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殺人鬼は異世界に来てしまったようです  作者: ひまめ
魔と聖が混濁する世界
27/91

危険と出会いと死刑宣告

「・・・・俺の半月板」

          by響夜


「・・・・為になりました」

            byアリア



※今回、最後主人公が崩壊気味です。あと凄い長いです。


バイクを走らせ三日。ようやくエクレールが見えてきた。エクレールは周囲を城壁で囲まれている。これで農作業もやっているのだから堪ったものではない。食料や水に困ることもなく城壁に囲まれた難攻不落の城、それがエクレールだ。

俺はバイクを止めるとそこからは歩き出す。流石にあんなもので入国とか目立ち過ぎてしまう。取り敢えず倉庫にバイクをしまいウサギは使い魔ということにするとエクレールへと入国する。


「はい、ではごゆっくりしていってください」


「ああ」


正直にいえば入国は人間だった為か比較的簡単だった。容姿が珍しいから多少の注目を受けてしまうのは仕方がないと割り切りエクレールの中を歩いて行く。


「王城。ふむ、どう行くか」


呪の魔法を使えば行けないこともないが正直あまり使いたくない。隠密も完璧というわけではなく周囲で聖の魔法を使われたら呪の効果が薄まってしまうからだ。

だが一番確実なのは呪の魔法を使うこと・・・。


「仕方が無いか」


俺は一度路地裏に入ると着替える。今まで着ていたシャツやズボンから貴族が着るような少し立派な服装―――まあ中世の頃の紳士服だ・・・どうしてもここの貴族の服は好きになれん。―――に着替え帽子を少し深めに被ると人通りを避けて王城へ向かう。前にこれで歩いたら通行人の視線が集まるし女が寄ってきたりしてうざかった。ウサ公は俺の肩に乗っている。髪や瞳が同じだからよく馴染む。まあこれでとりあえず見た目は完璧な貴族だ。口調もこの時は紳士的にしている。

そして後は呪の魔法を使う。美しい女が魔女の呪いで誰からも見えなくなったという架空の物語を想像したもので効果は誰からも認識されないというものだ。使い勝手が悪かったりもするが便利と言えば便利だ。ウサ公と俺は互いの姿が見えるぞ。

俺は番兵の横を通り過ぎる。今の俺達はだれからも認識されないから番兵も侵入者が通り過ぎたことに気付かない。


「先ずはここの構造を把握しましょうか」


取り敢えず近くにいた兵を部屋の中に連れ込む。突然体が動き出し部屋の中に入ったのだ混乱しないわけがないだろう。認識できないから俺がやったとも分からないしな。俺達は魔法を解くと男の首にナイフを突き付ける。


「少しお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」


「な、何だお前は!?」


「聞かれたことだけ答えてください。でないと手元が狂ってしまうかもしれません」


その言葉に兵士は口を噤む。俺はそれに満足気に頷くと質問を始める。


「私道に迷ってしまいましてここの地図をお借りしたいのです」


「ま、迷っただと!ふざけ―――ッ!?」


「おや、すみません。どうやら力加減を間違えてしまったようです」


俺は兵士の鎧の隙間にナイフを突き立てる。声も出ないよう既に猿轡を噛ませている。叫び声なんて出されたら困るからな。俺は猿轡を外す前にもう一度言う。


「私の質問に答えるだけでよろしいのです」


その言葉に兵士は黙って頷く。最初から大人しくすればいいものを・・。


「それでこの城の構造を教えてもらいましょうか」


「あ、ああ」


俺は男が説明する言葉に頷いていく。まあ魔法で此奴の考えを読んでるから嘘をついたら即殺せる。


「ふむ、ありがとうございます」


俺はそう言うとナイフをしまい背を向ける。兵士はそれを隙有りと思ったのか剣を抜こうとする。無駄な努力お疲れさん。既に男の首は切り落とされ全身は火達磨にされているのにな・・・。


俺はそのまま部屋を出ると城の中を歩いて行く。一応魔法を使って認識されないようにしている。


「さて、次は作戦の内容ですか・・・」


どうするか。これは参謀やらが知ってるのだろうが殺したら作戦は変更されるかもしれん。はて、どうしようか。


「小型の盗聴器でもしかけるか?」


だがどうやって?そもそも服に仕掛けても今日作戦を言ってくれるか分からないのだ。ならば誰か籠絡するか?


