一歩踏み出せばそこはもう未開の地
書庫に籠り三日程経った。どうやらこの世界ってのは北欧神話の世界に酷似、というかそのままらしい。
第一階層
・アースガルズ
・アルフヘイム
・ヴァナヘイム
第二階層
・スヴァルトアールヴヘイム
・ミズガルズ
・ヨトゥンヘイム
第三階層
・ニブルヘイム
・ヘルヘイム
・ムスペルヘイム
空があるのに階層があるのはよく分らないがこの世界はこの三つの階層で構成されている。そしてその階層の中心にはユグドラシルが聳え立っている。今の所第一階層への行き方は見つからないが第二階層への行き方はユグドラシルを通る必要があるらしい。といっても今の俺では全く歯が立たないと思うが・・・。
「・・・・エルザ」
「何ですか?」
俺の後ろで本を整理しているエルザは首を傾げる。既に天井に届くような本の山が幾つもあるのによくやるな。軽く尊敬するわ。
「お前って軍の用事とかあるか?」
「いえ、ありませんが・・・」
「なら俺に戦い方教えてくれ」
正直、このままだと一生勝てないと思う。俺はエルザに頭を下げる。エルザは少しだけ慌てるが俺の目を見て真剣な表情をする。
「・・・・・分かりました」
その言葉俺は顔を上げる。
「ただ、教えるのは私ではありません。ですが信用できる人物です。それでも大丈夫でしたら」
「ああ、構わない」
エルザが信用できると言った奴なら俺もある程度の信用が出来る。
「なら、その方には私から話を通しておきます」
「ああ、悪いな」
「いえ、問題ありません。これで力になれるなら」
エルザはそう言って微笑む。
「ありがとよ。・・・それでその連絡ってのは何時位になるんだ?」
「そうですね・・・・三日もあれば連絡は着くかと。そこからですから大体六日もあればおそらく修行は始められるかと・・・」
「・・・そうか」
その言葉に頷くと俺は立ち上がる。
「何処へ?」
「少し外に出てるわ」
それだけ言うと俺は建物の外へと出て行く。
「・・・・」
外はもう夜明けだ。東の空からは太陽が昇ろうとしている。その様子を見ながら俺は煙草を取り出す。
「・・・・・うまい」
今迄極度な緊張状態を強いられていたからか、煙草がやけにうまく感じられる。俺は周囲に広がる廃墟を眺める。
「此処も昔は賑やかだったのかね?」
生物の気配が感じられない死の街。俺を襲った感覚も今のところは感じられない。あれが何だったのかは分からない。エルザもそんな感覚はしないと言っていたから恐らくクラウンの誰かがやったのだろう。
「・・・・・・」
そこまで考え太陽の光が黄金の様に視えた。その光に俺は昇ってくる太陽を睨み付ける。
「―――――クソが」
俺は拳を堅く握り煙草を吐き捨てると身を翻す。
「影法師も黄金も、残らず消してやるよ」
俺は化け物どもの姿を思い出しこれ以上気分が悪くなる前に廃ビルへと戻って行こうとする。
「「ねえ、今暇かい?黄昏の破壊者」」
背後から聞こえて来た声に俺は振り返る。
「「こんにちは。僕達の名前はルイス・キャロル。クラウン序列第五位だよ」」
そこには無垢な笑顔を浮かべる双子の姿があった。
「「僕達と一緒に遊ぼうよ」」
昇ってくる太陽背にしながらのその笑顔がまるで俺には狂気に染まった悪魔の様に視えた。
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今回前書きありません。
これで半分位はクラウンのメンバーを出せたかな?
次からは新章突入!