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殺人鬼は異世界に来てしまったようです  作者: ひまめ
魔と聖が混濁する世界
33/91

戦争終結。戦争終わった直後でよくこんな空気になれるなおい


「破軍追走!」


 その言葉と共にマオの指先から黒い閃光と共に破壊の渦が放たれる。


「ヌウ!!!」


 だがその一撃を聖王は臆することなく対峙ずる。自らの魔力を限界まで神罰エクレールに供給し真っ向から迎え撃つ。マオの攻撃を線だとするならば聖王の攻撃は点だろう。少ない魔力を効率よく最大に発揮する為の一点突破。その結果マオの破壊の渦は聖王の剣に斬り伏せられた。


「齢百にも満たない小僧がよくやるのう」


 マオはその姿を見てその顔を愉悦に染める。聖王が全力に対しマオは未だ余裕綽々。これが年の功によるものなのか種族の違いによる壁なのかは分からないがその差は明らかだった。あと十年早くこれだけの技量を身につけておけば・・・


「(いや、もしもの話など考えるべきではないだろう)」


 聖王はその考えを否定する。聖王の唯一の誤算とも言えるべきはあの五人を相手にあれほど粘った響夜の存在だろう。マオや翁という規格外もいるがここまで追い込まれはしなかっただろう。


「(だが一国の王が倒れる訳にはいかないだろう!!)」


 聖王は国にいる民のことを考え自身を鼓舞する。ここで負けると言うことは自身の理想はそこまでになってしまう。王が倒れると言うことは民の、共に闘った戦友ともの期待を裏切ると言う事それだけはあってはならない。

 聖王は自身の残った魔力を全て自身と戦い続けた相棒に供給する。


「いくぞ戦友よ。我らの絆を奴に見せてやろうぞ!!」


 大気を振るわせるほどの魔力が聖王から溢れ出る。その魔力にマオは感嘆の息を漏らす。


「素晴らしいな聖王よ。まさかそれ程の力を持っているとは・・・」


「戯け。貴様と比べれば天と地ほどの差だろう」


 聖王は剣を構える。対するマオも無数の方陣を展開し聖王を迎え撃つ。


「いくぞ!!」


「くるがいい!!」


 魔力を脚へと送り聖王は加速する。それは音速をも超えた速度。しかしマオはその速度の聖王を捉え全ての方陣から閃光が迸る。その光の奔流のなかを聖王は止まることなく疾走していく。全身から血が流れ出しぶちぶちと何かが千切れる音がする。激痛が、衝撃が聖王を襲いかかる。だが聖王は止まらない。折れそうになる心を叱咤し走り続ける。全ては民と戦場で共に戦った仲間の為。


「オオオオオオオオオオォォォォォォ!!!!!」


 あらん限りの声を上げ聖王は光を切り裂き疾走し続ける。


「(あと、あと一歩!!)」


 聖王はその最後の一歩を踏み出し、光の奔流を超えた。


「喰らえええええええええ!!!!!」


 放たれるのは全身全霊を込めた一撃。聖王は振り上げた剣を振り下ろす。


「――――――――――」


 自身の全てを賭けた一撃。もう痛みで視界もぼやける。果たして自分は勝てたのか。聖王はついに限界を迎え倒れた。最後に見えたのは此方を見ている一つの影だけ。果たしてそれが誰だったのか・・。聖王は考えることが出来なかった。


 ◆


「・・・見事」


 倒れ伏した聖王を見てマオは惜しみない賞賛をする。かつてこれを喰らって尚自分にその剣を届かせる者などいなかった。マオは自身の右腕を見る。そこには剣で斬られた傷跡。聖王の一撃はその命を取るに至らなかったがその剣は確かに届いていた。


「・・・・・・・」


 マオは戦い続ける周囲を見渡す。これでこの戦争も終結だろう。マオはその手を上げ勝利を宣言した。


 ◆


「舐めんじゃねえええええええええ!!!!」


 全身を襲う痛みを無視し響夜は懐からグロックを抜き引金を引いた。その突然の行動にメイドは反応することが出来なく放たれた弾丸は右肩を貫いた。


「く!」


 苦悶の表情を浮かべるメイドに荒い息を吐きながらも響夜はグロックの銃口を向ける。


「やってくれんじゃねえか・・・。お陰で三途の川見えたぞ」


 響夜はメイドの足に銃弾を撃ち込む。メイドが再び苦悶の声を上げる。最初の再生能力はもう見る影もない。おそらく限界がきているのだろう。それを確認すると響夜はその頭に銃口を向けようとし