「どうしようか・・・」


心を盗み見るか?だが記憶を消せるようなものは呪の魔法には無いし、魔導具でも流石に記憶は創るのは難しい。


「みゅ」


「ん?」


ウサ公の鳴き声を聞きそちらを振り向くと何やらお偉いさんですと自己主張している奴らがいた。


「良くやりましたねウサ公」


俺がウサ公の頭を撫でるとウサ公は気持ち良さそうに目を瞑る。随分役に立つな此奴。取り敢えず一般兵よりも良い鎧を着ている大男が一人になるところを狙って近くの空き部屋に連れ込む。


「動かないでください。質問に答えていただければ何もいたしません」


既に男が何をしようとも遅い。何かしようとした瞬間この男には死の呪いが掛けられる。


「俺に何の用だ」


「いえ、魔王軍との戦争があるそうではないですか。是非ともその際の作戦を教えていただきたい」


生物ってのは声を掛けられた時相手が話したことについてどうしても考えてしまう。後は考えを読んでしまえば問題ない。


「・・・・・・」


どうやらこの男はある程度の作戦について聞かされていたようだ。だが全てではない・・・と。


「俺がそれを言うとでも?」


「いえ、もう用はすみました。」


「な「御休みなさい」―――かっ」


俺は男に手刀をいれ眠らす。起きた時にはこの会話は覚えていないだろう。


「魔法に頼るからこれが思い付かなかったのかもな」


この魔法に頼るのは治さないとな・・・。俺はそんなことを考えながらおっさんを寝かせ部屋を出る。

今のおっさんは中々上の役職だったようだし他も似たようなものだろうか。参謀は聞こうにも誰か分からんし、出来るだけ兵士は殺したくない。下手をしたらばれる。


「・・・流石にこれ以上は止めるか」


俺は城の中庭に出ると近くのベンチに座る。ウサ公も随分とはしゃいでいるようでそこら中を駆け回っている。そんな様子を見ていると不意にウサ公の周囲が暗くなった。俺はそれが気になり上を見上げる。


「―――――」


思わず息を呑んだ。そこにいたのは藍色の髪を首辺りで結っている男装の少女。このままだとウサ公を踏みつぶす。今俺達は誰にも認識されていなから少女はそこには何もないと思っている。


「くそ―――!」


俺は悪態をつき疾走する。魔法は既に解かれている。少女も突然ウサ公が下に現れたことに驚いている。

俺は少女が踏みつぶすギリギリでウサ公を救出することに成功した。


「あ・・・ぶなかった」


俺は木に勢いよく頭をぶつけながらも腕の中にいるウサ公を見て安堵の息を漏らす。どうやらそれは落ちてきた少女も同じらしくへたりこみながらも俺達が無事なのを見てほっと胸を撫で下ろしていた。

