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殺人鬼は異世界に来てしまったようです  作者: ひまめ
殺人鬼と漆黒の御姫様
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閑話


 薄暗い部屋。中央にある円卓とそれを囲む十三の席のみがある部屋に今十三の人影があった。


「(・・・・・気まずい)」

 

 静寂に包まれた部屋の中エルザは内心で溜息を吐く。だがこの沈黙の理由は彼女自身痛いほど分かっていた。

 本来いない筈の席。そこに座る人物に皆恐怖しているのだ。髪は黒くその眼はまるで溝川の様に濁り奈落のように深い。全身を黒いローブのような物で包み端正な顔立ちであるが常にその顔には微笑が張り付いておりそれが一層その男の姿を不気味な物にしている。まるで影法師のような姿。


「ふむ、今宵はどうしたのだ?卿がここに現れるなど珍しい」


 口を開いたのは一位の席に座る金髪の男。髪は長くまるで黄金の輝きを放ち、その顔は生物としてこれでもかと言うほどの美しさをもっている。今その顔にはまるで面白い物を見るかのような微笑が浮かべられていた。彼こそがクラウン序列一位、最強にして最凶の男。そして目の前の影法師の男と共にクラウンを創立した人物。


「いえ、何。少々皆に伝えることが」


 影法師の男が口を開くそこから流れ出る言葉はまるで人の神経を逆撫でにするもので、同時に底無しの沼に脚を絡め取られたかのような感覚だった。

 エルザは無意識に体を震わす。黄金の輝きを放つ男とその黄金さえも呑み込むかのような黒い男。まるで正反対の二人。その二人から発せられる言葉だけでエルザは気圧されたのだ。いや、エルザだけでない。他のクラウンの者達も皆二人の言葉に気圧されている。まるで強者に蹂躙される弱者の様に。


「―――――私の代行を見つけまして」


 その言葉に黄金はほう、と呟き。他のクラウン達に動揺が走る。


「それで?その者はどうした」


 黄金は影法師に問い掛ける。僅かだが期待の色がこもる声色であった。だがその言葉に影法師は首を横に振る。


「いえ、まだ勧誘はしておりません。いずれ行おうかと」


 二人の男の会話。エルザは僅かだが思い当たる節があった。


「す、すみません」


 エルザは影法師へとその疑問をぶつける。まるでそれを恐れるかのように。


「そ、それは私の視察と関係が?」


 そもそもあの街にエルザを視察に行かせたのはこの男。それが関係ない筈がない。だがエルザは頭でそう予想していても心はそのことを認めようとしなかった。だが、それも影法師の言葉で崩れ去る。


「無論。然りだ、戦乙女ヴァルキュリア。君は既に黄昏の破壊者ロキと出会っている筈。無論彼の成長も促したのでは?」


 まるでそうなると決まっているかの様な口ぶりで影法師は言う。その言葉にエルザはかつてない程の恐怖を覚える。


「で、では彼が代行だと!?本気で言っているのですか!!」


 思わずエルザは身を乗り出す。だが影法師は動じずその奈落の目でエルザを見る。


「無論。些か未熟ではあるが、彼は私の代行に相応しい」


 それは決して覆らない。影法師の目からは確かにそう感じた。エルザはその顔を歪ませながら席に座る。


「ならば卿の好きにするがいい。だが―――」


「ええ、誓いは、守る。貴方を退屈にはさせませんよ」


 その言葉を残し影法師は消える。それと共に笑いながら黄金もまた消えていく。二つの力が消えたことによりクラウン達は解放され一言二言話すと各々消えていく。エルザもまた俯き拳を握りながら消えて行った。

 後に残った誰もいない円卓と十三の席だけだった。


感想、批判、ご意見がありましたらどうぞ送ってください。



活動報告でも書きますがこれから偉人や、伝説上の人物の名前について募集したいと思います。作者である私は少し知識が偏る変人ですので是非ともご協力ください。できればその人物の逸話等もあると嬉しいです。


因みに今考えてあるもの


・ゲッツ。フォン・ベルリヒンゲン 「隻腕の騎士」


・ジークフリート(シグルズ) 「竜殺しの英雄」


などです。特にどの地方のもので拘るというのはありませんのでもしありましたらお願いします。

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