「あ?」


 その手を切断された。それを認識すると同時に響夜はその場を飛び退く。するとそこを青の軌跡が横切る。アリアだ。恐らく水を操り剣の様にしたのだろう。形が無い以上それは生き物の様に動いている。


「随分なことしてくれんじゃねえの」


そう軽口をたたきながらも響夜の腕はすく様再生しもとの状態に戻る。だが内心では響夜は焦っていた。


「(どうする。怒りのディエス・イレはあの痛みで消えちまった。形無き略奪者ジェロジーアを使おうにも間に合うかどうか・・・)」


 幸いなのはメイドをほぼ無効化したことだろう。響夜がそう考えていると光が周囲を覆う。


「?」


 その光に首を傾げ周囲を見渡すと同時に響夜の目が見開かれる。


「聖女!?」


 そこにいるのは白髪の少女。既に魔力切れを起こしたと思っていたがどうやらまだ温存していたらしい。それと同時にこの光も何なのかを理解した。


「させるかよ!」


 すぐさまデザートイーグルを向けるが射線上にアリアが入り邪魔をする。そうしている間にもメイドの傷は徐々に回復し塞がった。


「くそ!」


 響夜は舌打ちをしながら神殺しのグレイプニルを発動する。三対一のこの構図では今の自分では勝ち目は低い。ならば最も優先することは後方支援を妨害すること。


「逝っちまいなぁ!!」


 響夜は神殺しのグレイプニルの矛先を聖女へと向ける。例え傷を負わせられなくとも視界を奪い邪魔をすることは出来る。響夜はそれと同時に二人へ駆けだす。その手には先程切り落とされた腕が掴んでいたグロックとデザートイーグル。響夜はその二つを持ち二人に弾丸を放っていく。通常の弾ではなくあらゆる呪いをかけた弾だ掠めただけでも危険だろう。その弾丸をアリアは水の剣で弾きメイドは時を操ることで停滞させる。だが二人もまたそちらに集中しなくてはいけなく攻撃することが出来ない。まさに千日手。だがそれも何時までも続くものではない。機械では無い以上いずれ体力、集中力ともに限界を迎えるだろう。

先に動いたのは響夜だった。仲間という存在が今この場にいない以上圧倒的に不利の響夜は先に相手の体力を削りきることを考えた。自らの怪我は悪魔の心臓グリモア・ハートで全て再生する為強引な戦闘でも有利に戦うことが出来る。響夜は両手に持つ二丁の銃で牽制をしながらアリアへ近づく。メイドの攻撃はナイフによる斬撃の為まだいいが聖女とアリアの攻撃は下手をすれば再生不可能な状態になるかもしれないからだ。響夜は近距離戦に持ち込むと両手の銃を巧みに扱い、アリアを追い込む。水の剣を盾にすれば地面を狙い足場を崩す。攻撃に出れば隙をつくか自らの体を囮にして強引に攻めいる。当然痛みも襲うがそんなものに慣れてしまった響夜には毛ほども効果は無い。

メイドの斬撃を躱し神殺しのグレイプニルを足場にしながら響夜は三次元的戦闘にスタイルを変える。その突然の行動と縦横無尽の動きにアリアとメイドは反応しきれない。響夜はアリアが剣を振るった瞬間脚に魔力を集中させ加速。左腕を抉られるが響夜はアリアの額に銃口を押しつけた。


「チェックメイトだ」


 だがその事態にアリアは慌てた様子ではなく笑みを浮かべている。


「貴方がですよ」


 背後から聞こえる言葉。僅かに首を後ろに向けるとそこにはナイフを突き付けるメイドの姿。そして更に左側には聖女の姿が。もしここで発砲でもしたら聖女とメイドによる攻撃で自身も死ぬだろう。何よりメイドの魔法で弾丸の動きを遅くさせられたら堪ったもので無い。故に撃つことが出来ない。だがそれは聖女たちも同じ。アリアが人質に取られている以上下手な動きは出来なく、弾丸を止められるかどうかも賭けの様なものだ。そのまま何時間も経ったかに思える状況の中四人の耳には何かの咆哮が聞こえる。

