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上下社会は弱肉強食

「もし喧嘩で勝てなかったら?不意打ち上等だこら」

                       by響夜


「―――――ッ!」


俺が放った刺突は目の前にいる雷蛇の目に吸い込まれその眼球を貫く。


「キシャアアアアァァァぁアアアアァァァ!!!!!」


奴が激痛で苦悶の表情(あくまでも様子だが)を浮かべる。俺は動きが止まった雷蛇に上段から野太刀による一振りを浴びせ切り裂く。雷蛇は声を上げる間もなく地面に倒れた。


「・・・・ハッ・・・・ハッ・・・ハア」


俺は息を整え周囲を見渡す。既に周囲には巨大な狼の死体が三つ程転がっている。気配はもうしないことからこれ以上妖がやってくることはないだろう。

既にこの谷に落ち二日が経過していた。あの日疲労からか眠りこけてしまった俺は翌日無事目を覚ますことが出来た。それから食料の為にも只管殺し続けた。そして現在、俺はあの時見えた屋敷を目指していた。

どうやらというか、やはりというか・・・。遠くからだと近くに思えても実際の距離は相当あったらしい。あとは俺が正しい方角をうろ覚えなこともある。


「・・・・・・」


俺は自身の気配を殺す。この森で生き抜くうえでこれは最早癖になっていた。覚えることこそ大変だったが一度出来てからは意識していき戦い続けて行ったら無意識だ。強くなっていることは分かるが・・・。


「どうにも殺されちまう」


この森に入り俺は三度の死を体験している。これでも相当マシだと思うがな・・・。

休憩を取った俺は再び歩き出す。出来るだけ実力が俺よりも遥か上の奴に挑む。別に俺がマゾヒストの類って言う訳ではないが経験を積むうえではこれが一番良い。


「一気に潰す!」


俺は一番近くで感じ取れた気配の下へ行く。やがて見えそこにいるのは天狗・・・だろうか。全身を黒い毛で包みその手には杖・・・いや棒か?取り敢えずその様な物。背中には羽が生えからすをそのまま人型にした感じ。


「ま、いいか」


俺がそんなことを考えていると天狗は此方を見る。


「そこにおる者出て来るがいい」


喋れると言うことは知能が高いのか・・・。俺は隠れることを止め目の前に出る。


「よう、やっぱ気配隠すのまだ雑だったか?」


「ああ、どこかぎこちない。隠すのならば消すのではなく周囲の気配に自分を溶け込ませるべきだな」


天狗はそう言って実践して見せる。中々良い奴だな。


「いやあ済まんな。そう良いことされると殺し辛いじゃねえか」


「嘘を着くなそんな殺気全開満面の笑みで誰が殺し辛いだ」


そう笑いながらも天狗は棒を構える。そこから連想されるのは


「・・・槍術」


「セッ!」


俺の背後に周り突き出される棒。俺はそれを無手で捌き剣を創造する。


「ァ甘い!!」


天狗の声と共に俺の手に出現した剣は叩き落とされる。


「ハッ――――ヤッ!!」


続く連撃、顎を打ち抜き喉を突かれ俺の息が止まり咽る。


「っが!ハッ・・か・・・クソ天狗が」


俺はナイフを創造し突き出される棒を捌き反撃する。傷は浅いが確実に攻撃は通っている。俺は体を捻り側頭部に蹴りをかます。その攻撃に天狗が僅かに呻く声が聞こえ俺は手に持ったナイフを投擲する。


「フン!」


「我が軍勢レギオンよ」


ナイフが弾かれた瞬間俺の背後から無数の銃火器が出現その照準を天狗に定める。


「風穴空いちまいなあ!!!」


放たれた弾丸は天狗へその牙を剥く。


「舐めるなあ!!」


だがその弾丸を奴は悠々と躱す。それどころか此方に迫ってきている。流石にこのレベルの相手には牽制位にしかならないか。


「クソ!」


俺は奴が放つ一撃をナイフの刀身で往なすが負荷が掛かり過ぎたのかその刀身は砕け散る。

好奇だと思ったのか奴の攻撃は激しさを増し俺は防御が間に合わず次々に全身を殴打される。


「いてえんだよ!!」


俺は何とか奴の棒を掴み取りその腹を蹴り上げる。その衝撃で奴の体は僅かに浮かんだ瞬間その後頭部に拳での一撃を放つ。


「・・・・っく!?」


俺が追撃しようとすると奴の爪先が俺の額を打ち抜く。俺は頭を仰け反らす形になり隙だらけになった腹に棒での刺突を放たれた。


「!ほう、やるではないか」


俺は奴の棒と腹の間に鉄板創造することで受け止める。だが鉄板は凹みその衝撃は俺にも来ている。俺の口から赤い液体が流れ出る。恐らく内臓のどれかがやられたのだろう。俺は二本の剣を創造し奴へと駆ける。


