戦争開始。・・・気に入らねえなテメェ
「・・・・・・・」
by響夜
「・・降伏してください」
byアリア
※眠いです。長いです。何時もより拙いです。( -_-)o
「・・・・・・・来たか」
俺は魔力で強化した視界に映った影を見て呟く。
周囲に味方の影は無い。最も近い部隊でも此処から10kmは離れた場所に展開されている。ここに来るにしても急いで一時間はかかるだろう。敵の襲撃や罠を警戒しながらを考えると二時間、悪くて四時間程だろう。
つまりこの10kmは俺が全て守らなくてはいけない。まあ当然それなりの準備もしているから問題ないだろう。
ヴィスカヴァル率いる先発隊が俺達の軍と衝突してから18時間が経過した。この陣形を採用する代わりに俺は先発隊と戦うことは許されなくなった。最初此方は勇者という化け物によって苦戦を強いられていたが数の力で何とか痛み分け両軍共に撤退した。そして両国の丁度中心に当たる場所で再び激突しようとしている。あちらさんは増援が来たらしく合流。此処の守りは俺一人、故に罠だと分かっていようとも物量の差で敵は此処を突破するしかない。他の所なんて指揮最高潮戦力も相当なものになっているからな。考えてみろ暑苦しいおっさんたちが鬼の形相で迎え撃って来るんだぞ?俺なら見た瞬間に回れ右して逃げ出すぞ。それに長引かせたらマオが来るかもしれないからな。
「それは俺も同じなんだが・・・」
周辺の部隊ももうすぐ交戦するだろう。救援はなし。これで第二段階はクリア。
「さあ、存分にやり合うじゃねえか」
俺は迫りくる軍勢を前に笑った。
◆
「!ヴィスカヴァル卿!!」
「あ?どうしたよ?」
ノーレンは前を走る部下の声を聞き馬を止める。魔王軍はどういうことか此処だけを開けて軍を展開させていた。自分達を包囲して袋叩きにするつもりなのか・・・。罠があるかもしれないと思っていたがその様子もなく包囲する前に抜けられてしまうだろう。
そのことを奇妙に思いながらもノーレンは前方を見る。だがそこには何もない。
「・・・・いや」
いる。一つだけぽつんと影が見える。そしてその姿を見てノーレンは笑った。
「成程。テメェはそっちか・・・」
何時か殺してやると言ったがこうも早く殺せるとは思っていなかった。ノーレンは薄く笑い全軍に指示を出す。
「野郎ども!!あちらさんはお一人で俺達を止めるつもりらしいぜ!!?」
その言葉に兵士たちは目をむきその姿を見るや否や笑いが広がっていく。
「(どうやって止めるつもりだぁ?)」
この場所を一人で任されると言うことは相当なものなのだろう。ノーレンはそう考えながらも隣にいる人物を見る。
「良かったなあ?お早い再会だぜ?」
隣にいる騎士の少女。アリアはその唇を震わせている。顔も死人のように青い。
「ま、どうでもいいけどよ。戦争にそんな顔してる奴は殺して下さいっつってる様なもんだぜ?」
少女からの反応は無い。ノーレンは肩を竦めると全軍を見回す。
「野郎ども!!行くぞ!着いて来やがれ!!!」
その言葉と共に駆けだす。続くように総勢五千を誇る兵士達が駆けだした。
兵士達が消えた大地にアリアはその従者である女性と共に立ち尽くしていた。
◆
「・・・・来たなおい」
じゃあおもてなしだ。
兵士達が向かってくる瞬間響夜を中心に地面が発光する。それは上からでないと分かりづらいが文様を描き魔方陣となる。そして発光が治まり異変が起きた。異常なまでに周囲の魔力濃度が上がっていく。響夜は周囲にあるマナを全て魔力にし吸収しているのだ。
「おいおい、何だこりゃ」
その現象にノーレンはその笑みを深くする。
「(おもしれえ。俺達を本気で止める気か・・)」
ノーレンは腰に下げてある剣を抜き迫る。
「ああ、どうかこの想いを消してくれ 私は貴方を愛してしまった 私は貴方に恋焦がれてしまった 」
「この罪を、この卑しさを どうかこの身諸共食潰して欲しい ああ、貴方は誰よりも気高い孤高なる者 」
