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屋敷の中。そこには不思議が詰まっていた

「・・・・・なんでさ」

          by響夜



突然だが、野宿をした時獣用の対策をしなかったらどうなるだろうか?

・・・・・まあこんなことを聞けばどうなるのかも分かるだろうが、


「・・・・ひゅー・・・ひゅー・・・」


意識を失った俺は全身を獣に引き千切られるという貴重、というか絶対したくない体験をした。血の臭いに寄って来たようで十数匹の群れだった。阿修羅は見事に食い散らかされ俺に集る獣。恐らくウサ公を呼び出していたら殺されていただろうな。

獣共は全員殺しておいた。流石に噛み千切られたのにただ殺す程俺は優しくねえからな。


「ファラリスの雄牛、鋼鉄の処女アイアンメイデン断頭台ギロチン


動けないよう四肢のどれか二本を切り落とし、ファラリスの雄牛で蒸し焼き、死に掛けの所を取り出し鋼鉄の処女で(アイアンメイデン)で調理。


「・・・・・実に不味そうな料理だな」


俺は十八禁物の料理を前に眉を顰める。飯が無いなら食いつくが今の状態でこれを食おうとは思わん。冒涜?襲ってきた相手に感謝して食う方が俺には屈辱だ。


「・・・・生成」


その言葉に応える様に右腕が一際大きく脈打つ。そして焼ける様に右腕が熱くなる。見れば右腕は黒く染まりその上に赤い幾何学模様が描かれていく。


「太初の塩水ティアマト


その言葉と共に出現する神器。恐らく俺が持つ神器で最強の攻撃力を誇るだろう。何故だかこれは観察眼を使ってもその詳細が掴めない。だが何となく分かる。これの使い方が。

俺はずっしりとした重みを感じながら右腕を構える。目の前にいるのは一匹だけ残しておいた後ろ足の無い狼。


「―――――ッ!」


加速。俺は今迄の最高速度を易く超え刹那の瞬間には狼の首を刎ね飛ばしていた。


「・・・・・・」


そのことに軽く驚き俺は右腕をまじまじと見つめる。俺は何度か腕を振るうと感覚を周囲に広げる。その感覚も以前の比ではないより広くより鋭敏となり周囲の異物全てを感じ取ることが出来る。


「・・・・・五匹」


俺は血の臭いに釣られ此方に接近してきている妖共へと駆ける。感覚を覚えた俺はその速度に振り回されることはなくほんの数秒で最も接近して来ていた妖の正面に現れその息の根を止める。


「・・・次だ」


刹那。俺はもう一体の目の前に躍り出る。目の前の一体の他にもその背後には数体の妖。恐らく徒党を組んでやって来たのだろう感じられる気配も此奴らしかない。


「死ね」


俺は目の前にいた妖共の首に狙いを付け腕を横にして構える。次の瞬間閃光が走り奴等の首を切り落とす。

それを横目に俺は再び消える。向かう先はあの屋敷。恐らく今の速度ならこの森でも上位に入る強さを持つようでなければ俺は止められないだろう。俺は先程より加速し自身の限界の速度を持って森を走る。

屋敷への目の前に出るのはそう掛からなかった実質一分程の時間。疾走する魔狼フェンリルに勝るのではないかと思う程の速さだ。


「・・・・・・・」


相当強力な結界なのだろう。中から感じる気配も分からないしこれがどんな構造なのか観察眼で視えるが今一理解できない。


「入れば分かるか」


俺は全力で右腕を振るう。拳が結界とぶつかった瞬間衝撃が俺を襲う。だが不意にそれが消えたと思ったらガラスが割れる様な音を放ち結界が砕けた。

俺はそれを確認すると屋敷の扉を蹴り破る。派手な音を立てながら埃を舞い上げ扉は壁にぶつかる。そのまま俺は警戒する。だが一向にそこから何かが出て来る様子はなく俺は警戒をしながらも屋敷へと入っていく。


「何もねえのか?」


俺はギイギイと軋む床の上を歩きながら呟く。床の上も埃が積もり誰かが歩いた様子はない。

だが


―――・・・ギィ・・・


俺はそこで立ち止まると唇の端を歪める。


「成程。道理で床の上には足跡がねえのか」


俺は天井を見上げる。天上からはパラパラと埃やゴミが落ちて来ている。それを確認すると俺は脚に力を込め床を蹴り天井に穴を空ける。


「ったくよぉ。テメェはネズミかよ」


俺は天井裏へ上がり目の前にいる妖に文句を言う。外見は一言でいえば骨だ。上半身は山羊の頭骨とおそらく人間の骨、そして下半身は蛇の様な姿で構成されている。手は四つありよくある死神の様な姿だ。声は発することが出来ない様でカタカタと歯をぶつけて音を鳴らしている。


「ナーガ?・・・いや、もどきか」


俺は右腕を構え戦闘態勢に入る。


「掛かって来やがれ骨野郎。直ぐにあの世に送ってやる」


俺の言葉に対し骨野郎はさも面白そうにカタカタと骨をぶつけると突進してくる。俺は天井裏の床に全力での一撃を放ち天井裏を破壊する。それによりその上に乗っていた俺と骨野郎は木材と共に落ちて行く。


「死んじまいなあ!」


俺は床に降り立つと同時に近くに落ちてきた木材を骨野郎にぶつけ視界を遮る。奴が木材を払おうと腕を動かした瞬間加速。俺は骨野郎の懐に潜り込み右腕を横に一閃する。確かな感触と共にばきばきと奴の骨が砕ける音が俺の耳に届いた。そしてそれに続き痛みを訴える様に屋敷の中に奴の悲鳴が木霊する。


