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殺人鬼は異世界に来てしまったようです  作者: ひまめ
殺人鬼と漆黒の御姫様
13/91

殺人鬼は冷汗が止まらないそうです

「・・・・・・・・眠いのじゃ。」

               byマオ

「・・・・・・・・。」


おは・・・まだ太陽すら出ていなかった。畜生、恥ずかしいじゃねえか。

俺はそんなことを考えながら脳を覚醒させる。


「少し、無理しすぎたか。」


マオからの供給があるとはいえ白銀狼の戦いと汚物ゴミの処理に魔力を使いすぎたな。加えて生命力も削ったからな。


「まだ夜か。」


空には三日月が輝いている。気のせいか月は赤みを帯びている様に見える。

俺は月から目を離すと立ち上がろうとする。


「・・・・・・あ?」


だが俺が立ち上がろうとすると突然襟首を引っ張られ俺は尻もちをつく。


「・・・・・・・。」


後ろを振り向けばそこにいるのは薄汚れているものの月の光を浴び幻想的な姿で座っている白銀狼。その瞳は俺を捉えていた。


「・・・はっ・・はっ・・。」


「・・・・・。」


俺は再び立ち上がろうとする。だが俺の進行を遮る様に出される尻尾。

俺は右へ避けようとする。すると右へ振られる尻尾。


「・・・・・・。」


俺はそれを左へ尻尾の下を潜り抜けて行こうとする。すると下に振り降ろされる尻尾。

それを何回か俺たちは繰り返し、俺は動くことを諦め白銀狼を見る。


「・・・わう。」


「・・・・ああ。」


何か良く分からんが俺は適当に答える。白銀狼は俺へと顔を近づけると頬を舐め、一声鳴く。


「・・・・・・・・・。」


やべ、何か懐かれた。

俺は白銀狼の姿を見てそう感じた。あの汚物が邪魔をした時点でもう此奴を殺す気など俺にはなくなっていた。

ただ此奴に懐かれるのは構わないが此奴を連れて俺が街に戻ったら危険だ。白銀狼討伐の依頼なのだから討伐対象の此奴を連れて行く訳にはいけないだろう。俺の信用にも関わってくる。


「・・・・・どうすっかなあ。」


俺がこれからのことを考えていると突然目線が高くなる。白銀狼が俺の襟首を口で器用に咥えたのだ。


「・・・・おい。」


俺の声を無視―――俺を咥えていて発音できないのかもしれないが―――して小屋の扉を開けると歩いて行く。

え、ちょ、俺を離せ。

そんな俺のことなど露知らず。白銀狼はそのまま俺を咥えて森の中に入って行った。


 ◆


「・・・・気持ち悪い。」


俺は今泉の近くでぐったりとしていた。白銀狼に咥えられていたがあいつ突然走り出しやがった。咥えられてるこっちは何も出来ねえから揺れる揺れる。この泉に着いた時には天と地がどっちか分んなくなっていた。