それは勝利の歓声。・・・つまり


「どうやら決着がついたようだな」


「・・・・ええ」


 どちらが勝ったかは分からない。だがこれ以上の戦闘は無駄と言えるものだ。此処でどちらが勝とうとも王が負けていれば国は滅びどちらにせよ殺される。


「けどよぉ・・・」


 響夜を囲む三人の周囲が歪む。それに応じる様に三人も魔力を高める。


「このまま終わりってのは納得いかねえよな!!」


 現れる無数の機関銃。それは銃身も弾丸も赤黒く染まり呪いの効果を受けている。三人も自身の全魔力を込めた一撃を放とうとする。


「暴風に潜みし獅子のシュトゥルムヴィント・シュトースツァーン!!」


「百鬼蛟斬!」


「刹那の栄華!」


「神罰・エクレール!!」


 響夜の全魔力を注ぎ込んだ銃弾の嵐。それをメイドが時を止めることで抑えアリアの水の蛇と聖女の光の柱が響夜へと迫りくる。


「ウサ公!」


 その言葉と共に響夜の影が揺れウサギが現れる。そしてその能力は結界の構築。それにより二人の攻撃は僅かに止まり響夜はその隙に包囲された状態から抜け出し一斉射撃する。

 時を止めると言ってもこれだけの数を全て止めることは出来ないのだろう。


「無駄です!!」


 閃光。銃弾の嵐の中心から突然光が襲いかかる。その一撃をウサ公が結界で止めようとするが光は止まることなく結界を破壊した。


「ぐ!がっァ゛ァ゛!!」


 閃光は響夜の左半身を呑みこむ。その僅かな時間の間に見えたのは一本の剣。それは光と共に消えると聖女の前に現れる。


「・・・聖王の剣か」


 片膝をつきながら響夜はその剣を睨み呟く。そこから感じ取れるのは確かに聖王の剣から感じた力。


「ええ、偽物ですが・・」


 銃弾の嵐は既に消えそこには傷だらけになりながらも立つ三人の姿。


「(・・・・やってくれんじゃねえか)」


 三人は片膝を着く響夜を見る。


「・・・だから」


「?」


 響夜の呟きに三人は首を傾げる。


「あめえんだよぉ!!」


 立ち上がる響夜の右腕に感じる魔力。それは先程の戦いで感じた神器と同じもの。三人は気付くがもう遅い。既に響夜の準備は整っていた。


「疾走する魔狼のフェンリス・ヴォルフ!!!」


 放たれるは魔力の塊。だがそれは感じられなく


「な!?」


 突然彼らを衝撃が襲った。


「あんな炎の塊が俺の神器の能力な訳がねえだろうが」


 暗転する意識の中で見えたのは不敵な笑みを浮かべた響夜の顔だった。


 ◆


 「Gaaaaaaaaaaaaaa!!!」


「ラァぁアアアアァァァぁ!!!」


 ぶつかりあう爪と爪。風と氷。既に互いの体はボロボロになり地面は罅割れ凍てついている。


「Gaaaaaaa!!」


 ハクから放たれる氷の嵐をノーレンを躱しながらノーレンはカマイタチで反撃する。その瞬間を狙って凍てついた大地から無数の氷柱が放たれた。


「がッ!くっそがあ!!」


 その一撃はノーレンの翼を貫き地に落とす。ハクはノーレンに飛びつき食い千切ろうとするがノーレンは前足の爪で反撃し距離を取る。ハクが再び飛び掛かろうとするがノーレンがカマイタチで牽制しそれをさせない。だが翼をやられたことによりカマイタチは本来の威力を発揮できず痛みと流血により体力も削られていく。カマイタチのひとつがハクの脇腹を切り裂く。その痛みでハクの動きが鈍りすかさずノーレンは次々にカマイタチをハクへと放った。


「Gaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」


 ハクは強引にカマイタチの嵐の中を突き進んでいく。カマイタチが次々に身体を引き裂いていくがハクは決して止まることなく進んでいく。次第にハクの全身から冷気が発せられる。


「―――――――」


 冷気によって傷口から流れ出ていた血が凍りつく。その氷は広がっていきやがて全身を覆う様に氷の鎧がハクを包み込んだ。


「ッちい!面倒臭いことを!!!」


 ノーレンは大きく息を吸い込むと全力での暴風を放つ。その一撃は今彼が出せる全力の攻撃。その攻撃を前にしてもハクは止まることなく進む。氷の鎧が衝撃に耐えきれず砕け散っていく。一つまた一つと罅割れ砕けていく氷を後目にハクはより一層速く駆け抜けていく。

