表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

果物の選び方

おかみは、市場の店先に積まれた梨をひとつ手に取って、ソフィーに差し出した。


「いいかい、ソフィー。傷がついていないか、よく見るんだよ。エノカの中央市場は品数が豊富だけど、そのぶん質の悪いものも混ざっているからね」


「うん、おかみさん」


ソフィーは神妙に頷いた。


梨と睨めっこしていると、背後から大きな手が伸びてきて、ソフィーから梨を奪った。


「変なこと教えるなよ、おふくろ。こーいうの、営業妨害ってんだぞ」


ソフィーが顔を上げると、呆れ顔の青年が立っていた。


「返してよ。まだ買うか決めていないんだから」


ソフィーは背伸びして、梨を取り返そうとした。


コリンはにやりと笑って、梨を持った手を高々と上げてしまった。


「返してってば」


ぴょんぴょんと飛び上がっているソフィーを意地悪っぽい笑みを浮かべて眺めていたコリンだったが、突然大口を開けて、梨にかぶりついてしまった。


「旨いぞ。俺にいわせれば、見た目より味だね。田舎者には分からない感覚だろうな」


「コリンには聞いてないよ。大体お客に出す果物なんだから、見栄えが良い方がいいに決まってんじゃん」


ソフィーが頬を膨らませると、二人のやりとりを見ていたおかみが吹き出した。


「あっという間に仲良くなったね。あんたたち、兄妹みたいだよ」


「俺は弟が欲しかった」


すかさずコリンが応じると、おかみはふんと鼻を鳴らした。


「騒がしい息子はひとりで充分さ。やっぱり、女の子は可愛いよ。父さんだって、最近毎日早く帰ってくるんだよ。ソフィーが寝てしまう前にね」


「あの親父がねえ。さすが魔女っ子だな」


コリンは梨を食べ終えて手が空くと、ソフィーの頭をわしゃわしゃっとかき回した。


「ソフィーは魔女なのかい?それにしちゃ、魔法を使っているところを一度も見たことないけど」


おかみに聞かれたソフィーは顔を曇らせた。


「私、箒で空を飛ぶことしかできないの」


「アルフレッドは、明日の昼には帰ってくるぞ。心配するな。実は熟した方が旨いんだから」


コリンは、そう言って、口笛を吹き始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