殺人鬼の悩みの種が増えました
「・・・・・助けてくれ。」
by響夜
今回短いです。そして何か・・・うん。あれです。
・・・・・・。現実は実に残酷だ。俺は今その一部を体感している。
「・・・・・・きょうや。」
頬を仄かに赤く染めながらマオは甘い声色で俺の名前を呼ぶ。その黒髪は月の光に照らされよりより彼女を妖艶に魅せる。
俺はそれから目を逸らす。目を合わせたら駄目だと本能が感じ取ったからだ。
「・・・・きょう、や。」
だが悲しいかな。俺に逃げ場はなかったらしい。
左側には薄く青みがかった白銀の髪を揺らしたハクがいる。マオのように成熟した体つきではないが月明かりに照らされたその姿はより彼女を神秘的に魅せていた。
まずい、これは非常にまずい。肉体的にも精神的にも俺が死ぬ。世の男どもは喜んで飛び付くだろうが生憎俺はそこまで飢えてなどいない。腑抜けだ何だと言われようと俺は手を出さん。
そうとなれば俺はこの状況から何とか逃げ出す方法を思い付かなければならない。
考えろ・・・・考えろ・・・・考えろ・・・
俺は今までにない程速く頭を回転させる。何とかこの状況から脱出できる方法を。
転移、無理だ。マオは証から転移出来るし、ハクは臭いで追ってこれる。
魔導具で無理やり気絶させるか?無理だ。どちらか一人はいけてももう一人は反応してくる。
「・・・きょうや。」
甘い声を発しながら近付いてくるマオとハク。俺は少し後退りする。
「・・・おね・・がい。」
壁際まで追い詰められた俺に二人はその距離を零へとした。
その事実に俺はその体を一瞬だが硬直させた。その隙を二人は逃さず
「・・・・ん。」
触れる唇。その柔らかな感触が今の事実を伝えてくる。視界に映るのはマオの顔。そして俺の身体に感じられる二人分の重み。
「・・・・・。」
永遠にも感じられた刹那。離れる唇。目の前に映るマオの意気は荒くなっている。もう一つの視線を感じて俺は視線を下に移す。そこにいるのは白銀の髪の少女。
「・・・きょう・・・や。」
俺が反応する前に押しつけられる唇。引き離そうにも二人の体制的に引き離せない。
「・・・ん・・・はっ・・・。」
息継ぎをしようとした瞬間ハクはその口内に舌を入れる。触れ合う唇の間からぬるりとした感触をともなって入り込む舌。それは俺の舌を絡みとり口内を蹂躙する。
「ん・・・ちゅむ・・は・・・。」
何度も絡み合いその動作は次第に激しくなっていく。
「・・はむ・・・ん・・ちゅ・・は・・む・・きょうやぁ。」
離れていく二人の唇の間にできる銀の糸をハクは妖艶に絡め取りながら甘い声で俺の名前を呼ぶ。
「・・・・っ。」
これ以上は拙い。このままだと確実に俺の理性も崩壊する。
「・・きょうや。」
その間にもマオは俺のズボンへと手をかけていた。
「ま、マオ。待て!」
俺は今までにないほどの焦りと共にマオを止める。ハクが迫ってくるがそれも片手で何とか止める。
「止めろ二人とも。」
俺は二人をギリギリで止めた。二人は息を荒くしその瞳を潤ませ俺を見る。思わず顔を背けそうになるが何とか踏み止まる。
「・・・いきなりどうした。」
何とか耐えている俺は二人からこの行動の理由を聞き出す。
「・・響夜が・・悪いんだよ。」
「きょう・・やの所為。」
二人はそう言うと再びその続きにもどろうとする。
「・っ。待てお前ら。」
たぶん、というかほぼ確実に今の二人は俺の制止など聞かない。なら・・・
「・・・・。」
俺は簡単な魔法を発動させると二人に話しかける。
「それだって今でなくてもいいだろう?・・・俺も今は疲れてるんだ。」
正直苦しすぎる言い訳。現に二人も不満げに俺の顔を見ている。
頑張れ俺。今を乗り切れば何とか対策も立てられる。
俺はそう自分に言い聞かせ二人の耳元でそっと言う。
「・・・あとで、その時に続きをしてやるから。」
魔法による軽い意識の誘導。普段ならハクはともかくマオには絶対に効かないだろう。だが今マオの理性薄れている。この状態ならば効果がないわけがないだろう。
二人は顔を赤くしながらその言葉に頷く。
「・・お前達が望む時に好きなだけやってやるから。」
