最近の殺人鬼は異世界にいけないと駄目らしい
「殺人鬼?いえいえ俺はただ殺すのが大好きなだけです」
by主人公
既に空は黒く染まり綺麗な満月が見える晴れた夜空。周囲を山に囲まれた村があった。
「・・・・・こんなもんか」
その村の中を一人の男が歩いていた。年は18歳程だろうか、全身を黒いコートで包み月明かりに照らされたなか頭にかぶるフードから覗く白い髪とその間から僅かに覗く妖しく光る赤い瞳。その姿はまるで鬼のようであった。男は口元に笑みを浮かべ手で引き摺ってきたものを投げた。
「これで最後――――と」
男の投げたものは地面に鈍い音を発てて落ちた。その投げ捨てられたものからは赤黒い液体が流れ出る。やがて月明かりがその投げ捨てられたものを照らす。
それは人だった。顔は恐怖の色で染めた表情で固まる老婆の死体。男はそれを見て笑を深める。
「いやあ、苦労したねえ。・・・・・ま、その分中々の光景なんだけどさ」
男はそう言って周囲を見渡す。其処にあるのは人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、人、少女が、少年が、女性が、男性が、老婆が、大地を埋め尽くさんとばかりに人の死体が広がっていた。
死体はどれも絶望したような表情や恐怖で歪んだ表情ばかりだ。ある者は片腕を失いある者は顔の半分が消し飛んでいる。なかには腹が裂け臓物が出ているものもある。その死体に囲まれた中男は愉悦に染まった顔で笑っている。
「さ、始めようか!この俺の今世紀最大のショーを!!」
男は死体の中を歩きながら叫ぶ。男は殺人鬼だった。今まで何千何万という数の人を殺し続けてきた生粋の殺人鬼。
やがて殺し続けてきた男は退屈しないよう趣向を凝らして様々な殺し方をするようになった。これもその一つ。今では誰もが口を揃えてこう言うだろう。「有り得ない」と。彼が行うものはそう―――黒魔術だ。
よく見れば死体は何らかの模様を描くように配置されているのが分かる。直径は恐らく100mを程のもの。それを描くのに犠牲になった村人の数は実に100人を超える。男は別にこれが失敗しても構わない。只自らの退屈を紛らわせる為だけに行なっていることだ。失敗しても場が白けるだけ。
「(いや、それは嫌だな)」
そう考えながらも男はこれをやめることはない。やがて男は魔方陣から出ると鈍い輝きを放つ一つのナイフを取り出す。男はそれを持つと躊躇うことなく自分の指を切る。切り傷からは真っ赤な血が少しずつ流れ男はその流れ出る血をうっとりとした表情で眺める。その様子は誰が見ても気が狂っているとしか思えないだろう。やがて血は一滴の滴となって方陣へと落ちた。
コオオォ
血の滴が触れた直後方陣からは僅かな光が漏れる。
「あ?」
男はその様子に首を傾げる。男としてはこれが成功するとは思わなかった。いや、成功して欲しいという思いもあったがそんなものは明日地球が滅ぶという何万何億分の1でのものでしかない。徐々に溢れ出る光を見て男はもう我慢しきれないとばかりに盛大に笑った。
「くくく、ふふ、くかかかかヒャハハハハハハハハハ!!!!!!」
男は手を広げ笑う。その瞳は無邪気な子供のように輝いていた。
「おいおいおい、スッゲェなぁ!スッゲェよ!!何だ何だ何だぁ!?何が起きるってんだよ!?悪魔か?天使か?何でもいいから俺を満足させてくれよ!!!」
その言葉と共に飲み込まれていく男。やがてその光は男の視界を白く塗りつぶし
男は草原の中に立っていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・Why?」
草原でポツンと立ち口を開いた男の間抜けな声は嫌に響いて聞こえた。
◆
あー、変な光に巻き込まれた俺だ。取り敢えず現状を把握しようと動き回ったんだが、どうやら俺の荷物は近くに落ちていたようだ。いやあ、助かったね。今回村一つ潰すのに弾薬と火薬と後食料とだいぶ持ってきたからな。
「これ持って辺り散策するか」
不可解なことが起きたら取り敢えず口に出せ。それで結構頭の中が整理されるもんだ。・・・・・・少なくとも俺は。
「原因は十中八九あの黒魔術」
まさか成功するとはねー。どんなものか知らないけど。本にあったの適当にやっただけだし。
「あんだけ殺した甲斐があったってもんかね」
俺はその時の光景を思い出して思わず笑みを浮かべる。今までの中でも結構面白かったほうかな~。興奮したもんだね~。
「・・・・・・」
ま、何にしても現状把握、現状把握っと。まず俺の周囲に広がっているのは草原。まあ、これといったものはなし。さらに遠くに森が見えるな。他は・・・・・・何もなし。
「情報なさすぎだろ」
思わずそう呟いてしまう俺は悪くない。・・・・・疑問に思うかもしれないが俺はヒトを殺したがる以外は一応まともだぞ?