「ハア!」


俺は上段からの一撃を放ちそれを防がれた瞬間もう一本で切り上げる。その一撃は奴の片足で弾かれもう一本も砕かれるが関係ない。


「まだあんだよぉ!!!」


俺は再び創造し奴に食いつく。怒涛の連撃。決して休む暇も考える暇も与えず剣を振るい続ける。隙が出来ればそこを突き無ければ反撃を許さない程の手数で作りだす。


「っち!」


その連撃に天狗は舌打ちしまるで刀を抜く構えを問える。


「―――――ハッッッッ!!!」


一閃。その一撃で俺が持っていた剣は二本とも半ばから刀身がズレ落ちる。


「隠し刀」


天狗の手には鈍い輝きを放つ一本の刀。恐らく魔剣・・・こっちでは妖剣の類だろう。それなら先程の切れ味も納得できる。


「どうした。そちらが来ぬなら――――」


天狗は居合の構えを取り


「此方から行くぞ!!」


疾走する。既に彼我の距離は失われ俺は妖刀の間合いに入っていた。


「っく!」


俺はその一撃を左腕を犠牲にし回避。鮮血と共に左腕が宙を舞う。だがそれも悪魔の心臓グリモア・ハートででその傷は即座に回復する。それを見た天狗はその目を細める。


「ああ、これや意外。貴様も物の怪の類か・・・」


「一応人間だ。俺は人間だ。人間・・・・のはずだ」


俺は自分に言い聞かせるように答えるが再生する腕を見て徐々にその自身も消え失せる。


「まあ、うん。何でもいいよ」


俺は倉庫からあの赤い欠片を取り出して置く。ルイスとキャロルの一撃で此奴だけが壊れなかったというのは無いだろう。あそこまでの破壊でこれが無事ということはこれも何か有る筈だ。いざという時盾にもなる。俺は欠片を神殺しのグレイプニルで腕に縛り付ける。一応不安だから神殺しのグレイプニルでの防御もしておく。


「・・・銃は当たらねえよな」


現にさっき回避されたし。前みたいに刀身に創造なんて綱渡りはしたくない。俺は神殺しの鎖で腕を覆い特攻をかます。


「む!錯乱でもしたか!!」


俺の様子を見た天狗は吠える。まあこれみたらだれでもそう思うな。神器でも覆っているのは両腕だけそれ以外に武器もない。


「んなわけあるかよ!!」


だが事実これ位しか有効な物は無いだろう。創造では即座に破壊されるのが目に見えている。銃は効かない。なら


これしかねえだろうが!!」


俺は全身に魔力を張り巡らせ五感と身体能力の総てを強化する。


「死ね」


奴が放った一撃を俺は右手で受ける。腕が痺れ暫く動かせなるが奴の胴体はガラ空きだ。


「一発!」


俺は奴の鳩尾を殴り付ける。怯んだ瞬間顎を肘で打ち上げ裏拳で顔面を殴りつける。そして仰け反った瞬間に顎を蹴り砕いた。


「舐めるな!」


だが吹き飛ばされる直前奴の刀は俺の首を胴体から切り落とす。目まぐるしく動く視界、即座に暗転し気付けば再生した俺の目の前には剣を振り上げる天狗。


「くそ!」


反射的に俺はその一撃を腕に巻いた神殺しのグレイプニルで受け止める。奴の刀も鎖によってそこからの連撃は発生させにくい。俺達は距離を取り互いに睨み合う。


「やるじゃねえか」


「まさか首を刎ねても再生するとは・・・」


俺も敵がそうだったら同じ感想だ。面倒臭いと言ったらありゃしない。俺は再び駆け天狗にその拳を振るう。

天狗もまた居合の構えから高速の一撃を放つ。両者がぶつかると思った瞬間、それは起きた。


「あ?邪魔なんだよ虫けら」


鉄塊。突然第三者の声が聞こえたかと思いきや放たれたそれは俺達へと着弾する。


「・・・がふ・・くっ・・・そ・・・何だこりゃ」


俺は重傷を負った体を引き摺り放ってきた奴を睨み付ける。


「ああ?生きてんのかよ。しぶてえなゴミ虫が」


阿修羅。そこにいた者を一言で表すならそれだ。六本の腕と三つの顔。体表は赤くその表情は憤怒で染まっている。


「っぐ・・・貴様・・」


天狗の方も生きてはいるが最早死に体だ。俺はそれを一瞥し再び阿修羅に目を向ける。だがそこに阿修羅の姿は無い。


「とろいんだよゴミ虫」


聞こえてきたのは真横から。気付けば俺は阿修羅が持つ剣で切り裂かれていた。


「っが!」


速いなんてもんじゃねえぞ!?