「くそ、自分だけ水浴びしやがって。」


俺は泉の中心で水浴びをしている白銀狼を睨む。

あ~、気持ち悪い。・・・・おえ。




やがて吐き気が治まり調子も良くなってきた俺は上半身裸になると泉に入る。外だし何時襲われるかも分からねえからこれが良いだろう。


「・・・・お前はもう少し俺のことも考ろよ。」


俺は横にいる白銀狼の体を撫でながら言う。柔らけえな~。ふさふさだぞおい。

俺はその毛に顔を埋める。


「・・・・・・・・。」


何これ気持ちよずぎだろ。くそ、強敵だ。

俺は思わずそう考えながらもその毛の感触を楽しむ。


「・・・・・と。」


俺は本来の用事である水浴びを思い出しハッとする。白銀狼は俺が離れると先に陸に上がり水を飛ばしている。俺はそれを見ながらも取り敢えずタオルを創りそれで体を拭く。


一通り体を拭き終わると俺は泉から出る。


「何やってやがる。」


俺は服を洗おうと取りに行くと俺の服と戯れている白銀狼。


・・・・・此奴の考えてることが俺には分からねえ。


「取り敢えず返せ。」


「・・・くぅ~ん。」


俺は白銀狼から服を奪い取ると泉で洗う。止めろ、そんな泣き声出すな。俺が悪いみたいじゃねえか。


「最初の姿も見る影がないな。」


最初はあれだけの気迫を持っていたってのに。

俺は思わず嘆いてしまった。俺は洗い終わった服を適当に創った棒にぶら下げ集めた枝に火をつける。


「・・・・お前どうするかな。」


俺は一番の問題について考える。

恐らく此奴は街まで付いて来る。ならどうにかしないといけないだろう。


「お前どうにかして街に入れねえの?」


俺は無駄と分かっているが白銀狼に問いかける。白銀狼は僅かに首を傾げた。


「・・・どうするかなあ。お前が俺たちみてえになれればいいんだが。」


「ガウ!」


白銀狼は元気に返事をする。


「はいはい。」


俺はそれに適当に相槌を打っていると突然白銀狼に異常が起こる。白銀狼が光りだしたのだ。


「・・・・何か俺したっけ?」


俺はその現象に顔を引き攣らせる。これやばくね?と。


「・・・・・・わん。」


やがて光が消えそこにいたのは可愛らしい声で犬の鳴き声の真似をする一人の少女。


「・・・・お前白銀狼か?」


「・・・・・・ん。」


俺の問いに少女は頷く。その動作で薄く水色がかっている銀髪が揺れる。


「人間の姿になれたのか?」


「ん。」


少女はまた短く答える。だが完全に人間になってはいない。少女には獣耳と尻尾がある。恐らく獣人と言った方が近いのだろう。


「・・・名前は何て言うんだ?」


「・・・ない。」


俺はその言葉に思案する。ふと目に入ったのは揺れている銀髪。


「・・・・・よし、お前の名前は今からハクだ。」


俺はそう言って少女、ハクの頭を撫でる。ハクは気持ち良さそうに目を細めその尻尾はパタパタと揺れていた。

・・・・畜生、触りてえ。


「取り敢えずハク先ずは服を着るぞ。」


俺はハクにそう言う。

そう、ハクは今全裸で俺の目の前に座っているのだ。いや、俺は変態じゃねえから特に何も感じない。だが世間的には服はちゃんと着た方がいい。本人が良いと思っても俺が凄い目で見られるから。


「・・・・・・これ。」


そう言ってハクが握るのは俺が着ている服。そう言えばさっきも俺の服で遊んでたな。


「まあ、別に構いやしないが。」


ハクのサイズに合う服なんてのは俺のスキルでも無理だ。その場合正確な寸法が必要になる。なら俺の服済ませられるならそれが良い。大きいから捲れば問題ないし、自分の服は幾らでも創れる。

俺は自分が着ていた服をハクに渡す。

・・・・パンツ一丁は結構寒いな。


「何か毛布でも創るか。」


俺は想像で大きめの毛布を創り包まる。一応ハクの分も創って渡しておいた。


「・・・・・ん。」


俺が毛布に包まって温まっているとハクが入り込む。


「おい、お前の分は渡しただろうが。」


寒いんだ。

俺はハクにそう言うがハクはもう一枚の毛布を俺に渡す。

・・・・・・。


「二枚使えと?」


「・・・・・・。」


無言でハクが頷く。


「お前は良い奴だ。」


俺は二枚の毛布を繋ぎ合わせると包まる。大きくなったからかハクが入っても余裕がある。


「・・・ぬくぬく。」


「全くだ。」


ハクの言葉に俺は頷く。俺たちがそのまま温まっているとノイズが走る。


『・・・夜!響夜!!無事か!?』


「うお!?」


「・・・・?」


その声量に俺は頭を押さえる。そ姿にハクは首を傾げている。

・・・・マオか。


『響夜!聞こえているか!!』


「ああ、聞こえてる。」


これ以上騒がれたら堪らない。俺はその言葉に返事する。


『良かったぁ。無事だったか。昨日魔力がどんどん使われていくし帰ってこないしで心配したんだぞ!!」


「・・・・悪いな。色々あったんだ。」


『心配させるでない!今からそっちに転移する!!そこを動くでないぞ!!』


その言葉と同時に一方的に会話は切られた。


「転移って・・・。」


たしか証があれば問題ないとか言ってたが。

俺がそんなことを考えていると真上に方陣が展開される。


「おい、・・・・まさか。」


俺が急いで立ち上がろうとした時方陣からマオが落ちてきた。


「ぐ・・ぼ・・~~~~~~!!!!」


マオは俺の腹に思い切り落ちる。それは丁度俺の腹にクリーンヒットしその痛みに俺は悶絶する。


「響夜!無事か!!」


マオは俺の姿を確認するとすぐさま近づいて来る。

たった今テメェの所為で俺は死にかけたぞ!!

俺はそう言いたかったが痛みに声を出すことが出来ず低く唸る。


「・・・・・丈夫?」


恐らく大丈夫と言いたかったのだろう。ハクがトコトコと歩いてきて声を掛ける。その姿を見たマオは俺を見る。般若の形相で。


「響夜?此奴は誰じゃ?」


「~~~~~。」


未だに腹の痛みに耐えている俺がそんなことを言える訳がない。その姿を見てハクがフォローを入れる。


「・・・・・私、この人一緒にいた。」


違うぞハク!?お前が入れるべきなのはフォローで決して油じゃないぞ!!?

その言葉を聞いたマオは今まで見たことがない程の笑顔を浮かべていた。


この時俺は人は怒りの沸点を超えると笑うのだということを知った。


「・・・そうか。主は我が心配している間ずっと女とおったのか・・・。ふふふ・・・。」


俺の幻覚だといいがマオから薄らと黒い何かが漏れている。それが見えたのかハクも何時の間にか離れている。


「死ねぇ!!!この馬鹿者があぁぁぁぁ!!!!!!」


「っ!お、ば、らあああああああああああ!!!!!?」


マオが魔力を伴って放った拳は俺に直撃し吹き飛ばした。






この日今までにない程の痛みを感じ俺の意識はブラックアウトした。









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