がった。母様はそうじゃなかったけど、少しだけ身を引いていたわ。でもね・・・」
「ある人が私の瞳を綺麗だって言ってくれたの。私がどんな物よりも純粋で光り輝いているって・・・」
皆気味悪がってたのにね、と小夜は笑う。それは少女の様なあどけない笑顔。その姿はとても吸血鬼になど見えない。まるで
「・・・・恋をしている少女のようですね」
桃子は呟く。その言葉に小夜は苦笑する。
「そうね、けど恋と言うよりも愛と言った方がいいかしら・・・」
「けどね、その人は突然私の前から姿を消した。必ず送られて来る文すらもなくなって・・・」
「ヒーローが消えたらそれを信じてた人は何を信じればいいのかしらね・・・?」
「それは・・・」
何か言いかけようとしそれ以上何も言えなくなる。桃子も水神が消えてしまえば何に仕えればいいのか分からないのだ。
「ヒーローがいなくなったらその世界はお終い。人々は絶望してただ蹂躙される」
そしてその人々が彼女でありそのヒーローが
「鳴神響夜は私の愛しのお兄様、私のヒーローよ」
小夜はまるで慈母の如き微笑みを浮かべた。その笑顔は桃子が見てきた笑顔の中でも本当に輝いて見えた。
◆
「――――――なッ!?」
瓦礫が散乱し見るも無残な姿になったホール。そこでは有り得ない現象が起きていた。全身から血を流し片膝を着く響夜。彼の瞳は今起きていることが信じられないと驚愕で見開かれていた。
「再生、しないだと・・・!?」
悪魔の心臓。その能力は所有者への超再生能力を授けると言う物。彼はその機能を使っている筈なのだ。だが、傷が癒えない。
「当たり前だ。俺の悪滅の断罪刃は悪竜を殺した剣。その能力は三つ、一つ目、対象の業が深い程ダメージを与えること、二つ目、竜殺しの能力、そして三つ目、不死者、死者に対する死だ。呪の魔法を使うんなら相当業が深いんじゃねえの?ましてやテメェは不死者、相当辛いだろうよ」
「っちい!」
次いで振るわれる一撃を躱し距離を取る。ジークフリートが持っていた剣は黒く染まり中心の赤い線からまるで竜の様な咆哮が木霊している。その咆哮すらも響夜を襲う牙となっているのだ。
結果、形勢不利となり響夜は徐々に追い込まれていた。
「くそがあ!!」
振り下ろされた大剣の一撃を右腕で防ぐ。そこに掛かる重量は以前の比ではない。まるで超重量、竜を受け止めているかのようだ。さらに受け止めている響夜の全身を悪滅の断罪刃の咆哮が襲。四肢が裂け赤い液体が滴り落ちる。
「疾走する魔狼の牙!!」
全身の魔力を右腕に集め、咆哮諸共ジークフリートを吹き飛ばす。だがその衝撃の負荷から響夜の傷口から血が溢れ出る。既に失血の量は常人なら崩れ落ちすぐさま治療が必要となるだろう。響夜は目眩でぼやける視界の中根性一つでジークフリートに追い縋る。
「オォォォォォォォォォォ――――――!!!!!」
神殺しの鎖、軍勢、焼き尽くす劫火の剣による一斉射撃。その波の中響夜自身も幻想交響曲を纏い疾走する。
「甘ぇんだよぉ!!!」
魔弾と業火の海の中、全身を鎖をで縛り付けられ穿たれた穴から赤黒い血液を流しながらジークフリートは吠える。突き出される剣。それは右手と接触した瞬間、ほんの少しのズレを生じ、響夜の胸を貫いた。
溢れ出る怨嗟の咆哮に体の内側から破壊される感覚。全身を激痛が襲い鎧は完全に砕け散る。そして響夜の右手は・・・
「惜しかったな、後少し速けりゃあ殺られてたのは俺だった・・・・」
「・・・・・・な」
「名乗ってやるよ、俺の名前は」
「・・・・・け・・な」
「クラウン序列第六位、シグルズ=ジークフリート」
「・・ざ・・けん・な」
響夜の声を無視しジークフリート、シグルズはその事実を言う。
「テメェを殺した魔人だ」
「ふざけんじゃ、ねええええええええええええええええ!!!!!!!」