俺は立ち上がると少女へと歩み寄る。


「お怪我はありませんか、レディ?」


少女に歩み寄り微笑む。


「は、はい。すみません」


少女は立ち上がろうと脚に力を入れる。・・・が立てない。

俺は少女が頑張っている様子に爆笑しそうになるのを抑え何とかくすくすと笑う程度にする。

その様子を見て少女はますます顔を赤くし拗ねたようにそっぽを向く。ふむ、からかうのもここら辺にするか。


「どうぞレディ」


俺は少女に手を貸すとおずおずといった様子で少女は俺の手を取った。未だに先程のことが恥ずかしいらしくその顔は赤い。


「活発なのですね。アリア王女は」


うん、見たことあるぞ此奴。城に入る前に何やら男を取り押さえてたのを見たぞ。

俺の言葉にアリア王女はさらに顔を赤くする。


「幾ら男装とはいえ女性なのですからあまり無茶をしてはいけませんよ?」


俺はアリア王女に優しく注意を促す。うわ、自分で言ってて気持ち悪くなってきた。


「す、すみません。え~と・・・」


「ああ、ナルカミ。と申します」


「ご迷惑をおかけしましたナルカミ様」


少女はそう言って頭を下げる。すげえぴったり45度のお辞儀だ。此奴お辞儀マスターか何かか・・・。


「いえ、非は此方にありましたので。私こそすみません。使い魔が迷惑を・・」


俺の言葉にアリア王女は腕の中にいるウサ公を見る。気のせいか王女はそわそわしているような・・・。


「抱いてみますか」


俺が王女に聞いてみると王女はその目を輝かせた。やはりまだまだ女の子なのだろう。


「い、いいのですか?」


「ええ、構いませんよ」


俺がそう言ってウサ公を王女に渡すと王女は目を輝かせながらウサ公を撫でる。ウサ公もその瞳を細める。俺的には電流流さなくて心底安心したぞ。ウサ公、良く分っているじゃないか。


「・・・かわいい」


王女はそう呟いた後はっとしたように俺を見る。・・・今のが聞かれたから恥ずかしいのだろうか。


「そ、その・・」


「ええ、今のは秘密にしておきますよ」


俺の言葉にほっとすると王女は再びウサ公を撫でる。


「普段はどのように振舞っておられるのですか?」


「騎士のこともあるので普段はなるべく厳しくしてます。だからこういう風に動物を可愛がることなど無くて・・・」


「ああ、分かります。私も普段は大変ですよ」


主に街で殺したりするのを我慢したり面倒臭い奴らが何か問題起こさないか不安に駆られたりで・・・。


「ナルカミ様もですか」


「ええ、大変ですよ。普段から休まる暇もなくて・・」


俺は深い溜息を吐く・・。あいつら本当に色々起こしたよな。いや、俺の運が無いのか?


「私も勇者の訓練や友人の毒舌で・・」


王女も深い溜息を吐く。どうやら俺と同じらしい。何だろうか、妙な仲間意識を感じる。


「ナルカミ様はどのような用事でいらしたのですか?」


「いえ、友人に会いに少し・・・後は観光などもありますね」


「そうですか。どうですかこの国は」


「と、いいますと?」


「この国は魔族を忌み嫌っています。その昔からの考えは民衆にも浸透し変えるのは難しいでしょう。他の国を統括しているということもそれに一役買っています」


「・・・・」


「魔族達を受け入れている国では皆どの様な顔をしていますか?」


・・・・この王女さんって魔族を嫌わないのかねえ。王女は真摯な目で俺を見つめる。


「ここに住む方々と同じですよ。皆家族がいて恋人がいて、いい笑顔をしていますよ」


「・・・そうですか」


王女はそういうとウサ公を放す。


「ナルカミ様、今宵はとても為になりました。ありがとうございます」


「いえ、王女様の為になったのでありましたら私も光栄です」


「アリアと、私のことはアリアとお呼びください」


少女は微笑む。


「ではアリア様と」


少女は様づけに少し不満なのか唇を尖らせるが直ぐに笑顔になる。


「では失礼します。本当にありがとうございました」


「いえ、此方こそ」


「貴方もね」


「みゅ!」


俺とウサ公に別れの言葉を言ってアリアは戻って行く。王女様も色々と考えているらしい。ま、敵だから戦う時は容赦しないけど・・・・たぶん。

俺はアリアが去ると魔法で城を出て宿へと向かう。ギリギリだが部屋は空いていて取ることが出来た。貴族の格好をしているから少しだけ宿の人は緊張していたが話している内に普通に接してくれた。まあ明日にはこの国を出るから多少の注目は問題ないだろう。