俺は即座にその場所から転がり距離を取る。


「神殺しのグレイプニル!!」


俺は棒立ちのまま佇む阿修羅に鎖の群集を放ち迎撃する。


「ゴミが一丁前な装備してんじゃねえ」


だが奴は俺の視界から消えたかと思うと背後に現れる。


「碌に神器も扱えねえ奴が!」


俺は奴に頭を掴まれると鳩尾を蹴りあげられ吹き飛ばされる。樹の幹に打ちつけられ呼吸が一瞬止まるが奴がいた場所を睨み付けるとそこには高速で奴へと刀を振るう天狗の姿。

だが天狗も奴には及ばなく無造作に腕を振るわれただけで宙を舞う。


「疾走する魔狼のフェンリス・ヴォルフ!!」


俺は奴の片足の空間内に魔力を溜めそれを爆発させる。油断していた奴はそれで僅かに肉が抉れる。


「あ?何だ生きてたのか。人間にしちゃタフじゃねえか」


だが奴はそれも意に介さず奴は俺の目の前に現れ頭を踏み砕く。だがそれも悪魔の心臓グリモア・ハートで即座に再生し奴はその姿を見て瞠目する。


「テメェ他にも神器持ってやがったか」


俺は両腕に魔力を集中させるとその足を掴み力任せに飛ばす。その瞬間を狙って天狗は背後に周り阿修羅を斬りつける。


「ゴミ共が調子乗んな」


だが阿修羅の腕は逆に天狗の刀を掴みとり引き寄せるとその首を圧し折った。ビクリとその肩が震え次にはもう天狗は動かぬ死体となっていた。


「っちい!」


俺は視覚を強化し何とか奴の動きに追い付こうとする。だが例え見えても動きが追い付かない。俺は奴に一撃入れることも叶わず只殴られ続ける。


「っち、ホントにしぶてえ野郎だな」


「・・・は・・・か・・」


俺は全身から流血しながらも奴を睨みつける。再生こそしてるが何回か消滅させられそうになった。


「これで終わりだ。死にやがれ」


放たれた一撃。俺はその一撃をフラフラになりながらも右手に握っていた赤い欠片で受け止める。


――――がきいいいいい!!!


鈍い音。しかし赤い欠片は壊れていない。やはりこれは


「・・・・・神器」


なら。これにだって使い道はある筈だ。俺は再生に回していた悪魔の心臓グリモア・ハートを全て魔力に変換し欠片に注ぎ込む。


「ふざけんなよ!」


こんな所で死ぬつもりなんてねえんだ!俺はまだ生きて、生きて生きて生きて、あいつ等の首を刈り取るまで死ぬわけにはいかねえんだよ!


「死ぬならテメェが死にやがれ!人間舐めんな化け物があ!!」


大量の魔力を込められ臨界点を突破した赤い欠片は熱を帯び発光しながらドロドロの液体へと変化する。それは地面へ滴り落ちることはなく俺の手に染み込んで行くように消える。それと同時に俺の頭に入り込んでくるこの欠片の使い方が。


「生成・太初の塩水ティアマト!!」


俺の右腕がまるで溶岩の様に熱く煮えたぎる。見れば俺の右腕は黒く染まりその上には幾何学模様が描かれ赤く発光している。そしてそこから感じ取れるのはあの欠片と同じもの。だがそれは欠片の時とは比べ物にならない程の魔力を放っている。

阿修羅もそれを感じ取ったのか六本の腕に持つ剣を握りしめる。


「っち!面倒くせえ!!」


奴は全力で剣を振り下ろす。


「ぶっ壊れる!このクソ野郎が!!」


その振り下ろされた剣に対し俺は右腕を振るう。その一撃は奴の振り下ろした剣を破壊して―――――その首を切断した。


「――――がっ、かァ・・・ゴミが」


「そのゴミに殺されたんだ。さっさと消え失せろゴミ虫が!」


「く・・・そ、が」


――――メキャ!


地面に転がった奴の首を俺は踏み砕く。暫くそのままボーっと突っ立ていた俺は自然と後ろへ倒れる。


「・・やべえ」


再生を途中で止めたからか止血をしなかったからか。俺は地面に仰向けに倒れそう呟くとそのまま意識を失った。



感想、批判、意見、評価などがありましたらお願いします。



「生成」…物事がある状態から他の状態になること。また、その過程。


ということで生成を付けました。形成でも良いのですがそれはまた違うところで・・・。

以前戦闘自重的なことを言いましたがこの章からは戦闘、中二病が大幅アップです。止める気は全くありません。

前回のが少し短いかなと思ったので追加。


テストもあるので来週の投稿は少し少なくなるかも・・。今も少ないのに(>_<)


ではまた次回。後で主人公紹介もしとこうかな・・・。

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