「どうか、どうかこの鎖を引き千切って 」
「疾走する魔狼 !!」
「神器か!?」
その瞬間響夜を護るようにして炎が包む。そして現れるのは一台のバイク。だがその車体からは炎が溢れだし、まるで獣のような唸り声を上げている。響夜がアクセルを踏むとともに悲劇は起こる。
「噛み殺せぇ!!」
速い!馬が遥かに遅く感じる程の速さ。ノーレンは本能で馬から飛び降りる。瞬間ノーレンの乗っていた馬と共に続いていた兵士が劫火に包まれた。
「散るがいい弱者よ。今ここにお前達が信ずる者はいない」
聞こえてくる声。ノーレンは上空を見上げた。そこにいるのは踏み殺さんと迫り来ている響夜の姿。そして疾走する魔狼が地面に触れた瞬間、辺りは衝撃と共に火柱が立つ。
戦闘が始まって数分。それだけで300を超える者が死んだ。ノーレンはその劫火の中に立つ響夜を見る。
「よう、随分すげえの持ってんじゃねえか」
まるで友人にでも話しかけるかのような気軽さ。その声に響夜もまた笑って答える。
「だろ?」
その瞬間ノーレンは響夜の目の前にいた。
「死んじまえよ」
だがその攻撃を響夜は疾走する魔狼を走らせ逃れる。
「ひゃははは!!いくぜクソ共!これが戦争だぁ!!!」
「ああ、愛しい貴方 私は貴方の全てが欲しい その声もその瞳もその魂も 」
「どうかその身を私に委ねて 共に生きよう 」
「枯れ落ちる荊の少女」
その言葉と共に無数の巨大な荊が地面を食い破り出現する。
流石と言うべきなのだろうかその突然の襲撃に兵士たちは慌てながらも槍で突き剣を振る。だがそれはこの荊には愚策と言うほかないだろう。
「ひ!ぎゃあああああ・・・あ・・・ぁ」
枯れ落ちて行くのだ。まるで咲き誇った花たちの末路のように触れたものは枯渇する。肉も臓器も血液さえも奪い取り後に残るのは物言わない骸骨。その光景に響夜は目を輝かせる。
「く、ははは。こりゃあこええな。残り三千・・・六百ってところか?」
響夜は疾走する魔狼を走らせながらも次の詠唱へ入る。最初の一撃も枯れ落ちる荊の少女も全てはこの魔法の為の準備。
「愛しき者よどうかその目を開けてくれ 愛した貴方どうかこの手を取って この世界を君の愛で埋め尽くそう だからお願い目を開けて 」
「例え骸であろうとも君の全てを私は愛そう ああ、踊ろうこの舞台で 皆で祝おうこの瞬間を! 」
「死の舞踏!!」
周囲一帯を覆っていた魔力が骸となった死体へ吹き込まれていく。
「・・・・とんでもねえことするな」
その状況を見たノーレンはそう呟くと身近にあった骸を消し飛ばす。この判断は正しかったと言えるだろう。
「死の舞踏」、終末観を表現する芸術的なモチィーフの一つである。「死」を擬人化し死者と聖者が手を取り合って踊る様子を描いたものだ。そしてこの魔法もそれを再現したもの。呪の魔法により怨念を骸へ込め動かす簡易的なスケルトンと呼べるものだ。その力は術者の込めた魔力の分だけ上がっていく。
「足りねえ分は敵から持ってくる。こっちからしたら堪ったもんじゃねえよ」
おまけに死ねば響夜の手駒となって動き出す。だが当然この魔法にも弱点はある。
「(保つのに魔力を供給し続けないといけないんだよな・・・)」
これだけの数を操るのだ。当然魔力も相当な量がもってかれる。その為のこの魔方陣でもあるのだが・・・。
「来いよ。殺してくれるんだろ?」
挑発、疾走する魔狼をしまい響夜はノーレンを見る。その手には想像形成で創られた二つのナイフが。
「ああ、今ぶち殺してやるからよぉ!!!」
激突する二人。だが真っ向から戦えば響夜が不利になるのは明白。よって響夜はその攻撃を躱しつつ隙を見つけ攻撃していく。だがその攻撃もノーレンに届く前に弾かれる。
「オラァ!どうしたどうした!!?こんなもんなのかよテメェの実力はよぉ!!!」
「んなわけあるかぁ!!!」
繰り出される風の刃を響夜は間に盾を創り出し防ぐ。結果は相殺互いの技がぶつかり合い消える。