俺はウサ公の毛繕いなどをすると布団にもぐった。久しぶりの布団は今迄にない程快適に感じた。


 ◆


正直昨日の件は失敗したのかもしれない。


「おはようございます」


「・・・ええ、おはようございます」


何故宿の前にアリアがいるんだろうか。おい、クイックセーブ何処だ。巻き戻せ。もしくは時間を吹っ飛ばせ。

取り敢えずあいさつはしておく。・・・場所変えようか。


「アリア。少し此方へ」


「え?ああ、はい」


首を傾げるアリアの手を掴むと場所を変える。王女の割に何故こういう時だけ視線を気にしないのか・・・・。

なるべく人目が無い場所に連れてくると用件を聞く。


「どうしたんですかこんな朝早くに・・・」


「いえ、観光と言っていたので案内をしようかと・・・」


といっても特に何かあるわけではないんですけどね。とアリアは苦笑する。

ミスった。まさかこう来るとは・・・。神はそんなにも俺に不幸というものを与えたいのか?Sか?Sなのか?


「で、ですが騎士の方や仕事があるのでは・・・」


「問題ありません。緊急の物は昨日全て片付けたので」


何てこったい。優秀なのも困りものだぞこれは・・・。


『マオ、聞こえてるか』


『む~・・何なのじゃあ?帰って来るのか?』


『いや、逆だ。帰るのに時間掛かる。以上』


それだけ言うとマオの返答も聞かずに念話をきる。あまり怪しまれたくはないんだよ。


「・・・では案内、よろしくお願いします」


俺が一礼するとアリアもその顔を輝かせ笑う。


「はい、お任せ下さい!」


・・・どうしてこうなったのだろうか。俺は天を仰ぐが当然答えてくれる者はいなくただ太陽が俺を馬鹿にするように輝いているだけだった。


 ◆


アリアの案内は的確で非常に分かりやすかった。まあ王女がいるのだから周囲の視線は凄いことになっているのだが・・・。どうやらアリアが異性相手に無邪気に笑っているのは珍しく皆驚いていた。というかアリアがいない時におばさんが教えてくれた。男相手に気を張ってるのは何時何があるか分からないからかねえ。


・・・・・だとしたらアリアは俺の何処を見てこんなに無邪気に笑ってるんだ?こんなウソを塗りたくった奴の何処を・・・。


俺はウサ公を撫でながらふとそんなことを考えた。ヒトの気持ちというのは良く分んないな。

俺がウサ公を撫でているとアリアが俺を見ているのに気が付いた。


「・・・?どうかしましたか?」


「い、いえ。何でもありません!!」


そう言ってアリアは掌を胸の前でわたわたと振る。

考えに没頭して話を聞いてなかったな。まあ重要なことじゃないのだろう・・・たぶん。


「そうですか。では行きましょうか・・・」


「あ、はい」


俺の隣を歩くアリア。そのまま歩いているとふいにアリアが話しかけて来た。


「あ、あの。少しお聞きしたいことがあるんですが・・」


聞きたいことねえ。多分ばれては無いと思うから問題ないと思うが・・・。


「何でしょう?」


「ご迷惑でなければ、そ、外のことをお聞きしたいのです」


もじもじといった音が聞こえそうなほどアリアは照れ臭そうに言う。何だかんだ言っても近隣諸国以外は行ったことはないのだろう。俺はそれを承諾すると適当な店に入り外の話をしていった。


 ◆


・・・・・平和だ。敵陣だと言うのに平和すぎる。味方陣営より敵陣営にいる方が平和ってどういうことだ?


「おい兄ちゃん。お話し中済まねえな」


前言撤回。何処に行こうと俺に平穏は無いらしい。


「・・・ノーレン」


どうやらアリアの知り合いらしい。というか此奴がノーレンか。ノーレン・ウィ・ヴィスカヴァル。この国から一番近い国であるヴァローナ王国の勇者。元は傭兵だかだったらしいがヴァローナ王国に忠誠を誓い勇者になったらしい。