「先ずは森行って。ほかは後で決めよ」
行動しないと何も始まらねえ。俺は木箱の中にあった付けそうな火薬と弾薬それに食料をカバンに入れ森へと向かった。数分後に聞こえた置いといた火薬の爆発音をBGMにして。
◆
只今森の中でございます。リポーターはこの俺。
とまあそんな感じで進んでるが、あれだ。草原と森の中違いすぎじゃね?なんだか猿だか鳥だかよく分かんねえ声が聞こえる。
「・・・・・・・今日の晩御飯は何でございましょうか?」
そんな呑気なことを言っている俺の前に現れたのは腕が2m位ありそうな猿なのかゴリラなのかよく分かんねえ生物。見た目は猿っぽいが多分体はゴリラ。何か筋肉がとんでもねえもん。そんで俺の記憶で該当するのはゴリラ。何千何万とヒトを殺してきた俺には分かるあいつの異常さが。俺の目は人体構造が人に近けりゃ近いほどそいつの行動、構造が手に取るように分かる。
「ウホッ!キキキ!!」
何か猿ゴリラ(俺命名)がどっちなのか分からねえ鳴き声を上げて俺に飛びかかる・よし、なら
「俺流初対面の方へのご挨拶ーー!!」
俺は飛び掛る猿ゴリラの顔面に右ストレートを放った。その拳は驚くほど綺麗に決まり反対に猿ゴリラの拳は俺を外し後ろの木を抉る。殴られた猿ゴリラは顔面を仰け反らせそのまま吹き飛ぶ。因みに猿の速度は常人より遥かに速い。俺がそれを捉えられたものはあるものの御陰だ。
俺は頭のどこか(どこか忘れた)がぶっ壊れてて本来ヒトがセーブしいる力を俺は全て引き出すことができる。御陰で小さい頃から俺の体中の骨が折れまくった。だがその肉体を極めればそいつはどうなると思う?答えは
「最強の肉体持った人間の出来上がりだーーー!!!!」
俺は吹き飛ばされた猿ゴリラの顔に躊躇なく踵落としをする。その衝撃で猿ゴリラの顔面は見事に変形し白目をむいている。あれ食らってまだ生きてるのかよ。
俺はポケットからナイフを取り出し
「お疲れさんっしたー」
首を切り裂いた。猿ゴリラは二、三度跳ねるとやがて動かなくなった。
「・・・見事に地球外生命体です。本当に(ry」
改めて猿ゴリラの全身を見た俺はその姿に此処が少なくとも日本ではないと判断した。というかあの魔方陣の時点で大体予想つくけどさ。
俺は木々の隙間から日が暮れてきたのを確認するとそこらへんから木の枝を持ってきて火をつける。
今日は此処で野宿かね~。俺はそう考えながら明日からの行動を考えていった。
PS:猿ゴリラの肉は少し固かったです。