正直これは俺にとっても危険な賭け。マオ達がこれを覚えていたら確実に俺は詰む。だがこの魔法で誘導しておけば今回のことを思い出さず、思い出しても夢だと思う・・・・はずだ。
俺の言葉に二人は身を震わせるとその潤んだ瞳を向ける。
「それじゃ・・・」
「・・最後に。」
二人はキスを要求するように目を閉じる。その行動に俺は内心で溜息を吐くが
何とかここで終わらせなければ
その一心の下俺は二人に口付をした。
ああ、もう二度とこんなことは起きないでくれ。
◆
おはよう太陽。死ぬほどお前を八つ裂きにしたい。
俺はそう思いながら起き上る。左右には昨日と同じ姿をした二人の姿。何とか誤魔化して切り抜けたがあのあと一緒に寝ようとしてきた――――俺が拒否したが二人は断固として譲らなかった――――結果、諦めた俺はもうどうにでもなれと二人と一緒に寝た。無論変なことは起きなかった。たぶん。
「眠い。」
ああ、そういえば今日が決闘だな。
俺は街の様子を見ながらそんなことを思い出す。正直ばっくれようとも思ったが魔剣の依頼はあいつの協力がなかったら出来なかったので付き合うことにした。たぶんそしたら俺の信用は一気に落ちる。
俺は二人を起こさないようベッドから離れるとYシャツとジーパンに着替え下へ降りる。まだ朝早いからか客はほぼいない。俺はそれでも受付にいるロシェルの下へ行くと告げる。
「よくもやってくれたな?」
「何のことですか?」
笑顔で堂々としらをきるロシェル。そられてなおその行動とはある意味勇者だ。
「マオ達に余計なこと言いやがって・・・。」
「昨晩は楽しめましたか?」
此奴認めやがった。
「で、お前に話があるんだが。」
「?」
「実は今誰かを殴りたいんだ。だが、今回のことを他言無用、本人たちにも言わないと約束できれば逆にこの宿への代金を増やしてもいいと思って「是非とも協力しましょう。」・・・・。」
此奴は・・・。
俺はその変わり身の早さに深い溜息を吐く。
「いいな。もし破れば宿代ただ。・・・・・・そしてお前に地獄を見せる。」
俺は今きっと天使ともいえる表情をしていることだろう。ロシェルの顔から血の気が引き冷や汗が流れているのが分かる。
殺人鬼が天使の笑顔。・・・・・おえ。
俺はそれだけを言うと注文をし空いている席に座る。ロシェルは未だ挙動不審で俺におびえているがどうせすぐに調子を取り戻すだろう。
そんなことを考えながら時間が過ぎ去っていきマオとハクが降りてくるのが分かる。
降りてきた二人はロシェルに笑顔で挨拶をする。ロシェルももう先程の様子とは違い笑っている。
「・・・・おはよう。」
「おはよう・・なのじゃ。」
俺の下へ来る二人だがその顔を真っ赤に染めている。
・・・・・・。
「昨日の。」
俺がそう言うと二人は煙が出るのではと思うほどに赤くなり俺から目を背ける。
・・・此奴ら完全に昨日のことを覚えてやがる。
俺はその事実に絶望しながら何も聞いていない知っていないというそぶりを見せるがそんなものは無駄だったらしい。
「・・・・頑張って。」
「・・決闘が終わった後・・・。」
・・・・・・は?もしかして今日?対策も出来てないのに?
俺はその台詞に血の気が引くのを感じる。まさかロシェルへ行ったことがこんな形で帰ってくるとは・・・。
思わず俺は逃げ出そうかと考えるが諦める。そんなことは出来やしない。
しかし、誘導もしてなるべく記憶の片隅へと追いやったのにそれでも覚えているとは・・・。
その事実に俺は落胆する。・・・こんなときに使えないとは。
「「・・・・楽しみにしてるから。」」
「は・・・ははは・・・。」
その言葉に俺はもう乾いた笑いしか出せなかった。
決闘開始まで残り4時間
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難しい。難しすぎる。どうやって描写すればいいんだ。そんなことを考えながら書いておりました。今回短いのは最初で頭がオーバーヒートしてしまったからです。次からは戦闘・・・かな?
あと性描写(?)とかもうまく書けるようにしておきたいなぁ。などと考えております。