本来なら形無き略奪者や他の神器を使えば互角以上の勝負が出来る。だがここでそれらを使うという事は自分の手の内を晒すと言う事。不利な状況で自らの手の内を晒せばそこにあるのは死という現実だけ。故にここで使うことは出来ない。
「――――――」
壊れたナイフを捨て新たに一つの剣を創り出す。
「ぽんぽんぽんぽん。テメェは手品師か何かか?」
「そんなところだよ!!」
ぶつかり合う剣と剣。二人は互いの剣を弾きながら距離を取り油断なく剣を構える。
「ったく、お前のお陰で内の姫さんが戦えなくなっちまっただろううが・・・」
「おや、それは大変ですね。まあ、戦う相手が一人減ったので此方としてはありがたいのですが・・・」
「その喋り方止めろ気持ちわりい。・・・で?テメェがここを一人で任せられるっつうことはだ」
ノーレンは剣の切っ先を響夜に向ける。
「テメェ魔王の側近か何かか?じゃねえとこんな場所は任せられねえだろ」
「・・さあ、んなこと答えるとでも思ってんのか?」
「全然」
瞬間、背後から迫るナイフを響夜は弾き落とす。
「何だよおい。復活してんじゃねえか」
「ホントだな」
響夜はノーレンを睨むがノーレンはただ肩を竦めて笑う。
「ま、これで三対一。正直サシの勝負がしたかったが・・・運が無かったか」
「・・・畜生」
響夜はそう吐き捨てると背後を見る。そこには第一王女であるアリアと紫の髪を三つ編みにした・・・
「・・・・メイド?」
響夜はその姿を見て此処が戦場であることを疑う。戦場にメイド。全くの正反対に位置するような人物が目の前にいるのだとても信じられるものでないだろう。
「―――――」
ふと隣に立つアリアを一瞥すると彼女は持ち直したようだがまだ目の前のことが理解出来ていないらしい。いや、したくないと言った方が正しいのだろうか。
「(油断してんなら・・・!)」
響夜は手に持っていた剣をアリアへと投げる。その行動にアリアは慌てながらも対処するが響夜はその隙に駆けだしていた。
「させません」
その凛とした声とともに背後から放たれたナイフ。
「(速い!)」
その攻撃を躱し響夜はその場を離れる。だがメイドの女性は逃がしてくれないらしく降り注ぐナイフの雨を時に盾を創り時に銃を使い躱していく。
「っぶねえだろうが!!」
響夜は炎の蛇をメイドへと放ち、迫って来るノーレンを右手に持った剣で迎え撃つ。
「―――――ッ!」
ノーレンの一撃を防いでいると横から斬りかかって来たアリアを響夜は軍勢の一部を呼んで迎え撃つ。
「くっ!」
「ラァ!」
響夜はノーレンを弾き飛ばすと三人を一列にするように立ち回る。どうやら周りの死体と兵士達の戦いも膠着状態にはいったことから互角の勝負が出来ているのを見ると三人から距離を取るよう疾走する魔狼を呼び出す。
「ぶっ殺してやるよぉ!!!」
響夜はアクセルを踏むと加速する。
「おもしれえことすんじゃねえか!!」
だがノーレンも風で自身の速度を上げ追い付けないまでも食い下がる。疾走する魔狼の速度は音速をも超えるだけの速度を持っている。その速度に食い下がるだけでも十分だろう。現に響夜も着いて来れていることに驚きを隠せないでいる。
「おいおい、お前ホントに人間か?」
右手で強化したデザートイーグルの引金を引く。だがその攻撃もノーレンへと当たる前にメイドのナイフで弾かれていく。
「訂正、化け物だお前ら」
響夜はその狙いをアリアへと変える。響夜は銃口をアリアへと向け
「――――ふ!!」
「ハア!」
放たれた銃弾をアリアは右手に持った剣で横に一閃する。銃弾と剣がぶつかる鈍い音がし互いの影が交差する。
「・・・やるな」
とてもではないが先程まで茫然としていたとは思えない程の反応だ。響夜はその技量に舌を巻きながらも狙いはアリアから変えない。
「―――――」
再びの強襲。だが今度は右手の銃をしまい大剣を創ると疾走する魔狼の加速を利用し飛び掛かった。