瞬間、一際大きな脈動が響夜の全身を襲う。そして太初の塩水が青白く明滅する。それは脈動が大きなるのに比例しまた激しくなっていく。
「形成!!」
「破壊の脈動!!」
それは鎌。赤黒くまるで血を吸ったかのよう妖しく禍々しいまでの狂気を発する神器。だがそこに宿る力にはまるでそれが感じられない。むしろ温かさの様なものを感じる。
矛盾、破壊と創造、誰かを護る為に他者を破壊する。幸せが欲しいから他者の願いを食い潰す。当たり前のことで誰もが無意識的に行う行為。
気付けばシグルズはその力に圧倒されていた。先程までから一転。全身が総毛立つ程の勢いを感じる。
「面白れえ・・・来いよ、黄昏の破壊者!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ァァァァァァ!!!!!」
振るわれる超質量の二つの力。それはいうなれば星と星のぶつかり合いだ。ほんの少しでも退けば砕かれる。
「「オオオオオオオオオオオォォォォォオオオオオオオオォォォォォ!!!!!!!!」」
ぶつかり合う魔人達の力。その力はどちらも決して退かない互角とも言える勝負。しかし、それもやがて終わりが来る。
「―――――っぐ、ゴボっ、・・・か、ハア」
胸を貫かれ全身の傷口からの大量出血。ここまで持った方がおかしいのだ。響夜の足元がふらつく、破壊の脈動の力も次第に衰えシグルズに押され始める。
「っぐ!お゛お゛!!」
倒れそうになるのをこらえ残った力を全て込め響夜は破壊の脈動を再び振るう。
「舐めんじゃ、ねええええええええええええ!!!!!」
周囲を破壊し続け二人の力が爆発した。そして、
「・・・・・く・・・っそ・・」
その限界を迎え、響夜は崩れ落ちた。その響夜へと振り下ろされる悪滅の断罪刃、それがぶつかろうとした瞬間、赤い夜が始まった。その光景にシグルズは振り下ろそうとした剣を止める。
「そこまでよジークフリート」
止めを刺そうとするシグルズを階段から現れ小夜が止めた。
「あ?何の用だ吸血鬼」
戦いの邪魔をされ視線だけでも射殺せそうなほどの眼力で小夜を睨み付けるシグルズ。その姿に小夜は呆れる。
「それはこっちの台詞よ。ここまで暴れて、その上お客様を殺すなんて何の冗談かしら?」
「・・・・・・・・・」
睨みあう二人、しかし物影から鵺が現れたことによりシグルズは小さく舌打ちをし矛を納める。
「鵺、そいつ起きたら伝えてくれ」
「え、ちょ、シグルズ!」
鵺の話しなど聞こえないとばかりにシグルズは城の奥へとへと消えていく。それを見て小夜は小さく溜息を吐く。
「・・・・まったく、余計なことばかり」
小夜は響夜に近付くとその体を抱きしめる。
「会いたかったですわ、兄様」
先ずは怪我を治さなくては、そう考え小夜もまた鵺を連れて消えていく。誰もいなくなったホール。やがて赤い夜は消えていき、そこには無残に破壊された瓦礫の山だけだ残った。
感想、批判、意見、評価などがありましたらお願いします。
題名が三つ連続で異変ってしつこくね?
ふとそんなことを思いました。
はい、赤い夜ということで吸血姫です。ただ吸血鬼というのもあれなので和服姿です。和服吸血鬼、これは流行る・・・・・わけないか。
妹ですよ妹、響夜君の妹。殺人衝動薄めの代わりに物事が凄い見え方になってます。一番困ったのは髪の色、顔などは清楚という感じですが吸血鬼なのでひどく妖艶に見えるという矛盾。
あとヨルムンガンドは出すかどうか迷いました。ぶっちゃけ出さなくて良くね?とも思いましたがこれはティアマトに合う表現がなかったので・・・。
生成・太初の塩水
形成・破壊の脈動
・・・・あれ、弱くなってね?とか突っ込んじゃいけない。
それではまた次回ノシ