 進むにつれ暴風はその威力を増しハクを襲う。だが決してやまぬ雨が無い様に終わりの無いモノなどこの世にはない。ハクは全身を覆っていた氷と残り僅かな魔力を犠牲にしてその暴風を抜けた。だがそこには来るのが分かっていたかのようにノーレンが爪を振り下ろしていた。

だがそれはハクも覚悟していたこと。ハクは人化をするとその爪を潜り抜けノーレンの目の前に出る。 


「・・・っぁ゛ァ゛あ!!!」


 文字通り決死の一撃。その手に創られた氷の剣を一閃。攻撃によって隙が出来ていたノーレンはその一撃を防ぐことが出来ず切り裂かれる。血飛沫を上げながら倒れるノーレン。その目はまるで信じられない物を見るかの様に見開かれていた。

 地面を流れ出る血で赤く染めながら沈むノーレンを見る。ハクも大分力を使ったのだろう。既にフラフラな体が緊張感が切れたことにより倒れ込む。ハクはぼやける視界の中自分の勝利の余韻に浸りながらその目を瞑った。


 ◆


 「ぐ!?」


  果たしてその声はどちらのものだったのか。ゼクスは鎖骨を聖剣によって貫かれ、浩太は脇腹と左腕を影で貫かれていた。だが互いに動きが止まったのは一瞬。次の瞬間にはこの状況から脱出しようと目の前にいる相手を吹き飛ばす。ゼクスは場所が場所だった為かその動きは鈍く明らかに重症だ。対する浩太は動かない左腕はともかく脇腹だった為かゼクスより動くことが出来ている。


「ちい!この程度の傷!!」


 ゼクスは魔族としての治癒能力を魔力で高めより早く再生させる。だがそれを見逃す程浩太は甘くない。


「させるかあ!!」


 ゼクスとの距離を詰め聖剣を振りかぶる浩太。動きが鈍いゼクスは後手に回ってしまい影による牽制をしながら距離を取るしかなくなってしまう。影による攻撃を聖剣による一太刀の下に斬り伏せながら浩太はゼクスへと肉薄していく。彼我の距離はもう数十㎝。手を伸ばせば届くのではないかと思える程の距離だ。


「影踏み!」


 だがその距離はゼクスの領域。聖剣が届くより早くゼクスは浩太の影を踏み右足を動かなくする。突然右足が動かなくなったという事態により浩太は前のめりに倒れてしまう。そしてそこにあるのは獲物を待ち受ける様にゆらゆらと動くゼクスの影。


「死んで―――たまるかあ!!!」


 それは咄嗟の一撃。聖剣による一振りは影を切り裂きその奥にいたゼクスに届いた。右腕を盾にすることで致命傷を避けるがそれでもこの状況でこの傷は痛い。痛みに顔を顰めながらもゼクスは影による反撃をする。影は浩太の右腕を貫き地面に縫い付ける。そのまま止めを刺そうと地面に落ちた剣を素早く拾うとゼクスは浩太へ止めを刺そうとする。だがそれを邪魔する様に二人の間を閃光と衝撃が横切る。それは二人を吹き飛ばし甚大なダメージを与えた。


「・・・・・」


 二人がその衝撃の通った場所を見ればそこには溶解している地面。そして聞こえてくる咆哮。それは天竜の鳴き声に似ていた。そして更に聞こえてくる歓声。それは勝利が決したことに他ならない。だがそのようなものは関係ないとばかりに二人は剣を取る。


「・・・最後です。投降してください」


「誰が敗軍に投降するか」


 二人とも自らの王が負けたなど思ってはいない。だからこそ自分が負けてはいけないと剣を取る。その王に続き歩く為に。二人は無言のまま剣を構え、駆けた。


「―――――――――」


 静寂。まるで自分と目の前にいる相手以外無いかのような無音の静寂。


―――――ぴき、びし・・びしびし・・


 それを破る様に罅割れ砕け散ったゼクスの剣。だがそれと同時に浩太の体が揺れ、地に伏した。


「・・・・・・」


.自身の剣を一瞥するとゼクスは浩太を見る。


「騎士の剣が砕けるなど負けたと同じ・・・」


 ゼクスはそうぽつりと呟くと剣を鞘に納め浩太へ歩み寄る。


「ここで貴様を殺したら私が恥を掻く」


 そう言いながらゼクスは浩太の肩を掴み引き摺っていく。目指すのは自分達の信じた王のいる下。果たしてそこにいるのはどちらか。ゼクスは自らの王の勝利を信じ歩いて行った。