「これはヴィスカヴァル卿。私共にどのようなご用件でしょうか?」


俺の言葉にヴァスカヴィルが此方を見る。


「あ?お前会ったことあるっけ?」


「いえ、貴方は有名ですから」


特に風評などは気にしない人物らしい。てか血の臭いがすげえな。


「何処かで戦闘でも?」


その一言にヴィスカヴァルは訝しるように俺を見る。


「何でんなこと言うんだ?」


「いえ、私少々鼻がいいもので貴方から血の臭いがしたものですから」


その言葉にアリアは少し驚きヴィスカヴァルは、ほうっと俺を品定めするように見る。


「テメェ武の者か・・・。いや」


ヴィスカヴァルは自分の言葉を否定するように一度言葉を区切る。


「テメェ何人殺した?」


その眼は猛禽類そのものとも言えた。絶好の得物を見つけたかのような眼。

刹那、銀の軌跡が見えた。


「・・・・・何をするのでしょうか」


俺は放たれた短剣をナイフで弾く。


「いや、・・・何でもねえ」


ヴィスカヴァルは益々笑みを深めて言う。・・・・おもしれえ、殺すぞクソが。


「の、ノーレン!!貴方は突然何をするんだ!!」


今の状況を理解するとアリアは怒った様子で席を勢いよく立ちヴィスカヴァルに詰め寄る。


「あ、貴方は敵でも無い者に剣を向けたのだぞ!その意味が分かっているのか!!」


「めんどくせえ王女様だな。あいつが防げたんだから問題ねえだろうが」


その剣幕にヴィスカヴァルは面倒臭そうに答える。


「そういう問題では「いえ、いいですよアリア様。私は気にしませんので」―――で、ですが此奴はそれ以前に―――」


「あいつも良いつってんだからいいだろ?」


「お前が言うな!」


俺は席を立つと二人に一礼をする。


「申し訳ありません。そろそろ出国しなくてはいけませんので・・・」


俺がそう言うとアリアは気を悪くしたと思ったのか慌て、肩を落とした。


「そんな肩を落とさず、気を悪くした訳ではないので。只予定が詰まっていましてそろそろ出国しなくてはいけないのです。本当に申し訳ありません」


俺がそう言うとアリアは先程とは違うことにがっくりしたのかショボンとした様子で肩を落とす。


「そうですか。・・・ではまた今度、もう一度会えることを楽しみにしております」


アリアはそう言うと笑う。次に会うのは戦場か屍かもしれんがな。


「次会ったら殺す」


「・・・殺せるものならば」


隣を通る時際にヴィスカヴァルが言った言葉に俺は笑って返す。アリアには聞こえない程度の声量だった為聞かれたということはないだろう。

アリアはヴィスカヴァルから何か言われたのだろう。俺は二人とそこで別れ宿にある荷物を取ると門へと向かう。服装は既に黒のシャツズボン、それにコートを着た状態になっている。流石にあの服装で通るのは拙いだろ。


「あ~・・・敬語は疲れた」


精神的に何かこう・・・分かるかねえ。まあ、あれだ。あれなんだよ、うん。

落ち着こうとウサ公を撫でると俺は倉庫からバイクを取り出す。門から大分離れてるしばれることはないだろう。俺はバイクに乗ると走らせる。


「・・・・随分楽しめそうな輩がいるじゃねえか」


出来るならヴィスカヴァルと戦いたいが・・・。

俺はそんなことを考えながらウサ公と共にバイクを走らせた。


 ◆


あの森にも寄ったがウサ公の仲間に会うことはなかった。山賊や魔物、五人組の死体は俺が回収しといたので問題ない。肉の方は獣共が食ったのだろう骨だけだった。


「しかし此処は人気なのか?」


俺は茂みに隠れながら目の前の状況を見る。そこにはトロールの群れと戦っている冒険者のパーティーがいた。


「・・・・ほう」


その様子を見ながら俺は眼を瞬かせる。中々いいチームのようだ。後衛は少なく前衛が少し多いが常時二人は後衛を護るように立ち回っているのでそれぞれが安心して戦っている。