「派手に逝きな」
「貴方がですよ」
だがその間に割り込むようにしてメイドが現れる。響夜は剣の狙いをメイドへと変えるとその手に持った大剣を振り下ろした。
「ハアアアァァァァ!!!」
「くっ・・・――――ッ!!」
音速での加速と重力、そして大剣自身の重量と響夜の怪力を垂直で受け止めたのだ。何とか逸らしたが両手が痺れ暫くは碌に動かせないだろう。響夜は大剣を地面に削りながら切り上げる。
「吹き飛べぇ!」
「なあにテメェらで楽しんでんだぁ!!」
その大剣をノーレンが横から弾くと二人は距離を取る。
「くっそ!邪魔ばっかだなおい!!」
響夜は左手にもう一本大剣を創り出す。今度は右と違いただ岩を削って造られたかのような巨大な物だ。
「・・・・時か」
響夜はメイドを見ながら言う。時の魔法。どうやら時を止めたまま敵に直接攻撃することは出来ないようだがそれでも十分脅威だろう。
「何でこう厄介な奴らが纏まるかなあ」
技量は三人とも相当なもの。メイドは時、ノーレンは風、アリアは分からないからこそ下手に攻める訳にもいかない。だが幸いなことに時の魔法は空の魔法と互いに相性が悪い。先手を取れば対応することは容易だろう。
「(メイドは空で応戦するとして、勇者は銃火器で一気に行くか・・・。アリアは下手なことをされる前に潰す!!)」
これ以上やっても無駄に時間が浪費されるだけ。なら・・・
「テンポ上げんぞぉ!!!神殺しの鎖!!」
響夜は神殺しの鎖を出現させると攻めに転じる。
「我が軍勢よ!!」
更に後方からの呪いが掛かった銃火器による支援。響夜は魔神の観察眼を常時発動させる。
「――――ち!何だこりゃあ!?」
ノーレンは神殺しの鎖を躱していくが後方からの一斉射撃に響夜へ攻め込むことが出来ない。メイドも時の魔法を使おうとするが周囲の空間を歪ませることで効果を半減させる。響夜は後方からの射撃がまるで見えているかのように躱しアリアへ近づく。いや、これは本当に視えているのだ。自らの銃火器がある場所を予測しそこから空の魔法で周囲の空間の状況を理解する。魔神の観察眼が無ければ響夜自身とうに死んでいただろう。
「ぶっ壊れちまいなあ!!」
響夜は左手に持つ巨大な石剣をアリアへと振り下ろす。
「そんなもの!」
アリアは剣を迫りくる石剣へ向けるとまるで受け止めるかのように構える。
「笑止!んなもんで、受けれるもんなら受けてみろぉ!!!」
振り下ろした石剣。誰もが無謀だと思える行為。だがアリアの魔力が急激に活性化するとともに
――――ズガガガガガガガガガガガァァン!!!!!
まるで鉱石にドリルで穴を開けるかのような音。だが目の前で起きていることはまさにそれだ。水はどれほど堅い岩でも削って見せる。アリアは刃の部分に水の刃を創りそれを高速で動かすことで石剣を削り切ったのだ。
「(水か・・・畜生。相性最悪じゃねえか)」
炎は水によってかき消される。魔法の技量も自分より向こうの方が上。響夜はそこまで考えると石剣を捨て右手の大剣を一閃する。だがそれもアリアの持つ剣によって一刀両断。
「舐めんなあ!」
響夜は大剣をアリアへ投げ捨てると自らの相棒の名を呼ぶ。
「形無き略奪者!!」
響夜は現れた魔剣を握るとアリアへ振り落とす。彼女もそれを剣で受け止めるがその顔からは驚愕が見受けられる。響夜の持つ魔剣形無き略奪者には形が無い。故に切ろうと思っても剣は逆にその刃を呑みこむようにして水の動きを阻害する。
「何故!貴方は人を殺してそんな顔が出来るんですか!!?」
「・・・・・」
「貴方のあの時の笑顔は嘘だったかのか!!」
「・・・戦争なんて殺して喜ぶようなもんだろうが。敵は殺す。そんで勝者は笑う。あんたが俺にどんなことを思ってたのかなんて知らねえ!!けどよぉ!」
「俺にも譲れねえもんがあんだよぉ!!」
「――――」
響夜はアリアを吹き飛ばすと炎の蛇を創り出す。
「・・・・貴方のやっている行為は死んだ者達への侮辱だ!!」