 ◆


「連合軍に告ぐ!!貴様らが王である聖王は我の前に敗れ去った!大人しく投降するがいい!抵抗する者には容赦しない!!」


 自身が信じる王が敗れたという事実に連合の兵士達の間には動揺が広がっていった。信じたくないが目の前に魔王がいると言うことはそれが事実であるということに他ならない。兵士達は抵抗を試みようとしたが魔王軍に包囲され次第に大人しくなっていった。


「よう。お疲れさん」


 そんなマオに近付く人影。その声でその人物が響夜であると分かるとマオは笑みを浮かべて振り向き、固まった。


「あ?どうした魔王さんよ。俺の顔に何か付いてるか?」


 その表情に響夜は意味が分からず首を傾げる。俯くマオに声をかけようとした瞬間マオが勢いよく顔を上げた。


「ハクはともかく何で敵の女など連れてくる!!」


「・・・・・は?」


 その言葉に響夜は意味が分からず首を傾げる。確かに背にはハクを乗せ神殺しのグレイプニルでアリアやメイド、聖女を連れて来ているがノーレンも連れて来ている。そもそもどっちが勝ったかは分からないが為に人質も考え響夜は四人を連れて来たのだ。そこに邪な感情など無く使えるか使えないかの判断で連れて来たため響夜はマオが何を言っているのかが分からなかった。

 だがそんなことなどお構いなしにマオは響夜に詰め寄る。


「そんなにその者達が良いのか!我のことなど放っておいて!!だいたい・・・」


「おい、落ち着け」


 これ以上ヒートアップして面倒臭いことになる前に響夜はマオを止めに掛かる。ハクも一応手当はしたがそれはその場凌ぎでのもの響夜はまだ何か言おうとするマオの額にチョップをしハクを見せる。


「此奴、治してやれ」


 そう言ってマオにハクを渡し治療を頼むと響夜はどこからか煙草を取り出し一服する。


「大変だったな・・・」


 主に精神面が・・。そんなことを考えながら響夜は辺りを見回す。もはや見る影もない程に荒れ果て地形が変化している大地はこの戦争がどれ程のもだったのかを暗示しているだろう。そんなことを考えながらハクを治療しているマオの方を見ると何やら響夜を見て頬を赤くしていた。


「何だ?」


 それが気になった響夜がマオに問い掛けるがマオは目を逸らしてぼそぼそと何かを呟く。


「・・・・聞こえねえよ。もっとでけえ声で喋れ」


 響夜がそう言うとマオが目を逸らしながらも聞こえる程度の声で話す。


「・・・ふ、服を着てくれ」


 その言葉に響夜は自分を見る。三人の攻撃のお陰で響夜の服は既にボロボロになり上半身は裸。下半身も膝から下は消えてしまっている。その姿を見ながら響夜は呆れたように肩を落とす。


「お前ってホントに分かんねえ」


 そう言いながらもこれ以上面倒臭いことになるのは好ましくない為響夜は服を作るとそれを着る。流石に此処でズボンを脱ぐ訳にもいかない為下半身は我慢するしかないだろう。そんなことをしていると遠くから竜の咆哮と共に翁が現れる。


「どうやら終わった様じゃな」


「うむ、それにしても随分とはしゃいだようじゃな・・・」


 マオはそういいながら翁を見る。所々服が破け髪から焦げ臭いにおいを放っている。アカーシャも全身がボロボロだがまだやる気なのか低く唸っている。だが自らの国の王が敗れたことは分かっているのだろう。無暗に暴れることはなく睨みつけたまま静かにしている。


「で?これからどうすんだ?」


 何やら生き生きした表情の翁に引きながらも響夜はこれからの連合軍の処遇を聞く。するとマオは暫く思案すると言った。


「そうじゃの、和睦でもしようかのう・・」


 その言葉に再び時が止まったかのように静寂が広がった。


感想、批判、意見、評価などあったらお願いします。


今回前書きに台詞入れてませんが思いつかなかったのではなく今回は書かない方が良いかなと思ったからです。・・・何故いまさら思ったし自分。


戦争終結。かといってこの章がもうすぐ終わりなわけではありません。まだ続きますとも・・・。まだ化物が出てきてませんから。・・・ふふふ(ぴきーん)



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