「・・・・七人か」


俺が今迄見た冒険者の中では最も多い人数だ。というのも人数が多い程報酬や素材の分割が減るし面倒臭いしで色々と大変だからだ。


「ここら辺はトロールが多いのかね」


それとも群れがここらにあるのか。まあどちらにしろ関係ない。


「みゅ!!」


「どうしたウサ公。・・・・あ?」


俺がウサ公が示している方向を見るとそこには此方に向かって来ているトロールがいた。


「・・・・面倒臭いな」


正直今は殺すのが面倒臭い。それにここで暴れたら向こうの冒険者にばれるかもしれない。

かといって此処で逃げようにもウサ公もいるし木が多くて全力疾走は出来ない。てかトロールがでかいのが問題なんだよな。

俺は先ずその場から離れようとトロールの注意を引き付けながら走って行く。ウサ公は既に定位置と化している俺の肩に乗っている。着かず離れずその距離を保ちながら十分に離れると俺は奴を見る。俺が止まったことによりトロールはそのままの勢いで離れていた距離を埋める。


「形無き略奪者ジェロジーア


久しぶりの魔剣。魔剣は散弾の様に飛び出し迫っていたトロールの体を蜂の巣にする。でかい鳴き声を出される前に殺すことが出来たのでお仲間は呼ばれることはなく殺すことが出来た。

先程の場所に戻ると冒険者の姿はなく。そこには体の一部を剥ぎ取られたトロールの死体とそこに群がる獣の姿だけがあった。


 ◆


取り敢えず獣とトロールの死体を回収した俺はもう用は無いと森を出てバイクを取り出した。


「よし、これからお前は俺の家族だからな」


「みゅう」


俺はウサ公の頭を撫でながらそう言うとバイクを発進させる。中々面白い旅だったな。これから起こることを考え俺は高揚感に包まれながらウサ公と共にその場を走り去って行った。


 ◆


「まあ、じゃろうな」


マオの下に着き成果を報告した俺にマオはそんなことを言う。


「・・・・それより、変な状況にはならなかったじゃろうな」


俺を疑うようにジト目で見てくるマオ。


「いや、特にはしてないな・・・」


変な状況というかそうしてからぶっ壊しまくったし・・・。


「・・・・あ」


「さあ答えろ!一体何をしたんだ!!」


俺が言葉を漏らした瞬間俺に馬乗りになるマオ。てか何で二人きりだと口調が変わるんだお前は。


「それにさっきから何だそいつは!私の前でそいつばかり撫でて―――!!」


徐々に俺に襲いかかる威圧感。そして俺の腕に食い込む指。痛い・・・凄い痛い!これ俺じゃなかったら絶対千切れてるだろ。何か千切れつつ再生みたいな矛盾した状態になってやがるからな!?


「ちょ、マオ。やばいそれ以上は拙い!?」


半月板が!今ちょっとミシッつった!今絶対ミシッつったからな!!?


「さっきから人の話を聞いているのかーーー!!!」


「俺の話を聞けーーー!!!」


ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバ―――――


「だっああああああああああああ!!?」


いってえええええええええええ!!!幸い直ぐに治るとはいえ痛い。痛すぎる。


「・・・・・・・」


俺の絶叫に流石にマオも驚いたようだ。少し眼を見開いている。だがその目も次第に細められ面白いものを発見したような目になっていく。


「きょ~や~」


猫の様に俺に抱き着き甘い声で俺を呼ぶマオ。ハッキリ言おう。俺今死にかけてる。此奴こんな天使のような笑顔のくせして再生してた俺の半月板に衝撃加えやがった。再生のお陰とさっきので感覚が麻痺してるお陰で痛みは無い。


「何だ悪魔」


「悪魔じゃなくて魔王だよ」


笑顔で即死級の一撃を放とうとするマオ。ごめんなさい止めてください。流石にそれは拙い。


「で?何があったの」


腕を振りかぶった状態で俺を問い質すマオ。これは拷問か尋問だと俺は思う。学が無いからどっちか明確な違いは分からんが。


「・・・あれだ王女にウサ公潰され掛かったり王女と街歩いたり、勇者に短剣投げられたり――――」


俺が言っているとマオがその拳を俺の腹に振り下ろす。いや、上半身と下半身千切れたんだけど・・・。まあ千切れても再生するし汚れもマオが浄化するから問題ないんだけどな・・・。


「女・・・・じゃなくて、王女と街を出歩いているとは何事よ!!」


そこか?普通勇者に攻撃されたツッコムんじゃねえの?仲間が攻撃されたんだぞ?