「じゃあ何だ!死んだ奴を棺桶に入れて土に埋めるってのは優しさかァ!?んなもんはテメェらが自分を傷付けたくねえだけの慰めだろうが!!」
「死んだ奴はもうそこにはいない。あんのは物言わねえ骨だろうが!んなもんはそこらの石ころと変わんねえんだよ!!」
「――――だとしても!」
「お嬢様!!」
響夜はその場から飛び退く。すると先程までいた場所に無数のナイフが突き刺さった。
「お嬢様。あの者の言葉を聞いてはなりません!」
そのメイドの制止も聞かずアリアは響夜に問い掛ける。
「――――貴方に愛は!無いんですか!!」
「・・・・・・・・ほざいたな小娘」
その言葉を聞いた瞬間。響夜から感じられる空気が変わった。先程までの人を馬鹿にしたようなものではない。それは間違いなく憤怒の感情。
「愛?貴様俺に愛が無いと言ったな・・・?」
「―――――」
放たれる膨大なさっき。今そこに立っているのは鳴神響夜の本心なのだろう。だからこそ恐怖した。まるで先程までの彼が嘘のように思える程の激情を見せているのだから。
「ああ、その言葉、後悔させてやる」
響夜の前にアリアを護るようにしてノーレンとメイドが立ち塞がる。響夜は日本刀を創り出すと駆けだした。
「ハア!」
「・・・・・」
無言。だがその目は確かに憤怒の色が見える。響夜はノーレンが振り下ろした剣を受け流すと背後へ回る。だがその背後を護るようにしてナイフで切り付けようとするメイド。
「・・・・・」
「「「な――――!?」」」
だが響夜はまるで防御を取ろうとせずに逆に迫る。結果、ナイフは響夜の右目に吸い込まれ刺さった。その光景に三人の動きが一瞬だが止まる。
「死ね」
その隙を逃さずに響夜は刀を振るう。メイドはギリギリで時の魔法を使ったが完全に躱ことは出来ず右足を負傷した。
「喰い殺せぇ!」
響夜がアリアの眼前に迫ると同時にその言葉に今迄黙っていた魔剣が唸りを上げる。
「――――――!?」
死んだ。思わずアリアは目を閉じるが一向に痛みが来ない。アリアは恐る恐る目を開けるとそこには人ほどの大きさの光り輝く天使の姿がいた。
「・・・・神聖・・魔術」
アリアはその言葉を呟くと同時に理解する。これが誰のものなのかを・・・。
『皆さんそこから離れてください!』
焦った声が念話に乗って聞こえる。アリア達はその声を聞くと同時にその場を飛び退いた。
瞬間鳴り響く轟音みれば先程まで響夜が立っていた場所は光の柱に飲み込まれていた。
『大丈夫ですか』
その声の人物が丘の上に立っていた。白髪の髪と金色の瞳。あれは
「ミーナ済みません」
アリアはその人物が立っている場所まで後退すると礼を述べる。
「いえ、それよりも間に合って良かったです。今教会でも300人の信徒達が祈りと魔力を捧げることで全員の回復、及び強化を行使しています。魔王軍ともこれで互角に戦えるでしょう」
それより、と彼女は先程光が落ちた場所を見る。
「認めたくありませんがまだ死んでいないようです」
その言葉にアリアもまたその場所を見る。
「邪魔してくんじゃねえよ」
そこから現れたのは白髪紅眼の青年と同じく白い毛並と赤い瞳のウサギ。
「・・・・・」
その姿を見てアリアは愕然とする。刺された場所も既に回復しており何よりあの一撃を防いだことが彼女に大きな波紋を寄せていた。
「アリア、此処からはノーレンとコウタが前衛の主として。貴方達は彼らのサポートをしてください」
その言葉に下を見ればそこには茶髪の青年の姿。
「分かりました」
アリアはそう言うと飛び降り響夜を包囲するように立つ。既に周囲の兵たちも満身創痍だったが援軍のお陰で何とか保ていた。
「・・・・・」
響夜は神殺しの鎖を全員へと向け軍勢を再び呼び出し応戦する。
「ハア!」
浩太が響夜へ斬りかかろうとするさせまいと鎖が目の前伸びその一撃を防ぐ。響夜はその鎖を踏み台のようにして跳び包囲網から逃れる。
