常識を考える殺人鬼は今までいたのだろうか
「最近不幸多すぎじゃね?」
by響夜
「・・・・・がおー。」
byハク
※今回は短いです。
太陽が丁度真上に昇っている頃俺は目を覚ました。
「・・・・・手加減しろよ。」
俺は日射しで目を瞑りながら呟く。
「五月蠅い。主が悪いんじゃ。」
どうやら犯人は随分近くにいたらしい。
俺が今の呟きを聞かれたこと少し後悔していると太陽の光で塗りつぶされた視界に影が入る。
長く絹のような黒髪。そして綺麗な紫の瞳。
「・・・・少しやりすぎた。・・・・・済まぬ。」
マオは少し顔を背けて言った。
「いや、別に。・・・ここは?」
「馬車の中じゃ。運ぶのが大変じゃったぞ。」
「・・・・ま、お。キョーヤ起きたから・・・どく。」
俺達が話していると近くから声がする。l
「・・・・ハクか。」
俺の視界にもう一つ影が入り込む。
太陽に照らされて輝き儚いイメージを与えるマオとは正反対の薄い水色がかった白銀の髪。そしてその姿を更に幻想的にさせている金色の瞳。
その人物であるハクは髪をリボンで一つに束ねている。
「ん。」
名前が呼ばれたことが嬉しかったのかハクは尻尾をパタパタ振る。
俺はその様子を見てから頭を起こす。
「・・・・・・。」
ゆっくりと流れていく風景。ガタガタと馬車が揺れているがそれが心地よく感じる。
平和だ・・・。
俺はその心地良さに目を瞑る。
「・・・・響夜?」
「?」
二人が俺に話しかけるが俺は目を瞑りやがて襲ってきた睡魔の誘惑に身を委ねる。
意識を落としかけた俺が最後に感じたのは両脇から感じる温かな感覚だけだった。
◆
「・・・・夜。響夜。」
「・・・・・・・。」
誰かが俺を呼ぶ声。俺はその声に意識を浮上させた。
「・・・・街に着いた。」
そう言って話し掛けるのはハク。街が楽しみなのか獣耳も尻尾も元気よく動いている。
「熟睡など主にしては珍しいの?」
左隣にいたマオが心配そうに言う。
まあ、俺が隙だらけの状態で眠ることなんてないからな。
「お前等を信頼してるからな。」
俺は二人の頭にポンと手を置くと先に降りる。二人は少しの間茫然としているがその意味を理解すると二人は笑顔で俺の後を追い掛けてきた。
「響夜が優しくなったのじゃ。」
「キョーヤは最初から優しい。」
俺の隣で二人が話している。
「先ずはハクの服が先だ。それじゃ歩きにくいだろ。」
俺はそう言うがハクは首を横に振る。
「や。響夜の服が言い。」
ハクはそう言って難色を示す。
「「止めなさい。」」
俺とマオはそんなハクを半眼で見ながら言った。
先ず俺が変態だと誤解を受ける。さらにハクが変な発言をしたら俺は社会的に死ぬ。
今でさえ結構この状況はやばいというのにそんなことをされたら堪ったものではない。
状況がどう転がろうと世間的には俺の死しか待っていない。なんという無理ゲー。クリア出来ないとか最近の子供は絶対にやらないだろう。
先ずはハクにきちんとした常識を持たせよう。
・・・・・・殺人鬼が常識を説く日が来るとは今まで思いもしなかったな。
――――――只今教育中――――――
「・・・・・服買いに行くか。」
「・・・・・ん。」
きちんとした常識をハクに教えた俺とマオはそこで教育を終了し服を買いに行くことにする。気のせいかハクの尻尾はショボーンという音がでそうな感じで下がっている。獣耳伏せていた。
「どんな物を買うのじゃ?」
「あ~・・・。」
そうか俺そう言うのは全然分からねえんだよな。買い物はマオに任せるか。だが・・・・
「その前にギルドに寄るぞ。」
生憎持ち金は魔導具に使っちまったから食費位しかない。ハクからは討伐の証拠である牙を貰っておいた。他の魔物がどうか知らないが白銀狼の牙はまた生えてくるから問題がないらしい。
やはり長寿だとそういうものがあるのだろうか。
ギルドに着いた俺達は白銀狼討伐の証の牙を出しついでにハクのギルドへの登録も済ませておく。こうしておいたほうが後からまた来るよりは楽だからな。
受付嬢からも戻ってこないから心配された。いい奴だなあ。
「お前達は服を見てきて良いぞ。」
「響夜はどうするのじゃ?」
俺の言葉にマオは首を傾げる。
「俺はまだこっちに用があるからいい。」
「む、そうなのか。」
「キョーヤ来ないの。」
マオは納得したようにハクは少し悲しそうに言う。
やめろ。俺が悪いみたいじゃねえか。心なしか受付嬢からの視線が痛い。
「ほれ。後で何処か連れて行ってやるから。」
俺はそう言って名残惜しそうな二人を送る。
俺は二人が向うのを一瞥するギルドの食堂にあるテーブルに目を向ける。
「・・・・・・よう。」
「こ、こんにちは。」
「おう!初めましてだな。」
申し訳なさそうな顔をしているエルザと恰幅の良い上半身裸の男。俺はついエルザを生暖かい目で見てしまった。エルザはその視線を見てないかというように顔を背けた。
「主がキョウヤという男か?」
俺がエルザへ説明を求める視線を送るよりも早く男は口を開いた。
一応話は通じるタイプのようだ。
「ああ。俺が響夜だ。」
俺の返事に男は笑う。何だろう嫌な予感がする。
「俺の名前はガルラ・アルフレッドだ。まあ『千武』と言う奴もいるがガルラと呼んでくれ。」
その言葉で俺は思い出した。視察に来ていたのは二人だということに。
今の名前から此奴がもう一人なのだろう。
「で、俺に何の用だ。」
周りからの視線が多くなってきたから早めに頼む。
「なあに少しお前に興味があってな。」
ガルラはそこで言葉を区切ると不敵に笑った。
「エルザに訓練とはいえ引き分けなった男がどれほどの者か見たかったのだ。」
「で?実際会ってどうよ?」
「良いな。お前からは強者の気配を感じる。人の皮を被った獣のようだ。」
面白いこと言うな此奴。
だがその感情とは正反対に嫌な予感は増していく。
あれ、おかしいな。汗がすげえや。
「ぜひ、俺とも戦ってほしいものだ。」
・・・・・・・俺の人生終了のお知らせですか?
俺はそんなことを考えながら此奴が――――――というか周りにいる奴が―――――――碌でもない奴ばかりなのだということを悟った。
俺は最近急激気増してきた不幸をこれでもかというほど呪った。
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