「どういうこと!何で偵察に行ったのに何で女と街を歩くのよ!?吐け、吐けーーー!!」


マオが色々と凄い。何かこう何かが音を立てて崩れていく音がする。

この状況をどうにかしたいので俺は取り敢えずそうなった経緯を話す。他に何かあるわけでもないから問題はないだろう。





「・・・・・何故?」


「キョーヤ、酷い。浮気、許さない」


「この場で首を刎ねてやるのじゃ!」


俺の首に添えられる氷の剣とそれと正反対に突き刺さる怒りに燃えた二人からの視線。いや、俺悪くなくね?何も問題起こしてなくね?


「あれだ、これは冤罪だ。至急弁護士を呼べ。俺は無実だ」


「弁護士が何かは知らぬが絶対に主は無実ではない!!」


マオの言葉に賛同するようにハクも首を縦に振る。いや、絶対俺無実だから。悪くないから。


「キョーヤ、言い訳は見苦しい」


「これは正当な発言だろ。おかしい、絶対にお前らがおかしい」


「此処では乙女が法律じゃ!!」


・・・・乙女。


「お前ら乙女ってとs――――がふっ!!?」


発言しようとした俺を二人が殴る。くそ、しまった。まさか歳のことを口に出すとは・・・。


「勘弁してくれ。後で言うこと聞いてやるから」


首を落とすとか勘弁してくれ。痛い、此奴らは絶対にただ刎ねるだけじゃ済まさないだろ。てかハクの剣ってこれ切断したら俺の首凍らねえ?


「では判決、無罪」


「うん」


「早っ!?」


自分で言っておいて何だが早いだろ!?あまりの早さについ口に出しちまった。取り敢えず拘束を解かれたので俺は手首を摩りながら二人を見る。


「では我らの言う事を聞くのじゃぞ?」


「聞いてね?」


先程の怒りが嘘に思えるほどの笑顔。やばい俺女性不信に陥りそう。怖すぎる。


「はいよ、分かったから。で、何すりゃいいんだ?」


荷物持ち位で処刑を免れるんだ安いもんだろだろ。そんなことを考えていた俺はどうやら甘かったらしい。いや、此奴らのことだからと高を括っていた。


「この前出来なかった夜「そういや俺やることあったわ」―――逃げるでないぞ響夜」


帰ろうとする俺の首を掴み180度回すマオとハク。今首が死んだぞ?


「・・・キョーヤ、約束は約束」


「いや、したが期限なんて付けなかっただろ?」


「では二回目があるということじゃ「いやあ、そう言えば期限あったな」―――・・・流石にそれは傷付くんじゃぞ?」


「じゃあ私は何回d「ごめんなさい。勘弁して下さい」―――・・・・」


全力で謝る俺。アリアの礼を見て良かった。今の俺の礼は完璧なものだっただろう。そう自負できるほど綺麗な一礼だった。


「「何でもいうことを聞くって言っt「ウサ公!外へ散歩に行くぞ!!」「みゅ!」―――・・・・」


俺は二人が動き出す前にウサ公と共に港街へと転移する。ヘタレ?何とでも言え。断ると言ったら断る。俺は何が何でも逃げ切ってみせる。

街の中を走り出した俺達の背後から二人の声が聞こえた気がした気のせいだろう。・・・うん、気のせいだ。

久しぶり(?)の街は今迄にない程スリルがあった。




当然逃げ切れるわけもなく翌日取り押さえられたけどな・・・。


感想、批判、意見、評価などがありましたらお願いします。




はい、himameです。今回、響夜が最後の方頭のねじが抜けかけてます。まあ彼なりに色々と考えている為全力で拒否ということです。後、いじるためにも・・・。


今回、書いている時ふいに見たら10000字を超えるとかいいうことが起きました。最初は6000位でやめようと思っていたのですが何時の間にやら・・・。

分けようかとも思いましたがこのまま投稿しました。所々おかしいところがあればそれは書きなおした時の影響などなので大目に見てください。


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