「うっせえんだよォ!!!」


俺はそのまま勢いに任せ一回転する。遠心力により右腕はより強力な一撃となって骨野郎に襲い掛かる。奴は必死に防御しようとするが腕が長いことにより上手く防御することが出来ず左腕の二本を砕かれる。既に痛覚が麻痺しているのか奴はよろめきながらも残りの右腕で俺を薙ぎ払う。


「我が軍勢レギオンよ」


俺は自ら後方へ跳ぶことで衝撃を受け流し軍勢レギオンによる集中砲火で蜂の巣にする。先程の一撃もそうだったがやはり防御面ではそこまでの強さを誇らないのかものの数十秒で骨野郎は原形が残らず破壊された。


「・・・・・あの結界はこれを出さない為か?」


それにしては弱過ぎるだろ。阿修羅の方がよっぽど強かったぞ。それとも他の意味があるのか・・・。

俺は頭を捻りながら考えるが結論は出ず保留という形になった。


「この屋敷はどうすっかなあ・・・」


探索も全然してないし・・・。でもあれだけ暴れたのに何かが出る様子もない。


「探索を続けるか」


他にも何かあるかもしれないし。あれ一匹っつうのはねえだろ。

そう考えた俺は屋敷の奥へと足を進める。


「藪蛇なら歓迎なんだがな・・・」


 ◆


「・・・・うぜえ」


俺は近寄って来る青い玉―――よくある霊の姿のようなもの。恐らくそれで合ってるんだろうが―――をぶった切りながら俺は奥へと進んで行く。途中にあった部屋には白骨化した妖共の骨が大量に転がっていた。正直興味もないから青い玉にぶつけて遊んでたが奥へ進むごとにその数は増していった。お陰で骨も無くなっちまった。


「しかし霊って斬りつけられるんだな」


魔力が実体化でもして出来てんのか?

いい加減鬱陶しく思った俺は周囲にいた青い玉を斬り伏せると一気に加速する。青い玉は俺の動きに付いて行くことが出来ず只ふよふよと周囲を漂っていた。


「あれで速かったらホラーだな・・・」


俺は青い玉を一瞥し苦笑する。

大分進むと青い玉はいなくなり代わりに2メートルを優に超える程の大きさの白い人型の霊が複数佇んでいる。そいつらは俺が接近してきたことに気付いたのか俺に顔(?)を向けると一斉に巨大な弾を放つ。


「・・・・ッオオ!!!」


俺は勢いを止めずそのまま白い弾に埋め尽くされた壁へと斬り込んで行く。


「―――――・・・ってえなァ!」


俺は全身を焼かれながらもその壁を突破すると目の前にいた一体の胴を真っ二つにする。斬られた一体は音の無い悲鳴を上げると粒子へとなって消えて行く。


「青い玉と同じか・・」


俺はそれを確認すると残りの奴らへと右腕を構える。俺が飛び掛かろうとした瞬間奥から先程よりも強力な弾が飛んでくる。咄嗟の判断でそれを弾き飛ばし俺は奥へと火炎弾を飛ばす。火炎弾は目標へとぶつかる前に飛来した弾によって相殺されるが火炎弾からの光源によりそこにいた生物の姿を確認することが出来た。

死神。それを一言で表すなら正しくそれだろう。黒いフードとローブで全身を隠し袖からは白骨化した人間の骨が見えその手には鎌が持たれていた。


「・・・・・・・」


たぶんこういう進化形態なのだろう。


青い玉→白い人型→死神


俺は人型が鞭の様に振るう腕を躱しながら白い人型を斬り伏せ徐々に死神に近付いて行く。だが奴は白い霊共を正面に固めることでそれ以上の接近を許さない。


「疾走する魔狼のフェンリス・ヴォルフ!!!」


俺は加速したままその障壁に向けて魔力を纏わせた拳を放つ。その一撃は以前の比ではなく白い霊の体を易々と突き破り衝撃で纏まっていた霊の半数を消し飛ばす。


「・・・・・・!!」


その衝撃で霊共の統率に乱れが生じ死神の防御が手薄になる。


「テメェ程度が俺を止めれると思うなよ!」


俺は地面擦れ擦れにまで体を屈め疾走する。擦れ違った白い霊共は俺に狙いを定めようとするが別の白い霊が壁となって俺に当たることは無い。俺は加速し続け死神へと飛び掛かる。


「死にやがれえ!」


俺は奴の首へとその右腕を振り下ろす。それはまるで断頭台に立たされた罪人にそのばつを下すかのような無慈悲な一撃。死神は声を出すことも叶わず首を刎ね飛ばされていた。


「・・・・・・・!!」


そして背後から聞こえる白い霊の声にならない悲鳴。俺は何事かと背後を見れば白い霊達は苦しむ様に悶えやがて粒子へとなって消えて行った。


「・・・・・あいつが頭だったのか」


俺はその現象に軽く驚き懐から煙草を取り出す。見ればもう通路も終わりの様だ。俺は奥にある扉を勢いよく開ける。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だこれ」


最後の扉の奥にあったのは


厠だった。


「・・・・どういうことだよ」


俺はこの世界に来て今までにない程深く、本当に深く溜息を着いて扉をゆっくり閉めた。気のせいか全身が嫌に重く感じた。


 ◆


「・・・・・」


あの後、屋敷を出た俺は樹の上へと昇ると周囲の安全を確認しその瞼を閉じた。


明日は今日よりもマシな日になってほしい。心からそう願って。

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