「災厄!!」
ノーレンはその手に持つ剣に魔力を込めると暴風を放つ。それは軍勢を崩壊させ神殺しの鎖の動きを鈍くする。
その隙に響夜へ肉薄し剣を振るうが響夜はそれを魔剣で受け止め弾くと同時に炎でノーレンを追撃する。それを振り切るとノーレンは風の鎌を響夜へ放つ。
「疾走する魔狼!」
その攻撃を呼び出したバイクで正面から砕き響夜はノーレンへ高速で迫る。
「させません!」
だがそれを封じる様にメイドは時を遅らせナイフを放つ。響夜はその攻撃を空間を隔離することで躱しそれ以上の接近を断念した。
「ハア!」
その響夜を追撃するように横からのアリアの一撃。響夜はその攻撃にギリギリ反応するがその瞬間を狙って聖女、ミーナからの一撃がくる。
「(・・・くそが!)」
響夜はその猛攻を防ぎながらも考える。どうやってこの状況を逆転するかを・・。此方の攻撃も向こうの攻撃もそれぞれ直ぐに再生する。だが響夜は一瞬とはいえ魔力を消して再生に回さなくてはいけない。その分数の差も相まって追い込まれる。
右からの攻撃を受け流し真上から降り注ぐ光を神器で躱す。反撃の一撃をしようにもそれぞれが隙を埋める様に動き攻撃を封じる。
「ラァ!」
「コウタ!」
アリアの言葉を聞いて響夜は思案顔をしやがて思い出したのか目を細めた。
「成程、テメェが向こうから召喚された奴か。日本人で助かったぜ。分かりやすい」
その言葉に浩太は目を見開く。
「な!?貴方は向こうのことを知っているんですか!」
「ああ、良く知ってるよ。俺も向こう出身だからな」
その言葉は浩太に更なる衝撃を与える。
「じゃ、じゃあ貴方もこっちに召喚「ちげえよ。俺は自分でこっち来たんだ」――な!?」
その動揺した隙を逃さず響夜は浩太を蹴り飛ばした。
「っ!」
響夜は背後からの攻撃を感じ取るとその場から飛び退く。
「降伏してください。今なら間に合います」
確かにこの状況は最早負けが決まったと言っても良いだろう。この状況を覆すなど奇跡でも起きない限りはあり得ない。そう誰もが思っていた。
「(気に入らねえな・・・)」
自分達が上にいるかのような台詞。まるで既に勝ちが決まっているというかのような態度。何より・・・
「そのくそ甘い考え方が気に入らねえ」
響夜は全員から距離を取ると魔力を集中させた。
「見せてやるよ成れの果てって奴を・・」
「ああ、私は彼女を愛そう どれほど光から遠ざかろうともこの身は彼女の為に 例え忌み嫌われようとも 私は貴方の救いになろう 」
「皆が私を忘れようとも どれ程薄汚くなろうとも 私は貴方の味方であろう 最強の剣無敵の盾となろう 」
言葉が紡がれていく中誰も動かない。いや動くことが出来ない。やがて響夜の身体を黒い霧が覆い隠す。
「幻想交響曲」
そこには黒いフルプレートに身を包み闇に包まれた中、その瞳を赤く輝かせる一人の男がいた。
感想、批判、意見、評価等がありましたらお願いします。
何と話数にお気に入りの数が並びました。何か壁を一枚突破した感じがします。
作中では基本的に響夜の上位魔法や創った神器などは愛の言葉などがが入っています。
例えば、焼き尽くす業火の剣は身を焦がすほどの愛を感じたい。枯れ落ちる荊の少女は重すぎた愛の結果。疾走する魔狼は愛してしまった自分への罪深さなどです。幻想交響曲は前に出た者を更に神器へと昇華させた物。恐らくこれが響夜の本心を表しているかなあと思います。姿は某聖杯の戦いでの第四次狂戦士さんを想像すると分かりやすいです。
そうそう、クラウンでの名前でのロキというのはグレイプニル、フェンリルと考えて「あれ?じゃあ此奴ロキになるんじゃね?」と思い考えました。だからロキっていうのは設定としては最後あたりなんですよね。
もしかしたら設定資料集なんてのも書くかもしれません。その時はお知らせしたいと思います。
長かったですがこれからもこの作品をお願いします。( ^.^)( -.-)( _ _)